とある原稿執筆の関係で、大手生保4社(日本、第一、住友、明治安田)の営業職員数の推移を確認する機会がありました。
2021年に出した拙著『利用者と提供者の視点で学ぶ 保険の教科書』では、第11章で生命保険の営業職員チャネルを取り上げていて、次のような記述があります。
「大手4社のデータを見ると、2000年代前半までは毎年在籍数の4割程度にあたる営業職員が退職していました」(149ページ)
各社のディスクロージャー誌には営業職員の在籍数と採用数が載っているので、そこから試算した退職数をもとにした記述となります。この計算方法では入社した年度内に退職した職員は含まれず、やや過小評価となっていますが、各社のデータを確認すると、1990年代後半から2000年代前半にかけての退職率(期首在籍数に対する退職数の割合)は各社ともざくっと言って4割前後で、当時は在籍数の減少も続いていました。
しかし、2000年代後半から退職率は低下傾向となり、在籍数の減少傾向にも歯止めがかかります。拙著では次のように記しています。
「2005年に発覚した保険金不払い問題を経て、各社は新契約に過度に偏重した営業活動を改め、顧客訪問活動など既契約を重視する営業活動に舵を切りました。採用後の教育を重視し、固定給を増やすなど、早期退職を減らす取り組みもターンオーバーの改善に効果を上げたと考えられます」(150ページ)
それでは足元ではどうなっているかというと、日本生命、第一生命、住友生命の3社は、新型コロナの影響を受けた2020年度をピークに在籍数を年々減らしているのに対し、明治安田生命の在籍数は増加傾向となっています。直近(2023年度)の退職率は日本生命と住友生命が18%台、明治安田生命が17%弱、第一生命が13%強で、第一生命の退職率が際立って低く、明治安田生命は退職率の上昇を抑えつつ在籍数を増やしていることがうかがえます。
他方で4社に共通しているのは営業職員の性別です。例外なく、在籍数に占める女性営業職員の割合は97%以上となっていて、採用した職員もほぼ100%女性となっています。ここまで徹底しているとはちょっと驚きですね。
※写真はソウルでいただいたナツメ茶です。