収入構成と損益構成の違い

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生保の2009年度決算では、貯蓄性商品(主に銀行窓販)の販売動向が、
年換算保険料などの業績指標を大きく左右しました。
しかし、保障性商品と貯蓄性商品では当然ながら利益率は
かなり異なるはず。会社価値への貢献という点ではどうだったのか、
もっと情報がほしいところです。

銀行セクターに目を転じると、一部の銀行では
事業部門別に資本コスト控除後の純利益を開示しています。

例えば、きんざいでも紹介されていましたが、
千葉銀行では「貸出金の収益構造」を開示しています。
銀行ビジネスの中核的存在というイメージのある大・中堅企業向け
(貸出平残は全体の18%)が資本コスト控除後純益では赤字であり、
平残で33%の住宅ローンが、純益の5割を占めていることがわかります。

りそなホールディングスも「事業部門別管理会計の状況」のなかで
資本コスト控除後利益を公表しており、コーポレート事業の赤字を
コンシューマー事業(特にローン)と信託事業、市場部門で
補っていることが示されています。
業務純益の段階とはかなり姿が異なります。

このような部門別の情報があれば、経営活動の妥当性を
外部から評価しやすいでしょうね。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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主要生保の決算発表から

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先週末に主要生保の決算が出そろいました。
銀行窓販をはじめ、貯蓄性商品へのニーズの強さが
改めて浮き彫りになったように思います。

新聞に出ているようなことをコメントしてもつまらないので、
四半期ごとの契約動向について何点かご紹介しましょう。

大手4社の新契約の推移を見ると、傾向の違いがわかります。

日本=転換純減が続くなかで、下半期は純新規Sが好調。
    また、今年に入り第三分野が増加している。
    個人年金は引き続き慎重姿勢のようにうかがえる。

第一=転換純減が比較的少なく、1件当りSを維持。
    他方、第三分野の保険料は前年割れが続いている。
    第一フロンティアの年金販売は今年に入り抑制した模様。

住友=昨年秋以降、銀行窓販の中心が個人年金から個人保険に
    シフトしたことがデータにも表れている。
    第三分野が堅調に推移。

MY =個人保険(貯蓄性商品)、個人年金とも高水準の販売が続く。
    転換純減が続くなかで、第三分野の保険料が減り続けているのが
    やや気になるところ。

ちょっと意外に思えるかもしれないのがアフラックです。
個人保険の新契約ANPは前年を大きく上回って推移しているのですが、
第三分野は新商品を投入した10-12月期を除き、前年割れでした。
米国の決算データによると、がん保険の落ち込みが効いているようです。

アリコの新契約ANPの推移にも注目です。
個人保険では顧客情報流出問題がクローズアップされたこともあり、
下半期は上半期よりも減っています。
それでも、AIGショックに見舞われた前年よりは高い水準です。
他方、個人年金の回復ペースは遅く、以前の1/4程度にとどまっています。

保険会社の四半期開示はB/S関連を除き、活用が難しいですが、
各社の販売戦略の手掛かりにはなりそうです。
もちろん、いつものように個人的なコメントということでご理解願います。

※娘の宿題のため、ごはんミュージアムに行きました。
 お米やごはんに関するパンフレットやゲーム、ショップがあり、
 意外に楽しめますよ。
 

 

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ガバナンス研究

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先週末(22-23日)に日本ファイナンス学会の年次大会があり、
コーポレートガバナンスに関する2つの研究発表を聞きました。
いずれも実証分析です。

1つは「日本企業が独立取締役に何を期待しているか?」
という早稲田大学商学部の広田真一先生の発表です。

日本の独立(≒社外)取締役は特定のステークホルダー
(株主など)の代表というより、ステークホルダー全体の
代表であるという分析結果が示されました。

さらに、日本で独立取締役の導入が進まない理由は、
マスメディア等の通説である「経営者の保身」ではなく、
従業員をも含めた企業内部者の抵抗、という分析もありました。

ステークホルダーにはもちろん従業員も含まれますが、
日本企業の場合、外部ステークホルダーと内部ステークホルダーに
分けて考えるというのも確かに一つのアイディアだと思います。

もう1つは「日本企業の取締役会構成の決定要因」という、
京都産業大学・齋藤卓爾先生の発表です。

日本企業で取締役がどのように選ばれるかに注目したうえで、
社外取締役と企業属性(規模、R&D比率など)の関係を分析し、

「社外からのアドバイスは好むが、モニタリングは好まない」

という日本企業の選好が取締役会構成に反映されているという
興味深い結論を示されていました。

日本でも社外取締役が増えたとはいえ、海外に比べれば圧倒的に少なく、
しかも経営者が選定に強くかかわっていることが多いようです。
委員会設置会社についても、社外取締役が中心の指名委員会を
導入した会社はごく一部です。

お二人の発表から感じたのは、海外に比べ、日本企業の
ガバナンス構造がかなり特殊な状態にあるということです。
うまくいっている時代はよかったのかもしれませんが、
今は明らかに問題のほうが大きいように思います。

ただ、日本企業のガバナンスに問題があるのがわかっても、
アメリカなど海外の仕組みをそのまま導入しただけでは
あまり役に立たないのかもしれません。
どのような制度設計がいいのか、難しい問題です。

 

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3メガ損保の決算発表

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先週20日に大手損保の決算が発表されました。

本業に近づいてしまうのでコメントしにくいテーマですが、
「保険アナリスト」のブログで全く触れないというのも
それはそれでどうかと思うので、ちょっとだけコメントします。
もちろん、仕事とは一切関係ありません。

さて、3グループに集約されてから初の決算発表ということで、
新聞の扱いはかなり大きかったように感じました。
全紙を確認したわけではありませんが、
朝日や日経は図表(複数)・写真入りでした。

今回の決算がよかったのか、悪かったのかと聞かれれば、
純資産や最終利益が改善していることもあり、
前年度に比べればよかったということになるのでしょう。

しかし、特殊要因が残る自賠責を除くベースで見た
単体の正味収入保険料は、主要8社のうち7社で減収です
(増収はニッセイ同和のみ)。
同じベースで収支残が改善したといえそうなのは、
事業費率を下げることができた東京海上と富士火災くらい。
自動車保険の収支残となると、なんと全社がマイナスでした。

このようにみると、海外事業や運用環境改善などを除けば、
実質的には相当厳しい決算だったのではないでしょうか。

※写真は近所のバス通りなのですが、最近になって、
 川が流れていた名残(欄干だけ残った)と知りました。
 地元に長く住んでいても知らないことはたくさんありますね。

 

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V字回復とは言うものの

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※毎度のことですが、コメントはあくまで個人的なもので、
 仕事とは一切関係ありません。

大手銀行の決算が出そろいました。
新聞には「V字回復」とありますが(朝日、読売、東京など)、
同時に利益水準の低さにも注目が集まりました。

生保とは違い、歴史的低金利の恩恵を受けた銀行セクターですが、
さすがにこれだけ低金利が長引くと利ざやを稼げません。
預金金利はこれ以上下がらない水準にある一方、
資金需要が弱いなかで高い貸出金利は設定できません。

有価証券投資にも期待できません。
銀行が中長期債に傾斜すると、金利リスクを抱えることになります。

国内ではおそらく、投信や保険販売などの手数料ビジネスに
一段と力を入れる銀行が増えるのでしょう。
いよいよ保険のチャネル間競争が激しくなりそうです。

※砂浜に行くと、つい土木工事に走ってしまいます^^

 

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経営者の交代と報酬

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「コーポレート・ガバナンス 経営者の交代と報酬はどうあるべきか」
(日本経済新聞出版社)を読みました。

本書は制度的変化の解説や先進事例の紹介ではなく、
ある程度大規模なデータセットを用いて
日本企業のガバナンスの実態を分析した労作です。

筆者は、
「コーポレート・ガバナンスの基本は、経営者の交代と金銭的なインセンティブ」
ということを繰り返し指摘しています。

優秀な経営者には高い待遇を提供し、悪い経営者には退出を促す
ということです。

しかし、本書によると、日本の経営者は株価を最大化するような
インセンティブをほとんど持っていないことが明らかにされています。
しかも、業績が悪化しても交代しない社長のほうが多いようです。
イメージ通りではありますが、データ分析なので説得力があります。

「悪い人が悪いことをするのを防ぐことは容易ではないが、
 いい人が、善意で悪いことをするのを防ぐことも容易ではない」

という記述もありました。
私には後者のほうがより難しいように思えますが、どうでしょうか。

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※久しぶりに江の島へ。今回は娘とのデートでした♪

 

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サムスン生命の上場

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日本ではあまり大きく報じられていないようですが、
韓国生保最大手のサムスン生命が上場しました。
第一生命とは違い、もともと非上場の株式会社だったものが、
2007年に韓国政府がIPOを認めたことを受けたものです。

時価総額は約1.8兆円と、第一生命(1.6兆円)を上回りました。
気になるEVとの関係ですが、報道によるとEVの1.4倍程度だそうです。
会計や計算の前提が異なるので単純比較はできませんが、
第一生命(0.6倍程度)とはずいぶん違いますね。

ロイターの記事に載っていた投資家のコメントには、

「韓国の生保市場は日本ほど成熟しておらず、中国ほど成長性はないため、
 この程度のEV倍率は理解できる」

とありました。

それが正しいかどうかはともかく、外国人投資家は当然のように
第一生命とサムスン生命を比べて評価しているのでしょうね。

 

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新型インフルエンザの影響

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1年前の今ごろは新型インフルエンザ騒動で大変でした。
昨年の4/28に政府が発生宣言を出し(当時の厚労相は舛添さん!)、
国内初の感染者が確認されたのが5/9です。
結果的に弱毒性ということで死者は200人弱にとどまったものの、
不安な日々を強いられました。

ところで、生命保険経営学会の機関誌「生命保険経営」最新号(5月号)に
「新型インフルエンザの生保事業への影響」という論文が
掲載されています。

論文の試算によると、重度の新型インフルエンザが発生した場合、
保険金や給付金の支払いは全社合計で6.5兆円に及ぶとのことです。
2008年度末の危険準備金が5.7兆円、ソルベンシー・マージン総額では
23.4兆円あるため、業界全体で見れば健全性が危機的な状況に
なることは考えにくいという結論でした。

前提としている日本政府の被害予測が甘い(想定感染率が低い)
という意見もあるようで、今後の新たな試算に注目したいところですが、
一つの目安として踏まえておきたいと思います。

※休日の井の頭公園にはいろいろな店が出ていて楽しいですね。

 

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国内債券投信

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5/3(月)のMonday Nikkeiの特集記事
「財政悪化で金利が上がると、国内債券投信の価格はどうなるか」
について。

組み入れ債券の投資金額が償還までの残存年数ごとに
等金額になるようにするラダー型運用であれば、
償還資金で利率の上がった債券を補充するので、
金利上昇を過度に心配する必要はないという結論でした。

様々な金利上昇パターンでのシミュレーションもあり、
なかなか興味深いです。

ただ、過去には急激な金利上昇もありました。
「1年後に金利が5%に上昇」のシミレーション結果をみると、
金利上昇でまずは基準価格が15%くらい下がります。
その際にラダー型運用が維持できるのか気になるところです。

資金の流出入が大きく変わらなければいいのですが、
例えば解約急増や新規資金の枯渇により
新たな債券を購入する資金が不足することになれば、
基準価格の回復が遅れてしまいます。

保険アナリストとしては、このようなラダー型運用の投信では
将来キャッシュフローについてどの程度の変化まで想定しているのか
関心がありますね。

※GWの井の頭公園は大勢の家族連れでにぎわっていました。

 

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適正な採用活動とは

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5/3(月)の朝日新聞教育面(12面)「採用を聞く」は、
広瀬道貞・日本民間放送連盟会長へのインタビューでした。

見出しには、「キー局早期選考 学生も利点」
「内定後に知識・経験を蓄えよ」とありました。

中身も突っ込みどころ満載です。

・キー局が先に採用試験を実施することで
 学生は複数の企業に挑戦しやすくなっている。

・どの学生が「いい人材」かなんて何度面接しても
 なかなか分からない。「いい人材」を早くとれるというより、
 早く内定が決まれば、学生が残りの学生生活を
 有効に過ごせるメリットのほうが大きいと思う。

・(3年生の)2、3月なら授業への影響は小さい。
 ということは「倫理憲章の精神を尊重している」とも言える。

・大学が、学生に専門性が身につく教育ができていないから
 3年生でも4年生でも変わりないと見なされている。
 それならばむしろ、すでに就職先を決めて、各自が
 自分の進む道に必要な知識や経験を蓄える時期にしたほうがいい。

要するに、
「自分たちのやりかたは正しい」「現状はそれほど問題ではない」
ということなのでしょう。

これが大手新聞社出身で民放連会長の発言ですから、
驚いてしまいます。

※うちのベーシストも、たぶん数年後には就活なんでしょうね。

 

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