「ビッグスリー凋落の理由」

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米ビッグスリーの一角を占めるクライスラーが、ついに法的破綻です。
GMはどうなるのでしょうか。

ところで、4/29(水)の日経マーケット面のコラム・大機小機
「ビッグスリー凋落の理由」を読んで、ちょっと違和感を覚えました。

記事の内容は、次のようなものです。
・米企業の経営者には、車を「どれくらい売るか」ほどの執念を
 「どうつくるか」には感じられなかった。
・ビッグスリーが日独の有力メーカーに後れを取ったのは
 経営者が現場を見ずに利を追った側面が大きい。
・GMのトップは4人中3人が財務部門の出身。
 ホンダは歴代社長全員が技術研究所のトップ経験者だ。
・GMとクライスラーの再生には現場に精通したトップの起用が不可欠だ。

このような論調は日本人(特に財界)にとって耳触りがいいようです。
それではなぜ「技術の日産」は10年前に経営危機に陥り、
「世界のトヨタ」は足元で大赤字になり、「大政奉還」に追い込まれたのでしょうか。

保険会社にも、「現場(=営業)を知らないと出世できない」
という文化が非常に色濃く残っています。
でも、営業出身でなければ経営ができないなんてことはあるのでしょうか。
営業出身の社長が専門家を排除した結果、会社が傾いたというケースも
結構あります(→拙著「経営なき破綻」をご参照下さい)。

米ビッグスリーの経営が傾いたのは、財務部門出身のトップが続いたから、
あるいは、研究開発部門や生産現場の経験のないトップが続いたから、
と言い切るのは、あまり論理的・科学的ではないですよね。

※写真は三ツ沢陸上競技場です。部活の応援に行きました。

 

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Googleブック検索訴訟

新聞等でも報道されているとおり(4/25の日経など)、
私のところにも「Google(グーグル)ブック検索」和解に関する案内が
各出版社から来ました。

Googleブック検索和解契約へ

米グーグルは数年前から書籍のデータベース化を進めてきましたが、
著作権者の許諾を得ずに行ってきたため、米出版界と訴訟になりました。
ところが、その訴訟が和解にいたった結果、国際条約の関係で、
日本の著者や出版社も当事者になってしまい、困惑しているというわけです。

送られてきた案内によると、私の選択肢は次の5つだそうです。

・和解に参加する(自動)
・和解への参加を拒否する(グーグル社に通知)
・米国裁判所に異議を申し立てる
・和解に参加したあと、使用制限を求める
・和解に参加したあと、データベースからの削除を求める

5/5(火)が期限とのことでしたが、9/4(金)に延びたようです。

私は書籍のデータベース化そのものについて異論はないのですが、
カラオケのように、二次利用の際には著作権者にもそれなりの
収入が入ってくる仕組みを確立してほしいものです。

ネットの時代になって、このブログのように情報発信が簡単になる一方で、
それなりの情報が無料で手に入るため、新聞・出版のビジネスモデルが
崩れつつあります。テレビは「安かろう悪かろう」の悪循環です。

でも、本当はコストをかけなければ、まともな情報発信などできません。
どのようなビジネスモデルを構築できるのか、悩ましい限りです。

 

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主要生保の資産運用計画

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4/26(日)の日経ヴェリタスにコメントが載りました。

株式保有にジレンマという記事の中で、
「(保険契約者に保険金を確実に支払うという視点から、)
 経営体力以上に価格変動リスクが高い株式を保有するのは疑問」
というものです。

当たり前ではないかというお叱りを受けそうですが、
次のようなコメントを要約したものとしてご覧下さい。

・生保は予定利率を保証しており、このような固定金利の負債には
 固定金利の資産を持つのが基本。株式では負債の金利リスクに対応できない。
・生保は資産と負債の金利変動リスクと株式保有リスクを抱えている。
 経営体力とのバランスを考えると、二つのリスクを今のまま抱え続けるのは困難。
・自己資本運用のうち一部(全部ではない)を株式で運用するのは理解できる。

記事の言う「ジレンマ」とは、株式を持つと価格下落リスクがある一方、
持たなければ運用競争で負ける恐れがあるというもの。
私は、運用競争よりも健全性の確保が先だと思うのですが…

 

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社会保障の勉強会

FPの内藤眞弓さんのお誘いで、日本の社会保障についての
勉強会に出席しました。

内藤さんは、フリーライターの早川幸子さんとともに
「日本の医療を守る市民の会」を主催しており、私は初出席でした
日本の医療を守る市民の会HPへ

今回の講師は都留文科大学の後藤道夫さん。
貧困の急増、労働市場の激変などが詳細なデータで示され、
福祉国家型の大きな政府にしなければどうにもならない、
というお話でした。

結論部分にはいろいろと議論の余地がありそうです。ただ、
この10年間に社会構造の大きな変化が起きたのは間違いなさそうです。

例えば、派遣・契約社員の数が増えたのはよく知られた話ですが、
若年層を中心に年収の低い正規労働者がかなり増えているのですね
(コンビニやファーストフードの店長などが典型的な例です)。

そして、終身雇用が崩壊する一方、日本の社会保障は
年金や医療保障に比べて失業時の生活保障が弱いうえ、
教育費や住宅費といった社会サービスのコストが高いため、
収入が減ると、ただちに貧困状態に陥りやすいのだそうです。
確かに言われてみればその通りかもしれません。

かつての終身雇用・年功序列には魅力を感じませんし、
そもそも前提が変わったため、戻ることはできないでしょう。
しかし、全体の2割が貧困世帯(貧困の定義にもよりますが)というのは、
やはり健全な社会ではないですよね。

いろいろ考えさせられる勉強会でした。

 

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監督指針の改正案

先日のブログでも触れましたが、金融庁は本日(4/23)、
「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正案を公表しました。

金融庁のHPへ

改正案は金融安定化フォーラム報告書やG20行動計画を踏まえているため、
金融危機の反省に立った項目が目立ちます。例えば、

・(出再先の)財務状況について、できる限り詳細に把握する
 必要があること
・(支店形態の場合)当該支店を対象としたストレステストの実施を
 行っているか
・統計的なリスク計測手法には限界があることを踏まえ、
 多様なリスク計測手法を活用(後略)
・(金融保証保険やCDS取引などに関して)担保の提供を想定した
 流動性の管理を行っているか

といった具合です。

リスク管理のところでは「統合リスク管理」が新設されています。
このなかで、取締役会等が報告を受けるべきものとして、
「経済価値評価に基づく保険会社独自の必要資本の充足状況」
とあり、目を引きました。

ストレステストについては、ヒストリカルシナリオだけでは不十分で、
仮想のストレスシナリオによる分析も求めています。さらに、
「相関関係が崩れるような事態も含めて検討」
「保有する資産の市場流動性が低下する状況を勘案」
などとあります。

ただ、ストレステストの結果をどう活用すべきなのかは
「具体的な判断に活用される態勢が整備されているか」
としか書いてありません。
ストレステストのうち、最悪の結果になるような事態に備えた
バッファーを持つべきということなのでしょうか。

 

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キッチンのリフォーム

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ふとしたことから自宅キッチンのリフォームをすることになり、
結果的に3つの業者さんから話を聞きました。

最初にたまたまコンタクトのあったA社は、今考えるとすごかった。
「今月末までの発注だったら、本体が3割引になりますよ」
「ショールームは行っても行かなくても同じ。大丈夫ですよ」
「それでは○○万円だったらいかがですか」
という調子で、メモ書き程度の見積もりをもとに、契約を急かします。

さすがにここはまずいと思い、B社、C社に声をかけました。
A社はこの時点で脱落です。

あとでわかったことですが、安さをアピールしていたはずなのに、
A社の工事費はB社、C社よりも高かったようです。
つまり、廉価版のキッチンを高い工事費で売ろうとしていたわけで、
比べて検討しないと、とんでもないことになりますね。

さて、B社はリフォーム専業、C社は設備メーカーの工事部門です。
B社は知り合いの紹介(といっても名前を教えてもらっただけです)、
C社は近所に店を構えています。

B社もC社も「ショールームには絶対行くべき」と言うので
週末にショールームに行って具体的なプランニングをまとめ、
きちんとした見積もりを出してもらいました(ほぼ同じ金額でした)。
自分たちで比較表を作り、二人で悩んだ結果、最終的にC社にしました。

リフォーム専業のB社にも心が動いたのですが、
それでも選ばなかった理由は「担当者の印象が悪かったから」です。
お願いしたことをすぐに忘れてしまったり、ショールームの見学中に
別の商談を始めてしまったり、細かいところでいろいろあったようです。

担当者が工事をするわけではありません。
それでも何かあったときには担当者を通じて話をするのですし、
信頼関係が築けない担当者のB社はやっぱり避けたほうがいいだろう、
ということになりました。

今回は保険ネタではありませんが、どこか関連するような話ですよね。

※写真は安売りで有名な松原商店街です。旧東海道にあります。

 

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保険課長のインタビュー記事

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4/16のインシュアランス損保版に、金融庁の
長谷川靖保険課長のインタビューが掲載されました。

まず目を引いたのは、
「VaRに基づくリスク管理では必ずしも十分とは言えない」
「相関関係を無視して厳しいストレステストを実施し、その結果、
 資本が不十分と判明したら直ちに迅速な対応を」
というくだりです。

確かに今回の金融危機では保有資産の分散効果が効きませんでした。
ですが、ここまでスパッと言い切るとはちょっと驚きでした。
ストレステストはシナリオ次第で厳しくも緩くもなりますよね。
果たして金融庁はどのようなストレスシナリオを想定しているのでしょうか。
監督指針の改正案に注目しましょう。

もう一つは、比較情報の提供についてです。
「様々なツールを使い、比較情報の提供が促進されることが望ましい」
「今後、各社にさらに積極的に取り組むことを期待したい」
ということで、どうやら金融庁は何もしないスタンスのようです。

 

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生保の逆ざや

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15日の朝日、16日の日経と、生保の逆ざやの記事が出ました。
内容は両紙とも概ね次の通りです。

「大手生保9社のうち、日本、第一、大同は逆ざやを解消していたが、
 09年3月期には全社が逆ざやになる見込み」
「昨秋以降の金融危機で運用環境が急速に悪化し、
 逆ざやの拡大が再び始まった」
「これまでと違い、各社とも増配は不可能な状況」

金融危機で運用環境が悪化し、解消していた逆ざやが
再び拡大したというのは、実は私の認識とはかなり異なります。

私の認識は、
・依然として予定利率の高い契約を抱えているため、
 そもそも逆ざやは実質的には解消していなかった。
・それでも平均予定利率は徐々には下がってきた。
・他方、金利水準は1年前とあまり変わっていない。
・以上から、足元で逆ざやは拡大していない。
というものです。

朝日と日経が間違っているというわけではありません。
両紙と私の違いは、逆ざやのとらえかたにあります。
言い換えれば、公表逆ざや額は実態を必ずしも反映していない
という話です。

公表される逆ざや額の計算では、利息配当金収入をベースとした
運用利回り(基礎利回りと言います)を使います。
ところが、この中には投信の配当損益など、
キャピタル損益とすべきものも含まれているのです。

もし、逆ざやをキャピタル損益を含めた利回りで計算すべきと言うならば
(それも一理あります)、株価や為替相場などの変動を反映した
時価利回りで逆ざやを計算すべきです。
もっとも、毎年利回りが大きく変動することになるでしょう。

私は資産を全て円金利資産で運用した場合の利回り
(リスクフリーレートのイメージ)が、逆ざや負担を見る観点からは
妥当ではないかと思っています。

 

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週刊東洋経済の保険特集

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今週の週刊東洋経済は保険特集です(4/18号)

このなかで私も寄稿しています。
「『平成生保危機』の教訓は経営に生かされているのか」
という題名で、例の破綻生保研究の成果に加え、
今回の金融危機を踏まえた話も書いています。

全体では何と70ページ弱もある大特集です。
ページ数の多くを割いた記事は、商品種目別の解説と
FPによる「ケース別保険見直し術」でした。

前者は保険商品の仕組みの解説です。勉強になります。
商品種目ごとのメリット、デメリット分析はちょっと苦しい感じですね。

後者の「見直し術」はケーススタディです。
「40歳男性、専業主婦の妻と子供2人、住宅ローンあり」が
私に最も近いもの(というか、ほとんどその通り)を見てみると、
共済をベースにしたプランが示されています。

ただ、これはあくまで一例であって、他にもプランがあるように
思えてしまいます。アドバイスする人を複数にすれば
もっと面白かったのではないでしょうか。

このほか一読者としては、FPの内藤眞弓さんによる
「あなたの保険の加入額はいまの時点でも正しい?」、
大手生保のパッケージ型商品の「徹底解剖」、
住友生命、ライフネット生命、埼玉県民共済の「トップ大激論」
(対談ではありませんが、組み合わせが新鮮です)が
興味深かったです。

 

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大和生命の保険金削減案

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4/11の各紙に、破綻した大和生命の保険金削減モデルが
掲載されています。

「終身年金(逓増型)で最大80%の削減」とあるように、
加入時の予定利率が高い貯蓄性商品で、
満期・終期までの期間が長いものほど大きく削減されています。

予想された事態ですが、二度目の破綻となった旧大正生命契約では、
1992年に加入した30歳女性の一時払い終身保険で87%の削減、
同じ条件の終身年金(逓増型、65歳開始)で約7割の削減と、
削減率が一段と大きくなっています。

ただ、どうしても削減の大きいモデルに目が行ってしまいますが、
その対象となる契約者はおそらく例外的な存在でしょう。
全体としてみれば、過去の破綻事例と比べて契約者負担が
際立って大きいということはなさそうです。

例えば、大和生命の予定利率は1%に下げられますが、
もともと平均予定利率が3%台まで下がっていました
(過去の事例では4%以上でした)。

責任準備金の明細を見ると、予定利率の高い契約は
すでに個人保険分野の半分以下に減っています
(日本生命で6割、朝日生命で7割です)。

大幅削減の可能性が高い個人年金のウエートも
他社に比べて小さいということもあります
(日本生命24%、朝日生命31%、大和生命12%)。

さらに、保険契約とともに優先的更生債権である労働債権は
24.8%の削減です(千代田生命では25.27%)。

もちろん、だからといって契約者負担が決して小さいわけではなく、
契約者保護のためには、やはり破綻を避けることが重要だと
あらためて確認できました。

※写真は昨年行った奈良公園です。

 

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