日本生命のCM

先日訃報が伝わった作曲家の小林亜星さんは「モクセイの花」という曲も作っています。
そう、「ニッセイのおばちゃん」のCMソングです。

モクセイの花(動画)

このCMは1970年代から80年代にかけて長く使われたので、40代半ばくらいまでの人であれば、口ずさめるのではないでしょうか。
いま聞くと、しんみりとした名曲ですね。もちろん生命保険のCMなのですが、保険を前面に出さないのに、人生の節目にはニッセイのおばちゃんに相談しようという気にさせますね。

日本生命のCMは結構好きでして、例えば、谷川俊太郎さんの詩を使ったCMは、保険をうまく表現していると思いました。
この駅はかつての井の頭公園駅ですね。

愛する人のために(動画)

比較的最近のものでは、朝ドラのヒロイン清原果耶さん出演のこちら。
つい、うるうるしてしまいます(笑)

見守るということ(動画)

反対に、これは逆効果だと思ったのが、CMではありませんが、2011年放映の「JIN-仁-」です。
日本生命はあくまでスポンサーであり、脚本に影響を与えたとは思いたくないのですが、ドラマのなかで坂本龍馬に「保険」「保険」と叫ばせ、船中八策ならぬ「船中九策」まで登場(保険が加わりました)。原作にそのようなシーンは一切なかったので、かなりガッカリしました。

※手水のところが紫陽花で埋まっていてびっくりしました。太宰府天満宮です。

 

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損保系生保の現状

今週のInswatch Vol.1089(2021.6.14)では大手損保グループの決算をもとに、損保系生保の現状について書きました。ご参考までにこちらでもご紹介します。
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3メガ損保グループの2020年度決算が出ましたので、投資家・アナリスト向けの説明資料から、生損クロスセルを主要なビジネスモデルとしている生命保険3社(あんしん生命、MSA生命、ひまわり生命)の現状を探ってみました。

企業価値に大きく貢献

損保決算と言えば、自然災害による影響や海外保険事業の拡大に注目が集まり、各社の経営陣も国内生保事業の現状をあまりアピールしていない印象があります(あくまで個人の印象です)。
1996年の設立から25年がたち、各社のEVはいずれも1兆円前後に達しました。EVというと皆さん電気自動車を思い起こすかもしれませんが、生命保険会社のEV(エンベディッド・バリュー)は企業価値を表す指標の一つです。各グループの時価総額が1.5~3.5兆円、中核損害保険会社(東京海上日動、三井住友海上、あいおいニッセイ同和、損保ジャパン)の純資産が1.5~3兆円(MS&ADは2社合算)であることを踏まえると、1兆円前後のEVは決して小さい数値ではありません。EVを見るかぎり、生保事業への進出は大成功だったと言えるでしょう。

クロスセル率はじわじわと上昇

各社は生損クロスセルを主要なビジネスモデルとしているとみられます。しかし、公表データが少ないため、損保代理店による生保販売が各社の成長にどの程度貢献しているのか、実のところよくわかりません。
参考として、SOMPOグループが公表したひまわり生命の新契約年換算保険料のチャネル別構成比(2019年度)によると、損保代理店が61%となっていました。ただし、保険ショップでの販売や経営者向け保険(生保プロが主な担い手)の動向などにより、構成比は年度によってかなり異なるのではないかと思います。

クロスセルの現状はどうなっているのでしょうか。MS&ADグループは生保併売率(MSA生命の保有契約者数および損保第三分野の長期契約を、中核損保2社の自動車・火災保険契約者数と対比)を公表し、2020年度には17.6%に達したとのことでした。東京海上グループは生損保一体型の「超保険」をクロスセル推進に活用しており、2020年度の生保・第三分野の付帯率は26.5%だったそうです。
釈迦に説法ではありますが、自動車保険や火災保険の既存顧客に新たな生命保険ニーズがあるとは限りませんし、ニーズ顕在型で毎年の契約更改がある損害保険と、ニーズを掘り起こす必要がある長期の生命保険とでは、マーケティング方法も異なります。生損クロスセルというビジネスモデルは世界的に見て、そう一般的なものではないのかもしれませんが、設立当初からウォッチしてきた目線からすると、一定の成果が出ていると評価すべきなのでしょう。

リスクベース経営

今回の決算発表では、3グループともに生保事業のリスクとリターンに関する説明が目立ちました。
東京海上グループとSOMPOグループは、いずれも主力商品のリスク・リターンのイメージを示しました。両社は保障性商品を中心とした商品戦略により高い収益性を確保していく方針です(あんしん生命は変額保険にも注力)。MSA生命は2020年度に金利リスクを削減し、経済価値ベースのソルベンシー規制やIFRS(国際会計基準)の導入を見据えた取り組みを実施しています。
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※週末に浜辺でビーチラグビーをやっていました。

 

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ガバナンス2題(備忘録)

保険毎日新聞の見出しを眺めていたら、「ムーディーズ 大手生保4社20年度業績でリポート、運用実績で収益性に差」とありました。気になったので記事を見たところ、「大手生保4社の基礎利益にばらつきが見られ、各社の運用実績の差を反映している」とありました。
保険毎日新聞が基礎利益の動向に着目し、該当する個所だけを引用したのかと思い、ムーディーズのサイト(PDF)を確認したところ、確かに公表されている文章にはほぼ基礎利益に関する記述しかなく、しかも要点の1つとして「生命保険会社の業績の差は、投資運用戦略の違いによって運用収益に大きな幅があったことを反映している」とありました。

2021年3月期決算における第一生命の順ざやの増加は、2022年3月期決算予想のなかで「投信関連の収入減少に伴う順ざやの減少」という説明があることなどから、投信の値上がり益が利息配当金等収入に計上されたためと考えられます(利息配当金等収入の増加が外国証券とその他の証券によるとも示されています)ので、たまたま配当収入として計上されたということであって、運用戦略を反映したと言うのはかなり無理があります。投資運用戦略の成果を見るのであれば、利息配当金等収入だけではなく、全体の時価利回りなどを見るべきではないでしょうか。
基礎利益や利差損益の増減を説明するのをおかしいというつもりはありませんし、まさか権威ある格付会社が利息配当金等収入で資産運用収益を評価しているとも思えません。しかし、公表文のなかで、単年度の利差損益の増減をもって「投資運用戦略の違い」と言ってしまうのは、社会的な影響を考えると、さすがにミスリードだと思いました。

ガバナンス2題

10日に公表された東芝の調査報告書(PDF)をご覧になったでしょうか。
大株主であるエフィッシモの調査要請が3月の臨時株主総会で可決され(会社は反対していた)、実現したものです。100ページ以上ある報告書ですが、報道などのとおり、いわゆる圧力問題などについて生々しい記述があり、日本企業のガバナンスに関心があるかたには一読をおすすめします。

翌11日には東京証券取引所が改訂コーポレートガバナンス・コードを、金融庁が投資家と企業の対話ガイドライン(改訂版)をそれぞれ公表しています。独立社外取締役の新たな選任基準や管理職の多様性、サステナビリティなどが示されていますが、東芝の報告書を読んだ後では、政府によるコーポレートガバナンス改革が岐路に立っているのではないかと考えざるを得ませんでした。

大学教員としては、ネタが増えてありがたいのですけどね。

※福岡大学にはA棟はあっても、B棟やC棟はありません^^

 

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選ばない消費者

キャピタスコンサルティングの保険チーム3人で執筆した『経済価値ベースの保険ERMの本質』の第2版が出ました。
初版の発行からまだ4年弱しかたっていませんが、経済価値ベースのソルベンシー規制導入を提言した金融庁有識者会議報告書の発表(2020年)を受け、新たな記述を加えることができました。ご覧いただければ幸いです。

さて、少し前の日経MJ(日経流通新聞)に「選ばない消費者」の話が出ていて、思わず目を留めました(5月12日付)。
今の若い世代は欲しい情報をネットで検索して収集するのではなく、アルゴリズムによって自らの嗜好に合った情報がSNSで提供されるので、検索しなくても自然と集まった情報のなかから欲しいものを購入する「選ばない消費者」となりつつあるそうです。

昔はテレビなどのマスメディアから受動的に情報を得ていた消費者が、ネットの出現により「比べて購入」が一般的になりました。保険の購入もそうですよね。かつては職場や家庭を訪れた保険募集人から話を聞き、おすすめプランを購入するだけだったものが、ネットの比較サイトなどで事前に調べてから保険募集人の話を聞く(あるいは事後的に調べる)のが当たり前となりました。

ところが時代が進み、私たちは日々スマホで膨大な情報に接するようになり、欲しい情報を探し当てるのが難しくなっています。どこかに情報はあるのだけど、見つけるにはそれなりに労力がかかりますし、疲れます。
そのようななかで、SNSはAIを使って利用者の好みを把握し、好みに合った情報を優先的に示しますので、利用者はいちいち検索しなくても欲しい情報が手に入る、すなわち、「選ばない消費者」が登場するというわけです。
偏った情報しか目に触れることがないというのは私にはかなり抵抗がありますが、SNSネイティブの世代にはむしろ心地よく感じるのかもしれません。

※近所のお店でマリトッツォを発見。思わず衝動買いしてしまいました。

 

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大手生保の決算報道

生保の決算も概ね出そろいましたね。
まだまだ数字を確認できていないのですが、決算報道があまりにさびしかったので、少しだけコメントします。

以前にも書いたとおり、大手メディアはここ数年、生保決算として「保険料収入」「基礎利益」を伝えてきました。今回も見事に踏襲されていて、次のような見出しが並んでいます(本文は有料が多いです)。

大手生保4社の決算 対面営業の自粛などで減収【NHK】
生保大手、7社が減収 コロナで営業自粛響く 3月期決算【朝日(有料版)】
生保大手4社 減収 3月期 対面営業自粛で【読売(有料版)】
大手生保、8社が減収=上期の営業活動自粛響く【時事】
生保、デジタル移行遅れ 対面営業の限界 鮮明【日経(有料版)】

いずれも「コロナで営業活動が制限された」「(基礎利益を報じたメディアは)保有契約があるので基礎利益は大きく減らないが、減益」と、総じてパッとしない内容だったと伝えています(日経は保険料収入ではなく新契約年換算保険料で業績を語り、資産運用面の好調さにも触れています)。

しかし、EVなど企業価値の手掛かりとなる指標を公表している会社の数値を見ると、ものすごく増えています。

 第一生命HDのEEV +13,492億円
 住友生命のEEV   + 9,050億円
 明治安田生命    +13,200億円
 (グループサープラスを開示)
 かんぽ生命のEEV + 7,019億円

そうした手掛かりのない日本生命にしても、連結決算の包括利益は2019年度の▲6,305億円から、2020年度は2.8兆円と、まさにV字回復です。
昨年度は株価が大きく上がり、超長期金利も上昇(豪ドルも対円で大きく上昇)、死亡率や発生率は改善と、大手生保の主なリスクテイクがほぼすべてプラスに働きました。

ソフトバンクグループの決算は「好決算」と伝えるのに、同じように企業価値を高めた大手生保の決算をパッとしないトーンで報じるのはおかしいと、多くのかたに気づいてほしいです。

ソフトバンクG 最終利益4兆9879億円 東証上場の日本企業で最高【NHK】

※赤いアジサイもきれいですね。

 

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3メガ損保グループの決算

生損保の2021年3月期決算が出そろいつつあります。
オンライン授業の対応などに追われ、ちらっとしか見ることができていないとはいえ、せっかくなので3メガ損保グループについて少しだけコメントしましょう。

コロナ関連の保険金支払いは海外事業が中心で、各社とも上振れはなかった模様です。三井住友海上が52億円、あいおいニッセイ同和が167億円となっていますが、海外受再などが中心のようです。
国内事業でのコロナ関連支払いは3グループともに少なく、むしろ自動車事故の減少で収支にはプラスに効いています。

「大手損保、3社中2社が増益」という型どおりの報道もあり(時事通信など)、確かに連結純利益はそうなっています
IR資料を見ると、東京海上はコロナの影響(海外)や異常危険準備金繰入などにより減益。MS&ADはコロナの影響(海外)等を国内生保の増益がカバーし、ほぼ横ばい。SOMPOもコロナの影響(海外)はあったものの、自動車事故の減少などにより16%の増益。そのような説明ができそうです。

しかし、今回見るべきはこちらの数字ではないでしょうか(記載がないかぎり2020年3月末との対比)。

<包括利益>
 東京海上    27億円 ⇒ 4,650億円
 MS&AD △1,572億円 ⇒ 7,539億円
 SOMPO  △778億円 ⇒ 5,124億円

<連結純資産(経済価値ベース)>
 東京海上 3.1兆円 ⇒ 3.6兆円 ※2020年9月末との対比
 MS&AD  4.4兆円 ⇒ 5.4兆円
 SOMPO  2.7兆円 ⇒ 3.4兆円

いずれも相当な改善でして、なかでもMS&ADは純資産が1兆円も増えました。株価上昇、金利上昇といった市場変動によるところが大きいとみられます。3メガ損保グループともに、いかに市場変動の影響を大きく受けるかがわかります。

※アジサイがもう咲き始めましたね。

 

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なぜ海外から観光客が殺到していたのか

最初にお知らせです。保険代理店の情報交流組織であるRINGの会(私は会のアドバイザーを務めています)が、2年ぶりにオープンセミナーを開催します。
7月3日(土)午後のライブ配信方式で、メインテーマは「実践DX」。デジタル化を実践する保険代理店が登場します。参加費は3,830円です。
保険流通の最新動向に触れたいかたは、ぜひお見逃しなく。申し込みはこちらです。

さて、今回はインシュアランス生保版(2021年5月号第2集)に執筆したコラムをご紹介します(見出しはブログのオリジナルです)。
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世界が「安いニッポン」を発見

新型コロナ感染症で厳しい入国制限が敷かれ、日本を訪れる海外からの観光客が消えた。観光関連業をはじめ、インバウンド需要の恩恵を受けていた業種や地域は、深刻な打撃を受けている。
ここで改めて考えてみたいのは、そもそもなぜ日本を訪れる海外からの観光客が急増していたのかである。ビザの免除・発給要件緩和や海外プロモーションなど、政府による観光立国推進の効果もあったと考えられるが、何より「安いニッポン」が発見され、観光客を引き寄せたことが大きい。日本で生活しているとピンとこないが、欧米ばかりでなく、アジアを含めた海外から見ると、日本の商品・サービスは質の割に安いのである。

100円均一は日本だけ

最近読んだ「安いニッポン『価格』が示す停滞」(2021年3月刊行、日経BP・日本経済新聞出版本部)は、日本経済新聞の連載記事「安いニッポン」をベースに、担当記者の1人だった中藤玲さんが新たな取材を加えて書き下ろしたもの。日本経済の長期停滞を理解するのに格好の書籍である。
失われた20年、いや30年と言われても、(非正規雇用は増えたが)町に失業者があふれていたり、多くの人が極端に貧しくなったりしたわけではなく、読者の皆さんも、厳しいながらも安定した生活を送っているかたが多数ではないだろうか。そのような私たちにとって不都合な真実、すなわち、世界の成長に取り残されてしまった日本の姿を本書は見事に示している。
日本に住む私たちからすると高価なレジャーである東京ディズニーランドは世界で最も安いディズニーランドだというし、ダイソーの商品が100円均一なのも日本だけとのこと(海外はもっと高い)。かつてと違い、このところ海外のどこに行き、何を買っても安いと感じることがなくなっていたが、100円ショップまでもが世界最安値水準とは知らなかった。

安いニッポンは暮らしを豊かにしない

安いニッポンが私たちの暮らしを豊かにしてくれるのであればいい。ところが日本の実質賃金はこの20年間増えていない。賃金が増えないから消費も盛り上がらず、企業は前向きな投資よりもコスト抑制を選び、結果として消費者の低価格志向が続く。この悪循環は日銀の異次元緩和でも変わらず、財政規律の緩みと異常な株式保有構造だけが残った。今後は人手不足を海外から補おうとしても、優秀な人材はだんだん日本の賃金では来てくれなくなるだろう。私たちが強みと考えてきた日本の高品質も、このままでは維持できなくなるかもしれない。
大震災の発生や感染症の拡大、あるいは金融危機のような突発的な事象に対しては、事態の深刻さを共有しやすく、対応方針も定まりやすい。これに対し、真綿で首を絞められるような変化には、そもそも事態を把握するのが難しく、コンセンサスを得にくいが、事態は一段と深刻になっているようだ。
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損保の専業代理店

今週のInswatch Vol.1084(2021.5.10)では損保の専業代理店チャネルについて寄稿しました。ご参考までにこちらでもご紹介します。
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依然として事業規模は小さい

前回、生保の営業職員チャネルを取り上げたのに続き、今回は損保の専業代理店のデータを確認してみましょう。
今から20年前、2001年に発刊した拙著『損保が変わる-問われる信用力』のなかに、「(代理店数全体に占める構成比で)15%の専業代理店が(扱い保険料全体の)34%の保険料を扱う一方、2割弱の特級や上級代理店が8割以上の保険料を稼いでいる」という記述があります。副業代理店にはあまり保険料を稼がない代理店が非常に多い一方で、専業・副業あわせた少数の代理店が大半の保険料を稼いでいて、専業代理店(当時は7万店)の多くは事業規模が極めて小さいことを示しました。

20年後の現在はどうなっているのでしょうか。
日本損害保険協会の統計(2019年度末時点)によると、18%の専業代理店の扱い保険料は全体の約4割で、当時とあまり変わっていません。ただし、統廃合などにより専業代理店の数は約3万店に減り、1店あたり扱い保険料は年間約8千万円と、当時の3、4千万円程度(旧大蔵省の資料から推定)に比べると事業規模はだいぶ大きくなりました。

もっとも、扱い保険料が年間8千万円ということは、仮に代理店手数料を2割とすると、手数料収入は1600万円にすぎず、ここから人件費や物件費が出ていきます。専業代理店の多くは生命保険の販売も行っているので生保の手数料収入もあるでしょう。しかし、他方で保険ショップや直資型をはじめ、少数ながら事業規模の大きい専業代理店も存在します。
2001年に業界共通の代理店制度が廃止となって以降、「特級」「上級」といった代理店の属性を示すデータが公表されなくなったものの、大型化が進んだとはいえ、総じて専業代理店の事業規模は依然として非常に小さいことがうかがえます。

3者間スキームの影響も

ところで、損保協会の統計を時系列で追うと、2014年度末をピークに専業代理店の数が減り、1店あたりの扱い保険料が急速に増えていることがわかります。これは専業代理店の再編が加速しているというのではなく、委託型保険募集人制度の廃止が影響しているとみています。
金融庁が保険会社に対し、委託型募集人の是正を求めたのが2014年です。委託型募集人には委託元の代理店の役員や従業員となる、あるいは、3者間スキームを活用して代理店になるといった選択肢がありましたが、数字を見るかぎり、いったんは代理店に転換した募集人が目立ったようです(専業代理店の募集従事者数はむしろ減っています)。
しかし、その後の推移を見ると、代理店に転換しても長続きはせず、多くは統廃合の道をたどったものと考えられます。

最後にお知らせ

先月末のプロフェッショナルレポートで、拙著『利用者と提供者の視点で学ぶ 保険の教科書』の業界人にとっての読みどころをご紹介しました。ところが、連休中にアマゾンや楽天のサイトでの定価購入が難しくなっていて、皆さまにご迷惑をおかけしたようです(数人のかたからご連絡をいただきました)。
有力サイトでの在庫管理はサイト自身に委ねられているとのことなので、今後も在庫切れでご不便をおかけすることがあるかもしれません。版元の中央経済社のサイトでは購入できます(送料が必要です)ので、あわせてご検討いただければ幸いです。
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※写真は大学内の英国庭園です。学生の姿はありません。

 

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植物博士・牧野富太郎

日本の植物分類学の父と言われる牧野富太郎の生涯に触れる機会がありました。

牧野先生は幕末に高知県佐川町に生まれ、94歳で亡くなるまで生涯を植物の研究に捧げた人物です。東京大学に47年間勤め、理学博士の学位も受けているので、典型的な学者人生を送ったかただと思っていましたが、全くちがいました。
牧野先生は小学校中退という学歴で、本格的に植物の研究を始めた20代には、東大の植物学教室に「出入りを許されていた」という状態。豪商だった実家の支援で研究活動を行っていて、その負担から実家は没落してしまったとか。

その後、31歳で東大助手の職を得ます。でも、それだけでは家族の生活費にも足りず、借金まみれの暮らしぶりとなります(牧野先生にはコストを抑えようという発想がなかったみたいです)。
後年、発見した新種の笹に妻の名をとって「スエコザサ」と名付けていますが、壽衛子夫人の支えがなければ生活は不可能でした。牧野先生は随筆のなかで、「壽衛子は平常、私のことを ”まるで道楽息子を一人抱えているようだ” とよく冗談に言っていましたが、それはほんとうに内心そう思っていたのでしょう」と書いています(平凡社「牧野富太郎 植物博士の人生図鑑」より引用)。夫人の稼ぎを研究費に充てることもあったようです。

さらに、50代になって困窮が極まり、採集した植物標本などを海外の研究所に売ろうとしたこともありました。しかし、それを新聞報道で知った篤志家の支援によって危機を脱します。まるでドラマです。

東京大学での研究活動も常に順調だったわけではなく、植物学教室から突然出入りを禁止されたり、助手や講師になってからも何度か追放されそうになりました。
例えば48歳の時、助手でありながら研究の結果を次々に発表するので、権威や秩序を重んずる東大教授とぶつかり、休職となってしまいます。その後、牧野罷免反対の声が上がり、50歳で講師となりました。それだけ牧野博士が研究者として自由かつ有能だったのだと思いますが、その後も講師のまま77歳で辞職しました。

出身地の佐川町には「『朝ドラに牧野富太郎を』の会」があり、署名活動を行っています。エピソードには事欠かないので、描き方によっては面白いドラマになりそうですね。

 

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企業はリスクを極力避けるべきか

突然ですが質問です。
「大企業は社会的な役割が大きいので、リスクは極力回避すべき」というのは正しいでしょうか?

特に社会人であれば、リスクをとらなければリターンを得られないことをご存じなので、「社会的役割が大きい」という言葉に惑わされず、多くのかたに「正しくない」と答えていただけるように思います(あくまで自分の経験からですが)。

ところが、「リスクにはリターンを得るためにとるリスクと、事業に付随して生じるリスクの2種類がある」と説明したうえで、

「大企業は社会的な役割が大きいので、リターンの源泉となるリスクだけを抱え、事業に付随して生じるリスクは極力回避すべきである」というのは正しいでしょうか?

こう質問すると、結構な割合で「正しい」と答えるかたが出てくるようです。
「社会的な役割が大きい」という文言に引きずられるためか、損失しか発生しないリスクはできるだけ避けたほうがいいと考えてしまうようです。

リスクコントロールによってリスクを軽減するにしても、保険などのリスクファイナンスよってリスクを移転するにしても、対応にはコストがかかります。企業はリスクを避けるためにコストをいくらでもかけることができるかといえば、決してそのようなことはありません。
事業に付随して生じるリスクについても、その効用がコストを上回らなければ企業価値を損ねてしまうので、極力回避するというのは正しくありません。

こう書くと、当り前じゃないかと言われそうです。ただ、学生だけでなく、事業会社のかたと話をするとゼロトレランス、つまり、損失発生を一切許容しないという思想を強く感じることがあるのですね。これだと「リスクは極力回避すべき」となってしまいがちです。結果的にはコスト見合いで対応策がとられているにもかかわらず。

経営陣が「不祥事は絶対に起こしてはならない」「サービス提供を一瞬なりとも中断してはならない」という考えのもとで事業を行うのは理解できます。しかし、現実には不祥事やサービス中断の可能性をゼロにすることはできませんし、コストをかけるにしても限度がありますので、ゼロトレランスという考えはむしろ経営を思考停止に陥らせてしまいかねません。

それよりも、経営としてそのリスクにどの程度対応していると考えているかを明らかにしておく(=リスクアペタイトを明確にしておく)ことが大切ではないでしょうか。経営として重要なリスクに関しては、リターンの源泉となるリスクだけでなく、損失しか発生しないリスクについても、リスクのとりかたを明確にしておくべきだと思います。

※大型書店の店頭には並んでいるのに、なぜかここ数日、アマゾンや楽天では買えない状態が続いているようです(3日現在)。お求めのかたは大型書店のほか、例えば版元の中央経済社のサイトなどをあたっていただければ幸いです。

 

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