減損リスクとは

26日の日経「持ち合い株の価値2.3兆円減 資本目減り 減損リスクも(有料会員限定)」という記事に違和感を覚えました。

最初の部分だけ引用しますと、「新型コロナウイルスの感染拡大による株安が、2020年3月期の企業の利益や資本を直撃する可能性が高まっている。上場企業が保有する政策保有株(持ち合い株)の価値は、25日時点で昨年3月末から2兆3800億円減った。買収した上場子会社の株価が取得価格から5割以上下がった例もあり、減損リスクもくすぶる。(後略)」とのこと。

株安が利益や資本を直撃するというのはいいとして、「減損リスク」とはどのようなリスクなのでしょうか。

日本の会計基準において、政策保有であろうとなかろうと、株式(売買目的区分を除く)を保有していれば、取得原価から50%以上下がると、減損処理(評価損を計上)する必要がありますし、30%以下でも株価の回復可能性により減損することがあります。「減損リスク」とは、株価下落により企業が評価損を計上し、会計上の損益が減ることを指していると考えられます。

しかし、考えてみましょう。株価が49%下がっても、回復可能性があると判断すれば減損処理の必要はなく、損益への影響は全くありません。
これが運用会社であれば、1%分の違いがあるとはいえ、どちらも購入時点に比べて大きな損失を出してしまったと考えるはずです。ところが上場企業となると、会計上は50%下落だと多額の損失計上、49%下落だと損失計上なしですから、これで見てしまうと天と地ほどの差があります
この会計基準がおかしいと主張しているのではありません。ただ、企業価値の拡大を目指すまともな経営者であれば、重要なのは株価下落によって企業価値が下がってしまったことであって、減損の有無ではないはずです。

こうしてみると、記事にある「減損リスク」とは、株価下落によって損失を抱えるリスクではなく、会計上の損益が減損処理によって悪化し、損益を重視する外部ステークホルダー(マスメディアを含む)が悪い評価をする、つまり、一種の評判リスクのことなのでしょう。
会計基準は単なるモノサシなので、企業の実態をつかむ手掛かりにすぎません。それにもかかわらず「減損リスク」として減損の有無に過度に注目するのは、企業の見方としてどうなのかなと疑問に思います。

※浜離宮の菜の花です。

 

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超低金利が浮き彫りにする金融機関経営の課題

インシュアランス生保版(2020年3月号第3集)にコラムを執筆しました。
タイトルが長くなってしまい、編集者にご迷惑をかけたかもしれません。
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金融関係者が集まる会合で話をする機会があり、超低金利の継続が銀行と生命保険会社の経営に及ぼす影響について解説した。
日本銀行のマイナス金利政策による副作用として銀行の収益悪化が挙げられている。多くの生命保険会社にとっても、金利水準の低下は経営を圧迫する要因だ。しかし、低金利が銀行にも生命保険会社にも悪影響を及ぼすとは、考えてみれば不思議ではないか。

低金利と銀行経営

かつて銀行はむしろ金利低下の恩恵を受けていた。銀行は預金などの短期調達と、貸出金などの長期運用の利ザヤが主要な収益源の1つであり、イールドカーブ(利回り曲線)が右肩上がりであれば、比較的容易に収益を稼ぐことができた。しかも、金利低下に合わせて預金金利を下げれば、貸出金が折り返しとなるまで利ザヤは拡大する。バランスシートで説明するならば、金利低下で資産価値が高まるのに対し、負債(預金)の価値はあまり変わらないため、純資産(資産-負債)は増加する。ところがマイナス金利政策で、短期金利から10年金利までほぼ0%となり、イールドカーブが右肩上がりでなくなってしまった。これでは長短金利差に起因する利ザヤを稼ぐことはできない。

伝統的な銀行ビジネスの利ザヤの源泉は長短金利差と、貸出先の信用リスクである。マイナス金利政策で利ザヤが稼げなくなったのは、イールドカーブの平坦化以前の問題として、信用リスクに応じた貸出が質、量ともにできていなかったためだ。個人だけでなく、企業も資金余剰主体となって久しく、特に地方部では人口減少の影響も資金需要に影響を及ぼしている。ただ、あえて厳しい言いかたをすれば、これらは20年以上前からわかっていた話であり、銀行経営者は金利低下の恩恵を受けていた時期にビジネスモデルの修正を行うべきだったのだろう。

低金利と生保経営

生命保険会社はどうか。銀行になぞらえれば、多くの生保は保険販売による超長期調達(しかも固定金利)と、有価証券を中心とした長期運用という資金構造であり、金利水準が下がると固定金利の保険負債が重荷となる。2000年前後に中堅生保の経営が相次いで破綻したのは、1990年代前半からの金利低下に耐えられなかったことが一因だ。その後も金利水準は下がり続け、ついにマイナス金利となっても今の生保が一定の健全性を確保できているのは、株式などの資産運用リスクを減らし、保障性商品の販売に力を入れることで、資産運用以外でリターンを上げるビジネスモデルを構築・維持してきたためだ。

もっとも、マイナス金利政策以降の生保経営には首をかしげることも多い。経営リスクを保険引き受けではなく、外国証券など資産運用によるリスクテイクに配分する行動が目立ち、その一方でコストのかさむハイブリッド調達(劣後債発行など)を積極的に行っている。こうした姿を見ると、生保のビジネスモデルの持続性にも危うさを感じる。地域金融機関の苦境は対岸の火事ではない。
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※写真は桜島です。福岡から鹿児島まで新幹線で1時間ちょっとなのですね。

 

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4月から大学教員となります

今回は個人的なお知らせです。
4月から福岡大学商学部の教員を務めることになりました。常勤なので、週の多くは福岡暮らしです。
マンションを借り、家具や家電などを準備して、ようやく4月から生活できる環境が整いました。

ただし、キャピタスにも非常勤として残り、月に数回は東京にも帰ってくる予定です。
ですから、ある程度はこれまでの業務に携わることになります(大学の兼業規定の範囲内で)。

大学では「保険論」「リスクマネジメント論」を担当します。福岡大学は福岡高等商業学校をルーツにもち、かつて石田重森先生が学長を務め(1995~99年)、日本保険学会の九州部会を主宰するなど、保険研究の盛んな大学と聞いています。
もっとも、新型コロナの影響で授業開始が2週間伸びてしまったので、残念ながら学生の皆さんにお目にかかれるのはしばらく先ですね。

ということで、本来は直接お伝えしたかったかたも大勢いらっしゃるのですが、新型コロナで多くの会合が中止となり、そうこうしているうちに、あと1週間で就任となってしまいましたので、ブログでお伝えすることにしました。
皆さま、引き続きよろしくお願いいたします。

 

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新型コロナの国別感染状況

欧州各国で新型コロナウイルスの感染者数が急速に増えています。
日本の感覚からすると、そもそもどうしてそんなに検査ができるのだろうかと思ってしまいます。ドライブスルー方式など、検査の手法がかなり異なるのでしょうね。

人口100万人当たりの感染者数が100人を超えているのは中国湖北省(1146人)のほか、

 韓国:160人
 イラン:156人
 イタリア:349人
 スペイン:123人
 スイス:159人
 ノルウェー:141人
 デンマーク:139人
 バーレーン:134人

となっています。あくまで3月15日時点のもので、欧州を中心に日に日に数字が大きくなっている状況です
(元データは日経「新型コロナウイルス感染世界マップ(3月15日)」、人口は容易に入手できた2018年のもの)。

次に、感染者数の多い国を中心に、人口100万人当たりの死者数を確認してみました
(元データは同じ)。

日本:0.2人
中国:2.2人
 湖北省:52.1人
 それ以外:0.1人
韓国:1.5人
イラン:7.5人

イタリア:23.8人
スペイン:2.9人
フランス:1.4人
スイス:1.3人

ドイツ:0.1人
イギリス:0.3人
ノルウェー:0.2人
デンマーク:0人
スウェーデン:0人

カタール:0人
バーレーン:0人

米国:0.1人

人口に占める感染者の割合が高くても、死亡者の多い国と少ない国があるのがわかります。もちろん、他の死因と比べて52人や23人が高いのかどうかという議論もあると思いますが、少なくとも人口対比で比べたほうがよさそうです。

日本の死亡者数は足元でやや増えてきましたが、何とか踏みとどまってほしいです。

※写真は武蔵小杉の遠景です。元住吉駅から。

 

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日本の保険会社はどこで資本を使っているか

inswatch Vol.1023(2020.3.9)に寄稿した記事をご紹介します。
金融市場の混乱で株安、円高、金利低下となっているので、まさにリスクテイクが裏目に出ている状況で決算期末を迎えそうです。
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経営リスクの数値化

保険会社のリスクマネジメント手法の1つに、経営リスクを数値で示し、自己資本等と対比するというものがあります。
保険会社の抱える経営リスクのすべてを数値化することはできないにしても、保険引受に伴うリスクや株価下落に伴うリスクなど、主要なリスクカテゴリーに関しては、リスクを1年間に一定の確率で発生しうる損失額として数値(金額)で示す実務が普及しています。
これらを自己資本等と対比することで、経営として抱えているリスクが経営体力の範囲内に収まっているかどうかを確認できます。

資本の活用

同じ話を資本の出し手(株式会社の株主や相互会社の社員)から見るとどうなるでしょうか。
資本の出し手が保険会社に出資しているのは、保険会社の経営者がリスクを引き受けることでリターンを上げ、そこからの還元を受けるためです。リスクを引き受けるとは、すなわち資本を使うということ。だからこそ、リスクのことを「所要資本」とも言います。資本の出し手としては、出資した資本を有効に使ってもらいたいので、保険会社が実際にどこでどれだけ資本を使っているかは重要な情報です。
多くの上場保険グループが内部管理として計測したリスクと自己資本等を公表しているのは、このような背景があります。

どこで資本を使っているか

昨年12月に金融庁が公表した資料「2019年フィールドテストの結果概要」の7、8ページに、金融庁が指定した手法により計測した保険会社の経営リスク(所要資本)の内訳が載っています。
有識者会議の資料(PDF)

<生命保険会社(単体ベース:41社計)>
・保険リスク 34%(解約・失効リスクが最も大きい)
・市場リスク 54%(株式、金利、為替のリスクが大きい)

<損害保険会社(単体ベース:51社計)>
・保険リスク 36%(巨大災害リスクが最も大きい)
・市場リスク 58%(株式リスクが大きい)

いかがでしょうか。PDFファイルで元の図表をご覧いただいたほうが、より明らかなのですが、日本の保険会社は保険引受に伴うリスクよりも、市場リスク、つまり金融市場の変動に伴うリスクのほうがずっと大きいことがわかります。保険会社なのに不思議に思えますよね。

資本の使い方は適切なのか

資金の出し手からすると、保険会社の経営者は資本をいわば「本業」である保険引き受けではなく、主に資産運用でリターンを上げるために使っているという現状をどう考えるかということになります。
もし、日本の保険会社が資産運用に強みを持ち、中長期的に高いリターンを上げることが期待できるというのであれば、適切な資本の使い方をしていると言えるでしょう。ただ、過去のトラックレコードからすると、必ずしも結果が出ていないようにも見えます。
保険会社の経営者は今の資本の使い方について、資本の出し手が納得できるような説明をする必要があります。相互会社であれば、説明の相手は契約者です。
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※写真は早稲田大学です。授業開始は4月20日以降だそうです。

 

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インデックス保険

本日(3月8日)時点では東京海上日動からの正式発表はありませんが、日経が報じた「災害時の保険金、即日払い(有料会員限定)」が気になりました。

この地震リスクを対象にした「インデックス保険」は、損害の有無にかかわらず、あらかじめ決めておいた条件(例えば「横浜市港北区で震度6弱以上の地震が発生」など)に該当すれば、手続きがなくても保険会社が即日で保険金を支払うというものです。
通常の損害保険では保険会社が損害調査を行い、損害の程度に応じて保険金を支払います。ただし、特に大規模な災害になると、損害調査が終わり保険金を支払うまでに相当な時間がかかります。これに対し、新しい「インデックス保険」は、保険金をすぐに受け取りたいというニーズに応えることができます。
損害調査がなく、予め設定した条件に合致すれば支払いが発生するというのは、キャットボンドなどの保険デリバティブと同じですね。

加入者から見たインデックス保険のデメリットとしては、まず、ベーシスリスク(受け取る保険金額と実際の損害額が異なるリスク)が考えられます。同じ震度6弱でも多額の損害額となる場合もあれば、ほとんど損害が発生しない場合もありますが、この保険で受け取れるのは予め定めた金額だけです。
とはいえ、報道によると、保険金額は最大50万円とのことですから、火災保険の地震火災費用特約を独立させたような位置付け(つまり、お見舞金のような役割)なので、ベーシスリスクはあまり問題にならないということなのでしょう。

もう1つは、最大50万円の保険金額に対し、年間保険料が1万円弱というのが妥当なのかという点です。
通常の地震保険と比べるとかなり高いように見えますが、損害調査のコストがかからない一方で、震度6弱以上であれば自動的に保険金を支払うので、通常の地震保険よりも支払額が大きくなりやすいと見込んでいるのでしょうか。あるいは、即日払いのほかに何か加入者のメリットがあるのかもしれません。

この点は、もしネット上にインデックス保険(保険ではなくてもいいのかもしれません)の市場ができて、例えば「横浜市港北区」「震度6以上」で検索すると、複数の会社から価格の提示がある、といった世界になれば、競争原理が働きやすくなるのでしょうね。

<3月9日加筆>
東京海上がインデックス保険(震度連動型地震諸費用保険(PDF))の販売を公表しました。地震発生から最短3日で保険金を受け取ることができるそうです。
契約プランが「プレミアム」「スタンダード」「エコノミー」の3パターンあり、プレミアムとスタンダードは震度6弱以上、エコノミーは震度6強以上で保険金が支払われます。

・プレミアムの保険金額は、震度7で50万円、震度6強で20万円、震度6弱で10万円で、年間保険料は9600円
・エコノミーの保険金額は、震度7で20万円、震度6強で5万円、震度6弱では0円で、年間保険料は2400円

私は鉄筋コンクリート造の建物に住んでいるので、震度7でしか支払われないけど、保険金を50万円受け取れる「プレミアムエコノミー」(年間保険料は5000円くらいでしょうか?)がほしいと思いました。

※写真は横浜アリーナです。

 

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格付情報の活用

かつての生保危機の時代に比べると、保険会社の格付が注目されることは少なくなりました。
それでも格付会社の出す情報は、ディスクロージャー誌やIR資料とともに、保険会社の経営内容をつかむうえで貴重な情報源です。

格付会社の出す情報は格付符号だけではありません。例えば私が以前所属していた格付投資情報センター(R&I)の場合、原則として1年に1回は格付を見直し、格付に変化がなくてもコメントを発表しています。
R&Iのサイトへ

R&Iは2月21日に大手生保グループ4社(日本、第一、住友、明治安田)の格付を維持したと公表しました。
4社ともAAゾーンという高い格付ですが、リスク耐久力に対する次のような共通したコメントに注目しました。

「2019年度はグローバルに金利低下が進行し、ALM(資産・負債の総合管理)リスクが大きい大手生保の経営への逆風は強まっている。国内の超長期金利は8月から9月にかけて2016年6月末以来の水準まで切り下がり、〇〇生命グループの経済価値ベースのリスク耐久力は格付対比で見劣りする状態まで悪化したとR&Iでは考えている」

その後、金利が若干ながら持ち直し、リスク耐久力もやや回復したため、現時点で格付の見直しを行わなかったということですが、R&Iは金利の影響をかなり気にしていることがうかがえます。

公表文を細かく見ると、リスク耐久力の評価に違いがあることも見えてきます。

<日本生命グループ(AA)>
「資産運用リスクの削減に取り組んでいるものの、収益確保の観点から大幅な削減は進められていない。株式リスクも大きく、リスク耐久力は金融・資本市場の変動の影響を受けやすいことからAAゾーン下位と評価している」

<第一生命グループ(AA-)>
「(自己資本の拡充やリスクコントロールなど)これらを勘案すればグループのリスク耐久力はAAゾーンに見合う水準を維持できるとみている」

<住友生命グループ(AA-)>
「(前略)株式など価格変動リスクの保有は大手生保の中でも低く、ALMリスクをコントロールしている。グループのリスク耐久力の安定性は相対的に高く、格付に見合う水準を維持できるとR&Iはみている」

<明治安田生命(AA-)>
「資本の充実度を背景にリスクを取って利回り確保に取り組んでおり、株式リスクなど資産運用リスクの削減はあまり進んでいない。経済価値ベースでみると金利低下の影響が上回り、EV(エンベディッド・バリュー)は減少傾向にある。リスク耐久力はAAゾーン下位と評価している」

保険会社の格付情報がメディアで取り上げられることは滅多にありませんが、生保の経営内容に関心のあるかたは、時々格付会社のサイトをチェックしてみてはいかがでしょうか
(ただし、S&Pとムーディーズは無料で得られる情報は限定されています)。

※エール交換だそうです

 

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アルコール離れ

ニッセイ基礎研究所の久我尚子さんによるレポート「さらに進んだ若者のアルコール離れ」をきっかけに、若者および中高年のアルコール離れが話題になっています。
若者のほうは、飲酒習慣率が下がったということだけでなく、飲めるけど、あえて飲まない「ソーバーキュリアス」が20代の約4分の1を占めているとのこと。ソーバーキュリアス(Sober Curious)とは初めて耳にしましたが、飲まないのがクールという風潮なのでしょう。

せっかくなので、飲酒習慣率(飲酒習慣者の割合)のデータを厚生労働省「国民健康・栄養調査」で確認してみました。
この調査では、週に3回以上飲酒し、飲酒日1日あたり1合以上を飲酒するという回答を飲酒習慣者としています(日本酒1合はビール500ml、ワイン1/4本)。私は毎日は飲みませんが、この定義だと飲酒習慣者です。

まず、飲酒習慣者の割合は男女で大きな差があります。2017年の結果では、男性33.1%に対し、女性8.3%でした。
ただし、かつてに比べ、その差はかなり縮まってきました。男性の飲酒習慣率が下がる一方、女性はどちらかといえば上昇傾向にあるためです。

久我さんは1997年と2017年のデータを比べていて、確かに男性はどの年代でも飲酒習慣者の割合が減っています。
私の世代(50代男性)の2017年の飲酒習慣率は43.8%ですが、20年前の50代男性は61.2%も飲酒習慣者がいたのですね。ついでに言えば、喫煙習慣のある人も6割近かったようで、確かに当時の飲み会はたいてい煙くて嫌でした。

さらに、この20年間を前半の10年間(1997年から2007年)と後半の10年間(2007年から2017年)に分けて比べてみました。すると、30代と40代は継続的に比率が低下しているのに対し、20代および50代以上は前半の10年間のみ下がっています。
飲酒習慣率は30代あたりで高まります。2017年の40代は2007年の30代、1997年の20代に相当するので、それまでの世代とちがい、1997年の20代からは年齢を重ねても飲酒習慣がつきにくくなったと言えそうです。健康志向や職場の飲み会の減少といった世代に共通した理由のほか、雇用環境などこの世代以降に特有の理由があるのかもしれません。

※地元・大倉山の梅祭りです。

 

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地域金融機関の経営統合

2月7日に金融庁は地域金融機関の経営とガバナンスの向上に資する主要論点(コア・イシュー)を公表しました(3月9日までパブコメ受付中)。

「あくまで経営トップや取締役会等が自らの経営やガバナンスの現状を振り返るに当たって、参考として活用されることを目的とするもの」
「金融庁のモニタリングにおいて、本文書を一つの解を前提にチェックリストとして用いるものではなく、いわゆる『コンプライ・オア・エクスプレイン』を求めるものではない」

と明記されていますが、これまでの地域金融機関の動きの鈍さや危機意識の低さに金融庁は業を煮やしているのでしょう。

ところでクイズです。次の銀行持株会社の傘下にある銀行はどこでしょうか?

1.じもとホールディングス
2.めぶきフィナンシャルグループ
3.三十三フィナンシャルグループ
4.西日本フィナンシャルホールディングス
5.九州フィナンシャルグループ

すべて答えられたら、かなりの地銀通ですね♪

金融庁の遠藤長官は昨年末の共同通信のインタビューで、「地方銀行が地域の企業や経済を支える存在であり続けるための手段として有効ならば、他行との経営統合や合併、資本業務提携を進めるべきだ」と述べたそうです。ただし長官は、「金融庁が促しているのは健全性の確保であって再編ではない。統合や合併はそれぞれの経営判断だ」とも語っています。
合併してもビジネスモデルが変わらなければ時間稼ぎにしかなりませんし、持株会社方式の経営統合の場合は、時間稼ぎにもならないかもしれません。

週刊金融財政事情の2月10日号のコラム「支店長室のウラオモテ」にこんなコメントが載っていました。

「本部機能の一部を統合したところで、審査や人事機能が各行ごとのままであれば、行員の行動様式はまったく変わらない」
「(システムの一本化について)それぞれのシステム部門がベンダーの後ろ盾を得て優位性を主張しており、今後も全く話が進みそうにない。そうこうしているうちに、銀行の稼ぐ力は大幅に落ちてしまった。メンツ争いをしている時間的余裕はもうないはず」

金融庁が過剰介入の批判を覚悟して(?)地域金融機関の経営に関わろうとする気持ちもわかります。

<地銀を中核とした銀行持株会社>
・フィデアホールディングス(荘内銀行、北都銀行)
・じもとホールディングス(きらやか銀行:山形しあわせ銀行と殖産銀行が合併、仙台銀行)
・第四北越フィナンシャルグループ(第四銀行、北越銀行)
・めぶきフィナンシャルグループ(常陽銀行、足利銀行) 
・東京きらぼしフィナンシャルグループ(きらぼし銀行:東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京が合併)
・コンコルディア・フィナンシャルグループ(横浜銀行、東日本銀行)
・三十三フィナンシャルグループ(三重銀行、第三銀行)
・ほくほくフィナンシャルグループ(北陸銀行、北海道銀行)
・池田泉州ホールディングス(池田泉州銀行:池田銀行と泉州銀行が合併)
・関西みらいフィナンシャルグループ(関西みらい銀行:関西アーバン銀行と近畿大阪銀行が合併、みなと銀行)
・山口フィナンシャルグループ(山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行)
・トモニホールディングス(香川銀行、徳島大正銀行:徳島銀行と大正銀行が合併)
・ふくおかフィナンシャルグループ(福岡銀行、熊本銀行、親和銀行、十八銀行)
・西日本フィナンシャルホールディングス(西日本シティ銀行:西日本銀行と福岡シティ銀行が合併、長崎銀行)
・九州フィナンシャルグループ(肥後銀行、鹿児島銀行)

 

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国がちがえば主力商品もちがう

inswatch Vol.1019(2020.2.10)に寄稿した記事をご紹介します。
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ドイツ生保市場の変化

保険の国際的な規制を決めるIAIS(保険監督者国際機構)で2017年まで事務局長を務めた河合美宏さんが最近、日本経済新聞(電子版)へ寄稿した文章のなかで、ドイツでは低金利と新たな健全性規制への対応として、生保業界の主力商品が変化したという紹介がありました。
伝統的な利率保証のある長期の貯蓄性商品(養老保険や個人年金保険)から、利率保証が限定(既払い保険料のみ保証)される一方で、伝統的な商品よりも高いリターンが期待できる「ハイブリッド年金保険」という投資性商品にシフトしたというのですね。

主力は個人年金

ドイツ生保の商品構成については、金融庁の「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議」第3回の資料に掲載されています。
資料によると、ドイツ生保は定期保険や就業不能保険などの保障性商品も取り扱っているものの、個人年金のように老後に備えた貯蓄性商品を中心に提供していることがわかります。ユニットリンク型(変額型)は意外に普及しておらず、その点は日本と共通しているようです。

これに対し、日本で個人年金保険は生保の主力と言えるほど提供されていません。例えば、2018年度の個人分野の新契約年換算保険料(約3兆円)のうち、個人年金保険は17%(0.5兆円)を占めるにすぎません。新契約件数では、個人分野に占める割合は6%まで下がります。
保険料収入や新契約件数などを総合的にみて、日本の生保市場は死亡保障や生前給付保障、医療保障といった保障性商品が中心と言えるでしょう。

生保市場は地域性が強い

ドイツ以外の国でも、生保といえば貯蓄性商品(または投資性商品)というところは多いようです。
例えば、イギリスで生命保険といえば一時払いの個人年金保険ですし、最低保証のない変額タイプの商品や実績配当型の商品が多くなっています。年金開始前(ペンション)と開始後(アニュイティ)で商品が分かれているのも特徴です。米国も保険料収入で見れば個人年金保険の割合が大きく、大手生保グループの多くは自らを金融サービス事業者と規定しています(他方で米国では健康保険を民間保険会社が提供)。

生保市場は地域性が強く、国や地域によって特性がかなり異なっています(これは販売チャネルについても言えることです)。主力商品をちょっと比べただけでも、同じ「生命保険」「生命保険会社」とはいえ、日本の常識が世界でも同じとは限らないことがよくわかります。
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※大人の修学旅行 in 歌舞伎町。
 由緒あるバーにおじゃましました。

 

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