02. 保険会社の経営分析

変額年金の資産残高

今さらではありますが、生保の上半期報告のデータをみると、
変額年金の資産残高が過去最高となったことを発見しました。
主要12社の残高合計は16.7兆円で、この半年で18%増えています。

もちろん、時価が10%近く増えた影響もあるのですが、
住友、第一フロンティア、T&Dフィナンシャルなどの売り上げが
寄与しているようです。
銀行の手数料ニーズもあるとはいえ、貯蓄性商品へのニーズは
依然として根強いと言えそうです。

別件ですが、セミナーのご案内です。
クリスマスイブに金融財務研究会主催のセミナーで
スピーチをする予定です。
有料セミナーですが、ご関心のあるかたはどうぞ。
自分で言うのもなんですが、今回は面白いと思いますよ。

金融財務研究会のHPへ

※写真は横浜港の風力発電(風車)です。
 気がついたら風車がありました^^

 

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損保の中間決算

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正確には「平成22年(2010年)3月期第2四半期決算」ですね。

同じ四半期決算でも、日本と米国では開示スタイルが微妙に違います。
日本は第1四半期が4-6月、第2四半期が4-9月、第3四半期が4-12月
と累積報告が主なのに対し、米国は3ヶ月ごとの情報がメインです。

また、同じ第2四半期といっても、日本は7-9月(累積報告は4-9月)、
米国は4-6月です。気をつけないと時々混乱します。

さて、損保の4-9月期決算を見た印象は、厳しいの一言です。
株価下落の影響こそ薄らいだものの、営業面でも運用面でも
明るい指標はほとんど見られませんでした。

例えば正味収入保険料ですが、2008年4月からの料率大幅ダウンの
影響が残る自賠責保険を除いた数値でも、主要損保9社合計で
前期に比べて3%の減収(単体ベース)。これにはちょっと驚きました。

最大種目の自動車保険では、各社が料率引き上げに動いたものの、
1.9%の減収です。
個社別に見ると、企業向け保険のウエートが高い会社ほど
減収率が大きいように思います(富士火災は別の要因がありそうです)。

なお、東京海上の連結ベースの収入保険料が伸びたように見えるのは、
今期から米フィラデルフィア社の収入(862億円)が加わったためです。

利息配当金収入が大きく落ち込んだのも今回の特徴です。
国内株式の配当金収入が急減したのに加え、
「外国証券」「その他の証券」の不振が目立ちます。

言い換えれば、損保の利息配当金収入はこれまで、
キャピタルゲイン的なものでかさ上げされていたということになります。

中間期には開示されていませんが、各社の運用成果をみるには
素直に時価利回りを参考にするのがいいのではないかと思います。

新聞の見出しには、「全社増益」「純利益は黒字に」などとありましたが、
株価回復で一息ついたとはいえ、保険事業の厳しさが浮き彫りとなりました。

※イチョウ並木シリーズ第2弾。やはり大学のキャンパスです。

 

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お宝保険

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1990年代前半までに加入した保険は「お宝保険」と言われています。
予定利率が高く、保険料が割安であるためです
(特に貯蓄性のある養老保険や終身保険、個人年金保険)。

1日の日経7面の特集記事「金融を問う」は保険についてでした。
見出しは「保険商品 見えぬ中身」「情報提供不足、比較難しく」です。

この記事のなかで「お宝保険」が出てきます。
FPのかたのコメントとして、「お宝保険の多くが転換されてしまった」
とありました。他のFPからもしばしば同じことを聞きますので、
現場ではお宝契約が転換されてしまった事例が非常に多いのでしょう。

しかし、だからといってお宝契約がなくなったわけではなさそうです。
データを見るかぎりでは、保険会社の勧めに乗らず、
お宝をキープしている契約者も決して少なくないと思われます。

直近の日本生命のディスクロージャー資料をみると、
1995年以前に契約した個人保険、個人年金保険の責任準備金は
依然として17兆円あり、全体の57%を占めています。

このうち個人年金(=転換話法が使いにくい)の内訳は不明ですが、
個人年金全体(1996年以降を含む)の責任準備金が8兆円なので、
少なくとも養老保険や終身保険といった、転換を勧められやすい
個人保険がまだまだ残っていることになりますね。

他の大手生保でも、概ね日本生命と同じような状況でした。

お宝契約が多数転換されてしまったのは間違いないのでしょうが、
賢い消費者も多いと言えそうです。

※地元・大倉山ではこの週末にお祭りがあります。

 

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10年国債では長期化になりません

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前回のブログで個室寝台列車について書いたところ、
たまたま週刊東洋経済が鉄道特集で、ブルトレ廃止の真相について
記事が載っていました。やっぱり、という感じです。

さて、30日(火)の日経17面に「AIG規制、先取り相場の動き」
という題のコラムが載りました。
AIG危機の再発防止を狙った国際規制の強化を見越し、
大手生保の一角が10年国債の買いに動いた、というものです。

「国際規制の強化」→「資産・負債の金利リスクが顕在化」
→「長期債購入によりリスク量圧縮」という流れはその通りです。

ただ、実際のデータをみると、次のようなことがわかります。

・公社債の長期化は足元というよりも、2007年度あたりから加速している。
・推定残存年数はすでに10年前後になっている(大同生命を除く)ので、
 10年国債を買っても長期化にはならない。

ということで、「10年国債の買い」を「国際規制の強化が背景」とするのは
ちょっと無理がありそうですが、公社債の長期化が進んでいるのは確かです。
なかでも2008年度に長期化が目立ったのは、住友、明治安田、太陽、富国、
ソニーでした。第一や三井もすでにかなり長期化しているようです。

ここでは推定残存年数を、「~1年=0.5年」「1~3年=2年」「3~5年=4年」
「5~7年=6年」「7~10年=8.5年」「10年~=15年」として計算しているので、
実際にはもっと長いかもしれません(10年超を一律15年としているため)。

これだけ長期化しても、生保の金利リスクは依然として大きいと見ています。
というのも長期の負債に対し、公社債で全てをカバーしているわけでは
ないからです。

こちらもデータをみると、残念ながら2007年度末のものしかないのですが、
一般的に期間の長い負債である個人保険、個人年金の責任準備金に対し、
公社債の割合は5、6割にすぎないのです(富国とソニーは8割超)。

同じ円金利資産でも貸付金の期間は公社債よりも短めですし、
株式や不動産では負債の金利リスクを軽減できません。

※写真は広島です。修学旅行の小学生がたくさんいました。

 

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前回の生保危機との比較

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月曜日(8日)発行の有料メールマガジン「inswatch」に、
日経平均株価が8000円を割り込んだ2002年度と
直近の2008年度の生保決算を比べた記事を書きました。

inswatchのHPへ http://www.inswatch.co.jp/

 ※inswatchは、保険の現場に強いジャーナリストとして定評のある
  石井秀樹さん、中崎章夫さんが編集人を務めるメールマガジンです。
  「保険代理店向け」とありますが、広く業界人におすすめです。
  私は2か月に1回、記事を書いています。

簡単にご紹介しますと...
 ソルベンシー・マージン総額は、2002年度<2008年度
 このうち有価証券含み益は、2002年度>2008年度
 内部留保(純資産+α)は、2002年度<2008年度
 他方、リスクの合計額は、2002年度≒2008年度
 ↓
 内部留保を積み上げてきたため、2002年度よりも体力にまだ余裕がある。
 ただし、保有資産のリスクを温存してきたため、内部留保は1年間で激減した。

もっとも、これはあくまで国内系生保9社の単純合算ベースでして、
個社ベースではいろいろです。

例えば、朝日生命と太陽生命のソルベンシー・マージン総額は
2002年度>2008年度 です。
しかし、両社とも資産運用リスクの抑制を進めてきたため、
ソルベンシー・マージン比率は 2002年度<2008年度 となっています。

反対に、大同生命は2003年度以降、内部留保を増やす一方で、
資産運用リスクも増やした結果、ソルベンシー・マージン比率が
2002年度>2008年度 となってしまいました。

なお、ソルベンシー・マージン比率の計算方法は
当時と今では多少違いがありますので、お含み置き下さい。

※写真は新横浜の駅ビルです。ずいぶん便利になりました。

 

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株価下落の影響

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今回も生損保2008年度決算から。

生損保のソルベンシー・マージン(支払い余力)総額は大幅に減りました。
大手生損保の場合、この減少分の実に8割前後が株価下落によるもの。
不動産関連投融資の損失や信用リスクの顕在化に苦しむ欧米勢、
あるいは日本の銀行とはリスク構造が明らかに違います。

外部からは「保有株式の変動リスクが大きい」と指摘されていたものの、
2003年以降の株価上昇局面でもリスク圧縮があまり進まなかったようです。

今回の株価下落局面ではどうだったのでしょうか。
各社とも「金融危機のなかでリスクを抑える方針」とのことでしたが...

決算データ(取得価額と減損額)から売却額を試算してみたところ、
大手で一定程度の株式を売却したと思われるのは
第一生命と明治安田生命、東京海上、日本興亜くらいでしょうか。
残高がほとんど変わっていないと見られる会社も多いですし、
日本生命や三井住友海上などはむしろ残高を増やしたようです。

リスクを抑える方針とは言うものの、最大のリスク要因である株式を
相場の上昇局面でも下落局面でも売れないというのであれば、
いったいどうするつもりなのでしょうか?

※写真は野川で見つけた水車です。

 

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変額年金の販売動向

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「変額年金販売が不調」(6/2朝日)という記事が一般紙に掲載されるなど
何かと話題の変額年金ですが、公表データが少なくて困ります。

例えば「どの保険会社の商品がどれだけ売れたか」という
基本的なデータが必ずしも公表されていません
(大手生保やアリコなどは記者クラブ向け資料で開示)。

ましてや「どの金融機関がどこの保険会社の商品をどれだけ販売したか」
などというデータはどこにもありません。
保険マスコミの皆さんにもっと頑張っていただきたいところなのですが...

さて、決算資料の「特別勘定の資産残高」の増減から
「特別勘定の運用収支」を差し引いた「純増部分」を見てみました。
年度内に販売した契約も時価変動の影響を受けるので、
これを「純増部分」と言うのはちょっと無理があるかもしれませんが、
あくまで参考ということでご容赦下さい。

2007年度の上位は
 ①アイエヌジー、②東京海上日動フィナンシャル、③三井住友海上メットライフ、
 ④ハートフォード、⑤住友、⑥マニュライフ...でした。

これが2008年度には、
 ①東京海上日動フィナンシャル、②第一生命&第一フロンティア生命、
 ③三井住友海上メットライフ、④住友、⑤アイエヌジー、⑥マニュライフ...
と変わっています。

ハートフォードやアリコジャパンのように純減となる会社がある一方、
第一生命グループやT&Dフィナンシャルのように好調な会社もありました。
ただ、全体としては売り上げが3割くらい減ったのではないでしょうか。

米国でも2008年の変額年金の売り上げは前年の2割減、
2009年1-3月期だけをみると前年同期を3割以上下回っています。
やはりAIGやハートフォードが販売シェアの順位を落としているようです
(VARDSレポートによる)。

日本でも2009年度はハートフォードが販売から撤退し、
住友とアイエヌジーが販売を休止するので、
上位の顔ぶれが大きく変わりそうです。

※写真は世田谷の等々力渓谷です

 

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金融危機と生保決算

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2009/3期の生保決算が出そろいました。
本格的な分析はこれからですが、やはり金融危機の影響を
非常に強く受けたものとなりました。

大手・中堅生保では、何といっても株価下落が効いています。
株式含み益を確保できたといえるのは日本生命と明治安田生命だけ。
T&Dも含み益ですが、株式関連の損失がかさみました。

ただ、銀行決算が12月よりも一段と悪化した感があるのに対し、
生保はそれほどでもないという印象です。
銀行では景気悪化の影響で信用コストの拡大が顕著ですが、
生保では中小企業向け保険の解約が目立つ程度です。
不動産関連投融資が比較的少ないためだと思います。

もっとも、外資系生保では国内系とは別の傾向が見られます。
外資系では外国証券の損失が目立ちました。

例えばアリコジャパンはAIG株式のほか、CMBS(商業用不動産担保証券)や
RMBS(住宅ローン債券担保証券)の実現損や含み損も膨らんでいます。
証券化商品以外の外国公社債でも含み損を抱えているようで、
海外企業の信用力低下も影響しているとみられます。

このような傾向はアリコだけではなく、外資系生保に共通しています。
アフラックの含み損は4000億円超となり、実質純資産額を圧迫
(ただし、証券化商品への投資は非常に少ないです)、
ジブラルタ生命の外国公社債含み損は1200億円に達し、
増資等を行っています。
アクサ生命では外国証券評価損が1300億円に膨らんだ結果、
赤字決算となりました。

外資系生保が軒並み経営内容を悪化させる事態は初めてのことです。
「外資系に追い風」はすっかり過去の話となりました。

※写真は東京駅です

 

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公表逆ざや額の限界

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すでに発表されている第一生命と大同生命の「逆ざや額」をみると、
数字が極端に悪化しています。

 第一生命 2007年度= 11億円の順ざや → 2008年度= 648億円の逆ざや
 大同生命 2007年度=217億円の順ざや → 2008年度=1298億円の逆ざや

この結果、大同生命は基礎利益が赤字となってしまいました。
これだけみると、逆ざや額を保険関係の差益でカバーできていないことになります。

しかし、超長期の負債に対し、長期の資産で運用する生保にとって、
実質ベースの逆ざやが短期間でここまで極端に動くことはありません。
指標が実態を表していないことがわかります。

大同生命の2008年度の公表逆ざや額が膨らんだ理由は、
含み損となった投信の解約に伴う多額の損失が反映されたためです。
第一生命の場合は、詳細は不明ですが、2007年度までの逆ざや額が
何らかの要因により実態よりも小さくなっていたようです。

いずれのケースでも、公表逆ざや額が実態をうまく反映していないので、
この数字をそのまま使うのはやめたほうがいいと思います。

※写真は飯山の古い雁木(がんき)です。

 

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損保の決算発表

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5/20(水)は主要損保の決算発表集中日でした。
決算発表に関する翌日の報道をみると、

「金融危機の直撃で全社が経常赤字に転落、損害保険ジャパンなど四社が
 最終赤字となった」(日経)
「有価証券の損失が拡大するなどし、税引き後利益は損害保険ジャパンなど
 3社が赤字、東京海上ホールディングスなど2社が減益」(読売)
「6社合計の金融危機関連損失は7697億円に達し、08年9月中間期時点の
 約4倍に膨らんだ」(朝日)

など、損益に関する記述が中心でした。
損保にかぎらず、決算記事はたいていP/L中心の記述となりますよね。

地方紙の一部で私のコメントが掲載されたようですが(共同発)、
これも損益に関するものでした↓

「国内部門の収支改善を進めなければ、再編してもいずれ苦しくなる」

ただ、金融危機の影響ということであれば、
黒字か赤字かということよりも、B/Sに注目です。

P/Lは有価証券評価損の計上ルールによって結果が大きく変わります
(上場損保は「30%ルール」なので赤字になりやすいのです)が、
B/Sへの影響はニュートラルです。

各社の純資産(価格変動準備金を含む)をみると、
大手3社は1年間で4割超の減少、富士火災は6割超も減りました。
大手は会社価値を1年間で、それぞれ5000億円~9000億円も
減らしてしまったことになります。ものすごい金額です。

大手損保の場合、まだ健全性が揺らぐような事態ではないとはいえ、
経営者はこれを株主や契約者にどう説明していくのでしょうか?

 

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