企業の情報開示

企業情報の開示や提供のあり方について検討してきた金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの報告書が公表されました。

政策保有株式の追加開示に注目

コーポレートガバナンス・コードとは違い、こちらは規制そのものに直結する話です。
例えば役員報酬については、経営陣の報酬内容・体系と中長期的な企業価値向上が結びついているかどうかという観点から開示の見直しが進められそうですし、政策保有株式に関しては、開示対象の拡大や買い増し理由の記載、純投資と政策投資の違いの説明などが求められるようになりそうです。

他方で、経営戦略・ビジネスモデル、MD&A、リスク情報などの開示に関しては、昨年12月の事務局説明資料で示された「日本の現状」に対し、WGの回答は「開示内容について具体的に定めるルールを整備するとともに、ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取組みを促すため、開示内容や開示への取組み方についての実務上のベストプラクティス等から導き出される望ましい開示の考え方・内容・取り組み方をまとめたプリンシプルベースのガイダンスを策定すべきである」といった指摘にとどまりました。
何かに的を絞った議論でないと、こうしたWGでは話が先に進まないのかもしれません。

「超同質集団」

ところで、最近話題になった日経記事「変わる経団連、変われぬ経団連」「経団連、この恐るべき同質集団(有料会員向け)」も、企業のディスクロージャーを活用したものですね。
正副会長19人が全員男性・日本人で転職経験がなく、1人を除き首都圏の大学出身で、最も若い人で62歳という超同質集団が、雇用制度改革や人事制度改革などに本気で取り組めるのかといった内容で、書いたご本人も年齢以外はこの集団と同質だったというオチもありました。

経済メディアには、日本経済が衰退すると新聞等が売れなくなり、広告も得にくくなるということで、もしかしたら広い意味で日本企業の中長期的な価値拡大を促す動機があるのかもしれません。また、ディスクロージャーが進むなかで、経済メディアがうまく活用してくれると、資本市場にとってもプラスの効果が期待できるでしょう。
話題の記事も、多様性を説く経団連のトップの実情を示すいい記事だったと思います。

経済メディアのあり方は

ただし、明日発表される予定の決算数値を今朝の新聞に載せることは、かつての価値観では特ダネとして称賛されたのかもしれませんが、考えてみれば、1日早く決算データの一部を世の中に示すことにどのような価値があるのでしょうか。
多くの人にとって迷惑なだけだと思いますし、仮に株価が動いたとして、喜ぶのは短期的スタンスの投資家であって、中長期的な投資家には余計な仕事が増える(かもしれない)だけです。ここを改めないと、経済メディアが政府から規制される日も近いかもしれません。

※先週の写真ですが、乗り物(?)2題。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

保険ビジネスはどこに向かうのか

3月のブログでご案内したとおり、20回目を迎えたRINGの会オープンセミナー・第1部に登壇し、コーディネーターを務めました。
パネリストの窪田泰彦さん(ほけんの窓口グループの会長兼社長)、横山隆美さん(AIGグループ損保の元経営者)、野元敏明さん(日本損害保険代理業協会の専務理事)には、それぞれのご経験を踏まえ、プロ代理店や保険会社に対して踏み込んだコメントをしていただき、ありがたかったです。

論客ぞろい

パネルディスカッションのコーディネーターにもいろいろなスタイルがあり、司会に徹することもあれば、パネリストと同じくらい話をすることもあります。
ただ、私がコーディネーターをお引き受けする場合、なぜか論客ぞろいのことが多いので、場をつなぐなんてことを考えなくてもいい半面、いかにパネリストから会場の皆さんが聴きたいことを引き出すかに腐心することになります
(そうでないと時間がいくらあっても足りないでしょうね^^)。

ということで、今回のセミナーでは「顧客」「保険会社」「行政」「代理店経営」について議論を行いましたが、パネリストの皆さんそれぞれに持ち味があり、事前の打合せでも、代理店経営者や保険会社に伝えたい内容がいくつも出てきました。
私も時間があれば、保険会社の経営姿勢や保険行政の考え方などを伝えたかったところですが、やはりというか、当日は時間があっという間にたってしまい、なんとか数分遅れで終了ということになりました。
とはいえ、このディスカッションが参加者の皆さんにとって、いろいろと考えるきっかけになれば幸いです。

保険ビジネスはどこに向かうのか

セミナー全般から感じたのは、保険流通の変化はむしろこれから本格化するということです。
確かにこの20年間にはいろいろなことがありましたが、第1部で申し上げたとおり、マクロ的に見れば、保険会社ほど保険代理店は変わっていないように見えますし、かつ、それでもやってこれたということなのでしょう。いわば「オオカミ少年」のような状況でしょうか。

午後2番目のパネルディスカッションで、コーディネーターがパネリスト3名に現状認識(キーワード)を問いかけたところ、ぜんち共済(障がい者向け保険)の榎本社長が「多様性」、ジャストインケース(スマホ完結の保険)の畑社長が「デジタル化」と答えたのに対し、プロ代理店のソフィアブレイン小坂社長の回答は「消耗戦」でした。
おそらく小坂さんが消耗戦で疲弊しているというのではなく、むしろ「保険の枠を超える」と話しているくらいですから、10年後に向けて着実に進んでいる代理店なのだと思いますが、この対比は何とも印象的でした。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

金融法制の見直し

業態別の金融法制の見直しを議論する、金融審議会「金融制度スタディ・グループ」が19日に中間報告を公表したので、さっそく読んでみました。
金融庁のサイトへ

今の金融規制体系は基本的に銀行、証券、保険といった業態ごとに業法が存在しています。
これを機能別・横断的なもの、すなわち、同じ機能や同じリスクには同じルールを適用し、同じ機能でもリスクが小さければ規制を軽くする、こうした規制体系にしていこうというものです。

「金融の『機能』の分類」という図表には、「保険業法/保険会社」⇒「リスク移転」とあるだけで、これだと業態別でも機能別でも変わらないように見えます。
ただし、本文のリスク移転のところを読むと、

「信用保証やデリバティブ取引、保険は機能的に類似する側面があるが、信用保証については特段の業規制は設けられておらず、また、デリバティブ取引を業として行う者については登録の対象とされているにとどまる」
「これに対し、保険を業として行う者については免許の対象とされ、当局による商品認可も求められているとの違いが見られる」

という記述がありました。もっとも、第4回の討議資料にはもっと論点が書いてあり、議事録によると、委員の皆さんもいろいろと発言されているのですが、うまくまとまらなかったようです。

あと、特に保険について言えば、海外では民間の保険会社が担うこともあるような機能、例えば年金や健康保険など社会保障の補完といった役割も視野に入れた議論が必要だと思いました。現在、長生きリスクへの備えは主に公的年金と個人の預貯金となっていますが、10年後の姿はどうなっているでしょうか。

※豊洲移転まであと4か月を切りました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

生保リテール戦略

6月18日号の週刊金融財政事情は「人生100年時代の生保リテール戦略」という特集でして、大手生保4社の商品開発責任者が自社の健康増進型保険や関連サービスについて語り、インシュアテックの第一人者である弁護士の増島雅和さんが寄稿しています
(そのあとの「規制のサンドボックス」でもPolicyPalが紹介されていますね)。

私も「超低金利と技術革新が迫るチャネル戦略の再構築」というタイトルで執筆しましたので、機会がありましたらどうぞご覧ください。

ちなみに本稿の図表として、「専属チャネルと乗合チャネルの違い」を出してみましたが、いかがでしょうか。

【専属チャネル(営業職員など)】
・高価格だが(保険会社いわく)充実した特定会社の保障をパッケージで提供
・信頼できる相手から話を聞いて買いたい(=受け身的)
・既契約市場(重ね売りや紹介など)
・乗合チャネルに比べれば商品開発・価格競争は緩やか
・営業職員の大量採用・大量脱落構造あり

【乗合チャネル(保険ショップなど)】
・保険会社から独立した立場から、シンプルで低価格(に見える)複数会社の商品を提供
・比べて買いたい(=自発的)
・イメージとしては都市部の20~40代
・商品開発・価格競争が激しい
・比較推奨販売に関する規制対応が重要

ところで、本誌を読み進めていくと、人気コーナー(?)「支店長室のウラオモテ」にこんな記述が…

「(ネット銀行で住宅ローンを)申し込まれるお客さまは、損得だけのシビアな判断をされる浮気性の方々。多くのお客さまは、一生の買い物だから返済に困ったときに銀行の担当者と会って相談できるかどうかを心配されている」

「浮気性の方々」とはしびれる表現ですが、「旧世界」の本音と不安を感じます。年間4万2000円の差額を乗り越えることのできる人間力はすごいと思いつつ、技術革新が進み、情報格差も解消していくなかで、いつの間にか「浮気性の方々」が増えていくような気もします。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

なぜ「ポートフォリオ変革」なのか

23日に横浜で開催されるRINGの会オープンセミナーは「満員御礼」だそうです。私は第1部のコーディネーターを務めますので、パネリストの興味深い話が引き出せるよう、準備を進めているところです。
さて、週の途中ですが、直近のinswatch Vol.932(2018.6.11)に寄稿しましたので、ご紹介しましょう。

なぜ「ポートフォリオ変革」なのか

3メガ損保や上場生保では、決算発表後の5月下旬に投資家・アナリスト向けの経営説明会を開いています。決算結果の説明だけではなく、経営トップ自らが今後の経営戦略を伝える機会となっていて、業界関係者にも役に立ちそうです。

各社の説明資料はこちらで入手できます。
 東京海上 
 MS&AD 
 SOMPO 

新中計で「ポートフォリオ変革」を掲げる

3メガ損保グループのうち、東京海上とMS&ADでは今年度から新たな中期経営計画がはじまり、今回の説明会でも中心テーマとなりました。
東京海上グループの重点課題には、「ポートフォリオの更なる分散」「事業構造改革(=販売チャネルの変革・強化など)」「グループ一体経営の強化」の3つが挙げられています。また、MS&ADグループの重点戦略は、「グループ総合力の発揮」「デジタライゼーションの推進」「ポートフォリオ変革」の3つです。
両グループとも業界再編や大規模買収により今の姿になったので、グループベースでの経営を強めようというのは自然な流れでしょう。その一方で、いずれも自らの「ポートフォリオ」、すなわち、収益・リスク構造のバランスをさらに変えようとしているのはどうしてなのでしょうか。

リスクポートフォリオの偏り

ヒントは各グループが開示している「リスク量の内訳」にあります。
保険会社では自らが抱える経営リスクを、例えば200年に1回の確率で発生しうる損失額などとして金額に置き換え、健全性の確保や資本効率の向上に活用しています。
東京海上の資料によると、リスク量として最も大きいのは「国内損保(資産運用)」で、全体の3割強を占めています。MS&ADでも国内損保の資産運用リスクがグループのリスクポートフォリオの3割強となっていますし、SOMPOでは自然災害リスクを抑えているためか、国内損保の資産運用リスクが5割弱に達しています(いずれも2017年度末)。地震や台風といった自然災害リスクを抱える損保グループで最も大きい経営リスクが資産運用のリスクというのは、考えてみれば不思議な話です。
言うまでもないかもしれませんが、国内損保の資産運用リスクの多くは、営業目的などで保有する国内株式によるものです。

海外事業拡大が本質ではない

中長期的な投資家の目線からすると、自然災害リスクは保険事業の収益の源泉であり、保険引受リスクのコントロールに強みがあると考えているからこそ、保険会社に投資します。
近年の国内勢による積極的な海外保険会社の買収には、日本に偏った事業ポートフォリオを分散するという意味もあると思います。もっとも、保険引受リスクの分散であれば再保険でも対応可能なので、海外M&Aをしなければ投資家がいい評価をしないというものではありません。
各グループともに事業ポートフォリオの分散を掲げ、海外事業の拡大を図るとしていますが、グローバル経営による成長を目指したいという経営者の判断によるものなのでしょう。

ところが、最大の経営リスクが国内株式保有によるものという現状を踏まえると、損保グループの経営者は、保険引受事業よりも日本株の保有のほうが高いリターンを安定的に上げられると考え、資本を最も多く使っていることになります。
ただし、株式投資に何か特別な強みを持っているのでなければ、投資家としては自分で株式投資を行ったほうが、少なくとも税金の分だけ有利なはずです。「特別な強み」など存在するのでしょうか。

政策株式保有を正当化するのは難しい

損保が保有するのは、いわゆる政策保有株式なので、株式を保有することで大企業から保険料を得ている面があります。しかし、かつての規制料率時代とは違い、コマーシャル分野は収入保険料を確保すれば利益が得られるという事業ではなくなりました。もはや株式投資における「特別な強み」とは言えません。
例えば、MS&ADは政策株式のROR(リスク対比リターン)を7~8%程度と示していますが、これは保険引受利益と配当をリターンとしたものだそうです。株価の変動を考えると、安定的に7~8%のリターンを上げられるものではありません。
損保グループの経営者もこうした状況を十分理解しているからこそ、中期経営計画の3本柱の一つに「ポートフォリオの変革」を掲げ、実行しようとしているのでしょう。

-----------------------------------
inswatchは保険流通業界向けのメールマガジンです。
私は2か月に1度のペースで寄稿しています。

※久しぶりに札幌スープカリーを食べました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

契約者への配当還元

6月8日の日経新聞によると、昨年度決算を受けた大手生保4社と富国生命の増配額は合計で521億円になるそうです。
ここで言う「増配額」とは個人保険・個人年金保険の契約者向け配当の増加分のことを指すのだと思いますが、毎度のことながら、これだけだとレベル感が全然わかりません。そこで、かなりラフではありますが、開示情報をもとに試算してみました。

非常に慎重な還元スタンス

この5社の配当準備金繰入額の合計は5905億円でした。団体保険の配当はディスクロージャー誌から過去の実績を見たうえで、ざくっと約3700億円と置き、団体年金の配当は各社が公表した配当率を参考に、これまたざくっと840~850億円とすると、個人保険・個人年金保険の配当は1300億円程度ということになります。
つまり、前年度の800億円弱から521億円増えて、1300億円程度になったということで、5社のソルベンシーマージン総額が2.1兆円増え、危険準備金繰入など内部留保だけでも1兆円近い水準を増やしたのに比べると、非常に慎重な配当姿勢だということがうかがえます。

もっとも、第一生命の契約者配当は日経によると「横ばい」とのことですが、同社は配当準備金繰入額の内訳を公表していて、個人向けは64億円増えています。他方、住友生命は「110億円の増配」と説明していますが、個人向けの配当準備金繰入額を推計すると、10億円程度しか増えていません。
おそらく何らかの入り繰りがあるのでしょうけど、各社は配当還元についてもっと情報を出さないと、余計な不信感を与えてしまうのではないでしょうか。

団体保険の配当はコスト扱い

なお、私はいろいろなところで基礎利益の限界みたいな話をしていますが、契約者配当との関係で言えば、団体保険の契約が大きい会社ほど基礎利益が大きくなる傾向があります。団体保険では危険差益の大半を配当することになっていて、いわば事後的な保険料の調整が行われているので、この部分はコストとして基礎利益から控除したいところです。
上記試算の数字を使えば、5社合計の基礎利益2.1兆円のうち、約3700億円がかさ上げされているということになりますね。

※写真は「手づくり和菓子教室」の私の作品です。運よくこちらに当たりました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

金利リスク対応の違い



前回のブログ
ではソウルの写真だけでしたが、ソウルで開かれた韓国金融学会で、日本金融学会からの派遣者として報告をしてきました。

韓国での発表なので、世界的な超低金利のなかで、日本、台湾、ドイツ、そして韓国の大手生命保険会社の経営行動を探るというケーススタディにしました。
発表内容はどこかでお伝えする機会があると思いますが、なぜこの4か国かというと、いずれも生保市場の規模が大きいうえ、長期にわたり利率を保証する商品が生保市場の中心だったため、保険会社が資産と負債のミスマッチを抱えやすいという点で共通しているためです。

日本の大手生保が提供する主力商品は、かつてに比べると終身部分が非常に小さく、総じて期間10年程度の保障性商品の組み合わせとなっています。ただし、過去に獲得した契約による影響が依然として大きいので、金利リスクを抱えた状態が続いているのですね。
他方、今の金利上昇が長続きしないとなると、他の3か国はより深刻な状況に見えます。ドイツでは会計上も追加責任準備金の負担が年々膨らみますし、台湾では外資系生保の撤退や中小生保の経営破綻が相次いでいます。韓国は2000年代以降、利率変動型商品にシフトしてきたのですが、これらには最低保証があり、過去の高利率契約とともに生保の負担となっているようです。

こうして国際比較をしてみると、限られたディスクロージャーからでも経営行動の違いが見えてきて、興味深いです。

※写真は全州の韓屋村です。路地に入ると静かな世界が広がっていました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

マイナス金利政策後の生保経営

2018年3月期の生保決算をざっと確認しました(まだ国内系だけです…)。
大方のメディアは相変わらず保険料収入と基礎利益にしか関心がなさそうなので、私は大規模金融緩和の副作用を探ってみようということで、マイナス金利政策が始まった2年前と比べてみました。

各社の経営リスクは総じて増える傾向にあるとうかがえる一方、基礎利益は増えていても、多くの会社が実行してきた「外部調達を含め、金利低下でダメージを受けた支払余力を高めつつ、内外金利と為替リスクを取る」という経営行動は必ずしも会社価値を増やすことにつながらなかった、というのが現時点での総括となりそうです。

2016年3月期と比べると、各種準備金の積み増し(国内系8社で約2兆円増)と外部調達(同1.2兆円増)を行う一方、この間、資産長期化を概ねストップし(例外あり)、外貨建資産を増やしています。
しかし、国内金利は低水準のままであり、対米ドルでは円高が進み(生保の外貨建資産は米ドル建てが多い)、海外金利の上昇も著しく、ヘッジコストも上がっているとなると、この期間にかぎればリスクテイクが裏目に出ているように見えます(株価上昇で相殺されていますが)。

当然ながらリスクをとれば必ずリターンが上がるものではなく、リスクテイクが裏目に出ることもあります。問題は外部ステークホルダーがこのような経営を期待しているのかどうか、あるいは、経営陣が考え方をきちんと説明しているかどうかだと思います。
この点で、上場会社はそれなりに説明しているのに対し、相互会社による考え方の説明は少ないですね。今後の情報開示に期待しましょう。

※出張でソウルに来ています。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

コンプライでもエクスプレインを

生損保決算は分析途上ということで、別の話を。

大学のガバナンス不在が取り沙汰されていますが、日本企業のコーポレートガバナンス改革もまだまだ道半ばという印象です。コーポレートガバナンス・コードの改訂(もうすぐ公表されると思われます)や、経産省CGS研究会(第2期)が5/18に発表した「第2期中間整理-実効的なコーポレートガバナンスの実現に向けた今後の検討課題」など、新たな取り組みや課題整理が次々に出てくるのも、形は整えても魂が込められていないという現状があるのでしょう。

コーポレートガバナンス・コードは法令ではなく、上場企業に求められる行動規範であり、それぞれの原則を実施(コンプライ)してもいいし、実施しないのであれば、その理由を説明(エクスプレイン)すればいい、というものです(コンプライ・オア・エクスプレイン)。
ところが、東証が集計したコーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2017年7月時点)を見ると、一部の原則を除いて圧倒的に「コンプライ」が多くなっています。

しかし、例えば先日のブログ「いつまで『社長が社長を選ぶ』なのか」で紹介したような、98%のコンプライにもかかわらず、確認してみると実態は違っているということが、徐々に見え始めています。

公表内容のボイラープレート化(=ひな型的で具体性を欠く記述)も目立ちます。先週末に参加した日本ディスクロージャー研究学会の大会では、業種の異なる3社の役員報酬に関するディスクロージャーが、全く同じ文言となっているケースが紹介されていました。おそらく外部の専門家によるひな型をそのまま使っているのでしょう。

コーポレートガバナンス・コードの「コンプライ・オア・エクスプレイン」は、実施すればいいというものではなく、自らのコーポレートガバナンスを確認し、ステークホルダーに理解してもらうためのものだと思うのですね。
それなのに、コンプライしているという事実と、紋切り型の記述(それも開示項目のみ)しか出さないとなると、外部からは評価のしようがありませんし、内部規律も働かないでしょう。コンプライでもエクスプレインが必要なのです。
(その意味で、上場保険会社のERM関連情報の開示は参考になると思います)。

非財務情報の開示には、引き続き課題がたくさんありますね。

※写真は横浜市大です。横須賀のワインを初めて飲みました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

問題は含み損なのか

いろいろあって週末にブログを更新できなかったので、遅ればせながらちょっとだけ。

18日のロイター記事「金融庁、地銀に有価証券運用の含み損の適切な処理を要請=関係筋」をみて、違和感を覚えました。

記事には、「金融庁が、全ての地方銀行に対し、外債などの有価証券の運用で抱えた含み損を放置せず、適切に処理するよう求めたことがわかった。複数の関係者が18日、明らかにした。同庁は、有価証券運用の含み損を自己資本や年間コア業務純益などの期間収益の範囲内にとどめることが望ましいとの見解を伝えている」とあります。
確かに、2月に開かれた金融庁と地銀・第二地銀との意見交換会には、主な論点として「含み損に対する対応が検討されていない例が見られた」「中には、今期(30年3月期)のコア業務純益予想額に匹敵する水準まで評価損が拡大している銀行も見受けられた」「(前略)含み損に対する対応が十分に検討されていない例があるとすれば、問題であると考えている」とありました。

しかし、資産運用によるリスクテイクと言ったときの「リスク」とは、含み損の発生ではなく、保有資産価格の変動です。取得価額がいくらであろうと、含み損があろうとなかろうと、資産価格が10%下がれば、それは損失の発生です。
含み損はリスクテイクのバッファーである「経営体力」の一部なので、含み損を抱えていても、経営体力全体としてリスクテイクできる状態であれば、問題はないはずです(地銀の「自己資本」に含み損益が入っていない可能性はありますが…)。

「健全性を維持できるよう、リスクテイクに見合った運用・リスク管理態勢の構築に向けた対話を行う」のはいいとしても、銀行勘定の金利リスクに関する新規制が始まろうというなかで、本当に報道のとおり、有価証券の含み損に焦点を当てた対話を行い、損切りを促すのでしょうか。
まさかとは思いますが、ALM目的で多額の超長期債を保有する生命保険会社にとっても、これは他人事ではありませんね。

※写真は台湾大学(旧台北帝国大学)です。台湾生保では外国証券が保有資産の5割以上を占めています。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。