今週から拙著「利用者と提供者の視点で学ぶ 保険の教科書(中央経済社)」が店頭に並び始めたようです。週末に大きな本屋さんに行って確かめてきます^^
※15日現在、アマゾンでは定価で買えないようなので、お求めのかたは中央経済社のサイトなどでお願いします。
福岡大学の授業も今週からスタート。キャンパスが賑やかになりました。ただ、大阪では行政が対面授業の中止を要請するとのことで、福岡もこの後どうなるか、いろいろと心配です。
さて、少し遅くなりましたが、今週のInswatch Vol.1080(2021.4.12)では生保の営業職員チャネルについて寄稿しましたので、ご紹介いたします。
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採用後2年で半数が退職
営業職員チャネルを主力とする大手生命保険会社が、評価制度や採用基準の見直しなどに動いている模様です。コロナ禍で対面チャネルのあり方が問われていることもありますが、大量採用・大量脱落のターンオーバー問題の改善は長年の経営課題となっています。
2005年に発覚した保険金不払い問題を経て、在籍する営業職員の3分の1が毎年入れ替わるといった極端なターンオーバーは過去のものとなっています(現在の退職者数は在籍者数の2割を下回っています)。新契約に過度に偏った営業活動を改め、顧客訪問活動など既契約を重視する営業に舵を切ったことや、採用後の教育を重視し、早期退職の減少に取り組んだことなどが一定の効果を上げたと考えられます。
3月31日の日本経済新聞に載った大手生保の営業職員の在籍率は2年目(13月目)で7割前後、3年目(25月目)で5割前後でした。20年ほど前の25月目在籍率は2割程度だったので、実はこれでもかなり改善しています。ただ、採用しても2年で半数が退職してしまうようなチャネル運営でいいのかという疑問は残ります。
ターンオーバーの何が問題なのか
厳しい営業職なので、100人採用しても2年後には50人しか残らないのは仕方がないという考え方もあるでしょう。今のビジネスモデルでは、顧客開拓からクロージングまで、基本的に個人のスキルにかかっているからです。
ただし、100人を採用し、営業職員として育てるには、会社として多額のコストがかかっています(例えば近年、保険会社は新人層の固定給を増やしています)。短期間で半数が退職してしまうのは、いわばコストを無駄にかけているようなものです。
問題はそれだけではありません。早期に退職した職員の獲得した契約は、退職後に解約となってしまう傾向があります。優先順位の低い保険にいわば義理・人情で入っていた顧客も不幸ですし、保険会社にとっても解約は企業価値を減らす要因です。
さらに言えば、早期に退職した職員やその顧客が、その保険会社にいい印象を持つとは思えませんので、保険会社は自らブラックなイメージを世間に広めてしまっていることになります。
超厳選採用かマニュアル化か
明治安田生命は営業職員の固定給制度(1年間の活動内容に応じ、翌年の給与を固定給として支払う)の導入など、チャネル改革を進めていく方針を社長インタビューなどで示しています。また、第一生命ホールディングスは先日公表した中期経営計画で、「過去の成功モデルや量的拡大にこだわらず、真にお客さま満足を高めることができる『高能率層』の拡大に重点を置いた運営に大きく舵を切り、従来の大手社のイメージからは一線を画した水準」を目指すとしています。
もっとも、採用した職員の在籍率を一段と高めるには、採用を3割減らすといったレベル感ではなく、応募者100人のうち営業センスのある1、2人しか採用しないくらいの超厳選採用に踏み切る必要があるのかもしれません。あるいは、業務を徹底的にマニュアル化して、誰もが標準活動を行う固定給のチャネルとすることも考えられます。
どちらも同じ業界に成功例がありますし、少なくとも現在の延長線上では「改革」を繰り返すことになってしまいそうです。
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