自動車ディーラーの保険金不正請求

報道のとおり、トヨタ自動車直営のディーラーであるトヨタモビリティ東京と、中古車販売大手のグッドスピードに対し、金融庁(関東財務局・東海財務局)は24日に保険業法に基づく業務改善命令を出しました。
処分の理由をそれぞれ読んでみたのですが、まあひどいです。

トヨタモビリティ東京は、2020年2月に保険金の過大請求等が多数判明したと公表し、さらに2021年9月には不正車検で国土交通省から行政処分を受けました。しかし、立入検査を実施したところ、保険金不正請求の社内調査が部分的・限定的で不十分だったうえ、他にも不正請求疑義事案が多数あることが判明したそうです。
「当社経営陣は、保険事業に関しては、『本業ではない』との意識が根底にあり、同事業に保険業法等に精通した十分な人的リソ-ス(質・量)を配賦していないほか、人材育成も行っていない」という指摘まで書いてあります。

他方、グッドスピードも、不適切な保険金請求疑義事案が発生しているとの報道を受けて社内調査を実施し、さらに、取引銀行の意向を踏まえた2回目の社内調査を行ったにもかかわらず、立入検査を実施したところ、十分な調査を行っていない可能性があるうえ、調査委員長が結果内容を改ざんするなど極めて不適切な行為が認められたとのことです。
こちらにも「経営陣は、保険募集に関する業務を全て担当役員任せとし、同役員からリソースの問題を含む保険募集管理態勢の状況を報告させておらず、実態を把握することを怠っており(後略)」という指摘があります。

自動車販売業界は、もはや旧ビッグモーターは特殊な事例だと言えなくなったのではないでしょうか。

なお、自動車ディーラーの収益構造に関する資料を探したのですが、業界団体としては一般に公表していないようです。
以下が役に立つかもしれません。

三井住友銀行「国内自動車ディーラーを取り巻く業界動向(PDF)」(2019年9月)
日産東京販売ホールディングスの決算説明資料(例えば2024年3月期決算説明資料(PDF)

いずれの資料からも、自動車ディーラーでは自動車販売の利益率は低く、整備や保険・金融商品の手数料が経営を支えていることがうかがえます。

同僚の先生の論文もご紹介しましょう。ディーラーの営業スタッフにインタビュー調査を行い、スタッフの専門性を探ったものです。この会社での「付加価値」とは顧客への付加価値ではなく、会社の利益につながるかどうかなのですね。
大卒ホワイトカラーのキャリア形成に関する研究(PDF)

※写真は福岡タワーです。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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