報道のとおり、日本生命が2025年1月から、平準払いの終身保険や個人年金保険の予定利率を約40年ぶりに引き上げると発表しました。日経報道によると、富国生命も終身保険で予定利率を引き上げる方針とのこと。
背景には、今後の超長期金利が1%を割りこむようなことはもうないだろうという判断と、これまでの内部留保や資本増強などで健全性の面でも不安がないという判断があるのだと想像しますが、実際のところ、どのような議論があったのか興味深いです。
例えば、日本生命が公表している内部管理上の連結ESRは227%と、リスク量の2倍を上回る支払余力を確保しています。富国生命のESRも250.5%とのことです(いずれも2024年9月末)。
拙著『経済価値ベースのソルベンシー規制』でも書いたように、ESRは高ければ高いほどいいというものではありません。相互会社の社員(契約者)は株式会社の株主よりも破綻リスクへの許容度が低いとしても、破綻リスクを極力減らすために支払余力の拡大を続ける経営を求めているとは考えにくいです。なぜなら、同じ保険市場に株式会社と相互会社があるなかで、相互会社の存在意義は、株式会社よりも実質的に安い保険料(契約者への配当還元を含む)で保障を提供することにあるからです。
予定利率の引き上げは今後獲得する新契約に適用されるものなので、既契約者(特に近年の低い予定利率の契約者)への還元についてどのような議論がなされたのか、外部に示してほしいところです。
主要生保の4-9月決算を確認すると、貯蓄性商品の動向でわかりにくいものの、保障性商品をはじめ各社が主力とする商品の販売は引き続き低調だった模様です。おそらくコロナ前の水準を回復できていないのではないでしょうか。
そのようななかでの利率引き上げという判断が、単に営業現場の要請を受けて、あるいは営業現場のてこ入れを主眼としてなされたとしたら、何とも寂しいかぎりです。
※福岡と東京・横浜の湿気の違いにびっくりです。