総合研究開発機構(NIRA)が10月に、
「次の危機に備えた金融システムの構築」という研究報告書を発表しています。
副題に「現下の対症療法的対策の問題点を踏まえた提案」とあるように、
金融機関のリスク管理実務や経営問題に詳しい有識者が集まり、
国際機関や各国当局から出された対策や提言の問題点を指摘しつつ、
政策提言をまとめたものです。
金融危機の要因は次の二つに分けられます。
①個別金融機関の判断や経営による要因
②業界全体に共通するシステマティックな要因
(個別金融機関経営が置かれた外部環境からの影響)
報告書では①②について、次のように述べています。
・今回の金融危機について出された国際機関や欧米監督当局
による提言や対策は①と②を明確に区別していない、あるいは
①と仮定して議論している。
・当局は個別金融機関のリスク管理の弱点を矯正するため
もっぱら「規制の強化」に頼ろうとしているが、②を変えないなかでの
規制の強化は、新たな規制逃れやリスク・テイク拡大を促すおそれがある。
・今回の金融危機では①よりも②の影響が大きかった。
仮に個別金融機関が、与えられた環境下でいかにリスク管理の
高度化に励んだとしても、それだけでは今次金融危機を防ぐことは
できなかっただろう。
・個別金融機関の経営に影響を与えるような制度やインセンティブ・
メカニズムがしっかりと構築されていなければ、個別金融機関の
自助努力だけに頼っても限界がある。
私は自著「経営なき破綻 平成生保危機の真実」で、
・生保破綻は②もさることながら、①の影響が大きかった
・②と①が相互に連関して経営危機が発生した
ことを示しています。
今回の危機では①②どちらの影響が大きかったのかはわかりませんが、
確かに①だけを議論しても(特に監督当局が)本質的な対策にはならない
というのは理解できる話です。
※写真は新川の南高橋(みなみたかばし)。
中央区の文化財に指定されているそうです。