ディーラー代理店の是非

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1248(2024.9.9)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。まずは保険業界や自動車業界の都合に縛られずに考えたうえで、実現可能な方向に近づけていくというアプローチが望ましいのではないでしょうか。
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250万件の情報漏えい

保険金不正請求事件に続き、大型の兼業乗合代理店に関連した大規模な顧客情報漏えいが発覚しました。4社の発表によると、情報漏えい250万件のうち226万件は、自動車ディーラー代理店等が契約者情報を保険会社4社と「共有」していたというものです。

こうなってくると、次に何が出てくるかと待ち構えてしまいますが、一連の損保問題であきらかになった「いびつな取引慣行」「トップラインやシェアの確保を最優先する企業文化」を変えるには、まずはこの機会に過去の膿を出し切るべきでしょう。例えば、代理店への「過度な便宜供与」の実態を公にしたらいかがでしょうか。

兼業乗合代理店の構造的な弱さ

もちろん、専属や専業の代理店に問題がないとは言えません。しかし、代理店の「乗合」「兼業」が、それぞれ契約者保護のうえで構造的な弱さを抱えているのは確かでしょう。

乗合代理店は複数の保険会社と代理店委託契約を結んでいるがゆえに、個々の保険会社が代理店をコントロールできない状況になりやすいという構造にあります。突き詰めると、顧客の代理ではなく、あくまで保険会社の代理である代理店が、果たして複数の保険会社の代理をしてもいいのかという話です。
他方で、兼業代理店は自動車販売などの本業がほかにあり、代理店としての役割がおろそかになりやすいという構造にあります。実態を踏まえると、リスクや保険の専門性がない組織が代理店を営んでもいいのかという話です。
ディーラー代理店は「乗合」「兼業」なので、両者の弱さをあわせ持っています。

現在の代理店に「乗合」「兼業」が認められているのは過去からの経緯が大きいと理解していますが、こうした構造的な弱さを上回る顧客メリットがあると考えられてきたからでもあるのでしょう。

顧客メリットはあるのか

顧客にとっての乗合代理店のメリットは、複数の保険会社の商品を比較検討できることや、専属代理店よりも多様な商品ラインナップを享受できることです。また、兼業代理店のメリットは、自動車購入など本業利用のついで
に保険に加入できる利便性にあります。
しかし、旧ビックモーターのテリトリー制に象徴されるように、ディーラー代理店は顧客メリットよりも自社または保険会社の都合を優先する場合も多いことが明らかになりましたし、「ついで加入」は確かに便利かもしれませんが、ディーラー代理店、顧客の双方に関心があるのは自動車のことなので、保険は「とりあえず何か入っていればいい」となりがちですし、ネット普及に伴い、ディーラー以外での保険加入のハードルも下がっています。

そう考えると、「乗合」「兼業」には、構造的な弱さを上回る顧客メリットがあるというのも怪しくなってきます。保険会社との利益相反を招きやすい点を含め、もはやディーラーが代理店であり続けることの是非が問われているのではないでしょうか。
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※写真はドイツのバッハラハというライン川沿いの小さな町です。

 

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『Z世代化する社会』

先週から今週にかけてヨーロッパにおりまして、現在(9/1)はスイスにいます。週末を利用してルツェルンに行ってきました。
それにしても、スイスフランがこんなに高くなっているとは。1スイスフランは100円くらいと思っていたら、まさかの170円。ビール1杯で6フラン(約1000円)もするのは日本からの旅行者には厳しいです。

ということで、今回は週刊金融財政事情(2024年9月3日号)に載った書評「一人一冊」をブログでご紹介します。舟津昌平さんの『Z世代化する社会』を取り上げました。

私たちが生きている世界の一端を知るために

評者はかつて韓国ドラマ『冬のソナタ』にはまっていた。毎回の放送を楽しみにしていたところ、たまたま最終話に関する某評論家の「ネタバレ」コメント(主人公に関する重要な設定だった)を視聴直前に目にしてしまい、ひどく後悔したことがある。このトラウマがあるためか、書評では著作の内容にどこまで触れていいか、悩むことが多い。とはいえ、本書を紹介するのであれば、この「例え話」を引用するのが最も効果的だろう。

ある村で、若者だけに感染する病が発見された。若者が次々と病気にかかっていく。それを見て、お偉いさんや親族は「これだから若者は」「生活がたるんでいるのでは」「昔はこんなことなかった」などと若者を責め、病の原因を若者の資質に求める。ところが、この病気は「若者であるほど早く感染する」だけで、実はすべての年齢層に感染するものだった。かくして村は老若男女を問わず、この病気に侵されていくのだった──。

本書は「Z世代」と呼ばれる若者たちの中でも、著者に身近な大学生(著者の舟津氏は1989年生まれの経営学者)を中心に観察することで、われわれが生きる社会を読み取ろうとしている。
野村総合研究所によると、Z世代とは90年代中盤から2010年代序盤生まれで、それ以降はα(アルファ)世代と呼ぶらしい。Zとαの違いは正直よく分からないが、いずれもスマートフォンの普及と関係があるのだろう。10年代前半にスマホが普及した際、今の大学生は10歳前後だったので、早い人は小学生の時からスマホに接している。そしてα世代では生まれた時からスマホがあった。

著者の丹念な取材によってZ世代の実態がよく分かる。彼らは、バーチャルとリアルの混然一体とした世界の中で、監視し合い、最適化を目指し、ビジネスのターゲットとして飲み込まれている。パーソナルレコメンデーション(ネット企業などが過去の視聴履歴などを踏まえ個々の嗜好(しこう)に合った提案をすること)の進化も彼らに影響を及ぼしている。友人同士でも、互いに誰が何を見ているのかは分からない。さらに、若者の支持を集めるインフルエンサーの影響力が強まっている。インフルエンサーは集客のために世界を「推し」と「アンチ」に分類し、その単純で安易な世界観が、若者に着々と浸透しつつあるという。

若者の方が影響を受けやすいというだけで、社会のZ世代化は着実に進んでいる。

 

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家計が生保離れ?

8月21日の日経新聞に「家計、生保離れ 1.8兆円流出」という記事が載りました。記事はこちら(有料会員限定)です。

資金循環統計によると、2024年1-3月期に家計の貯蓄性の保険が約1.8兆円流出し、他方で投資信託が伸びていることから、「保険から投資へ資金が動いている」という専門家の見方を紹介しています。
記事の元ネタはこちら(第一生命経済研究所のサイト)になります。
ちなみに資金循環統計の「生命保険受給権」とは、個人保険の責任準備金から危険準備金を控除したものを積立型保険の準備金とみなし、これに契約者配当準備金を加えたものとのことです。

生命保険協会が公表している四半期ごとの損益計算書によると、確かに2024年1-3月の解約返戻金は約3.5兆円(個人保険が大半を占める)と、2022年4-6月に次いで大きくなっていて、いずれも円安が進んだタイミングにあたります。一時払いの外貨建て保険の解約が多かったのでしょう。
他方、2024年1-3月期だけの一時払い保険料データはありませんが、2023年度全体の一時払い保険料は約10兆円なので、2024年1-3月期に限ればネットで流出だった可能性はあります。

ただし、保険料収入は2022年度から一時払いを中心に増加傾向が続いていることから、この2年間はざくっと見て毎四半期に2、3兆円の流入があり、やはり2、3兆円の流出(解約)があるといったところでしょうか。これを「保険から投資へ」と言えるかどうかは微妙で、むしろ外貨建て保険の回転売買のほうが心配だと思いました。

※夏の帝国ホテルです。ちなみに冬はこちら。

 

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国内債の含み損

生命保険会社の2024年4-6月期決算では、長期金利の上昇によって保有する国内公社債の時価が下がり、各社の「含み損」が拡大。その点に着目した報道がいくつかありました。

生保の国内債含み損、08年以降で最大に(日経・有料記事)
大手生保4社、国内金利上昇で債券評価損が拡大(Bloomberg)

国内債の含み損拡大は、リスクをとった結果、期待に反して損失が発生した、つまり資産運用で失敗したというのではありません。会社全体としては金利リスクを小さくしているにもかかわらず、保険会社が資産サイドの時価情報しか公表していないため、あたかも損失が膨らんだかのように見えてしまうという話です。「満期保有目的の債券」や「責任準備金対応債券」だから時価評価しなくてすむ(したがってソルベンシーマージン比率はほとんど下がらないですよ、Bloombergさん)、というのは本質的な論点ではなく、経営状態を示すうえでの情報開示や説明が足りないということではないかと思います。経済価値ベースのバランスシートが公表されていれば、こうした誤解は起きにくいかもしれません。

とはいえ、現行の保険会計は経済価値ベースのソルベンシー規制導入後もそのままなので、さらに金利が上がり、国内債の含み損が拡大すると、監査人から減損処理を求められるのではないかという懸念はあります。時価下落の原因が信用リスクの増大ではなく、市場金利の上昇だけであれば、オーバーパーの債券でないかぎり「回復見込みがある」と言えそうなものです。どうなのでしょうか。
ただし、解約の可能性をどの程度考えておくべきかという難しい問題はあります。解約返戻金を支払うために、含み損を抱えた国内債の売却を迫られることになるかどうかです。このところ一部で注目されている「ESRの大量解約リスク問題」にも通じるところがあるのですが、経営不安に伴う解約増加の過去データはあっても、金利が上がるとどの程度解約が増えるかという日本の過去データは見当たりません。それに、銀行が預金代替として販売した一時払いの貯蓄性商品と、遺族保障ニーズに応じた平準払いの長期保障性商品では、金利感応度はかなり異なるでしょう。一律に線を引くというのは無理があるように思います。

いずれにしても、メディアの不勉強を責めるのは簡単ですが、金融市場や規制などの経営環境が変わる場面では、とりわけ丁寧な情報開示が必要ではないでしょうか。

※訳あって広島に来ています。

 

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九州つながり

九州は日本で3番目に大きな島とはいえ、それほど広いイメージはありませんよね。私も福岡に来るまではそう思っていました。
確かに新幹線を使えば、1か所を除き、どの県庁所在地にも2時間以内で着くことができます。

博多⇒佐賀:約40分
博多⇒長崎:約1時間30分
博多⇒熊本:約30分
博多⇒大分:約1時間40分
博多⇒鹿児島:約1時間20分

ところが1か所だけ、九州の広さを感じさせるところがありまして、それは宮崎です。
博多から宮崎までは、最速でも3時間20分(新幹線&高速バス)かかります。ちなみに、日本一長い距離を走る特急(夜行を除く)は、博多と宮崎空港を結ぶ「にちりんシーガイア」で、413kmを5時間以上かけて走るそうです。こんど乗ってみようかな。

先週、地震の数日前に宮崎に行く機会がありまして、飛行機で行きました。福岡-宮崎便は1日10往復以上あって、わずか45分で着いてしまいます(空港の混雑で実際には1時間以上かかりましたが)。私が乗ったANA便はプロペラ機でした。

このように福岡からの時間距離が遠い宮崎ですが、直近の国政調査(2020年)で宮崎県の転入元・転出先を調べてみると、福岡とのつながりは強く、特に若い人が福岡に転出していると思われます。

<転入元>
鹿児島県:8,759人
福岡県 :8,364人
東京都 :4,541人

<転出先>
福岡県 :14,696人
鹿児島県:8,134人
東京都 :7,226人

<転入・転出超過数>
福岡県 :6,332人
東京都 :2,685人
神奈川県:1,133人

ちなみに『福岡大学学園通信』第73号(2022年4月)の「全国から集まる福大生」によると、宮崎県出身の福大生は九州のなかでは最も少なかったとはいえ、多くの出身者がいます。
時間距離は遠くても、同じ九州という意識が強いのかもしれませんね。

 

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金融庁のリソース拡充を

猛暑が続くなか、ようやく季節行事(定期試験&採点やオープンキャンパス)が終わり、キャンパスが静かになりました。
さて、保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1244(2024.8.5)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。
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有識者会議の指摘

金融庁が6月に公表した「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書は、いわゆる「損保問題」を受けた今後の保険業界の動向を知るうえで重要な手掛かりです。
ところで、この報告書の6ページに、次の2つの注記が付いているのをご存じでしょうか。「(大規模代理店に対して)金融庁及び財務局によるモニタリングを強化すべきである」のところです。

「IMFによる日本に対する金融セクター評価プログラムにおいては、金融庁に対し、保険監督に適切な人的リソースを配置し、立入検査を通常の監督プロセスの一部として実施すべきであること、及び大規模代理店等に対しては直接的な監督を行うなど、保険代理店等に対するリスクベースの監督業務のプロセスを開発すべきであること、との指摘もある」

「金融庁及び財務局において、保険会社及び代理店へのモニタリング強化のために必要な人員増強を行うべきである、との指摘もある」

2つめのほうは、会議のなかで(特に第4回)、金融庁の人員強化を図るべきだという意見が複数のメンバーから出たためだと思いますが、1つめのほうは多少解説が必要かもしれません。

IMFの指摘とは

IMF(国際通貨基金)の金融セクター評価プログラム(FSAP)とは、IMFが加盟国の金融部門の安定性を評価するプログラムで、日本を含む主要国は5年に一度審査を受けています。いわば金融庁が外部から検査を受けるという枠組みです。FSAPの指摘を金融庁は重く受け止めます。
2023年から24年にかけてのFSAPでは、IMFは日本の保険監督について、全体的には良好な水準としたうえで、かなり本質的な指摘をしています。例えば次のような指摘です。

・金融庁の保険監督アプローチはリソースの制約のため事後対応となっていることが多い。

・監督のほとんどは業界全体としてテーマになっていることについて実施され、個々の保険会社の定期的な監督サイクルの一環として行われていない。

・集中的な監督は主に問題が特定されてから開始され、多くはリスクが顕在化してから行われる。

「リスクの芽を摘むこと」ができるのか

筆者が任期付職員として保険行政に携わっていた約10年前の金融庁では、通常のモニタリングのほか、主要会社には概ね一定の周期ごとに立ち入り検査を行っていました。問題がある会社だから立ち入り検査を行うというのではなく、検査対象の保険会社の事業特性やリスク特性に基づき、当時の保険検査マニュアルから数項目を対象にして検査を実施していました。そして、当時もリソース不足は深刻でした。
その後金融庁の検査・監督方針が変わり、「従来の検査・監督のやり方のままでは、重箱の隅をつつきがちで、重点課題に注力できないのではないか」「バブルの後始末はできたが、新しい課題に予め対処できないのではないか」「金融機関による多様で主体的な創意工夫を妨げてきたのではないか」といった、主に銀行検査に関する問題意識のもとで、検査・監督一体の継続的なモニタリングへ移行し、2018年には検査局が廃止されました。

保険分野は大きな販売部隊(代理店を含む)を抱えているうえ、銀行に比べると、保険会社の経営内容は総じてわかりにくいとされているにもかかわらず、周期的な立ち入り検査をなくしてしまったことで、問題の早期把握が難しくなった点は否めません。
かつての検査が「重箱の隅をつつきがち」だった面はあるにせよ、頻繁な異動等により保険分野の知識が必ずしも十分ではない検査官でも、保険分野に明るいベテラン職員の支援を受けながら、ある程度時間をかければ問題を発見することができました。ところが、現在の「継続的なモニタリング」では、保険分野の知識がないと、表面的になぞっただけで終わってしまいます(保険会社は自らに都合の悪いことを当局に進んで示すでしょうか?)。結果として、近年は問題が発覚してから立ち入り検査を行うというスタイルになってしまったようです。
朝日新聞の柴田秀並記者は近著『損保の闇 生保の裏』のなかで、「金融庁による金融機関へのモニタリングの意義は『リスクの芽を摘むこと』にある。大炎上してから動くのは『敗戦処理』にすぎない」と述べていますが、まさに同感です。

有識者会議メンバーやIMFが指摘するように、金融庁は保険監督に適切な人的リソースを配置して、保険分野の抱えているリスクや顕在化した問題に対処する必要があるでしょう。少なくとも、たまたま現場に配属された担当者の頑張りだけでは無理があると思います。
あるいはIMFが以前から提案するように、健全な保険市場を育てるためには、政府予算の制約を受けにくい「保険サービス監督機構」のような組織の実現を目指すべきなのかもしれません。
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※週末はオープンキャンパスでした。

 

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最近の執筆と講演

備忘録を兼ねて、最近の執筆・講演についてご紹介します。

週刊金融財政事情

2024年7月23日号に「大手損保グループの2024年3月期決算分析(会員限定)」を寄稿しました。
タイトルのとおり決算分析が中心ですが、「国内事業の改革を促す経済価値ベースの新規制」という項目を設け、経済価値ベースのソルベンシー規制の本質を踏まえると、3大損保グループの経営にとっても影響は決して小さくないという話をしています。

インスウオッチ(inswatch)

いつものWeekly版とは別に、7月26日のInswatch professional Reportに「『損保問題』を踏まえた今後の保険業界の方向性を探る」を寄稿しました。
大手損保グループの決算について触れた後、「損保問題」はプロ代理店にとっても影響は大きいと考えるべきと述べています。

「保険会社が何十年も変えられなかったコンダクト(企業行動)をそう簡単に変えられるとは思いませんが、外部環境はそれを許しません。しかも、自ら経営のグローバル化を進めた保険会社において、国内事業だけが過去のままということはありえません。各社の中期経営計画などを見ても、保険会社は過去からの取引慣行を断ち切ろうとしています。『顧客は代理店ではなく契約者』を徹底するでしょうし、トップラインよりも、リスクに応じた引き受けを重視する方向に向かうはずです」(レポートより引用)

日本共済協会

7月19日の「業務研究会」でオンライン講演を行いました。演題は「2023年度決算にみる生損保経営の現状と課題」です。
当日のオンデマンド動画は会員限定ですが、昨年12月8日に「共済理論研究会」で行った講演「保険会社は新型コロナ感染症リスクにどう対応したか--台湾と日本の事例から」はこちらからご覧いただくことができます。

貿易保険の懇談会

4月から6月にかけて経済産業省「貿易保険の在り方に関する懇談会」メンバーとして貿易保険のリスク管理や財務基盤強化の議論を行い、先日その報告書が公表されました。
貿易保険は日本の企業が行う海外取引(輸出・投資・融資)の輸出不能や代金回収不能をカバーする保険で、政府が100%出資する株式会社日本貿易保険(NEXI)が担っています。

他にも「損保総研の損害保険特別講座(7月10日)」「日本代協・近畿阪神ブロック協議会(7月23日)」「投資家向けセミナー」で講師を務め、今週末(8月3日)には福岡大学のオープンキャンパスで「リスクとどう向き合うか」という話をする予定です。

※梅田といえばこれですね!

 

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いまどきの野球観戦

久しぶりにプロ野球観戦を楽しみました。福岡ドーム(みずほPayPayドーム)での観戦は初めてです。
福岡ソフトバンクは屈指の人気球団で、入場者数は阪神、読売に次ぐ第3位。当日も大勢の観客でにぎわってました。なかでも女性が多くて驚きました。年齢層も幅広かったですね。

目の前では真剣勝負が繰り広げられていて、チャンスにタイムリーヒットが出ると観客席が盛り上がるのですが、みんなが自分の席に張り付き、観戦に熱中しているかといえば、熱心な応援団が陣取る外野席の一部を除き、意外にそうでもなかったりします。
斜め前に座っていた家族?は、しばらく席を離れていたので帰ったのかと思ったら、終盤になってひょっこり現れたり、隣りのカップルは球場グルメが目的だったのか、席とお店(たぶん)を行ったり来たり。福岡ドームは選手とコラボしたメニューがたくさんあって、確かにこれは楽しそうです。
もちろん、ビールの売り子さんも健在です。ただ、どちらかといえばビール以外の飲み物やアイスクリームのほうが目立っていました。「オヤジがビール片手に観戦」というのは少数派だったかもしれません。

試合の合間にはイニングごとにイベントがあって、こちらもショーのようでした。風船を飛ばす(7回裏)だけではなく、ダンスがあったり、ペンライトを使ったりと大忙し。スポンサーによるイベントも多く、おそらく球団にとって大きな収益源となっているのでしょう。
この日はホークスが勝ったので、最後はヒーローインタビューの後に「勝利の花火」もありました。

いまどきの野球観戦はスポーツ観戦というよりも、いわばエンターテイメントなのですね。

 

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資産運用成果の報道

GPIF 昨年度の運用実績 過去最大45兆4000億円余の黒字に(NHK)

昨年度のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用実績が45.4兆円の黒字だったという報道です。国内債券はマイナスでしたが、内外株式の時価上昇が大きく寄与しました。ちなみにGPIFの2023年度末の運用資産額は246兆円です。

「大学ファンド」昨年度純利益 1000億円超の黒字 文科省やJST

国が重点的に支援する「国際卓越研究大学」などへの財源として、国が10兆円規模で運用している「大学ファンド」の運用による純利益が1167億円の黒字だったという報道です。こちらはGPIFとはちがい、実現損益に注目していることになります。ちなみに2023年度の大学ファンドの運用実績は9934億円でした。

たまたま情報を入手しやすいNHKニュースを取り上げていますが、他の報道機関も概ね同じ傾向です。同じ資産運用の成果を報道しているのに、どうしてGPIFでは2023年度の収益額(=運用実績)を報道し、大学ファンドでは運用実績ではなく当期純利益(=実現損益)を報道するのでしょうか。大学ファンドの運用成果を知りたいのであれば、実現損益に意味があるとは思えません。売却すれば実現益はいくらでも「操作」できますよね。

私は農林中金の一連の報道にも強い違和感を感じました。農林中金は総資産の6割を占める「市場運用資産」の約7割を外国債券と海外クレジット投資に振り向けた結果、期待に反し、海外金利の上昇で時価が下落してしまいました。すでに2022年度末には時価下落(=運用の失敗)がわかっていたにもかかわらず、大きなニュースになったのは、農林中金が多額の含み損を処理するとなってからでした。
しかし、重要なのは損失の処理ではなく、損失の発生だと思うのですね。実現損益を出さなければ問題にしないのは、会計の呪縛としか言いようがありません。

それとも読者は実現損益を知りたいのであって、こんなことを書く私が少数派(=そういう人は自分で調べればいい)ということなのでしょうか

※韓国・大邱は教会の町でした。

 

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売買上手のJリーグに

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1240(2024.7.8)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。今回取り上げたのは「カズ」の人気コラムです。
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カズの新たな挑戦

サッカー元日本代表のカズこと三浦知良選手は、私と誕生日が3日違いの同い年で、勝手に親近感を抱いています。先日ポルトガルから帰国し、今月からJFL(公式サイトによると、企業チーム、Jリーグ入会を目指すクラブ、地域のアマチュアクラブなどが参加するリーグ)のアトレチコ鈴鹿クラブに期限付きで移籍加入し、現役選手としてプレーすることになりました。14日から自身の持つJFL最年長ゴール記録の更新を狙い、ゴールと勝利を目指します。
さすがに近年は出場機会が減っているようですが、57歳になってもプロスポーツの世界で挑戦し続ける姿には圧倒されます。

コラム『サッカー人として』

日本経済新聞を読んでいるかたであれば、三浦選手の連載コラム『サッカー人として』をご存じだと思います。私はこのコラムの愛読者でして、時々「本当に本人が書いているんだろうか?」と思うような鋭い内容もあって、おすすめのコラムです。

6月7日掲載の「売買上手のJリーグに」もそうでした。欧州と日本のサッカー市場を比べた内容で、日本のスポーツ界はせいぜい「出したお金の元がとれるかどうか」という発想なのに対し、欧州は投資した資産の価値を高め、ベストの売り時を逃さないという意識でビジネスをやっていて、選手も条件次第で出ていくことにためらいはない。同じサッカーでも全く違う世界だというのですね。
その結果、欧州ではJリーグに所属する選手の商品価値はないに等しく、Jリーグは日本選手をタダ同然で欧州に譲り、そこで活躍して市場価値が跳ね上がるという構図だとか。コラムではわかりやすく極端に述べている面はあるにせよ、これは日本選手の実力の問題ではなく、日本のスポーツビジネスが世界標準ではない、あるいは世界と同じ土俵ではないということなのでしょう。これは強烈な指摘です。

グローバル保険グループを目指している大手保険グループの国内事業が、30年前と変わらないトップライン重視、シェア重視だったり、あるいは、いまだにリスクマネジメントの専任担当者を置かず、保険購買を人事・総務部門や企業内代理店に委ねている大企業が決して少なくなかったりするのを見ると、日本企業がグローバルな資本市場から高く評価されないのは当然かもしれません。カズの指摘と同じなのですから。
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※福岡に来た息子からプレゼント!

 

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