保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1292(2025.8.4)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。日本保険学会の全国大会について書きました。
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非会員でも参加できる
約3か月後の10月25日(土)、26日(日)に近畿大学の東大阪キャンパスで日本保険学会の全国大会が開催されます(対面開催です)。
日本保険学会は、保険に関する研究者と実務家からなる学会で、前身の「保険学会」設立から130年もの歴史があります。学会メンバーとなるには会員2名(うち1名は役員その他の評議員)の紹介が必要ですが、年1回開催される全国大会と、各部会(関東・関西・九州)による例会は、参加費を支払えば会員以外でも参加できます。
この10月の全国大会では、25日午後に「シンポジウム:D&O保険の現状・課題・展望」、26日午後に「共通論題:新たなソルベンシー規制への期待と今後の展望」という2つの報告・パネルディスカッションがあります。26日午前の自由論題(研究報告)には、例えば「保険会社の多国籍化に関する考察」「保険訴訟における専門的知見の取扱い―医療診断に焦点を当てて―」など、経済・商学系と法律系でそれぞれ3つの研究報告がエントリーされています。
保険ビジネスに関わる皆さんも、日本保険学会の全国大会、あるいは、お近くの部会例会に参加してみてはいかがでしょうか。普段とは違った視点で保険を見つめるいい機会になると思いますし、実際に九州部会の例会には、主に福岡を拠点とする保険代理店の皆さんが毎回参加しています。
なお、全国大会の申し込みは9月26日締め切りです。詳しくは学会サイトでご確認ください。
新たな規制導入の本質
ところで、26日午後の「共通論題:新たなソルベンシー規制への期待と今後の展望」では、私が司会および報告者を務め、他2名の研究者(静岡県立大学の上野雄史先生、専修大学の湯山智教先生)に加えて、金融庁の保険モニタリング室で新規制を統括する伊藤仁美さん(保険モニタリング管理官)にご登壇いただくことになっています。
7月27日の個人ブログでもご紹介したとおり、金融庁は23日に新たなソルベンシー規制に関する法令等(告示、監督指針など)を公表し、これによって2026年3月末からの規制適用が確定しました。
新たな規制は「経済価値ベースのソルベンシー規制」と呼ばれるように、保険会社の資産と負債を経済価値ベース(≒時価ベース)で評価することで現行の保険会計の弱点を克服しようというものです。ただし、それだけではありません。ソルベンシーマージン比率のような狭義のソルベンシー規制にとどまらず、金融庁は保険会社の内部管理のあり方も踏まえた多面的な健全性政策を取り入れることで、「契約者保護」「保険会社のリスク管理の高度化」「消費者・市場関係者等への情報提供」を図ろうとしています。
保険会社は単に規制が求める資本(ソルベンシー)を確保すればいいというのではなく、いわゆる損保問題で表面化した、トップラインやシェアの確保を最優先する企業文化からの脱却を求められます。
そこで、当日の報告では、演題にした「新規制は保険会社の経営危機を回避できるのか」だけではなく、より広い視点からお話しするつもりです。
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※ゼミ旅行で阿蘇にきています。