02. 保険会社の経営分析

株価下落の影響

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今回も生損保2008年度決算から。

生損保のソルベンシー・マージン(支払い余力)総額は大幅に減りました。
大手生損保の場合、この減少分の実に8割前後が株価下落によるもの。
不動産関連投融資の損失や信用リスクの顕在化に苦しむ欧米勢、
あるいは日本の銀行とはリスク構造が明らかに違います。

外部からは「保有株式の変動リスクが大きい」と指摘されていたものの、
2003年以降の株価上昇局面でもリスク圧縮があまり進まなかったようです。

今回の株価下落局面ではどうだったのでしょうか。
各社とも「金融危機のなかでリスクを抑える方針」とのことでしたが...

決算データ(取得価額と減損額)から売却額を試算してみたところ、
大手で一定程度の株式を売却したと思われるのは
第一生命と明治安田生命、東京海上、日本興亜くらいでしょうか。
残高がほとんど変わっていないと見られる会社も多いですし、
日本生命や三井住友海上などはむしろ残高を増やしたようです。

リスクを抑える方針とは言うものの、最大のリスク要因である株式を
相場の上昇局面でも下落局面でも売れないというのであれば、
いったいどうするつもりなのでしょうか?

※写真は野川で見つけた水車です。

 

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変額年金の販売動向

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「変額年金販売が不調」(6/2朝日)という記事が一般紙に掲載されるなど
何かと話題の変額年金ですが、公表データが少なくて困ります。

例えば「どの保険会社の商品がどれだけ売れたか」という
基本的なデータが必ずしも公表されていません
(大手生保やアリコなどは記者クラブ向け資料で開示)。

ましてや「どの金融機関がどこの保険会社の商品をどれだけ販売したか」
などというデータはどこにもありません。
保険マスコミの皆さんにもっと頑張っていただきたいところなのですが...

さて、決算資料の「特別勘定の資産残高」の増減から
「特別勘定の運用収支」を差し引いた「純増部分」を見てみました。
年度内に販売した契約も時価変動の影響を受けるので、
これを「純増部分」と言うのはちょっと無理があるかもしれませんが、
あくまで参考ということでご容赦下さい。

2007年度の上位は
 ①アイエヌジー、②東京海上日動フィナンシャル、③三井住友海上メットライフ、
 ④ハートフォード、⑤住友、⑥マニュライフ...でした。

これが2008年度には、
 ①東京海上日動フィナンシャル、②第一生命&第一フロンティア生命、
 ③三井住友海上メットライフ、④住友、⑤アイエヌジー、⑥マニュライフ...
と変わっています。

ハートフォードやアリコジャパンのように純減となる会社がある一方、
第一生命グループやT&Dフィナンシャルのように好調な会社もありました。
ただ、全体としては売り上げが3割くらい減ったのではないでしょうか。

米国でも2008年の変額年金の売り上げは前年の2割減、
2009年1-3月期だけをみると前年同期を3割以上下回っています。
やはりAIGやハートフォードが販売シェアの順位を落としているようです
(VARDSレポートによる)。

日本でも2009年度はハートフォードが販売から撤退し、
住友とアイエヌジーが販売を休止するので、
上位の顔ぶれが大きく変わりそうです。

※写真は世田谷の等々力渓谷です

 

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金融危機と生保決算

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2009/3期の生保決算が出そろいました。
本格的な分析はこれからですが、やはり金融危機の影響を
非常に強く受けたものとなりました。

大手・中堅生保では、何といっても株価下落が効いています。
株式含み益を確保できたといえるのは日本生命と明治安田生命だけ。
T&Dも含み益ですが、株式関連の損失がかさみました。

ただ、銀行決算が12月よりも一段と悪化した感があるのに対し、
生保はそれほどでもないという印象です。
銀行では景気悪化の影響で信用コストの拡大が顕著ですが、
生保では中小企業向け保険の解約が目立つ程度です。
不動産関連投融資が比較的少ないためだと思います。

もっとも、外資系生保では国内系とは別の傾向が見られます。
外資系では外国証券の損失が目立ちました。

例えばアリコジャパンはAIG株式のほか、CMBS(商業用不動産担保証券)や
RMBS(住宅ローン債券担保証券)の実現損や含み損も膨らんでいます。
証券化商品以外の外国公社債でも含み損を抱えているようで、
海外企業の信用力低下も影響しているとみられます。

このような傾向はアリコだけではなく、外資系生保に共通しています。
アフラックの含み損は4000億円超となり、実質純資産額を圧迫
(ただし、証券化商品への投資は非常に少ないです)、
ジブラルタ生命の外国公社債含み損は1200億円に達し、
増資等を行っています。
アクサ生命では外国証券評価損が1300億円に膨らんだ結果、
赤字決算となりました。

外資系生保が軒並み経営内容を悪化させる事態は初めてのことです。
「外資系に追い風」はすっかり過去の話となりました。

※写真は東京駅です

 

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公表逆ざや額の限界

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すでに発表されている第一生命と大同生命の「逆ざや額」をみると、
数字が極端に悪化しています。

 第一生命 2007年度= 11億円の順ざや → 2008年度= 648億円の逆ざや
 大同生命 2007年度=217億円の順ざや → 2008年度=1298億円の逆ざや

この結果、大同生命は基礎利益が赤字となってしまいました。
これだけみると、逆ざや額を保険関係の差益でカバーできていないことになります。

しかし、超長期の負債に対し、長期の資産で運用する生保にとって、
実質ベースの逆ざやが短期間でここまで極端に動くことはありません。
指標が実態を表していないことがわかります。

大同生命の2008年度の公表逆ざや額が膨らんだ理由は、
含み損となった投信の解約に伴う多額の損失が反映されたためです。
第一生命の場合は、詳細は不明ですが、2007年度までの逆ざや額が
何らかの要因により実態よりも小さくなっていたようです。

いずれのケースでも、公表逆ざや額が実態をうまく反映していないので、
この数字をそのまま使うのはやめたほうがいいと思います。

※写真は飯山の古い雁木(がんき)です。

 

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損保の決算発表

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5/20(水)は主要損保の決算発表集中日でした。
決算発表に関する翌日の報道をみると、

「金融危機の直撃で全社が経常赤字に転落、損害保険ジャパンなど四社が
 最終赤字となった」(日経)
「有価証券の損失が拡大するなどし、税引き後利益は損害保険ジャパンなど
 3社が赤字、東京海上ホールディングスなど2社が減益」(読売)
「6社合計の金融危機関連損失は7697億円に達し、08年9月中間期時点の
 約4倍に膨らんだ」(朝日)

など、損益に関する記述が中心でした。
損保にかぎらず、決算記事はたいていP/L中心の記述となりますよね。

地方紙の一部で私のコメントが掲載されたようですが(共同発)、
これも損益に関するものでした↓

「国内部門の収支改善を進めなければ、再編してもいずれ苦しくなる」

ただ、金融危機の影響ということであれば、
黒字か赤字かということよりも、B/Sに注目です。

P/Lは有価証券評価損の計上ルールによって結果が大きく変わります
(上場損保は「30%ルール」なので赤字になりやすいのです)が、
B/Sへの影響はニュートラルです。

各社の純資産(価格変動準備金を含む)をみると、
大手3社は1年間で4割超の減少、富士火災は6割超も減りました。
大手は会社価値を1年間で、それぞれ5000億円~9000億円も
減らしてしまったことになります。ものすごい金額です。

大手損保の場合、まだ健全性が揺らぐような事態ではないとはいえ、
経営者はこれを株主や契約者にどう説明していくのでしょうか?

 

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ハートフォード生命が新規取り扱いを休止

「変額年金大手のハートフォード生命が、すべての保険商品の
 販売を6月から休止」という発表には驚きました。

三井生命も変額年金から撤退しましたが、主力は営業職員チャネルによる
保障性商品の販売です。
ハートフォード生命の場合、金融機関チャネルの専門会社なので、
今回の決定は日本市場からの撤退に近いでしょう。

親会社のハートフォードグループの2009年1-3月期決算(4/30発表)は、
変額年金関連の損失がかさみ、3四半期連続の赤字となりました。
最低保証の負担よりも、過去に計上した繰延新契約費の償却負担と、
保有債券価格の下落による影響が大きいようです。

日本法人の売り上げも落ち込んでいます。
2008年7-9月期までは1000億円以上だった収入保険料は
10-12月期が322億円、2009年1-3月期は208億円です。
主力商品3WINが運用停止になったことによる混乱に加え、
グループの信用力低下もあり、金融機関が販売を避けているのでしょう。

ただ、銀行はこのところ保険・年金商品をリテール戦略の基軸に据え、
体制整備を進めています。今回の件がどう影響するか注目です。

なお、Bloombergに私のコメントが載ったので、ご紹介します。
「(植村アナリストは)『昨秋の金融危機以降、変額年金事業の環境は激変した』
 と指摘。運用低迷や、元本を保証する商品などのコスト上昇、米保険最大手
 AIGの公的管理を受けた保険会社の信用不安などが背景にあるという」

 

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生保の逆ざや

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15日の朝日、16日の日経と、生保の逆ざやの記事が出ました。
内容は両紙とも概ね次の通りです。

「大手生保9社のうち、日本、第一、大同は逆ざやを解消していたが、
 09年3月期には全社が逆ざやになる見込み」
「昨秋以降の金融危機で運用環境が急速に悪化し、
 逆ざやの拡大が再び始まった」
「これまでと違い、各社とも増配は不可能な状況」

金融危機で運用環境が悪化し、解消していた逆ざやが
再び拡大したというのは、実は私の認識とはかなり異なります。

私の認識は、
・依然として予定利率の高い契約を抱えているため、
 そもそも逆ざやは実質的には解消していなかった。
・それでも平均予定利率は徐々には下がってきた。
・他方、金利水準は1年前とあまり変わっていない。
・以上から、足元で逆ざやは拡大していない。
というものです。

朝日と日経が間違っているというわけではありません。
両紙と私の違いは、逆ざやのとらえかたにあります。
言い換えれば、公表逆ざや額は実態を必ずしも反映していない
という話です。

公表される逆ざや額の計算では、利息配当金収入をベースとした
運用利回り(基礎利回りと言います)を使います。
ところが、この中には投信の配当損益など、
キャピタル損益とすべきものも含まれているのです。

もし、逆ざやをキャピタル損益を含めた利回りで計算すべきと言うならば
(それも一理あります)、株価や為替相場などの変動を反映した
時価利回りで逆ざやを計算すべきです。
もっとも、毎年利回りが大きく変動することになるでしょう。

私は資産を全て円金利資産で運用した場合の利回り
(リスクフリーレートのイメージ)が、逆ざや負担を見る観点からは
妥当ではないかと思っています。

 

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大和生命の保険金削減案

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4/11の各紙に、破綻した大和生命の保険金削減モデルが
掲載されています。

「終身年金(逓増型)で最大80%の削減」とあるように、
加入時の予定利率が高い貯蓄性商品で、
満期・終期までの期間が長いものほど大きく削減されています。

予想された事態ですが、二度目の破綻となった旧大正生命契約では、
1992年に加入した30歳女性の一時払い終身保険で87%の削減、
同じ条件の終身年金(逓増型、65歳開始)で約7割の削減と、
削減率が一段と大きくなっています。

ただ、どうしても削減の大きいモデルに目が行ってしまいますが、
その対象となる契約者はおそらく例外的な存在でしょう。
全体としてみれば、過去の破綻事例と比べて契約者負担が
際立って大きいということはなさそうです。

例えば、大和生命の予定利率は1%に下げられますが、
もともと平均予定利率が3%台まで下がっていました
(過去の事例では4%以上でした)。

責任準備金の明細を見ると、予定利率の高い契約は
すでに個人保険分野の半分以下に減っています
(日本生命で6割、朝日生命で7割です)。

大幅削減の可能性が高い個人年金のウエートも
他社に比べて小さいということもあります
(日本生命24%、朝日生命31%、大和生命12%)。

さらに、保険契約とともに優先的更生債権である労働債権は
24.8%の削減です(千代田生命では25.27%)。

もちろん、だからといって契約者負担が決して小さいわけではなく、
契約者保護のためには、やはり破綻を避けることが重要だと
あらためて確認できました。

※写真は昨年行った奈良公園です。

 

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大和生命の更生計画案

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東京地裁への提出は23日ですが
大和生命の更生計画案が固まったようです。

報道によると、債務超過額が当初(2008/9末)の
140億円から643億円に拡大しました。
これを埋めるために、責任準備金の削減で333億円、
保護機構の資金援助が278億円、残りは営業権32億円
として計上し、今後の利益で償却していきます。

2008/9末の責任準備金は2600億円なので、
1割カットだと260億円にしかならないはず。
削減額が333億円なのは、補償される責任準備金が
おそらく「全期チルメル式」だからです。

営業権32億円はジブラルタ生命が負担するのではなく、
予定利率の引き下げなどで収益性を改善し、
そこから償却することになります。
つまり、32億円は既契約者の負担となります。

ただ、大和生命は費差損構造だったようなので、
逆ざや負担がなくなったとしても、コストを相当下げないと
収益性は改善しません。
契約者には買い手がついてよかったと思います。

 

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日米欧保険会社の決算

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日米欧の保険会社の決算が概ね出揃いました(日本は4-12月期)。
米国ではハートフォードとプルデンシャルが2四半期連続で赤字、
メットライフやアフラックは黒字ですが、多額の含み損を抱えています。
欧州勢も、アクサは下半期が赤字。アリアンツやINGは通期で赤字でした。

10年前の日本の「生保危機」は国内生保の一人負けだったため、
外資系や損保系には追い風でした。
今回は欧米勢の厳しさが目立つので、外資系には逆風となっています。

経営悪化の中身は日本勢と欧米勢ではかなり違うようです。
日本勢では保有株式の価格が下落した影響が大きいのに対し、
欧米勢では不動産関連投融資の悪化や企業等の信用スプレッド拡大、
あるいは変額年金事業(主に米国)の赤字が業績を圧迫しています。

確かに、高格付け債券の価格がここまで下がってしまうとは、
おそらく誰も想像できなかったでしょう。
他方、日本勢の株式保有リスクはある意味わかっていた話なので、
非常に残念です。

あとはAIGの決算ですね。
政府の対応を含め、来週の発表(たぶん)に注目です。

 

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