保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1256(2024.11.11)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。主に保険流通に関わる皆さんにも知っていただきたい内容です。
アクチュアリー会の年次大会(2日目)は対面・オンラインのハイブリッド開催でしたが、予想以上に対面参加のかたが多く、パネルディスカッションが盛り上がってよかったです。
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新規制の導入が秒読み段階に
金融庁の動向と言えば、保険流通に関わる皆さんには、金融審議会の作業部会で議論が進む制度改革の行方が気になるところだと思います。
他方で金融庁はこの10月末に、「経済価値ベースのソルベンシー規制」と呼ばれることの多い新たな健全性規制の導入に向けて主な法令等の改正案を公表し、意見募集を開始しました。
今回の改正は、現行のソルベンシーマージン比率を中心とした健全性規制を30年ぶりに大きく見直すというもので、規制が求める支払余力の厳格化や、経済価値ベースの考え方の採用など、現行規制の弱点を克服する内容となっています。2025年度決算から新規制に基づく報告が始まる予定なので、保険会社にとって残された時間はそれほど多くありません。
先週都内で開催された日本アクチュアリー会(ア会)の年次大会では、新規制に関連したセッションがいくつもあり、私もその1つ(パネルディスカッション:経済価値ベースのソルベンシー規制の原点に立ち返る-新規制を有意義なものにするために-)で進行役を務めました。
保険数理の専門家・アクチュアリー
アクチュアリーとは、確率や統計などの手法を用いて、将来の不確実な事象の評価を行い、保険や年金、企業のリスクマネジメントなどの多彩なフィールドで活躍する数理業務のプロフェッショナルです(ア会のサイトより引用)。超長期の保障を提供する生命保険や、多様で複雑なリスクに備える損害保険が成り立つには、アクチュアリーによるリスク分析が欠かせません。
24年3月末現在、ア会の会員数は5601人で、このうち2273人が生命保険会社に、863人が損害保険会社に所属しています。一般に「アクチュアリー」とは正会員のことを指し、難関とされるア会の資格試験に合格し、正会員として認定されているのは2121人だけです。
ちなみに私自身はアクチュアリーではなく、主にア会の専門委員会(ERM委員会)のアドバイザーとして関わっています。
保険会社のリスク管理高度化を目指して
話を新規制に戻しましょう。会員向けの年次大会の内容について多くを語ることはできないのですが、私たちのパネルディスカッションでは、「規制が求める新たなソルベンシー比率(ESR)を守りさえすればいいという話ではない」「経済価値ベースの考え方をいかに社内や社外(メディアなど)に浸透させるか」「保険会社のアクチュアリーは何をすべきか」といった議論を行いました。
健全性規制の主な目的は、保険会社の経営が悪化し、契約者が不利益を被るのを避けることです。それには単に規制を厳しくするというのではなく、保険会社自身のリスク管理の高度化を促すべき、というのが近年の健全性規制の考え方となっています。しかし、規制当局が本当に保険会社の経営行動を変えることができるのかという「そもそも論」もあって、今回の新規制にしても、保険会社が「規制が求めるESRを守りさえすればOK」と考えてしまうと、リスク管理の高度化にはつながりません。どのようなことでも、他者に何かを促すというのはそう簡単ではありませんよね。
なお、新規制導入の経緯や規制の本質などに関心のあるかたは、10月末に発売した拙著『経済価値ベースのソルベンシー規制』(日本経済新聞出版)をご覧ください。2008年に出版した『経営なき破綻』の続編という位置づけで、副題に「生保経営大転換を読む」とありますが、新規制のもとでの損保を含めた保険会社経営のあり方について述べています。難しい数式などは一切使っていませんので、ご安心下さい(笑)。
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※実家でタコパ!久しぶりに3兄弟が集まりました。