15. 執筆・講演等のご案内

週刊ダイヤモンドの保険特集

ランキング以外も充実

今年の保険特集は例年よりもやや遅いタイミングでの刊行でしたが、例年にも増して力作だったという印象です。
プロローグの節税保険では、短期払いスキームというタイムリーな話題のほか、過去の経緯も紹介しています。外貨建て保険の記事にも「保険会社シェア」「銀行が受け取る商品カテゴリー別手数料額」があり、代理店の記事には損保代理店の図解や新手数料体系の分析があるといった、ファクトに基づいた情報を提供しようという姿勢に好感を持ちました
(もちろんデータが正しいという前提で)。

それにしても、これだけの特集なのにスタッフの名前がわずか2人しか出ていないというのも驚きでした。怪奇現象が起きるのもわかります(編集後記を参照)。

緩和型コラムも健在

実のところ個人的に保険特集で最も楽しみにしている記事は、「掲載基準緩和型コラム」という小ネタだったりします
(すみません、本文も読んでいますよ^^)。

今回は畑中元金融庁長官の話とか、地面師グループに元セールスレディ、ADIとトヨタの関係といった、「だからどうなの」という話ではあるのですが、楽しく拝読しました。おそらく骨太の本文があるからこそ、こうした小ネタが生きるのでしょう。
拡大版のコラム「代理店周辺のうわさ話」も関係者にはウケたのではないでしょうか。こうしたメーカー(保険会社)と乗合代理店の関係は将来的にどうなっていくのでしょうね。

見かけと実態のギャップ

自分の原稿についても多少触れておきましょう。
「最高益は見せ掛けにすぎない 生保経営の真実に迫る」というもので、以前のブログでご紹介したように、決算発表報道で示される「保険料等収入」と「基礎利益」では、マイナス金利政策の副作用に苦悩する生保経営の本当の姿は見えてこないという内容です。

少しだけ裏話をしますと、元の原稿のタイトル案は「最高益は見かけにすぎない」だったものが、編集の過程で「最高益は見せ掛けにすぎない」となっていたのに、ボーっとしていてそのまま返してしまい、今になって多少反省しています。「見かけ」と「見せ掛け」ではニュアンスが違いますよね。
本文を読めばわかりますが、保険会社が決算をお化粧しているという趣旨ではありません。

経営者は表面的な会計数値を重視するのでしょうか。
例えば、5月24日に開かれたMS&ADのIR説明会の質疑応答要旨に次のコメントが出ています。

「株主の皆さまへの還元の原資がグループ修正利益であり、基本的に重視する指標は、グループ修正利益です。一方で、マスメディアでの報道等でとりあげられるのは財務会計利益であることもあり、また、財務会計上の利益を重視する投資家もおられることから、マネジメントとしては財務会計利益も重視しています」

異常危険準備金の取り崩しによって高水準となった会計利益が経営実態の手掛かりになるとは考えにくいのですが、「マスメディアに取り上げられるから」という(おそらく)経営トップのコメントをどう受け止めたらいいのでしょうか。
これはメディアに変わってもらうしかないのかもしれません。

※2月の金沢駅の写真もアップ。

 

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「生保決算を読む」

直近のinswatch Vol.984(2019.6.10)に執筆した記事のご紹介です。
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2018年度の国内系生保11社の決算データを見ると、「増収」「増益」といった見かけの好調さと実態の厳しさのギャップが非常に大きいことがうかがえます。

「増収」は外貨建て保険の販売増

個人分野の保険料等収入は11社合計で前期比6200億円の増収でした(第一フロンティア生命、フコクしんらい生命を含む)。このうち銀行窓販による保険料収入の増収が6700億円程度(大樹生命を除く)とのことなので、銀行窓販による保険料収入の多くが一時払いの外貨建て貯蓄性保険であることを踏まえると、増収は外貨建て保険の販売増によるものと説明できてしまいます。
裏を返せば、経営者保険の販売が絶好調だったにもかかわらず、外貨建て保険の増収がなければ保険料等収入はマイナスだったわけです。要は貯蓄性商品の販売が多ければ増収、少なければ減収となるのが保険料等収入なので、この指標は生保ビジネスの一部分だけを示しているにすぎません。

では、銀行窓販以外の生保ビジネスはどうだったのかといえば、第三分野で増収を果たした会社もあれば、新契約件数が今ひとつ伸び悩んだ会社もあり、統一感はありません。ただし、昨年度は経営者向け保険が好調だったことを考慮すると、今年度の業績がかなり下振れする会社も出てくるのではないかと思います。

「増益」は外貨建て資産の利息収入が貢献

次は「増益」についてです。昨年度は大手を中心に、基礎利益が増益となる会社が目立ちました。
基礎利益(最低保証リスク対応の影響を除く)は11社合計で1300億円の増収でした。このうち逆ざや(順ざや)額の改善効果が1000億円、それ以外が300億円でした。それ以外がプラスになったのは3社だけで、何か特殊要因がありそうですが、いずれにしても、基礎利益の増益には逆ざや(順ざや)額の改善が大きかったことがわかります。11社合計で見ると、平均予定利率の低下による効果が大きく、さらに、会社によっては利息配当金等収入の増加も貢献しています。
利息配当金等収入の内訳は現時点では公表されていません。前々年度データによると、外債投資の増加とともに外国証券利息・配当金収入の割合が概ね3、4割まで高まっていることが確認できます(ソニー生命、かんぽ生命を除く)。外債投資の残高は年々増えているので、昨年度はさらに高まったかもしれません。
基礎利益には安定的に貢献しても、外債投資ですから、為替リスクや海外金利の変動リスク、外国債の信用リスクなど、運用リスクを伴う投資を増やした結果の、これまた一部分だけを見ているにすぎません。

実態はどうだったのか

では、全体として生保の損益はどうだったのかといえば、30年国債利回りが0.5%まで下がってしまった影響は大きく、各社が公表するEV(エンベディッド・バリュー)をご覧いただければ、厳しさの一端をうかがうことができます。
昨年度も生保各社は、健全性指標を下支えするべく劣後債務の調達を相次いで行いました(日本生命、第一生命、明治安田生命、かんぽ生命など)。このことだけを見ても、国内系生保が少なくとも好決算で浮かれた状況にはないことがわかります。

実のところ、2月に行われた「生命保険協会との意見交換会において金融庁が提起した主な論点」には、「今後クレジット市場全般において、リスクが顕在化した際には、保険会社の財務にも、相応の影響を与えるのではないかと考えている」「最近のドル円の為替ヘッジコストの上昇は、外国証券による運用成果にも大きな影響があるものと考えている」という辛口の記述がありました。
浮かれているのはメディアと保険販売の現場だけとならないよう、生保経営の実態をしっかり確認していく必要がありそうです。
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なお、今週の週刊ダイヤモンドの保険特集でも、同じく生保の経営内容に関する分析記事を執筆していますので、機会がありましたらこちらもご覧いただければ幸いです。

※写真は横浜・みなとみらいです。

 

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生保決算から

こんどは生保決算について。
見かけと実態のギャップが大きいというのが私の総括です。

メディアは好決算と報道

ここ数日の業界紙(保険毎日新聞)の1面トップはご覧のとおりでした。

「日本生命 基礎利益が開示以来の最高益」(5月29日)
「明治安田生命 グループ・単体共に2年連続最高益」(30日)
「住友生命 連結基礎利益、堅調に推移」(31日)

29日の日経「生保決算を読む(上)」も、見出しは「マイナス金利でも最高益」で、次のような記述がありました。

「外国債券や株式など、国債以外のリスク資産に運用資金を配分し、マイナス金利による運用難の逆風をはね返した」
「最高益によって保険契約者には配当増という恩恵が及ぶが、膨らんだ運用リスクをどう管理するか新たな課題も浮かぶ」

金利低下の影響は小さくない

しかし、好決算はあくまで見かけ上の話であって、実態は結構厳しかったというのが私の見方です。
何より長期金利の水準が、日銀がマイナス金利政策を開始した直後の2016年3月末よりも下がってしまったのは、多くの生保にとって誤算だったと思います。
「誤算」というのは、ここ数年の各社が行ってきた、金利リスクの削減を主な目的とした超長期債の購入を抑え、あえてリスクを抱えるという判断が裏目に出ているからです。
損保グループの健全性が金利低下の影響を受けて悪化しているのですから、より大きな金利リスクを抱える生保が影響を受けていないはずはありません。

外貨建資産の積み上げも、基礎利益には確実にプラスとはいえ、株式保有とともに経営のボラティリティを高める要因となっています。
外貨建資産のうち6割程度は為替リスクをヘッジしているようですが、昨今のヘッジコストの上昇を受け、一定の為替リスクをとるかたちでのデリバティブ活用も見られるなど、ヘッジ外債戦略はますます苦しくなってきたように思えます。

最高益は見かけにすぎない

「最高益」といっても、外国証券の利息配当金収入などが増えたことによる基礎利益が過去最高益では、そこに積極的な意味を見出すのは難しいのではないでしょうか。
日経記事の「最高益によって保険契約者には配当増という恩恵が及ぶ」というのも、本当にそうなのか、甚だ疑問です、

実はこうした内容の文章を、今月のどこかで発売される週刊ダイヤモンドの保険特集に寄稿しました。機会がありましたらご覧ください。
保険特集の全体像は私も知らないので、楽しみにしています。

(追記)週刊ダイヤモンドの保険特集は6月10日発売(つまり次週号)の掲載という案内が出ていました。

※写真の美麗島駅(台湾・高雄)は美しい地下鉄駅として知られています
 (ちびまる子ちゃんもいました)。

 

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保険を他の金融商品に例えると

直近のinswatch Vol.975(2019.4.8)に執筆した記事のご紹介です。
ある金融評論家による新書とはこちらになります。
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保険への理解の低さ

保険会社(特に生保)はしばしば外部から無理解に基づく批判を受けるようで、私のブログでも過去に何回か取り上げたことがあります
(例えば「責任準備金組入率(積立率)の低い会社は危ない」「長生きしないと年金を受け取れず、保険会社がボロ儲け」など)。

最近もこんなことがありました。ある金融評論家による生命保険に関する新書を手にしたところ、「日本の生命保険は、客(契約者)の取り分(利益)がものすごく小さい」と書いてありました。どのような分析をしているのか期待して読んでみたのですが、払い込んだ保険料がほとんど返ってこないことをもって「騙しだ」「詐欺だ」という話が続き、肝心の分析がなく、残念に思いました(転換制度や更新型への問題提起もしていました)。
保険は確率統計の技術を活用しているのですから、プロとして何らかの根拠をもとに、想定を厳しく見すぎているとか、運営コストを掛けすぎているとか主張していただくのであれば、前向きな議論になるのですが。

「掛け捨ては損」は根強い

ところで、先ほどの新書の筆者は自らの契約について、「この25年間、保険料を毎月5万円ほど払い続けても、ほとんど何ももらえない」と怒っています。
高倍率の定期付終身保険(直近の主な契約内容は定期特約4800万円、終身保険100万円など)に加入していたとのことで、保険募集に関わるかたであれば、一定期間の保障をメインとした契約なので、払った保険料の大半が返ってこないのは当然だと考えるでしょう。

しかし、世の中には「掛け捨ては損」という考えも根強いと感じます。さすがに自動車保険について、「何も返ってこないのはおかしい」と怒る人は少ないとは思いますが、多少複雑になると、払込保険料と比べた損得に目が向かってしまいがちです。
だからこそ、平均寿命を超えて長生きした場合に備えた長寿生存保険に対しても、「平均寿命まで生きた場合でも、年金の受取総額は保険料の支払い総額よりも少なく、損失が出る」という批判が出てきてしまいます。

複雑な金融商品を扱っているという自覚を

このような話になってしまうのは、保険を他の金融商品に例えると、オプション取引という「デリバティブ商品」であることと、キャッシュバリューがある長期の保険は保障と貯蓄の「ハイブリッド商品」であることが、根本的には影響しているのでしょう。

例えば、顧客が日経平均オプションのプットを買うとします。顧客は一定のプレミアムを支払うことにより、日経平均株価が決まった価格を下回ったら(正確にはプレミアム分も超えた時点で権利行使すれば)、利益を得ることができるのですが、「プレミアム」を「保険料」、「日経平均株価が決まった価格を下回ったら」を「事故が発生したら」、「利益」を「保険金」に置き換えると、保険そっくりですよね。長期の保険の場合、これが何十年も続き、貯蓄保険料からのキャッシュバリューも発生します。

すなわち、保険募集人の皆さんは、他の金融機関が伝統的に取り扱ってきた通常の預貯金や住宅ローン、あるいはプレーンな投資信託などに比べると、はるかに複雑な「デリバティブ商品」「ハイブリッド商品」を提供しているという自覚が必要なのだと思います。
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※近所の鶴見川の桜です

 

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経済危機とリスク管理

昨年11月の日本アクチュアリー会・年次大会の報告集が公表されました。
すでに昨年11月11日のブログでも簡単にご紹介していますが、登壇したパネルディスカッションの内容が公表されていますので、改めて取り上げてみましょう。

金融危機を知らない世代が増加

パネリストとして登壇したのは11番のERM委員会「経済危機とリスク管理~これからのリスク管理を担う若手のために~」です。
PGF生命の鈴木理史さんが若手の実務担当者の代表として、今のリスク管理の実務に関する疑問をベテラン2人(みずほ証券の藤井健司さんと私)にぶつけるという企画でした。

この企画の背景には、若手の実務家にはバブル経済どころかグローバル金融危機も日本の保険危機もピンとこないという現実があります。中堅生保が相次いで破綻したのは20年前ですし、リーマンショックからも10年たちました。
しかも、こうした危機をも踏まえつつ築かれていった各社のリスク管理の枠組みや当局による健全性規制は、彼らにとっては初めから存在するものなのですね。

若手担当者からの悲鳴と警鐘

鈴木さんによる「若手からの問題提起」は、ERM委員会の若手メンバーを中心とした意見交換の内容に基づいています。
業務負担が年々増えて現場が疲弊しているとか、形を整えることばかりに固執して、有効に機能するリスク管理になっていないとか、考えさせることばかり。
なかには、「(当局に報告する)ORSAレポートに載せたいから、この数字を計算してほしい」「数字が大きくぶれるのは計算方法が悪いから」「ストレステストの結果が悪かったので、シナリオを見直すべき」といった、耳を疑うような「証言」も出ました。

当日は双方向ツールを使って参加者アンケートを行っています。最初のほうでストレステストやORSAについて聞いたところ、やはり「報告やレポート作成自体が目的化し、あまり活用できていない」が4択のうち6割以上の回答を集めました。

なぜ「リスク文化」が選ばれたのか

参加者アンケートは最後のほうでも行いました。「今のリスク管理に足りないもの、強化していくべきものは何か?」という質問に対し、

 リスク文化  55%
 ガバナンス  31%
 PDCAサイクル 11%
 ツール     2%
 外部の関与   1%

と、過半数のかたが「リスク文化」を選んでいます。直前で私が「ガバナンスのところを何とかしないと、せっかくERMの枠組みを作っても、魂が入らない」と熱く(?)語っていますね^^;

当日は進行役の市川さんが、「ツール以上に文化やガバナンスが大事だと皆さんも感じていただけた」とうまくまとめていましたが、この結果をどう捉えるべきか。
若手の実務担当者として、「あるべきリスク文化は自分たちが率先して築いていかなければならない」という表明だったらいいのですが、もしかしたら、「今のままでは意味のない(と思えるような)作業ばかりで、上司や周囲の考えが変わらなければ何も変わらない」という諦めの心境の現れなのかもしれません。
いずれにしても、どこかで「リスク文化」を深掘りするような機会があるとよさそうです。

パネルディスカッションの詳細はこちらをご覧ください。

※浅草のこの展望台には初めて行きました。
 スカイツリーもよく見えます。

 

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「国際線機長の危機対応力」を読む

インシュアランス生保版(2019年4月号第1集)のコラム。今回は書評です。
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パイロットの役割

3月にエチオピアで墜落事故を起こしたボーイングの同型機が各地で運航停止になった。本稿の執筆時点で詳しい原因はわかっていないが、同機に搭載された自動操縦装置が何らかの影響を及ぼしたとの指摘がある。
ボーイングとエアバスでは自動操縦の設計思想が異なるとされてきた。国土交通省の資料によると、エアバスは人為的ミスを防ぐ観点からパイロットよりもコンピュータの制御を優先する設計思想なのに対し、ボーイングの考え方は、コンピュータでは判断できない極限状態ではパイロットの制御を優先するというものだ。
いずれであっても現代の飛行機はパイロットの「腕」で飛ばすものではなく、パイロットが自動操縦装置を使って飛行するものである。つまり、操縦技術よりも、複雑なシステムを動かすオペレーターとしての役割が重要となっている。

未来を変えるためにいま行動する

それではパイロットに求められる資質とは何か。
PHP新書「国際線機長の危機対応力」(横田友宏著)によると、「飛行機の操縦とは、未来を変えるためにいま行動すること」であるそうだ。いま起きている事象を見て、それに対処するだけの人間ではダメで、「まだ事実が事実としての実態を持たない、兆しの段階でそれを捕まえ、その兆しがいかなるものに発展するかを見極め、その兆しに対応するために様々な対応を行っておく」(本書より引用。以下同じ)。しかも、時間的に制約があり、かつ、情報の一部しか知りえない状況下で、意思決定をしなければならない。
これは企業のリスクマネジャー、あるいは経営者にも通じるところがあるように思える。

専門職としてのあり方、考え方

教官として何人もの機長を育てた著者がパイロットに求める要件は非常に厳しい。
そもそも最初に出てくるのが、「パイロットの資質を持たない訓練生はパイロットにさせない」である。そして、「機長は単なる操縦士ではない。機長はフライトというプロジェクトを成功に導くためのプロジェクトマネージャーでなければならない」「機長として大事なのは『自我の抹消』である。(中略)機長は一切のとらわれを離れ、気象状態と管制官の指示やほかの飛行機の流れ、飛行機の状態だけを考えなければならない」「機長は、猛々しいライオンであってはならない。機長は長い耳を持つ、臆病なウサギでなければならない」と続く。
余計な雑念を持たず、チームのなかでリーダーシップを発揮する臆病なウサギに、あなたはなれるだろうか。

次のような記述も耳が痛い。「うまくいかない原因を自分以外の周りの責任にして自分は変わろうとしない人間は、絶対に機長にはなれない」「隣の教官やチェッカーがどう考えているかばかり気にしている副操縦士も、機長にはなれない」。
本書はパイロットという特殊な専門職の話を取り扱っているが、保険業界人にとっても、専門職としてのあり方や、マニュアル化するのが難しい「考え方」「哲学」の伝承を考えるうえで、大いに参考になりそうだ。
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※写真は井の頭公園です。

 

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「健康増進型」保険の特集

近代セールス社の季刊誌ファイナンシャル・アドバイザー春号に寄稿しました。
この号のサブ特集が「健康増進型」保険でして、私が解説した後、保険ジャーナリストの石井秀樹さんが各社の商品内容を紹介し、著名FPの竹下さくらさんが顧客からの質問に答える、といった作りになっていました
(メイン特集は「税制改正で提案はこう変わる!」です)。

私のパートは先ほどのサイトで前半だけ読めるみたいですが、ここでは見出しをご紹介しましょう。

・各社が「健康増進型」保険をリリースしている背景・狙いとは?
 *健康増進を切り口にポジティブな提案が可能
 *顧客との接点を自然に継続して持てる
 *商品開発の背景にあるインシュアテックの進展

・個人の健康情報を活用することでどのようなメリット・デメリットがあるのか?
 *健康増進のために保険に入るのは本末転倒
 *健康状態と保険料の関連性がわからない

・個人の健康情報を活用した商品開発は今後どう進んでいくのか?
 *リスク細分が進むのは良いことばかりではない

主な読者層は現場の第一線で金融・保険商品を提供する皆さんなのでしょうか。本社の営業企画部門や商品開発部門に代わり(?)できるだけ中立的に、かつ、わかりやすく書いたつもりです。
機会がありましたらご覧ください。

※写真は旧築地市場です。解体が進んでいます。

 

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なぜ銀行は外貨建て保険の販売に積極的なのか

直近のinswatch Vol.967(2019.2.11)に執筆した記事のご紹介です。
外貨建ての金融商品に対する一定のニーズはあるはずですが、ここまで外貨一辺倒というのは違和感がありますね。
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銀行窓販は外貨建てが9割

個人ブログにも書きましたが、銀行など金融機関チャネルによる一時払い保険の販売は、直近では約9割が外貨建てとなっている模様です。超低金利のなかで円建ての一時払い商品が実質的に消滅してしまい、代わりに外貨建て保険が台頭したかたちです。
販売が増えるとともに苦情も増加しているようです。金融庁は商品を提供する保険会社や、販売を担っている銀行に対するモニタリングを強めるとともに、銀行から金融商品(外貨建て保険を含む)を購入した顧客への大規模なアンケート調査を行うと報じられています。

なぜ外貨建てなのか

銀行のリテール戦略を踏まえると、販売する保険が外貨建てである必然性はありません。
銀行が投信・保険販売などのリテール戦略で主なターゲットとしているのは自行の預金者です。その多くはシニア層ですし、預金は圧倒的に円建てですから、本来であれば、わざわざ元本割れの可能性もある外貨建ての保険に銀行が顧客を誘導したいと考えているとは思えません。
外貨建て保険は市場リスクを有する「特定保険契約」なので、販売には細心の注意が必要とされています。また、「利息がほとんどゼロの預金とはちがい、海外は日本よりも高金利なので、利回りが高い」というアピールは、理屈(購買力平価説)で言えば、最終的には為替レートで調整されるので、長期保有を前提にした保険では不適切かもしれません。

銀行が保険販売に注力する理由

それでも銀行が外貨建て保険の販売に力を入れる背景には、預貸利ザヤを主体とした基礎的収益力(資金利益、非資金利益など)の低下に歯止めがかからないため、何とかして収益を確保する必要に迫られていることが挙げられます。
銀行の経営は深刻です。金融庁が昨年9月に公表したレポートによると、すでに地域銀行の半数が本業利益(貸出・手数料ビジネス)で赤字とのこと。

資金利益については、このところ貸出残高が増えているとはいえ、企業部門の慢性的な貯蓄超過という構造に変わりはありません。金利競争が激しくなり、信用リスクに見合った利ザヤの確保が難しい状況です。
これまでは信用コストの改善が当期純利益を下支えしてきましたが、景気が後退局面に入れば、新たなリスクテイクを含め、信用コストが収益を圧迫することも考えられます。

それでは役務取引等収益などの非資金利益にもっと頼れるかといえば、確かに2014年ころまでは、好調な投資信託や保険の販売に支えられ、役務収益は増加傾向にありました。ところが、最近はむしろ減少気味です。特に投信は、販売手数料や乗り換え販売に対する金融庁の厳しい姿勢などもあり、販売が伸びていません。

収益力の低下に歯止めをかけるためには、役務収益を増やさなければならない。とはいえ、顧客本位の業務運営を求める金融庁の厳しい姿勢や、金融市場の先行き不透明感の高まりもあって、投信を積極的に売るのは難しい。
保険は、外貨建てであれば保険会社が競って提供してくれるし、相続税対策のような「機能売り」ができる(ついでに販売手数料も高い)ので、投信の代わりとして保険に力を入れよう。
このような銀行の事情が透けて見えますし、日銀の金融政策の副作用という面も強そうですが、果たして持続可能な戦略なのでしょうか。
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※戸越銀座が木の駅になっていました。

 

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第三分野商品のスタンダード化はどうなった

こんどはインシュアランス生保版(2019年2月号第1集)に執筆した記事のご紹介です。
冬休みの宿題がいま日の目を見ているといったところでしょうか^^
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商品ランキングへの苦言

1月11日の毎日新聞投書欄で「保険批判への反論も載せて」という保険関係者による投書を見つけた。ビジネス誌による生命保険特集に掲載されている保険コンサルタントや評論家による商品評価の内容が、保険数理のプロから見て、あまりに的外れで独断的な批判ばかりなので、せめて保険会社の言い分も載せるべきという内容だった。

ビジネス誌の保険特集では、商品評価やランキングが目玉記事の一つとなっている。保険ジャーナリストやFPに対し、積極的に情報提供を行う保険会社も増えており、保険会社の言い分が全く反映されていないわけではなさそうだが、保険数理のプロが嘆くのだから、こうしたインプットにもかかわらず、偏った記事の掲載が横行しているのだろう。
保険への理解の低い評者にはもっと勉強していただくしかないし、一方的なコメントばかり載せるのもどうかと思う。ただ、もし私自身が商品評価をしろと言われたら、おそらく困ってしまうだろう。なぜなら、平成の30年間で第三分野を中心に商品や料率の多様化が進んだ一方で、保障と料率の関係が外部からほとんどわからないためである。

保険商品の比較は困難

各社のサイトには商品パンフレットのほか、「契約概要」「注意喚起情報」が載っているので、比較サイトに頼らずとも保障内容を比べることはできる。だが、保険料の絶対水準ではなく、同じ保障に対して商品Aの保険料が商品Bよりも高い/安いといった、他の金融サービスでは普通に行われている分析が保険商品では非常に難しい。

それでも死亡保障だけであれば、最近の健康増進型を除き、ある程度納得できる比較が可能かもしれない。保障内容のバリエーションが限られているうえ、標準生命表が存在し、各社とも表から大幅にかい離したプライシングを行っていないと考えられるためである。
これに対し、第三分野には標準発生率や参考純率等がなく、金融庁による商品認可を経ているとはいえ、各社が使っている発生率も、プライシングの保守性の程度もばらついていて、かつ、外部の評者が分析する手掛かりも乏しい。

このままでいいのか

通常の財・サービスであれば問題ないかもしれないが、社会保障の補完的な役割を果たすことが期待されている保険商品において、保障と料率の関係がここまでブラックボックス化したままでいいのだろうか。

実は15年近く前に、金融庁の検討チームで第三分野の責任準備金積立ルールや事後検証ルール等を議論したことがある。05年6月に公表された報告書を読むと、今後の課題として「データの整備」「標準発生率・参考純率等の整備」が挙がり、第三分野商品のコアになる部分のスタンダード化に向けて、「当面はまずデータ整備に注力し、将来的課題として、標準発生率や参考純率等の適否を検討していくべきではないか」という提言が示されている。
しかし、何年たってもデータ整備に向けた動きは見られない。果たしてこのまま放置しておいていいのだろうか。
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※輪島の朝市です。季節外れで閑散としていました。

 

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きんざいの生保経営分析

直近の週刊金融財政事情(2019年2月4号)で「主要生保経営の現状と課題を探る」を執筆しました。
先日ご紹介した保険毎日新聞のインタビュー記事をより詳しくした感じです
(いずれも4-9月期決算を踏まえたものなので)。

インタビュー記事でも触れましたが、メーカー(商品提供会社)としての大手生保は販売チャネルの多様化に動く一方で、営業職員を主体とする販売会社としては、グループ化や業務提携により商品ラインナップの充実を図っています。

大手生保が保険ショップの買収を含め、マルチチャネル化を積極的に進めているのは、自前の営業職員チャネルだけではアクセスが難しい層が増えており、マルチチャネルに転じなければ先細りになってしまうという判断だと思います。新しい販売網はもはや営業職員チャネルの補完を超えた存在になりつつあるようです。
その一方で、大手各社の営業職員チャネルでは、他社商品を取り扱い、かつ、相応の業績を上げているケースが目立ちます。

他社商品の取り扱いがグループの範囲に収まる、あるいは補完的な分野に限られているのであれば、「メーカーによるマルチチャネル化」「販売会社による他社商品の取り扱い」の両立は可能です。でも、保険ショップやネット通販、乗合代理店といった、台頭するライバル販売チャネルに対し、それで販売会社としての競争力を維持できるかどうか。

決算分析と言いつつ、そのようなことも書いていますので、機会がありましたらご覧ください。

RINGの勉強会で金沢へ。茶屋街の近くで豆まきがあったようです。

 

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