保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1216(2024.1.15)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介します。
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新年にあたり、自分がいつから本誌への寄稿を始めたのか調べてみたところ、初回は2001年4月でした。ざっと確認すると、外部寄稿者のなかで3番目に長く連載を続けているようです。とりあえず休載の予定はありませんので、本年も引き続きよろしくお願いいたします。
金融庁による行政処分
既報の通り、金融庁は昨年12月26日に大手損害保険会社4社に対し、行政処分(業務改善命令)を出しました。保険料調整行為など独占禁止法に抵触すると考えられる不適切行為等について、業務改善計画の策定・提出・実行を求めるというものです。
金融庁は行政処分とともに、「大手損害保険会社の保険料調整行為等に係る調査結果について」という資料を公表しました。大手損保各社はそれぞれ調査委員会を設置し、不適切な行為について調査を行っていて、今回の公表によって調査結果(の一部)が初めて明らかになりました。
金融庁のサイトへ
広範囲かつ継続的
まず、不適切な行為が例外的なものではなく、広範囲かつ以前から行われてきたことが示されています。金融庁が4社からの報告を集計したところ、不適切行為等があるとされた保険契約者は576先に上り、その半数以上は2020年以前から続いているとわかりました。
とりわけ自然災害の多発などにより料率引き上げが急務となった2018年あたりから、不適切行為等が始まった案件が増えています。
調査によると、不適切行為等の目的として最も多かったのが「現状維持(幹事、シェア等)」で、全体の50%を占めました。他社からの打診に応じたというのも39%あり、この2つが主要な行動類型となっています。
なお、企業保険の入札では複数の保険種目を対象にすることが多いという理由から、種目別のデータは示されていません。そもそも企業がどのような保険に加入しているかというデータがないのは、ちょっと残念です。
多くは「不適切」認識なし
問題となった契約について違法だという認識は7%、違法ではないが不適切だと認識していたケースは26%でした。裏を返せば、67%の取引は不適切という認識がなかったということです。他社からの打診に応じたというケースであっても、「悪いことだと認識していたが応じた」という回答はかろうじて過半数(53%)にとどまっています。
これらを踏まえると、「不適切だとわかっていても、やむを得ない」というよりは、シェアを維持するための通常の行動として保険料調整が行われてきたことがうかがえます。
企業向け保険に関する公開情報は非常に少なく、今回の調査では保険会社側の取引実態の一端が示されたにすぎません。企業側はどのような部門がどのようなスキルを持って担当しているのか、保険会社による株式保有や営業協力が取引にどのような影響を与えているのかなど、取引慣行の適正化を図るには、実態をさらに明らかにすることが必要だと思います。
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※写真は宇都宮のLRT(路面電車)です。
※いつものように個人的なコメントということでお願いします。
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