先週27日(金)に金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」での議論が始まりました。事務局説明資料「ご議論いただきたい事項」には、さらなる検討が必要と考えられる論点として以下の4つが挙がっています。
・大規模な保険代理店における募集品質の向上
・保険仲立人(ブローカー:筆者注)制度の活用促進
・企業向け火災保険の赤字継続
・損害保険会社による便宜供与や企業内代理店の目指すべき姿等。
企業向け火災保険の赤字について議論するのであれば、そもそも企業向け火災保険が赤字なのかどうか、情報開示から始めていただきたいです。この点について、メンバーの柳瀬先生が「家計・企業保険別の情報開示が必要」という意見を出していて、心強いかぎりです。
同じ日に金融庁は2024事務年度の金融行政方針(実績と作業計画)を公表しました。
損害保険市場の信頼回復と健全な発展に向けて金融審議会で議論する状況となっているにもかかわらず、例年どおりの「持続可能なビジネスモデル構築に向け、各社の内部管理態勢の高度化も含め、保険会社との対話を実施する」というのはやや違和感があるところですが、他方で保険会社のソルベンシー規制のところには、次の記載がありました。
・2024年秋頃を目途に法令等の改正案をパブリックコメントに付す予定であり、引き続き関係者との対話等を行いつつ、2025 年度の新規制の円滑な導入に向けた準備を進める。
・監督会計について、具体的な論点が明らかな課題について対応する。また、経済価値ベースのリスク管理との整合性や財務会計に関する見直しの動向等も踏まえつつ、そのあり方について検討を行う。
・保険会社から提出される各種データの見直しやリスクとソルベンシーの自己評価に関する報告書(ORSAレポート)の活用等を通じたモニタリングの高度化について、さらなる検討を進める。
1点めは、すでに5月29日公表の「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する残論点の方向性等について」で示していたとおりですが、2点めと3点めには注目です。
特に3点めは重要だと思います。新たな規制を導入するのが目的ではなく、規制導入はあくまでスタート地点に立ったということなので、これをどう使っていくかが当局には問われています。今回の作業計画を見て、そのような問題意識を金融庁が持っていることが示されているのではないかと(楽観的に)理解しました。
※写真は東京駅です。