国がちがえば主力商品もちがう

inswatch Vol.1019(2020.2.10)に寄稿した記事をご紹介します。
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ドイツ生保市場の変化

保険の国際的な規制を決めるIAIS(保険監督者国際機構)で2017年まで事務局長を務めた河合美宏さんが最近、日本経済新聞(電子版)へ寄稿した文章のなかで、ドイツでは低金利と新たな健全性規制への対応として、生保業界の主力商品が変化したという紹介がありました。
伝統的な利率保証のある長期の貯蓄性商品(養老保険や個人年金保険)から、利率保証が限定(既払い保険料のみ保証)される一方で、伝統的な商品よりも高いリターンが期待できる「ハイブリッド年金保険」という投資性商品にシフトしたというのですね。

主力は個人年金

ドイツ生保の商品構成については、金融庁の「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議」第3回の資料に掲載されています。
資料によると、ドイツ生保は定期保険や就業不能保険などの保障性商品も取り扱っているものの、個人年金のように老後に備えた貯蓄性商品を中心に提供していることがわかります。ユニットリンク型(変額型)は意外に普及しておらず、その点は日本と共通しているようです。

これに対し、日本で個人年金保険は生保の主力と言えるほど提供されていません。例えば、2018年度の個人分野の新契約年換算保険料(約3兆円)のうち、個人年金保険は17%(0.5兆円)を占めるにすぎません。新契約件数では、個人分野に占める割合は6%まで下がります。
保険料収入や新契約件数などを総合的にみて、日本の生保市場は死亡保障や生前給付保障、医療保障といった保障性商品が中心と言えるでしょう。

生保市場は地域性が強い

ドイツ以外の国でも、生保といえば貯蓄性商品(または投資性商品)というところは多いようです。
例えば、イギリスで生命保険といえば一時払いの個人年金保険ですし、最低保証のない変額タイプの商品や実績配当型の商品が多くなっています。年金開始前(ペンション)と開始後(アニュイティ)で商品が分かれているのも特徴です。米国も保険料収入で見れば個人年金保険の割合が大きく、大手生保グループの多くは自らを金融サービス事業者と規定しています(他方で米国では健康保険を民間保険会社が提供)。

生保市場は地域性が強く、国や地域によって特性がかなり異なっています(これは販売チャネルについても言えることです)。主力商品をちょっと比べただけでも、同じ「生命保険」「生命保険会社」とはいえ、日本の常識が世界でも同じとは限らないことがよくわかります。
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※大人の修学旅行 in 歌舞伎町。
 由緒あるバーにおじゃましました。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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