ネット損保 淘汰の波

3月20日の日経新聞にコメントが載りました。
「ネット損保 淘汰の波」「解禁20年 シェア1割届かず」という記事のなかで、ダイレクト自動車保険市場が伸び悩んだ背景について、

「価格競争に陥ることなくサービス競争を展開した大手損保の戦略が奏功した」

とコメントしています。
日経記事のサイトへ(有料版)

実は半年前の産経新聞の記事に載った私のコメントは、

「(今後の市場動向について)ゆるやかに増加する傾向は今後も続くだろう。ただ、インシュアテックの技術が進めば、ビッグデータなどを活用し、個人に合わせた個別性の高いサービスや保険が生まれることも考えられる」

「(インシュアテックの進展とともに)通販型保険の市場は今後、大化けする可能性がある」

というものでした。

どちらも取材では同じような話をしているのですが、20年もたったのに未だシェアが1割弱というところに注目すると今回のような記事になり、技術革新や技術革新に伴う社会の変化が従来の保険ビジネスを大きく変える可能性があると考えれば、産経記事のような話になるのでしょう。

※築地には戦前の町家建築が残っています。下の写真は築地本願寺です。

 

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公文書の書き換え

国立国会図書館では「調査と情報-Issue Brief-」という、時々の国政上の課題に関する簡潔な解説レポートを出しています。
2月27日号はタイムリーなことに「行政機関における文書管理-国の説明責務に係る論点と改善方策-」で、行政の文書管理制度がどのように変遷してきたかをわかりやすくまとめていました。

本稿によると、日本で国民共有の知的資源としての公文書管理制度が確立したのはつい最近のことだとわかります。久しく行政運営の能率化という内部目的のために行われてきた公文書管理に、情報公開制度の整備が進むなかで、ようやく2011年に「公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)」が施行され、「国の活動を現在および将来の国民に説明する責務を全うすること」という目的が加わりました。

しかも、2016年に総務省が実施した「公文書管理に関する行政評価・監視結果報告書」では、公文書管理法の趣旨および公文書管理法に基づくルールについて、文書管理者を含む職員に十分徹底されていない状況にあるという指摘がなされているとわかりました。
本稿ではこうした状況を踏まえ、行政機関内部による改善と、外部の関与による改善を示しています。

今回の件で、公文書(決裁文書)の書き換えが起こりうるとわかってしまった以上、政府はかなりの取り組みをしなければ国民の信頼回復はできません。また、国民も忘れずに追求し続ける必要があります。

記録を残すことも促してほしい

おそらく今後、原因究明を進めるとともに、再発防止策が検討されるでしょう。その際、書き換えが起こらない仕組みを作るだけではなく、ぜひ文書主義の原則を徹底し、個人メモではなく行政文書として記録を残すことを促すような仕組みも作ってほしいと思います。

行政のみならず、日本では文書として記録を残す、あるいは、業務などを文書化するという習慣や文化が総じて薄く、議事録が残らないところで実質的な経営判断が行われていたり、担当者が変わると業務のやり方が大きく変わってしまったりしがちです。
しかし、家業であればまだしも、政府や大会社といった組織において、納税者や株主、債権者、従業員といったステークホルダーから透明性を求められるのは当然の話であって、「内輪の話は外に出さない」では済みません。

そもそも記録に残すのは意思決定を明快に行うためでもありますし、後世の歴史家だけでなく、今の自分たちに役立つ話でもあります。
なぜ記録を残すのか

決裁文書の書き換え発覚という前代未聞の事件を受けて、行政がかえって記録を残さなくなり、透明性が後退してしまうのであれば、文書管理制度を整備してきたこれまでの取り組みが無駄になりかねません。
表面的な書き換えや紛失の防止だけでなく、ぜひ「記録を残す」ことにも配慮した改革に期待したいです。

※小田急の複々線化がついに完成しましたね。いつか赤いロマンスカー(GSE)にも乗ってみたいです。

 

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自由化後の自動車保険

直近の「損害保険研究」(第79巻第4号)に「損害保険自由化20年目の検証」という、自由化後の自動車保険の推移に関する論文があり、興味深く拝読しました。筆者は元損害保険料率算出機構職員の大島道雄さんです。

自由化で保険料は下がらなかった

本稿で大島さんは、各種統計資料データから自由化後の自動車保険の推移を調査した結果、期待された事業費率の低下や保険料単価の低廉化は認められず、両者はむしろ上昇傾向にあることを指摘しています。

大島さんによる主な考察結果は次のとおりです。

<事業費率>
・自動車保険の事業費率は算定会料率時に比べ一時的であっても低下することはなく、2005年以降は逆に上昇している(損害調査費率の上昇が主因)。
・損保事業全体の事業費率の低下は、もっぱら保険会社の人件費削減によって賄われ、代理店手数料費率の低下には及んでいない。

<損害率>
・自動車保険の特約部分はどの年次においても極めて高い損害率を示し、全体の損害率の悪化を招いている。

<保険料単価>
・自由化以降、保険料単価を切り下げる競争が展開されたが、下押し効果は全体で見れば数%と推定される。
・他方、特約が多数販売され、自由化による保険料低減額以上の収入が得られている。
・年齢構成や車齢の伸びなど、自由化とは関係なく参考純率を押し下げる要因も長期にわたり認められる。

とりわけ、「インシュアランス統計号(=特約を含む保険料・保険金)」と「損害保険料率算出機構統計集(=参考純率に対応する保険料・保険金)」の差に着目することで、特約部分の単価や収支を分析しているのが素晴らしいと思います。

ダイレクト自動車保険の普及ペースが緩やかだったこともあり、単純な料率競争による収支悪化よりも、むしろ特約競争による収支悪化を招いたというのは、私の認識とも同じです。
しかし、特約競争による収支悪化も、本来必要な保険料をとれていなかったという意味では実質的に料率競争と同じですし、(大型再編もあって)人件費や物件費を引き下げたからこそ、この程度の料率引き上げで済んでいる可能性もあるので、保険料単価が自由化直後と同じ水準に戻ってしまっても、自由化の効果が全くなかったということではないかもしれません。

ただし、ここ数年にかぎれば、事故あり等級の導入によって、かつての自動車保険とは違い、実質的に少額損害をカバーしない保険に変わっています。自由化後の市場で担保範囲の半強制的な縮減が起きたことをどう捉えるか、という議論はありそうです。

企業代理店の存在

ところで、本稿では日本の損害保険販売網についても分析し、「根幹をなす大規模乗合代理店をはじめとする大規模代理店の存在が、代理店手数料費率の低下の阻害要因となったと考えられる」としています。数では全体の1/4弱にすぎない乗合代理店が、扱い保険料で70%を占めていることから、主に企業代理店(いわゆる機関代理店)であるとしているのですが、ここはちょっと違和感を感じました。

例えば、販売チャネル別営業成績を開示している損保ジャパン日本興亜(決算データ集を参照)では、企業代理店の収入保険料は全体の19%、自動車保険だけだと13%にすぎず、他方で専業プロが29%、自動車保険だけでは39%を占めています。市場全体でも「根幹をなす」と言うほど機関代理店の存在は大きくないかもしれません。

自動車保険では企業代理店よりもディーラー代理店が気になるところですが、何かを語れるほど公表データがないのが残念です。

※写真は井の頭公園です。池の水を戻しているところでした。

 

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金融機関窓販マーケット

日本生命によるマスミューチュアル生命の買収が発表されました(3月2日)。
三井生命を含む3社により、「金融機関窓販マーケットにおけるお客様からのご要望に幅広くお応えする体制構築を目指してまいります」ということで、日本生命はマスミューチュアル生命の富裕層向け商品供給力や証券会社・メガバンク等へのサポート体制を評価した模様です。
日本生命のサイトへ

現在の主力は外貨建て

その金融機関窓販マーケットでは、2007年12月の全面解禁から10年(銀行の場合)たったとはいえ、依然として販売の中心は一時払の貯蓄性商品となっています。
中核となる商品は、2008年のリーマンショックころまでは最低保証のある変額年金、その後は円建ての定額商品に移行しました。さらに、2012年あたりからは外貨建て商品の販売が目立つようになり、最近では、マイナス金利政策などによる円建て商品の退潮を受け、外貨建て商品が窓販マーケットの主力を占めています。

顧客の中心が預金を持つ高齢の「資産活用層」だとすると、ニーズが変わったというよりは、保険会社がその環境で供給できて、かつ、やはり金融機関が販売しやすいものが提供されているのでしょうか。
(資産活用層ではなく)資産形成層向けの商品に急に切り替えるのは無理だとしても、アベノミクス以降、ある程度株価に連動するような商品がもう少し売れてもよさそうなものですが、外貨なのですね。

2強の強みは何か

この市場は金融機関という第三者の有力チャネルが販売を担うことから、保険会社が市場シェアを確保し続けるのが難しいマーケットでもあります。実際、過去にはトップシェアの会社が毎年変わるようなこともありました。
しかし、ここ数年は「第一フロンティア生命」「三井住友海上プライマリー生命」が2強として、高いシェアを継続的に確保しているようです。

いずれも国内系なので、外貨の運用能力を販売会社向けにアピールするというのは無理がありそうですし、それぞれ「第一生命」「三井住友」の存在があるとはいえ、市場全体で2、3割のシェアを確保し続けるには、特定の親密先だけでは難しいでしょう。
ただ、両社は金融機関窓販に特化した保険会社という点で共通しており、商品開発力の早さとか、意思決定のスピードとかいった、専門会社であることのメリットを最大限活用できているのかもしれません。

会見によると、日本生命はグループ3社を無理に統合せず、それぞれの強みを生かしていくとのことで、その点は理解できますが、マスミューチュアル生命がいろいろな意味でユニークな会社ということもあり、せっかくの買い物をどう生かしていくか、今後の取り組みに注目です。

※築地市場で古い線路を再利用した柵がいくつもあるのを見つけました。当時の貨物線で使っていたものでしょうか?

 

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「絶滅の人類史」

絶滅した旧人類ネアンデルタール人が洞窟の壁画を描いていたというニュースがありました。
これまで洞窟壁画はすべて現生人類(ホモ・サピエンス)が描いたと考えられていたので、新しい発見です。

新たな発見により歴史が見直されるというのはよくある話ですが、とりわけ人類史は私が学生時代に学んだものから大幅に塗り替わっていることが、更科功「絶滅の人類史」(NHK出版新書)を読んでわかりました。
かつて猿人として習ったアウストラロピテクス(約420万年前に登場)のはるか前、約700万年前に(今のところ)最古の化石人類が登場し、これまでに25種くらいの化石人類が見つかっているのだそうです。いま生きているのは現生人類だけなので、他の種はみんな絶滅してしまったということになります。

旧人と新人は並存していた

話題のネアンデルタール人は現生人類が登場する前の「旧人」として習いました。ところが、彼らが生きていた時代は約30万年前から約4万年前までで、現生人類の起源も、本書によると約30万年前までさかのぼれるそうです。
つまり、ネアンデルタール人が絶滅するまでは、地球には少なくとも2種類の人類が並存していたということになります。

ネアンデルタール人の脳はなんと現生人類よりも大きく、発掘調査などにより、抽象的な概念を頭のなかで考えること、すなわち象徴化ができたとみられています。ニュースになった「壁画を描く」という行為はまさに象徴化ですし、本書では「貝殻のネックレス(と考えられているもの)」を紹介しています。
しかも、骨のかたちや使っていた道具などから推測すると、ネアンデルタール人はある程度の言葉を話していたと考えられているそうです。

なぜ私たちだけが生き残ったのか

ただし、結果として生き残ったのは私たち現生人類だけです。私たちよりも脳が平均的に大きく、身体的能力も優れていたネアンデルタール人がなぜ滅んでしまったのか。
そもそもの話として、暮らしやすい森林を出て(追い出されて)、外敵に見つかりやすい直立二足歩行をしていた人類が、なぜその後も生き残ることができたのかという疑問に対しても、本書では解説しています。

進化の不思議さを垣間見ることができる面白い本でした。

※写真は大倉山シリーズ第3弾。東横線開通90周年(渋谷-横浜が開通したのが1928年)を記念して、昔の塗装の電車が走っています。下の案内図はそのころ(昭和初期)のものだそうです。

 

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ジャストインケースの挑戦

インシュアランス生保版(2018年2月号第4週)に寄稿したコラムをご紹介します。
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保険とテクノロジーの融合である「インシュアテック」という言葉は、日本の保険業界でも広く知られるようになった。
ところが、日本のインシュアテックは海外より数年遅れているという識者の声をしばしば耳にする。確かに「A社が健康増進活動の成果を保険料等に反映する新しい商品を開発」「大手損保グループB社が米シリコンバレーに拠点を置き、インシュアテックを推進」など、大手保険グループによる取り組みが活発化する一方、「トロブ」「レモネード」といったスタートアップ企業が次々に台頭する海外に比べると、既存の保険ビジネスに破壊的創造をもたらす存在となるスタートアップの動きは目立たない。

そのようななかで、少額短期保険の枠組みを活用したインシュアテックサービスの提供を目指すスタートアップ企業が現れた。
ジャストインケース(justInCase)社はアクチュアリーやデータサイエンティストなど専門技術を持つメンバーが立ち上げた会社で、ウェブサイトをのぞくと、「アプリで必要な補償を必要なときに気軽に選べる世界の実現を目指します」「よりオープンな新しい保険の仕組みのもとに、気軽に安心を得られる未来を作ります」などとある。

第1弾の「スマホ保険」はスマートフォンの画面割れ・水没・破損等の修理費用を補償するもの。AIを活用して事務処理を自動化するほか、スマホ利用の安全度合いをAIが判定して更新時の保険料に反映したり、友達プール機能により不正請求を防いだりと、詳細は不明だが、随所に最新技術を取り入れ保険料の最適化を実現するそうだ(2月1日現在、少額短期保険業者の登録準備中)。
スマホ修理費用の補償としては、アップルケアや携帯会社が提供するサービスのほか、「モバイル保険」を販売する少額短期保険会社が登場しているとはいえ、大手が参入していないニッチ分野と言える。

保険としてだけとらえると、果たして数万円単位の損失に毎月保険料を支払って備える必要性があるのかという見方もできる。しかし、インシュアテックによってスマホユーザーに新たな価値を提供できるかもしれないし、そもそも同社がスマホ保険の専門会社としての成長を目指しているとは考えにくく、ニッチ分野で培った経験をもとに、ニッチではない分野への進出を図っていくのだろう。

同社が少額短期保険の枠組みを活用するというのも興味深い。少額短期保険制度はもともと根拠法のない共済の受け皿として創設されたという経緯があり、通常の保険会社に比べると設立のハードルは低い。既存の生損保が手掛けてこなかったユニークな商品提供のほか、顧客基盤を持つ異業種からの新規参入も目立っていたが、同社のように新しいビジネスモデルのいわば実験場として少額短期保険を活用するというのは、うまくすると日本のインシュアテックの一つのモデルケースとなるかもしれない。
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※写真は大倉山記念館です。内部はこんな感じ。ロケ地としても時々使われているみたいです。

 

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金利敏感株に明暗

16日の日経・マーケット総合面に「金利敏感株に明暗」という見出しの記事があり、「保険上昇/電力・不動産は軟調」という株式市場の動きを伝えていました。
ただし、「米金利の上昇を受けて保険株が上昇」「生損保はともに外国債券の保有額が多く、海外の金利が上昇すれば中長期的に運用益が増加する」という説明は、さすがに無理があるように思います。

米金利上昇と生保経営

ちょうど14日から15日にかけて主要生保の4-12月期決算が公表されましたので、こちらのデータも参考にしながら確認してみましょう。
生保のバランスシートで米金利上昇の影響を直接受けるのは、保有している米国の公社債と、グループで展開する米国の保険事業です。このうち後者の保険事業については、一般的に米国生保では以前からマッチング型のALMが浸透しているため、金利変動の影響をそれほど受けないと考えられます。

問題は前者の公社債です。最近でこそ外貨建ての商品提供が目立つようになってきたとはいえ、保険負債の大半は円建て、かつ、固定金利の長期保証ですので、生保の外債運用は負債とのマッチング目的ではなく、純粋に資産運用でリターンを目指す取り組みです。

生保の外債投資は増加基調

2017年9月末と12月末を比べると、一部の会社を除き、外貨建資産の増加基調が続いており、いまや一般勘定資産の2~3割が外貨建資産という状況です。
このうち、ヘッジ外債(為替ヘッジを行っている公社債)については米金利上昇の影響を受けにくいことも考えられますが、少なくとも為替ヘッジのない米国公社債は金利上昇によって価格が下落し、中長期的に運用益が増加するとか言う前に、今の時点でやられているはずですね。

保険株(特に生保)が金利敏感株であるという見方に異論はありません。米欧の中央銀行に続き、日銀も金融緩和の出口に向かい、金利の上昇基調が見込まれるようになれば、生保経営にとってプラスに働きます。
ですが、同じ金利上昇でも、円建ての保険負債を大量に抱える日本での金利上昇と、資産運用でリターンを目指す米国での金利上昇では、日本の生保経営に対する影響は正反対と捉えたほうがよさそうです。

※この週末(17~18日)は横浜・大倉山の梅まつりでした。

 

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損害保険統計号から(inswatchに掲載)

直近のinswatch Vol.915(2018.2.12)に執筆した記事のご紹介です。
他の記事では、小林俊幸さん(イーアライアンス/イーブレイン)の「ライフプランって良い結果ばかりじゃないでしょ!?」が印象に残りました。

損害保険統計号から

最新版の「インシュアランス損害保険統計号」(保険研究所)が手元に届きました。昨年度のデータなので、もう少し早く刊行されるとありがたいのですが、業界分析にあたり、個社の財務データを横比較で把握できるなど、生命保険統計号とともに重宝しています。
今回はこの統計号を使い、日本の損保業界の姿を探ってみましょう。

3メガ損保の高シェアは不動

直近の統計号には元受会社として28社が掲載されていました。非掲載のチューリッヒを含め、改めて市場シェアを確認すると、3メガ損保グループに所属する会社が元受保険料の85%前後を押さえているとわかりました。これは10年前とほぼ変わらない水準です。
これに対し、外資系の元受シェアは1割弱で、10年前に比べるとやや下がり気味です。ダイレクト保険のシェアが年々高まっているとはいえ、今やダイレクト保険9社(セゾンを含めると10社)のうち、外資系は3社のみ。この分野でも3メガ損保グループが目立ちます。

自動車保険に限ると、昨年度は2ケタ成長を果たした会社が4社ありました(朝日火災、セゾン、SBI、イーデザイン)。
このうちSBIとイーデザインはダイレクト自動車保険の新興勢力、セゾンは数年前からSOMPOグループの通販会社として、やはりダイレクト自動車保険で業績を伸ばしています。
もう1社の朝日火災は近年、長期分割払い契約が可能な自動車保険を、比較推奨型代理店などに向けて投入し、急成長しています。

代理店手数料率は強含み

次に、事業費内訳表に「代理店手数料等」という項目がありますので、こちらを確認してみましょう。

決算発表で公表される「諸手数料及び集金費」には出再または受再に係る手数料が含まれています。このため、出再の多い会社では事業費が小さくなる傾向があります(出再手数料は出再先から受け取るものなので)。
例えば、昨年度のAIU(現AIG)の諸手数料及び集金費は207億円のマイナスでした。当然ながら同社の代理店手数料がマイナスということはありません。AIUは元受保険料の7割以上を出再していたため、受け取る手数料が752億円に上り、事業費を吸収していました(ただし、出再により正味の付加保険料も小さくなります)。

元受保険料に対する代理店手数料(直販社員の募集費を含む)の割合は、大手の場合、16~17%となっています。10年前と比べると、おそらく代理店の皆さんの実感とは異なり、むしろやや高まっているようです。手数料率の低い代理店が減ったことが一因と考えられます。

負の遺産も存在

1年契約が中心とはいえ、損保会社の負債の多くは責任準備金です。このうち、実質的には支払余力として考慮すべき異常危険準備金を除いた「普通責任準備金」のなかには、未経過保険料のほか、会社によっては今でも生保のような長期の円金利負債(払戻積立金)を抱えています。

元受28社のうち、昨年度末時点で普通責任準備金に占める払戻積立金のウエートが4割以上の会社は、東京海上日動(43%)、損保ジャパン日本興亜(42%)、三井住友海上(46%)、共栄火災(45%)、朝日火災(79%)の5社でした。
大手3社の払戻積立金の大半は、1990年代前半に販売した年金払積立傷害保険と考えられます。高金利時代に提供したものなので予定利率(保証利率)が高く、大手損保のいわば負の遺産となっています(加入者にとってはお宝契約ですね)。
中堅2社については、それぞれのビジネスモデルと関係がありそうです。

なお、長期契約といえば、2015年上半期に駆け込み販売があった長期火災保険を思い起こします。前年の統計号をざっと見たところ、責任準備金が増えたとはいえ、貯蓄性の強い商品ではないため、規模としては限られているようです。
ただし、最長36年契約でしたので、提供した損保会社は数十年先までの自然災害リスクを抱えていることになります。仮に風水災害のリスクが高まっていった場合には、どこかの時点で負債を再評価(=損失を計上)しなければなりません。
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inswatchは保険流通業界向けのメールマガジンです。
私は2か月に1度のペースで寄稿しています。

※沖縄に「赤道」という地名があるのですね(「あかみち」です)。下の写真も沖縄ならでは。

 

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損害保険統計号から(inswatch原稿のおまけ)

今週のinswatchに「損害保険統計号から」という記事を寄稿しました。後日こちらでも紹介したいと思いますが、ボリュームの関係で書かなかったことを、私の備忘録を兼ねて残しておきましょう。

ダイレクト自動車保険

inswatchでは3メガ損保や外資系損保の市場シェアを改めて確認しました。
加えてダイレクト系の元受シェアも見たところ、29社ベースの全種目合計(地震・自賠を除く)では5.6%、自動車保険では7.7%となっていました(2016年度)。昨年10月の産経新聞に出ていた「自動車保険全体の8%程度」を検証できました。

この「7.7%」という数字をどう見るかです。
ダイレクト自動車保険は20年前の1997年にはじまり、10年前の2007年度の元受シェアは4%弱でしたので、徐々にシェアを確保してきているといったところでしょうか。ただし、自動車保険には企業向けも含まれることから、個人向けにかぎればちょうど1割くらいを占めるようになったと考えられます。
都市と地方、あるいは世代によっても、ダイレクト自動車保険の普及度合いは違うのでしょう。

日本の消費者は価格差があっても簡単には動かなかったとはいえ、今後もダイレクト保険のシェアは高まっていくのではないでしょうか。
ネット通販のさらなる普及のほか、事故が起きにくくなると、今の付加保険料の水準を維持するのは徐々に難しくなるでしょうから、代理店が主力に据える商品ではなくなっていくのかもしれません。

元受と正味の違い

また、元受正味保険料と正味収入保険料を比べてみて、格付会社から金融庁に移った時のことを思い出しました。
格付会社で担当していた損保会社は大手から中堅規模ののフルライン会社ばかりで、元受保険料と正味保険料の差がそれほどありませんでした。しかし、金融庁がモニタリングの対象としているのは損害保険会社免許を持つすべての会社なので、50社以上にもなります。
こちらをご覧いただくと、特定分野に特化した会社がたくさんあることがわかります。

加えて、再保険政策も会社によって大きく異なります。特に外資系の場合、元受のかなりの部分を出再するケースが目立ちます。
2016年度データを確認すると、例えばこの1月に富士火災と合併したAIU保険は、元受正味保険料が2511億円、正味収入保険料が648億円ということで、元受保険料の7割以上を出再しています。

アリアンツ火災はもう少し複雑で、元受正味保険料71億円と受再正味保険料75億円の大半を出再しているため、正味収入保険料はわずか1億円です。
元受保険料のほとんどを出再してしまうということは、日本の拠点は実質的に引受リスクを負わないということになります。出再先が海外であれば日本の保険行政の力が及ばない(及びにくい)ので、一般的にはモニタリングが難しいと思われます(もちろんアリアンツに何か問題があるという意味ではありません)。

いずれにしても、生保会社を含め、外資系保険会社では再保険が多用される傾向があり、分析には注意が必要ですね。

※写真は六本木です。光の色が突然白から赤に変わり、びっくりしました。

 

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ヘルスケア会社の立ち上げ

月末から月初にかけてサーバーの不具合があり、このブログにアクセスできない状態となっていたようです。ご迷惑をおかけしました。

さて、楽天による朝日火災の買収や、米GEの保険事業による多額損失の発生、三井住友銀行による外貨建てトンチン年金の販売など、このところ興味深い保険関連ニュースが相次いでいます。
私が関心を持ったのは、アマゾンなど3社が社員とその家族向けに米国でヘルスケア会社を立ち上げるというニュースです。

ネットの巨人アマゾン、バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイ、そして大手金融グループのJPモルガンという、いずれも米国を代表するような3社が立ち上げる新会社は、米国内の従業員とその家族向けに、シンプルで高品質、かつ、透明性の高いヘルスケアを合理的な価格で提供することを目指すとのことです。

まだ計画の初期段階とのことで、具体的な事業内容は公表されていません。しかし、この顔ぶれ(特にアマゾン)ですから、AIの活用をはじめ、新しいことを手掛けてくるのでしょう。
事業が軌道に乗れば、3社内だけの話でなく、事業の広がりも考えているのかもしれません。

ただし、米国でヘルスケア事業というと、民間の保険会社が大きな存在感を持っていることを踏まえておく必要があります。
というのも、以前のブログでご紹介したように、米国の健康保険は主に民間が担っているからです。国民皆保険を目指したオバマケアも、民間保険会社の力を借りて成り立っています。

保険会社は単に医療保険を提供するだけの存在ではなく、病院や薬局を組織化するなどして、医療サービス全般に大きな影響力を持っています。
しかも、相次ぐ再編で寡占化・巨大化しており、これ以上の再編には連邦当局が待ったをかけるような状況です。

また、米国では医療費がものすごく高いというのも、よく知られた話だと思います。多くのアメリカ人は企業を通じて医療保険に加入しており、企業がその一部または全部を負担しているため、医療費の高騰は企業経営の負担となっています。

こうした背景のなかで、加入した保険によって受けられる医療サービスの中身が大きく異なるというのが米国の健康保険の現状です。日本のような、全国どこの病院でも保険が使え、誰でも給付内容が同じといったものではありません。

ですから、3社が立ち上げるヘルスケア事業が、単純に既存の保険会社を脅かす存在になると見るのは時期尚早かもしれません。

※沖縄の勝連(かつれん)城跡です。海外貿易で栄えていたそうですが、15世紀に琉球王国に滅ぼされました。

 

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