今年から金融庁のサイトで、「業界団体との
意見交換会において金融庁が提起した論点」
を公表するようになり、生命保険協会および
日本損害保険協会のものが出ています
(保険は2月以来の公表です)。
事務年度の終盤に行われた会合なので、
行政の取り組みの一端がうかがえます。
例えば[生命保険協会]を見ると、
「持続可能な収益構造等に関するモニタリング」
として、各社のコスト構造や保有契約の収益構造
について、次のような分析結果を示しています。
・全体の事業費に占める固定的な経費(ランニング
コスト)の割合が多くの社で70%前後となっている
など、販売が伸び悩んだ場合におけるコスト構造
の弾力性は高くないと考えられる。
・いずれの社も保有契約全体で見れば、経済的
ショックが起こらないという前提のもとでは
今後も健全性を確保できる見込みであった。
・内部留保が更に蓄積されていった場合、資産
運用高度化等を通じて利益を確保し、逆ザヤ
契約からの損失をカバーすることや、内部留保
の蓄積により健全性を維持することに加えて、
利益や内部留保の一部を配当などによって保険
契約者へ還元することをより意識すべき局面が
いずれ訪れることとなる。
市場が縮小してもビジネスモデルが成り立つかを
見るには、新契約で利益を確保し続けることが
できるかも大事だと思うのですが、そこについては
特段言及はなかったようです。
「全体の事業費」も気になりますね。ここで言う
事業費とはどのような数字なのでしょうか。
まあ、さすがに損益計算書の事業費そのものでは
ないですよね。そうだとすると、保有契約に対する
新契約が多い会社は固定的な経費の割合が低く、
「コスト構造の弾力性が高い」となってしまうので。
「保有契約全体で見れば・・・今後も健全性を確保」
という記述も気になります。ストレスシナリオ下でも
現行会計ベースの利益を持続的に確保できる
という意味でしょうか。
文中に「逆ザヤ契約からの損失をカバー」とあり、
あくまで現行会計ベースの利益や内部留保の話を
しているようですが、他方で両協会の[共通事項]
の「統合的リスク管理の高度化」を見ると、
・(前略)持続的な成長性や収益性に資する態勢が
整備・運用されているかという観点から、統合的
リスク管理に係るモニタリングを実施した。
・リスク対比リターン指標であるROR(リターンオン
リスク)の管理等を通じ、全社ベースでリスクと
リターンのバランスを取る取組みが徐々に浸透し
てきているが、セグメント別や商品別等の詳細な
区分での取組みは今後の課題。
とあり、こちらの「リターン」は現行会計ベースとは
考えにくいです(リスクと対比するものなので)。
片や「持続可能な収益構造」、こちらは「持続的な
成長性や収益性」ということなのですが、果たして
両者の関係はどうなっているのか、話を聞いた
生命保険会社の首脳は混乱したかもしれません。
いずれにしても、おそらく詳細は「金融レポート」に
掲載されるのではないかと予想されますので、
楽しみに待ちましょう。
※写真は「宮城の小京都」村田の町並みです。