韓国に残る日本の建物(後編)

前編に続き、釜山と鎮海で見つけた日本統治時代の建物をご紹介します。

<鎮海の町並み>

鎮海(チネ)は釜山からバスで1時間のところにある港町で、桜の名所として韓国では有名です。
1910年代に日本海軍が建設した都市で、ロータリーから放射状に道が広がり、かつての郵便局(下の写真)や駅、楼閣のある料理店などのほか、古い日本家屋も結構残っていました。

「長屋通り」の日本家屋(下の写真)で印刷業を営む鄭基源さんと話をすることができました。
鄭さんによると、最初の持ち主は三島アイという日本人で、1階は文房具やタバコを扱い、2階は旅館として営業していたそうです。
鄭さんは60年前からこの家で印刷業やメダル製造などを行っていて、日本統治時代の鎮海の写真や、かつて鄭さんが使っていた活版印刷の活字などを見せてもらいました。

<釜山の乾魚物市場>

釜山の観光地として有名なチャガルチ市場(魚市場)の近くにある乾魚物市場の商店は、古い日本家屋をそのまま使っています。繁華街のなかで、この一角だけ時計の針が止まっているかのような景色です。
ただ、写真のとおり、かなり老朽化が進んでいますし、保存しようという動きもなさそうなので、再開発は時間の問題かもしれません。

<釜山駅近くの日本家屋>

釜山駅や日本領事館の近所でも古い日本家屋をいくつも見かけました。屋根を青く塗り固めたり、シートで覆ったりしていることが多いようです。古くなって瓦が落ちてしまうためでしょうか。
内部はおそらく畳ではなく、オンドル部屋(=床暖房)に変えていることが多いと思われます。
前編で紹介した「文化共感 水晶」のように保存状態のいい日本家屋は例外で、老朽化が進んでいる建物が大半でした。

いかがでしたでしょうか。
基本的にこれらは植民地時代に日本人のためにつくられた建物ですが、案内してくれた方々はどこか嬉しそうだったのと、再生した建物が若い韓国人に人気のスポットになっているのをみて、こちらもうれしくなりました。

 

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韓国に残る日本の建物(前編)

韓国に残る日本統治時代の建物を訪ねる旅をしてきました。
場所は日本に近い釜山と、日本海軍の拠点だった鎮海です。

当時の建物をめぐってみると、「歴史的な観点から保存しているもの」「文化的な価値を踏まえて活用しているもの」と、「単に建物としての機能を果たしていて、結果的に残っているもの」がありました。
論より証拠。写真をご覧ください。

<釜山近代歴史館>

植民地政策を担った東洋拓殖株式会社の釜山支店として1929年に建てられたもので、戦後はアメリカ文化院として使われていましたが、返還後の2003年に歴史館としてオープンし、近現代史の教育の場として活用されています。
訪れたときも校外学習の生徒たちが大勢いて、課題に取り組んでいました。

<臨時首都記念館>

1926年に慶尚南道の知事官邸として建てられたもので、その後、朝鮮戦争で釜山が臨時首都になった際、大統領官邸として使われました。
現在は朝鮮戦争当時の政治や人々の暮らしを紹介する展示館となっています。

<文化共感 水晶>

釜山にある1943年に建てられた日本家屋です。日本人観光客向けの料亭を経て、2016年に文化施設としてオープンしました。他の木造家屋と比べると、保存状態は非常に良好でした。
ロケ地としても有名なためか、若い韓国人に人気のスポットとなっているようで、皆さん思い思いのポーズで写真を撮りまくっていました^^

<旧百済病院>

1922年に病院として建てられたもので、釜山駅の近くにあります。もっとも、病院だったのは最初の10年だけで、その後は中華料理店や結婚式場などとして使われていたようです。
現在は内装をリノベーションしたうえで、1階がカフェ、2階がアートギャラリーとなっていて、カフェは若い人たちでにぎわっていました。

<ムルコンシクタン>

釜山にあるこのアンコウ料理専門店は、80年前に建てられた日本家屋で営業しています(韓国風に改装してあります)。
店主らしき女性に片言のハングルで「こちらは日本家屋ですよね」と聞いたところ、「いいものを見せてあげる(=私の意訳)」と2階の座敷を案内してくれました(下の写真)。

後編に続きます。

 

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地銀の資産運用

前回のブログで日銀「金融システムレポート」に「益出し」という言葉が14回も出てきたと書きました。
改めて最近のレポートを確認すると、次のような結果となりました。

2015年 4月号: 0回
2015年10月号: 0回
2016年 4月号: 0回
2016年10月号: 0回
2017年 4月号:28回
2017年10月号: 3回
2018年 4月号:15回
2018年10月号:33回
2019年 4月号:14回

益出しで会計利益を下支え

「地域金融機関を中心に預貸金収益と役務取引等利益では経費を賄えない金融機関が増加しており、(中略)有価証券の益出しで利益水準を維持している先も少なくない」【2017年4月号】

「⾦融機関の中には、株式や投資信託の益出しと再投資によって、保有有価証券の簿価が切り上がってきている先がみられる」【2018年10月号】

「地域⾦融機関を中⼼に、有価証券の益出しで利益⽔準を維持してきた先は少なくないが、度重なる益出しと簿価の切り上がりから、益出し余⼒はこのところ低下してきており、その⾦融機関間のばらつきも⼤きくなっている」【2019年4月号(今回)】

こうして見ると、近年の地銀の資産運用とは、投資信託の購入などで積極的なリスクテイクを行いつつ、会計上の利益を「つくる」ため、益出しにより実現損益を計上するという、一般的な資産運用業務とはかけ離れたものであることがわかります。

しかし、今回の日銀の分析によると、株式市場参加者が金融機関の将来的な収益性を評価するに当たって、益出しで下支えされた当期純利益の水準ではなく、基礎的収益力の趨勢的な低下傾向に注目しているとのこと。
それでも地銀は益出しによる当期純利益のお化粧を続けるのでしょうか
(大株主としての生保の見解も知りたいところですね)。

生保の運用計画の報道

地銀の投資信託の残高はここ数年で急増しています。単なる資産運用のリスクテイクというよりは、私募投信の配当や解約益が業務純益に反映される点が魅力なのでしょう。1990年代前半に、決算対策として各種の証券を購入していた生保業界を彷彿させます。

生保業界のほうですが、今年度の資産運用方針をメディア向けに説明しているようです。
報道によると、オープン外債(為替ヘッジをしない外債)への投資を増やす方針の会社が多いようです。4月25日の日経には、「『オープン外債』なら為替リスクは負うが利回りは確保できるため」なんて書いてありましたが、ここでいう利回りとはいったい何なんでしょうね。
日経「生保の運用、外債軸に」
ブルームバーグ「主要生保は海外クレジット物で収益確保、円高ならオープン外債へ」

※写真はみなとみらいです

 

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「節税保険」問題から見えること

日本銀行が17日に公表した金融システムレポート(2019年4月号)には「益出し」という言葉がなんと14回も出てきました。こうしてつくった当期純利益に意味があるのでしょうか。
時間があればもう少しコメントしたいところです。

国税庁が見直し案を公表

国税庁が11日に経営者向け保険の課税ルールの見直し案を公表し、いわゆる「節税保険」をめぐる動きにゴールが見えてきました。
通達改正案(5月10日まで意見募集中)

備忘録として、こちらもあげておきます:金融庁「保険商品審査事例集

以下、一連の「節税保険」問題から私が感じたことを述べてみます。

保険本来の機能を軽視したビジネスは長続きしない

今回は何というか、金融庁や国税庁によるストップがかかる前から「いつか来た道」という思いで見ていて、本当にそうなったという感想です。
10年くらい前に逓増定期保険でも同じことがありました(当時は損保系生保の取り組みが目立っていましたね)。

税制以外にも、古い話になりますが、1980年代後半に一世を風靡した「年金保険ローン」をご存じでしょうか。個人年金の一時払保険料(全期前納保険料)を銀行の提携ローンで賄う財テク商品で、日産生命をはじめ、多くの生保が取り扱いました。爆発的に売れたことが後になって裏目となり、中堅生保の破綻の一因となりました。

販売者はニーズ顕在型に向かいやすい

経営者向け保険の本来の機能は、経営者に万一のことがあった場合に備えた保障です。でも、死亡保障ですから加入者自身がお金を受け取るのではなく、自分が死んだらどうなるかを想像してもらわなければ保険購入につながりません。個人向けでも経営者向けでも、こうしたニーズ潜在型の保険を売るのは簡単ではないと思います。
ですから、他にニーズ顕在型の売りやすい商品があり、かつ、それで多額の手数料が得られるとなると、販売者はどうしてもそちらに流れやすいのですね。節税を強調した販売もそうですし、貯蓄性商品でもそのようなことがしばしば生じます。

より深刻なのは、販売チャネルがニーズ顕在型に慣れてしまうと、営業の足腰が弱ってしまい、ニーズ潜在型の保障提供になかなか戻せないということだと思います。

企業価値よりも保険料収入なのか?

個人向け保険の保険料は年に数万円から多くても数十万円なのに対し、経営者向け保険は何百万円という世界ですし、保険金額も個人向けとはケタ違いなので、見た目の業績を手っ取り早く上げるには好都合です。
しかし、3月30日のブログで書いたように、経営者向け保険の収益性は他の保障性商品と比べるとかなり低いとみられます。大手生保グループをはじめ、保険業界には企業価値よりも保険料収入を重視する考えが根強く残っているのではないかと考えてしまいます。

 

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オープンセミナーの受付開始

アドバイザーとして関わっているRINGの会が今年もオープンセミナーを開きます
(7月6日です)。
昨年は定員の1500人を上回る申し込みがあり、今年もすでに展示ブースはほぼ受付終了とのことですので、ご関心のあるかたはお早めにお申し込みください。
私は今回登壇する予定がなく、当日は久しぶりにセミナーをじっくりと楽しめそうです。
お申し込みはこちら

午前中の第一部「デジタル革命の下で、これからの代理店経営を考える」のプログラム策定に関わったこともありまして、登壇していただく牧野司さんをご紹介します。

牧野さんは昨年まで東京海上グループに所属し、「最先端技術が世界をどう変えていくか」というテーマで調査・研究活動を行ってきたかたです。
2月の損保総研セミナーでの講師紹介には、「東京海上日動に37年間勤務しながらも『自分は今の保険には興味がない』と社内で公言し、独自の視点から最先端技術や新しい働き方について研究しつつ、積極的に社内外で講演活動を行ってこられました」とありました。

東京海上研究所の「研究員ブログ」のなかに、「おとぎ話 in 2045」という、おそらく牧野さんが主席研究員時代に書いたと思われるものを見つけました。
テクノロジーが幾何級数的進化を遂げ、人間の仕事の多くは人工知能とロボットに代替されているかもしれない2045年に、おとぎ話はどう変貌しているかというもので、「アリとキリギリス2045」「ウサギとカメ2045」「花咲か爺さん2045」を読むことができます。

これらを読んで、皆さんはどう感じるでしょうか。
確かに、決められたことをきっちりと勤勉にこなすのは人工知能やロボットが最も得意とする分野でしょうから、これまで人間がやってきた仕事を人工知能とロボットがどんどんやるようになるのでしょう。
そして、そのような世の中では当然ながら人間の働き方も変わっていくのでしょうね。

「デジタル革命」「最先端のテクノロジー」といったテーマで登場するのは、同じくパネリストとして登壇するSEIMEIの津崎桂一さんのように、比較的若いスタートアップのかたというのが王道かもしれません。
でも、それだけではないのがRINGクオリティーです。牧野さん、津崎さん、そしてMATコンサルティングの望月広愛さんの3人がこのテーマで保険業界人に向けて何を語るのか、今から楽しみです。

※全国で活躍する元東急線シリーズ(?)
 こちらは秩父鉄道です

 

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保険を他の金融商品に例えると

直近のinswatch Vol.975(2019.4.8)に執筆した記事のご紹介です。
ある金融評論家による新書とはこちらになります。
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保険への理解の低さ

保険会社(特に生保)はしばしば外部から無理解に基づく批判を受けるようで、私のブログでも過去に何回か取り上げたことがあります
(例えば「責任準備金組入率(積立率)の低い会社は危ない」「長生きしないと年金を受け取れず、保険会社がボロ儲け」など)。

最近もこんなことがありました。ある金融評論家による生命保険に関する新書を手にしたところ、「日本の生命保険は、客(契約者)の取り分(利益)がものすごく小さい」と書いてありました。どのような分析をしているのか期待して読んでみたのですが、払い込んだ保険料がほとんど返ってこないことをもって「騙しだ」「詐欺だ」という話が続き、肝心の分析がなく、残念に思いました(転換制度や更新型への問題提起もしていました)。
保険は確率統計の技術を活用しているのですから、プロとして何らかの根拠をもとに、想定を厳しく見すぎているとか、運営コストを掛けすぎているとか主張していただくのであれば、前向きな議論になるのですが。

「掛け捨ては損」は根強い

ところで、先ほどの新書の筆者は自らの契約について、「この25年間、保険料を毎月5万円ほど払い続けても、ほとんど何ももらえない」と怒っています。
高倍率の定期付終身保険(直近の主な契約内容は定期特約4800万円、終身保険100万円など)に加入していたとのことで、保険募集に関わるかたであれば、一定期間の保障をメインとした契約なので、払った保険料の大半が返ってこないのは当然だと考えるでしょう。

しかし、世の中には「掛け捨ては損」という考えも根強いと感じます。さすがに自動車保険について、「何も返ってこないのはおかしい」と怒る人は少ないとは思いますが、多少複雑になると、払込保険料と比べた損得に目が向かってしまいがちです。
だからこそ、平均寿命を超えて長生きした場合に備えた長寿生存保険に対しても、「平均寿命まで生きた場合でも、年金の受取総額は保険料の支払い総額よりも少なく、損失が出る」という批判が出てきてしまいます。

複雑な金融商品を扱っているという自覚を

このような話になってしまうのは、保険を他の金融商品に例えると、オプション取引という「デリバティブ商品」であることと、キャッシュバリューがある長期の保険は保障と貯蓄の「ハイブリッド商品」であることが、根本的には影響しているのでしょう。

例えば、顧客が日経平均オプションのプットを買うとします。顧客は一定のプレミアムを支払うことにより、日経平均株価が決まった価格を下回ったら(正確にはプレミアム分も超えた時点で権利行使すれば)、利益を得ることができるのですが、「プレミアム」を「保険料」、「日経平均株価が決まった価格を下回ったら」を「事故が発生したら」、「利益」を「保険金」に置き換えると、保険そっくりですよね。長期の保険の場合、これが何十年も続き、貯蓄保険料からのキャッシュバリューも発生します。

すなわち、保険募集人の皆さんは、他の金融機関が伝統的に取り扱ってきた通常の預貯金や住宅ローン、あるいはプレーンな投資信託などに比べると、はるかに複雑な「デリバティブ商品」「ハイブリッド商品」を提供しているという自覚が必要なのだと思います。
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※近所の鶴見川の桜です

 

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経済危機とリスク管理

昨年11月の日本アクチュアリー会・年次大会の報告集が公表されました。
すでに昨年11月11日のブログでも簡単にご紹介していますが、登壇したパネルディスカッションの内容が公表されていますので、改めて取り上げてみましょう。

金融危機を知らない世代が増加

パネリストとして登壇したのは11番のERM委員会「経済危機とリスク管理~これからのリスク管理を担う若手のために~」です。
PGF生命の鈴木理史さんが若手の実務担当者の代表として、今のリスク管理の実務に関する疑問をベテラン2人(みずほ証券の藤井健司さんと私)にぶつけるという企画でした。

この企画の背景には、若手の実務家にはバブル経済どころかグローバル金融危機も日本の保険危機もピンとこないという現実があります。中堅生保が相次いで破綻したのは20年前ですし、リーマンショックからも10年たちました。
しかも、こうした危機をも踏まえつつ築かれていった各社のリスク管理の枠組みや当局による健全性規制は、彼らにとっては初めから存在するものなのですね。

若手担当者からの悲鳴と警鐘

鈴木さんによる「若手からの問題提起」は、ERM委員会の若手メンバーを中心とした意見交換の内容に基づいています。
業務負担が年々増えて現場が疲弊しているとか、形を整えることばかりに固執して、有効に機能するリスク管理になっていないとか、考えさせることばかり。
なかには、「(当局に報告する)ORSAレポートに載せたいから、この数字を計算してほしい」「数字が大きくぶれるのは計算方法が悪いから」「ストレステストの結果が悪かったので、シナリオを見直すべき」といった、耳を疑うような「証言」も出ました。

当日は双方向ツールを使って参加者アンケートを行っています。最初のほうでストレステストやORSAについて聞いたところ、やはり「報告やレポート作成自体が目的化し、あまり活用できていない」が4択のうち6割以上の回答を集めました。

なぜ「リスク文化」が選ばれたのか

参加者アンケートは最後のほうでも行いました。「今のリスク管理に足りないもの、強化していくべきものは何か?」という質問に対し、

 リスク文化  55%
 ガバナンス  31%
 PDCAサイクル 11%
 ツール     2%
 外部の関与   1%

と、過半数のかたが「リスク文化」を選んでいます。直前で私が「ガバナンスのところを何とかしないと、せっかくERMの枠組みを作っても、魂が入らない」と熱く(?)語っていますね^^;

当日は進行役の市川さんが、「ツール以上に文化やガバナンスが大事だと皆さんも感じていただけた」とうまくまとめていましたが、この結果をどう捉えるべきか。
若手の実務担当者として、「あるべきリスク文化は自分たちが率先して築いていかなければならない」という表明だったらいいのですが、もしかしたら、「今のままでは意味のない(と思えるような)作業ばかりで、上司や周囲の考えが変わらなければ何も変わらない」という諦めの心境の現れなのかもしれません。
いずれにしても、どこかで「リスク文化」を深掘りするような機会があるとよさそうです。

パネルディスカッションの詳細はこちらをご覧ください。

※浅草のこの展望台には初めて行きました。
 スカイツリーもよく見えます。

 

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「国際線機長の危機対応力」を読む

インシュアランス生保版(2019年4月号第1集)のコラム。今回は書評です。
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パイロットの役割

3月にエチオピアで墜落事故を起こしたボーイングの同型機が各地で運航停止になった。本稿の執筆時点で詳しい原因はわかっていないが、同機に搭載された自動操縦装置が何らかの影響を及ぼしたとの指摘がある。
ボーイングとエアバスでは自動操縦の設計思想が異なるとされてきた。国土交通省の資料によると、エアバスは人為的ミスを防ぐ観点からパイロットよりもコンピュータの制御を優先する設計思想なのに対し、ボーイングの考え方は、コンピュータでは判断できない極限状態ではパイロットの制御を優先するというものだ。
いずれであっても現代の飛行機はパイロットの「腕」で飛ばすものではなく、パイロットが自動操縦装置を使って飛行するものである。つまり、操縦技術よりも、複雑なシステムを動かすオペレーターとしての役割が重要となっている。

未来を変えるためにいま行動する

それではパイロットに求められる資質とは何か。
PHP新書「国際線機長の危機対応力」(横田友宏著)によると、「飛行機の操縦とは、未来を変えるためにいま行動すること」であるそうだ。いま起きている事象を見て、それに対処するだけの人間ではダメで、「まだ事実が事実としての実態を持たない、兆しの段階でそれを捕まえ、その兆しがいかなるものに発展するかを見極め、その兆しに対応するために様々な対応を行っておく」(本書より引用。以下同じ)。しかも、時間的に制約があり、かつ、情報の一部しか知りえない状況下で、意思決定をしなければならない。
これは企業のリスクマネジャー、あるいは経営者にも通じるところがあるように思える。

専門職としてのあり方、考え方

教官として何人もの機長を育てた著者がパイロットに求める要件は非常に厳しい。
そもそも最初に出てくるのが、「パイロットの資質を持たない訓練生はパイロットにさせない」である。そして、「機長は単なる操縦士ではない。機長はフライトというプロジェクトを成功に導くためのプロジェクトマネージャーでなければならない」「機長として大事なのは『自我の抹消』である。(中略)機長は一切のとらわれを離れ、気象状態と管制官の指示やほかの飛行機の流れ、飛行機の状態だけを考えなければならない」「機長は、猛々しいライオンであってはならない。機長は長い耳を持つ、臆病なウサギでなければならない」と続く。
余計な雑念を持たず、チームのなかでリーダーシップを発揮する臆病なウサギに、あなたはなれるだろうか。

次のような記述も耳が痛い。「うまくいかない原因を自分以外の周りの責任にして自分は変わろうとしない人間は、絶対に機長にはなれない」「隣の教官やチェッカーがどう考えているかばかり気にしている副操縦士も、機長にはなれない」。
本書はパイロットという特殊な専門職の話を取り扱っているが、保険業界人にとっても、専門職としてのあり方や、マニュアル化するのが難しい「考え方」「哲学」の伝承を考えるうえで、大いに参考になりそうだ。
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※写真は井の頭公園です。

 

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「節税保険」販売休止の影響

3月期末の30年国債利回りは0.507%と、マイナス金利政策の開始直後だった2016年3月末(0.547%)よりも低い水準でした。厳しいですね。

生保への副作用も大きい

長引く異次元緩和の副作用として銀行経営への悪影響が注目されていますが、生保経営へのインパクトも、現行会計では見えにくいだけで、非常に大きいものがあります。
ソルベンシーマージン比率が高水準にもかかわらず、劣後調達が相次いでいるのを見ても、厳しさの一端がうかがえます。

商品面への影響も大きく、これだけ金利水準が下がってしまうと、円建ての貯蓄性商品の提供は実質的にできません。そこで保険会社が注力してきたのが外貨建ての貯蓄性商品であり、販売休止となった経営者向け保険であったと言えるかもしれません
(もちろん、他にも健康増進型保険など個人向けの保障性商品への新たな取り組みもあります)。

ちなみに金融庁は2月に行われた生命保険協会との意見交換会で、「低金利環境による厳しい収益環境が続いているとはいえ、トップライン維持のために、過去を反省することなく、このように法令や監督指針に照らして問題がある商品まで投入してしまうという保険会社の姿勢はいかがなものか。経営の在り方としてはあまり美しくないと感じざるを得ない」という異例のコメントをした模様です。

経営者保険の保険料は個人保険の3割程度

経営者向け保険が販売休止となったことによる生保経営への影響を考えてみましょう。

最近出た東洋経済オンラインの記事によると、経営者向け保険の推定市場規模は新契約年換算保険料ベースで8000億~9000億円とのこと。
「経営者向け保険」「法人向け定期保険」といった統計はありませんが、個人で保険料を年払いにしている人は少ないと考えられますので、公表されている年払保険料を見ると大まかな傾向をつかむことができます。
2018/3期における個人保険の初年度保険料のうち、年払いは業界全体で8662億円でした。異次元緩和が始まる直前の2013/3期と比べると2160億円、マイナス金利直後の2016/3期と比べても985億円増えていて、内訳を見ると、2つの大手生保グループが大きく寄与しています。

個人保険全体に占める割合をざくっと見ると、新契約年換算保険料と比べて39%、初年度保険料(振れの大きい一時払いを除く)と比べると34%です。
個人向け商品の年間保険料に比べ、経営者向けの1件あたりの保険料が高いので、件数としては全体の1割未満だとしても、保険料収入でみると割合が高くなります。
ちなみに2013/3期はそれぞれ31%/29%、2016/3期はそれぞれ32%/31%だったので、割合は高まっています。

経営への影響をどう見るか

ただし、経営者向け保険の競争が激しかったためか、保障性商品に比べると収益性はかなり低いとみられます。
第一生命ホールディングスによると、第3四半期累計(2018/4-12)の国内3社の新契約年換算保険料3150億円のうち、販売休止となった商品が950億円と、全体の30%を占めたそうですが、新契約価値については年100~200億円程度にとどまるそうです(参考までに2018/3期の新契約価値は3社合計で1651億円でした)。
手掛かりが少なく正確なところはわかりませんが、大手生保のように個人も法人も手掛けている会社では、少なくともこの要因だけで新契約価値が急減することは考えにくいです。

もっとも、個社別に見ると、年払い保険料が初年度保険料(除く一時払い)の7割以上を占める会社がいくつかあり、営業戦略の大幅な見直しを迫られていると考えられます。
同じくこの分野に強みを持ち、節税話法に傾斜していた訪問型代理店への影響も深刻でしょう。
わかっていたリスクがこのタイミングで顕在化したという話ではありますが…

※写真は秩父です。電車はさくら号でも、咲いていたのは梅でした^^

 

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第三者委員会の報告書

ネットで「第三者委員会」と検索すると、NGT48(AKB48グループ)の暴行事件に関する調査報告書が出てきたので、読んでみました。

AKB商法の一端が示される

新潟のNGT48のメンバーがファンの男性から暴行被害を受けたという事件について、運営会社のAKSが第三者委員会を設置し、事実関係や会社関係者の関与、発生原因を調査したものですが、不祥事といっても身内が絡んでいるかもしれない暴行事件ですし、かつ、実行犯の協力も全く得られていないので、事実関係の解明ができたとは言えそうにない報告書でした。

運営会社が所属アイドルの安全確保にあまり気を使っていないことはよくわかりました。
AKB48グループは「会いに行けるアイドル」がコンセプトで、ファンとの接触が多いので、ファンとのトラブルも起こりやすく、実際、数年前には傷害事件も起きています。
それにもかかわらず、総選挙などでアイドルを競わせ、握手券のまとめだし(=お金を出せばファンは特定のメンバーと長時間接触できる)を認め、結果として一部ファンとの私的つながりを持つメンバーが少なくとも12名も存在することが判明した一方で、安全確保は基本的に本人任せという実態が記されています。
事件の根本的な原因はAKB48のビジネスモデルにあるようには感じました。

原因究明には事業の理解が不可欠

不祥事を起こした企業等が第三者委員会を設置し、再発防止に務めようとする動きは、ここ数年でかなり一般的になりました。
ただし、第三者委員会による調査は法的な強制力を持つものではなく、警察による捜査や金融庁の金融検査とは違うので、調査先の全面的な協力が得られなければ、限界があります。

さらに言えば、委員会を弁護士の先生が主導しているためか、もっと経営分析を行えば、より内面に迫れるのではないかと感じることが多いです。
全ての第三者委員会報告書を読んだわけではありませんが、その企業や組織のビジネスモデルや経営環境への深い理解がなく、結果として表面的な原因の発見にとどまっていたり、「ガバナンスの欠如」「企業文化の問題」といった一般論にとどまっていたりする報告書も目立つようです。

例えば、スルガ銀行が昨年9月に公表した第三者委員会調査報告書を見て、確かに不正行為の数々を浮き彫りにしたという点では高く評価できるとはいえ、スルガ銀行のビジネスモデルならではの原因究明が弱いように感じました。
もっとも本件に関しては、金融庁が10月の行政処分のなかで、より踏み込んだ原因究明を行っています。

※写真は浜離宮です。春ですね♪

 

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