「ステップアップ!保険窓販」

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きんざいのFP向け月刊誌「ファイナンシャル・プラン」の6月号は
「ステップアップ!保険窓販」と題した窓販特集でした。

 ファイナンシャル・プランのHPへ

このなかに私のインタビュー記事が掲載されています。
「生命保険マーケットの概況と銀行窓販の今後の行方」というタイトルで、
保険マーケットの変化や銀行の置かれている現状などについてコメントしました。

特集では、三菱東京UFJ銀行の保険窓販レポートや、
RML株式会社・清水英孝代表による「生命保険のセールス話法」
などが掲載されています。

清水さんの記事は、金融機関の保障性商品販売について
どのような論理・技術が必要なのかを解説したものです。
これを読むと、セールスは科学なんだなあと思います。

「銀行窓販は損保系生保のモデルに似ている」という主張には私も同感です。

10年少し前、膨大な損保の顧客に対して生保を販売しようと参入した損保。
ところが損保系生保のクロスセル率は10年で5%前後にとどまっています。
今度は銀行が膨大な顧客基盤に対し、生保の保障性商品を
提供しようとしているわけですね。
今のところ成功モデルは必ずしも確立していないようですが、
果たしてどうなるでしょうか。

記事によると、損保系生保のクロスセル率が期待を下回ったのは、
損保系生保が見込み客の位置付けを間違えたことと、
モデルの異なる外資系生保の手法を採用したことなどが要因としています。

単に各種の生保販売話法を覚えるのではなく、
「関係性が薄く、生保を欲しいと思っていない顧客から契約を得るには
どうしたらいいか」を考えるべきという主張には説得力があります。

※写真は横須賀線・新川崎駅です。日吉と新川崎の近さを実感しました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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前回の生保危機との比較

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月曜日(8日)発行の有料メールマガジン「inswatch」に、
日経平均株価が8000円を割り込んだ2002年度と
直近の2008年度の生保決算を比べた記事を書きました。

inswatchのHPへ http://www.inswatch.co.jp/

 ※inswatchは、保険の現場に強いジャーナリストとして定評のある
  石井秀樹さん、中崎章夫さんが編集人を務めるメールマガジンです。
  「保険代理店向け」とありますが、広く業界人におすすめです。
  私は2か月に1回、記事を書いています。

簡単にご紹介しますと...
 ソルベンシー・マージン総額は、2002年度<2008年度
 このうち有価証券含み益は、2002年度>2008年度
 内部留保(純資産+α)は、2002年度<2008年度
 他方、リスクの合計額は、2002年度≒2008年度
 ↓
 内部留保を積み上げてきたため、2002年度よりも体力にまだ余裕がある。
 ただし、保有資産のリスクを温存してきたため、内部留保は1年間で激減した。

もっとも、これはあくまで国内系生保9社の単純合算ベースでして、
個社ベースではいろいろです。

例えば、朝日生命と太陽生命のソルベンシー・マージン総額は
2002年度>2008年度 です。
しかし、両社とも資産運用リスクの抑制を進めてきたため、
ソルベンシー・マージン比率は 2002年度<2008年度 となっています。

反対に、大同生命は2003年度以降、内部留保を増やす一方で、
資産運用リスクも増やした結果、ソルベンシー・マージン比率が
2002年度>2008年度 となってしまいました。

なお、ソルベンシー・マージン比率の計算方法は
当時と今では多少違いがありますので、お含み置き下さい。

※写真は新横浜の駅ビルです。ずいぶん便利になりました。

 

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株価下落の影響

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今回も生損保2008年度決算から。

生損保のソルベンシー・マージン(支払い余力)総額は大幅に減りました。
大手生損保の場合、この減少分の実に8割前後が株価下落によるもの。
不動産関連投融資の損失や信用リスクの顕在化に苦しむ欧米勢、
あるいは日本の銀行とはリスク構造が明らかに違います。

外部からは「保有株式の変動リスクが大きい」と指摘されていたものの、
2003年以降の株価上昇局面でもリスク圧縮があまり進まなかったようです。

今回の株価下落局面ではどうだったのでしょうか。
各社とも「金融危機のなかでリスクを抑える方針」とのことでしたが...

決算データ(取得価額と減損額)から売却額を試算してみたところ、
大手で一定程度の株式を売却したと思われるのは
第一生命と明治安田生命、東京海上、日本興亜くらいでしょうか。
残高がほとんど変わっていないと見られる会社も多いですし、
日本生命や三井住友海上などはむしろ残高を増やしたようです。

リスクを抑える方針とは言うものの、最大のリスク要因である株式を
相場の上昇局面でも下落局面でも売れないというのであれば、
いったいどうするつもりなのでしょうか?

※写真は野川で見つけた水車です。

 

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変額年金の販売動向

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「変額年金販売が不調」(6/2朝日)という記事が一般紙に掲載されるなど
何かと話題の変額年金ですが、公表データが少なくて困ります。

例えば「どの保険会社の商品がどれだけ売れたか」という
基本的なデータが必ずしも公表されていません
(大手生保やアリコなどは記者クラブ向け資料で開示)。

ましてや「どの金融機関がどこの保険会社の商品をどれだけ販売したか」
などというデータはどこにもありません。
保険マスコミの皆さんにもっと頑張っていただきたいところなのですが...

さて、決算資料の「特別勘定の資産残高」の増減から
「特別勘定の運用収支」を差し引いた「純増部分」を見てみました。
年度内に販売した契約も時価変動の影響を受けるので、
これを「純増部分」と言うのはちょっと無理があるかもしれませんが、
あくまで参考ということでご容赦下さい。

2007年度の上位は
 ①アイエヌジー、②東京海上日動フィナンシャル、③三井住友海上メットライフ、
 ④ハートフォード、⑤住友、⑥マニュライフ...でした。

これが2008年度には、
 ①東京海上日動フィナンシャル、②第一生命&第一フロンティア生命、
 ③三井住友海上メットライフ、④住友、⑤アイエヌジー、⑥マニュライフ...
と変わっています。

ハートフォードやアリコジャパンのように純減となる会社がある一方、
第一生命グループやT&Dフィナンシャルのように好調な会社もありました。
ただ、全体としては売り上げが3割くらい減ったのではないでしょうか。

米国でも2008年の変額年金の売り上げは前年の2割減、
2009年1-3月期だけをみると前年同期を3割以上下回っています。
やはりAIGやハートフォードが販売シェアの順位を落としているようです
(VARDSレポートによる)。

日本でも2009年度はハートフォードが販売から撤退し、
住友とアイエヌジーが販売を休止するので、
上位の顔ぶれが大きく変わりそうです。

※写真は世田谷の等々力渓谷です

 

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金融危機と生保決算

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2009/3期の生保決算が出そろいました。
本格的な分析はこれからですが、やはり金融危機の影響を
非常に強く受けたものとなりました。

大手・中堅生保では、何といっても株価下落が効いています。
株式含み益を確保できたといえるのは日本生命と明治安田生命だけ。
T&Dも含み益ですが、株式関連の損失がかさみました。

ただ、銀行決算が12月よりも一段と悪化した感があるのに対し、
生保はそれほどでもないという印象です。
銀行では景気悪化の影響で信用コストの拡大が顕著ですが、
生保では中小企業向け保険の解約が目立つ程度です。
不動産関連投融資が比較的少ないためだと思います。

もっとも、外資系生保では国内系とは別の傾向が見られます。
外資系では外国証券の損失が目立ちました。

例えばアリコジャパンはAIG株式のほか、CMBS(商業用不動産担保証券)や
RMBS(住宅ローン債券担保証券)の実現損や含み損も膨らんでいます。
証券化商品以外の外国公社債でも含み損を抱えているようで、
海外企業の信用力低下も影響しているとみられます。

このような傾向はアリコだけではなく、外資系生保に共通しています。
アフラックの含み損は4000億円超となり、実質純資産額を圧迫
(ただし、証券化商品への投資は非常に少ないです)、
ジブラルタ生命の外国公社債含み損は1200億円に達し、
増資等を行っています。
アクサ生命では外国証券評価損が1300億円に膨らんだ結果、
赤字決算となりました。

外資系生保が軒並み経営内容を悪化させる事態は初めてのことです。
「外資系に追い風」はすっかり過去の話となりました。

※写真は東京駅です

 

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大手生保の課税所得が赤字に

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5/27、28の各紙(日経、朝日、中日、フジサンケイBなど)に、
大手生保4社の課税所得が赤字になるという記事が載りました。
ただ、各紙が何を伝えようとしたのか、今一つわかりにくかったという印象です。

ある新聞は「黒字なのに法人税がゼロになるのは異例」というものでした
(→けしからんということでしょうか?)。
また、別の新聞は「実質赤字なのに黒字化して契約者に配当するのは
健全性の面でいかがなものか」という趣旨に読めました。

今回のケースは有税で積み立てていた各種準備金を取り崩した結果、
会計上は黒字でも課税所得は赤字となるわけで、
「黒字なのに税金を払わずにけしからん」という話ではありません。

他方、「契約者への配当を減らせば、その分、財務上の余力を
確保できる」というのは確かにその通りです。
黒字とはいえ、あれだけ有価証券関連の損失が出れば、
課税所得を持ち出すまでもなく、「実質赤字」に違和感はありません
(「キャピタル損益を含む基礎利益は軒並み赤字のはずです」)。

ただ、報道によると、第一生命の減配額は40億円です(個人向け)。
内部留保の取り崩し額や含み損益の減少額などと比べると、
ほとんど象徴的な意味しかありません。

仮に、朝日生命のように個人向けの配当をやめたとしても、
過去のディスクロ誌などから推測すると、大きく見積もっても
せいぜい300~400億円しか浮かないとみられ、
ソルベンシー・マージン比率を高める効果はほとんどありません。

課税所得に着目するのであれば、繰延税金資産の妥当性について
突っ込んだ取材をしていただきたいです。
ご参考までに、医療保険が好調なオリックス生命は
2008年度決算で繰延税金資産を全額取り崩したようです。

※写真は飯山城址から見た千曲川です

 

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公表逆ざや額の限界

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すでに発表されている第一生命と大同生命の「逆ざや額」をみると、
数字が極端に悪化しています。

 第一生命 2007年度= 11億円の順ざや → 2008年度= 648億円の逆ざや
 大同生命 2007年度=217億円の順ざや → 2008年度=1298億円の逆ざや

この結果、大同生命は基礎利益が赤字となってしまいました。
これだけみると、逆ざや額を保険関係の差益でカバーできていないことになります。

しかし、超長期の負債に対し、長期の資産で運用する生保にとって、
実質ベースの逆ざやが短期間でここまで極端に動くことはありません。
指標が実態を表していないことがわかります。

大同生命の2008年度の公表逆ざや額が膨らんだ理由は、
含み損となった投信の解約に伴う多額の損失が反映されたためです。
第一生命の場合は、詳細は不明ですが、2007年度までの逆ざや額が
何らかの要因により実態よりも小さくなっていたようです。

いずれのケースでも、公表逆ざや額が実態をうまく反映していないので、
この数字をそのまま使うのはやめたほうがいいと思います。

※写真は飯山の古い雁木(がんき)です。

 

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損保の決算発表

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5/20(水)は主要損保の決算発表集中日でした。
決算発表に関する翌日の報道をみると、

「金融危機の直撃で全社が経常赤字に転落、損害保険ジャパンなど四社が
 最終赤字となった」(日経)
「有価証券の損失が拡大するなどし、税引き後利益は損害保険ジャパンなど
 3社が赤字、東京海上ホールディングスなど2社が減益」(読売)
「6社合計の金融危機関連損失は7697億円に達し、08年9月中間期時点の
 約4倍に膨らんだ」(朝日)

など、損益に関する記述が中心でした。
損保にかぎらず、決算記事はたいていP/L中心の記述となりますよね。

地方紙の一部で私のコメントが掲載されたようですが(共同発)、
これも損益に関するものでした↓

「国内部門の収支改善を進めなければ、再編してもいずれ苦しくなる」

ただ、金融危機の影響ということであれば、
黒字か赤字かということよりも、B/Sに注目です。

P/Lは有価証券評価損の計上ルールによって結果が大きく変わります
(上場損保は「30%ルール」なので赤字になりやすいのです)が、
B/Sへの影響はニュートラルです。

各社の純資産(価格変動準備金を含む)をみると、
大手3社は1年間で4割超の減少、富士火災は6割超も減りました。
大手は会社価値を1年間で、それぞれ5000億円~9000億円も
減らしてしまったことになります。ものすごい金額です。

大手損保の場合、まだ健全性が揺らぐような事態ではないとはいえ、
経営者はこれを株主や契約者にどう説明していくのでしょうか?

 

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EVショック

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T&Dホールディングスの2009/3期決算発表を受けて
翌日の株価が急落しました。発表後2日間で15%超の下落です。

株式アナリストではないので断言はできませんが、
EV(エンベディッド・バリュー)が予想以上に減ってしまったことが
影響したのではないかと思います。

EVは株主から見た生命保険会社の価値を示すものです。
年度末の純資産に、保有契約が将来生み出す利益を加えたもので、
会計情報を補うものとして活用されています。

T&Dが発表した2009/3末のEVは8665億円と、
前期に比べ7551億円の減少となりました。
株価下落などにより純資産が5218億円減ったうえ、
金利低下などにより保有契約価値も2333億円減ったためです。

株価下落などによる影響はともかく、金利低下による影響が
これほど大きいとは意外でした。

長期の国債利回りは1年前に比べ、それほど下がっていません。
ところが、T&Dが計算で使っている金利スワップレートは
おそらく金融市場混乱の影響で国債利回りを大きく下回ってしまい、
結果的にEVを1000億円単位で押し下げてしまいました。

多くの会社が発表しているEV(トラディッショナルなEV=TEVと言います)
とは違い、T&DのEVは「EEV」といって、できるだけ恣意性を排除し、
市場整合的な評価となるように工夫されたものです。

それでも今回のように市場が異常な動きを示すと、
「市場整合的な」評価であるEEVにも影響してしまうわけですね。
難しいものです。

EVに関してはT&D以外でも、次のような不思議な?動きがあります。
今後解読していきたいと思います。

・新契約ANPが前期比18%増、新契約高も増えたにもかかわらず、
 EVの新契約価値は前年の37億円から2億円に減少
 (東京海上日動あんしん生命)

・資産運用以外の前提条件が変わった(詳細不明)ことにより、
 EVの保有契約価値が1904億円→1820億円と減少
 (損保ジャパンひまわり生命)

・新契約ANPでも新契約高でも、第一生命はソニー生命の数倍規模ですが、
 新契約EVはあまり変わりません。
 もちろんEVは単純比較できないのですが、これをどう解釈するべきか。

・T&Dフィナンシャル生命や東京海上日動フィナンシャル生命、
 第一フロンティア生命といった変額年金を主軸とする会社の
 新契約EVがマイナスとなっているのですが、どう見るべきか。

 

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週刊金融財政事情に執筆しました

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今週号(2009.5.18号)は保険窓販特集です。
といっても記事は3つで、このうち1つが私のものです。

冒頭の要約部分をご紹介しましょう。

・金融危機に伴う運用環境の悪化等により、商品を提供する保険会社、
 販売の担い手である金融機関の両者とも、想定外の事態に直面している。
・だが、今後の金融機関経営にとって、保険・年金商品の重要性は
 ますます高まっていく方向にある。
・今回の危機を奇貨として、過度な商品開発・代理店手数料の競争が
 是正され、金融機関と保険会社の関係が正常化されることを期待したい。

今回の特集は「保険窓販はリテールの主柱たりうるか」という題名ですが、
依頼があった時点では「窓販全面解禁について書いてほしい」という
リクエストだったように思います。

たぶん、私と三井住友銀行コンサルティング事業部長・奥敦之さんの原稿
「平準払保険等の積極推進でトータル・コンサルティング・ビジネスを実現」
を見て、編集部はより踏み込んだ題名にしたのでしょう。

詳しくは本誌をご覧下さい。

※写真は長野・善光寺です。

 

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