先週末(22-23日)に日本ファイナンス学会の年次大会があり、
コーポレートガバナンスに関する2つの研究発表を聞きました。
いずれも実証分析です。
1つは「日本企業が独立取締役に何を期待しているか?」
という早稲田大学商学部の広田真一先生の発表です。
日本の独立(≒社外)取締役は特定のステークホルダー
(株主など)の代表というより、ステークホルダー全体の
代表であるという分析結果が示されました。
さらに、日本で独立取締役の導入が進まない理由は、
マスメディア等の通説である「経営者の保身」ではなく、
従業員をも含めた企業内部者の抵抗、という分析もありました。
ステークホルダーにはもちろん従業員も含まれますが、
日本企業の場合、外部ステークホルダーと内部ステークホルダーに
分けて考えるというのも確かに一つのアイディアだと思います。
もう1つは「日本企業の取締役会構成の決定要因」という、
京都産業大学・齋藤卓爾先生の発表です。
日本企業で取締役がどのように選ばれるかに注目したうえで、
社外取締役と企業属性(規模、R&D比率など)の関係を分析し、
「社外からのアドバイスは好むが、モニタリングは好まない」
という日本企業の選好が取締役会構成に反映されているという
興味深い結論を示されていました。
日本でも社外取締役が増えたとはいえ、海外に比べれば圧倒的に少なく、
しかも経営者が選定に強くかかわっていることが多いようです。
委員会設置会社についても、社外取締役が中心の指名委員会を
導入した会社はごく一部です。
お二人の発表から感じたのは、海外に比べ、日本企業の
ガバナンス構造がかなり特殊な状態にあるということです。
うまくいっている時代はよかったのかもしれませんが、
今は明らかに問題のほうが大きいように思います。
ただ、日本企業のガバナンスに問題があるのがわかっても、
アメリカなど海外の仕組みをそのまま導入しただけでは
あまり役に立たないのかもしれません。
どのような制度設計がいいのか、難しい問題です。