15. 執筆・講演等のご案内

セミナー講師を務めます

3月4日(月)の午後に金融セミナーの講師を務めます。
セミナーインフォのサイトへ

演題は「リスクベースでみる保険会社経営の現状と課題」で、日本の保険会社経営の現状と課題を「経営リスク」の観点から浮き彫りにしようというものです。
一人で3時間お話しするという、私にとっては非常に贅沢な機会なので、特定の事項に絞るのではなく、「事業リスクの観点から」「財務リスクの観点から」「エマージングリスクの観点から」の3つについて、お話ししようと考えています。

日本の生損保経営の全体像をつかむには便利なセミナーだと思いますので、もしご興味などありましたら、ぜひご参加ください。

※地下に素敵な空間がありました

 

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損保決算のインタビュー記事

生保に続き、損保についても保険毎日新聞にインタビュー記事が載りました(23日)。
「損保会社2018年度上半期決算の評価 植村信保氏(保険アナリスト)に聞く 重要な自然災害リスクの見極め」というもので、決算を踏まえた大手損保グループ経営の現状を次の3点で整理しました。

自然災害多発の影響が上半期決算に大きく影響した

・各社の支払い余力の水準やリスク管理体制を踏まえれば、1兆円規模といえども健全性を揺るがすほどのものではない。

・多発した自然災害をどう捉えるべきか、保険会社の見方は分かれている。災害発生のトレンドが変わってきているという見方もあれば、確率上は数十年に1回しか発生しないようなことが起きたとはいえ、あくまで想定の範囲内という見方もある。

・今後の自然災害リスクをどう捉えるかによって、保険会社としての備えもプライシング戦略も大きく変わってくるため、この見極めが非常に大事になる。

自然災害を除き、国内損保事業は堅調に推移した

・主力の自動車保険では、損害率が若干上がり気味ではあるものの、収支残を十分確保できている。過去の料率引き上げや等級制度の見直しが効いていて、今のところ安定している。

・今後の自動車保険の収支を悪化させる要因として、消費税率の引き上げと、債権法(民法)の改正による法定利率の引き下げがある。足元の料率引き下げトレンドに加え、火災保険の料率引き上げも見込まれている中で、この二つの要因をどこまで自動車保険の料率に反映できるだろうか。

国内損保事業への依存度が徐々に下がっている

・今回の上半期決算は、事業や地域の多角化が進んだことを実感させるものでもあった。3メガ損保グループの通期業績予想(連結純利益)がいずれも黒字かつ増益なのは、異常危険準備金の取り崩しに加え、国内生保事業や海外保険事業による下支え効果も大きい。

・特に国内生保事業は、会計上の貢献度は小さく見えるものの、保有契約もEVも拡大傾向が続き、グループ経営を支える存在となっている。

・海外事業展開については、買収による拡大だけでなく、業績の立て直しや事業再構築などの動きも起きている。買収時にどんなに慎重に見極めたとしても、その後想定外のことが起きやすい。東京海上グループが再保険事業を売却したのも非常に興味深い動きと受け止めている。

機会がありましたらご覧ください。
保険毎日新聞のサイトへ

※築地を歩くと古い建物に出会います

 

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保険行政はなぜ破綻を防げなかったのか

ご案内が遅くなりましたが、日本保険学会の機関誌である「保険学雑誌」の最新号(第643号)に論文が掲載されています。タイトルは「近年の日本の保険行政における健全性規制の動向とその考察」で、1年半前に行った九州部会での発表をもとに、その後の情報をアップデートしつつ、まとめたものです
(アブストラクトのみ閲覧可能です)。

拙著「経営なき破綻 平成生保危機の真実」では、2000年前後に生じた中堅生保の連鎖的な破綻について、厳しい外部環境だけではなく、経営内部の問題が大きかったことを明らかにしました。ただ、自由化以前の保険行政による影響力の大きさを踏まえると、当時の保険行政がなぜ破綻を防げなかったのかという点について、もっと触れるべきだったのかもしれません。

今回の論文では、前半でこの問題を取り上げ、次のように整理しました。

・純保険料式責任準備金と株式含み益への依存を柱とした健全性確保の枠組みを続ける一方、1980年代に複数回の予定利率の引き上げや高水準の契約者配当を認めてしまったうえ、ロックイン方式の弱点を見過ごした。
・財務内容の手掛かりとなる経営指標が生保の経営実態を十分に反映していなかったため、問題を抱えた生保への対応が遅れた。
・1995年の保険業法改正でソルベンシー・マージン比率を導入する際、生保経営の深刻な状況を踏まえ、緩やかな基準としたことが裏目に出た。

保険会社に対する規制は1995年の保険業法改正の前後で対比されることが多いと思います。
しかし、健全性規制に注目すると、業法改正で整備が進んだというよりは、護送船団時代の不備が明らかになるなかで、リスクベースの新たな規制を導入しても十分機能せず、自己規律の活用という新たな取り組みも含め、いまでも試行錯誤が続いていると言えそうです。

※新車の「えのしま号」で藤沢へ(少し前ですが)

 

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生保決算のインタビュー記事

17日の保険毎日新聞にインタビュー記事が載りました。
「生保会社2018年度上半期業績の評価 植村信保氏(保険アナリスト)に聞く、外貨建資産が経営に大きく影響」というものです。骨子は次のとおりです。

「一般勘定の資産構成で外貨建て資産の占める割合は決算のたびに高まり、会計上の利益でも外貨建て資産の影響が大きくなっている」

「運用リスクを高めているとはいえ、健全性の面では大きな変化は見られない。新契約価値の積み上げに加え、この上半期には株価が上昇し、長期金利も若干だが上昇。円安も進んだため、生保のリスクテイクがプラスに働き、支払い余力の増強につながった」

「商品・販売面を見ると、外貨建て保険、特に貯蓄性の強い商品が売れたかどうかで各社の保険料収入が大きく変動するのが目立つほか、収益性が高く、会社価値拡大を支えている保障性商品の販売は比較的堅調であった模様だ」

「近年の保険会社のグループ化や業務提携の動きが販売面に表れていることも注目される」

機会がありましたらご覧ください。
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※写真は旧万世橋駅です。

 

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「業績の安定」とは

直近のinswatch Vol.958(2018.12.10)に執筆した記事「『業績の安定』とは何を意味するのか」のご紹介です。損害保険会社の経営について書いています。
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支払い額は過去最大に

自然災害に伴う損保業界の保険金支払いが、前回(10月8日)の本誌で、「場合によっては、年度別の支払い額が過去最高となった2004年(7449億円)に匹敵することもあるのかもしれません」と書いたところ、ご承知のとおり、これを大きく上回る1兆円規模の保険金支払いとなることが判明しました。
ただし、自然災害の発生トレンドをどう見るか、つまり、まだ過去のトレンドの延長線上と言えるのか、あるいは、地球温暖化などの影響でトレンドが変わってしまったと見るべきなのかは、見解が分かれている模様です。

日経新聞の社説

ところで、11月24日の日本経済新聞に「損保は異常気象対策を万全に」という社説が載ったのをご存じでしょうか。
「災害が相次ぐ日本を地盤とする日本の損保は、保険金支払い能力を盤石にするのはもちろん、業績を安定させるあらゆる努力が欠かせない」としたうえで、業績安定のため、損保業界が異常危険準備金の税制優遇拡大を求めていることと、火災保険の料率引き上げを目指していることを紹介しています(後者については「コスト削減の徹底が前提」だそうです)。
ここで言う「業績」とは、決算における純利益のことです。事業として自然災害リスクを積極的に引き受けている保険会社にとって、本当に「業績の安定」が欠かせないのでしょうか。

「業績」は会計ルールに左右される

自然災害に伴う多額の支払いが見込まれる状態で決算を迎えた9月期決算では、3メガ損保の国内損保事業が赤字または大幅減益となりました。前回書いたように、9月に発生した自然災害は支払いに至っていないケースが多いため、異常危険準備金の取り崩しがほとんどなかったためです。
他方で通期の決算では、支払いが進み、異常危険準備金を取り崩すため、「業績」予想は総じてそれほど悪くありません。
損保の経営にとっては(税制優遇の話を除けば)同じ自然災害により発生した支払い義務なのに、会計ルールがそうなっているというだけで、「9月期の業績は悪化」「通期では安定」というのはおかしな話ですが、社説をはじめ、メディアの多くは(結果として)こうとらえているようです。

似たような話は保有する国内株式についても生じます。
有価証券の減損を、3メガ損保のように30%ルール(期末日の時価が取得原価に比べて30%以上下落したものを対象)の会社と、原則通り50%ルールを適用している会社では、同じ銘柄の株価が下落しても、「業績」に与える影響が大きく異なることがあります。

「業績の安定」という見方をやめるべき

もし本当の意味で業績を安定させるのであれば、異常危険準備金を追加的に積んだり、保険料の値上げを理解してもらうべく踏み込んだコスト削減を行ったりしても大きな効果はありません。むしろ、日本の自然災害のようなリスクの大きい引き受けをしなければいいという結論になります。
モノラインであれば別ですが、総合的な保険会社であれば、自らの存在意義を考えた際、自然災害リスクを引き受けないという選択は考えにくいでしょう。少なくとも現時点では事業として成り立つと考えているからこそ、各社は風水災害のリスクの引き受けを続けているのだと思います。

そうだとすると、日本の損保は何年かに1回は多額の支払いが発生するのが普通の状態ということになります。もちろん、会社としてリスク分散やリスクヘッジを進め、経営を安定させる(すなわち、経済価値で見た損益の振れを経営陣が想定したレベルに抑え、資本コストを小さくする)という戦略はあります。しかし、メディアが「業績を安定させるあらゆる努力が欠かせない」などと無理に毎期の決算の安定を求め、それに応じたりすると、かえって経営を歪めることになりかねません。

※丸の内で見かけたクリスマスツリーです。

 

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きんざいに書評を寄稿しました

江戸幕府 vs 市場経済

週刊金融財政事情の11月12日号に書評を寄稿しました。今回取り上げたのは「大坂堂島米市場(こめいちば)」で、著者は神戸大学の高槻泰郎先生です。
江戸時代の大阪(大坂)で、現物の受け渡しを想定していない「指数先物取引」が行われていたというのも驚きですが、経済学の知見も、参考となる海外事例も存在しないなかで、先物市場に対する政策を検討し、実行した江戸幕府の試行錯誤を、本書で読んで非常に興味深く感じました。

高槻先生は江戸時代の経験や知識が、いかにして明治以降に引き継がれたのか、あるいは引き継がれなかったのかに関心を持っているそうです。江戸時代の金融市場において培われた経験が、明治期の工業化といかに関わるのか、今後の研究成果に注目したいと思います。

保険代理店にとっての顧客本位の業務運営

せっかくの機会なので、もう一冊ご紹介しましょう。栗山泰史さんによる「保険代理店にとっての顧客本位の業務運営」です。
栗山さんはいわば保険業界のオピニオンリーダー的存在ですが、そのかたによる次のような記述にはちょっとしたショックを受けました。

「保険代理店の中には商品の説明さえうまくできないものがいる。保険会社はそうした保険代理店に対して顧客の紹介のみを期待し、そこから先の契約に至るまでのプロセスは保険会社自身が担うということでよしとした。こうしたものも保険代理店の一部にいるから、保険代理店の数はとにかく多い」

「(顧客本位の業務運営に関する)原則は金融事業者を対象とし、保険代理店は金融事業者に含まれる。多くの保険代理店がこのことさえ知らないというのが現状である」

同じ保険代理店といってもピンからキリまで違いがありすぎるというか、何とも言葉を失ってしまいます。
ちなみに本書では「変化は放物線上に生じる」「変化は放物線を描いて起きる」など、「放物線」という言葉が何度も出てきます。ご本人に確認したところ、物を投げる時の放物線ではなく、数学の放物線、つまり下に凸の二次関数の右側の部分をイメージした表現(=徐々に傾きが大きくなる)とのことでした。

※千葉県のローカル線(久留里線)に乗りました。

 

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なぜ「経済価値ベースの評価」なのか

インシュアランス生保版(11月号第1集)に執筆した記事のご紹介です。
金融庁が公表した「これまでの実践と今後の方針」を受けたものとなっています。
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動的な監督として経済価値評価を採用

金融庁が公表した「金融行政のこれまでの実践と今後の方針(平成30事務年度)」を読むと、保険会社を取り巻くリスク等に関するモニタリングのなかに、動的な監督として「資産・負債を経済価値ベースで評価する考え方を検査・監督に取り入れていく」という記述を見つけた
(104ページ)。

生命保険会社の経営管理やリスク管理に携わっていないかたには「経済価値ベースで評価する考え方」といってもあまりピンとこないかもしれない。資産・負債を経済価値ベースで評価するとは、市場価格に整合的な手法で評価することであり、もっと噛み砕いて言えば、時価評価のことである。
現行の会計では資産の一部が時価評価される一方、負債の大半は取得原価で評価されている。資産が時価変動で動いても負債は固定されたままであり、それに基づいて計算されるソルベンシー・マージン比率は、支払余力や経営リスクを十分にとらえていない。

金利リスクをどう捕捉するか

ここまで読んでも、やはり自分には関係がないと思うかもしれないが、金融庁が業界団体との意見交換会で次のようにコメントしているのをご存じだろうか。

「わが国の生保は国際的にも突出した金利リスクを有していると認識」
「現行の監督の枠組みでは金利リスクの捕捉が不十分」

日本の伝統的な生命保険は超長期にわたり利率保証があるものが多かったため、生保会社が抱える金利リスクは非常に大きい。生保はその一部を、超長期国債などを購入することでカバー(ヘッジ)してきたものの、それでも金利リスクが突出しているという指摘である。
言い換えれば、今の800%、900%といった高いソルベンシー・マージン比率(経営リスクの4~4.5倍の支払余力を持つという意味)は「虚像」であり、だからこそ金融庁は、超低金利がニューノーマル化するなかで、将来にわたる健全性を確保する動的な監督として経済価値ベースの評価を取り入れるのだろう。
生保としては、リスクヘッジが難しいのであれば、少なくとも新たなリスクテイクには慎重にならざるを得ない。

経済価値ベースでみると…

中堅生保が相次いで経営破綻した時代から約20年がたち、当時の状況をご存じないかたも増えていよう。生保破綻の本質的なところは経営者や経営組織の問題に行き着くとはいえ、直接的には高金利の時代に個人年金など超長期の貯蓄性商品の販売に傾斜し、過度な金利リスクを抱えた状況のまま金利水準が下がってしまい、経営体力を蝕むようになったことが破綻の一因である。
当時、経済価値ベースの評価が普及していれば、経営管理の担当部門は経営陣に対し、より明確な形で警鐘を鳴らせただろうし、監督当局も早期警戒が可能だったはずだ。

今の生保の健全性に問題があるとまで言うつもりはないが、経営内容にそれほど余裕があるわけではないことを、業界関係者であれば知っておいたほうがいいだろう。
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※写真は新選組ゆかりの八木家です。

 

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相次ぐ自然災害の発生

直近のinswatch Vol.949(2018.10.8)に執筆した記事のご紹介です。
「相次ぐ自然災害でも保険会社の経営は大丈夫なのか」という話を書いています。
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自然災害の頻発

今年は不幸にも比較的大規模な自然災害が相次いで発生する年となってしまいました。6月の大阪北部地震、7月豪雨、9月の台風21号、北海道胆振東部地震、台風24号と続いた大規模災害では、いずれも事故受付件数が数万件あるいは数十万件に上っています。
災害が広範囲におよび、全ての都道府県で何らかの被害が出ている状況なので、損害保険会社では損害調査担当の職員(および経験者)だけでなく、全社的な応援体制で支払い業務にあたっていると聞きます。

保険会社の経営は大丈夫なのか

金融庁は「これらの自然災害は、国内損害保険会社の財務内容に大きな影響を与えるおそれがある」(7月の日本損害保険協会との意見交換会における金融庁コメント)ことから、保険会社の引受方針や再保険手配等によるリスク軽減策などに注目している模様です。
保険会社の財務面に与える影響をどう見るかですが、家計向け地震保険は決算への影響はなく、費用保険と企業向けのみです。7月豪雨は9月12日の時点で1657億円の支払い見込みですが、まだ膨らむかもしれません。事故受付件数が非常に多い台風21号と、直近の24号(25号も?)をどう見るかにもよりますが、場合によっては、年度別の支払い額が過去最高となった2004年(7449億円)に匹敵することもあるのかもしれません。

とはいえ、ソルベンシー規制では伊勢湾台風(再現期間70年)に相当する規模の台風災害を想定しています。1991年の台風19号(支払い保険金は5680億円)から単純に換算すると約8900億円となりますが、現在の契約状況を踏まえると、より大きな金額を保険会社に求めているはずです(地震リスクと比べて大きいほうを採用)。
さらに言えば、保険会社は自らのリスク管理として、例えば再現期間200年など、ソルベンシー規制よりも厳しい基準で自然災害リスクを想定するのが一般的です。

ご参考までに、損保業界が保有する国内株式は約7.5兆円あります。株価が1年間で2割下がるのは、再現期間としてはせいぜい10年程度と考えられますが、これで1.5兆円もの経済損失が発生します。業界数値の多くを占める3メガ損保に関しては、自然災害リスクよりも株価下落リスクのほうが大きいと言えそうです。

決算数値は支払いの進捗次第で変わる

以上から、自然災害が相次いだとはいえ、総じて保険会社の健全性を揺るがすような話にはならないというのが私の現時点での見立てです。ただし、決算(損益計算書)には相応の影響が出てきます。
特に9月に発生した自然災害は、事故受付だけで保険金等の支払いに至っていないケースが多いとみられます。この場合、保険会社は見込み額を支払備金として計上しなければならず、これが損益を圧迫します。その後支払いが進み、火災グループの正味損害率が50%を上回れば、異常危険準備金を取り崩し、収益として計上することになります。
この結果、今年度の決算では、上半期は支払備金の計上が損益を圧迫し、下半期は異常危険準備金の取り崩しで増益、といったものになるのかもしれません。

損益計算書から自然災害による影響を見るのは難しく、むしろバランスシートを中心に確認したほうがよさそうです。
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※写真は「スイスの美しい村」グアルダです。

 

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保険毎日新聞のインタビュー

業界紙「保険毎日新聞」の9月21日号と25日号にインタビュー記事が載りました。
同紙で連載が始まった「『保険自由化』20年の軌跡 その影響と今後の展望を探る」という企画の第1弾だそうです。2回にわたるとは思っていなかったので、ちょっとびっくりしました^^

インタビューのお題は「保険会社経営の変化と行政が果たした役割」です。ここでは内容をごく簡単にご紹介しましょう。

前編では保険会社の経営が、前半10年間の守り一辺倒の時代から、後半には攻守バランスのとれた経営を志向できるようになったことや、保険市場でビジネスモデルの異なる新旧勢力がせめぎ合うようになったこと(以前紹介した「旧世界」「新世界」の話です)、ネット社会の急展開は「新世界」の成長を支える一方、この動きがさらに進むと「新世界」の会社どうしの競争が一段と激しくなると考えられること、などを語っています。

後編では、主に保険行政が果たしてきた役割について述べています。1995年の保険業法改正の3本柱である「規制緩和・自由化の促進」「保険事業の健全性維持」「公正な事業運営の確保」を検証し、規制緩和・自由化が進み、アクセスも多様化するなかで、「公正な事業運営の確保」の重要性が高まり、新たな規制につながっていったことを指摘するとともに、健全性維持に関しては試行錯誤が続いているとコメントしました。
いつもお話ししていることではありますが、銀行と違い、保険会社の破綻処理は主に契約者負担で行われたということを忘れてはならないと思います。

機会がありましたら、ぜひご覧ください。
企画はまだ始まったばかりなので、どのような方々が登場するのか楽しみです。

※写真はチューリヒです。土曜日にはフリーマーケットが開かれていました。

 

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大手生保の健康増進型保険

インシュアランス生保版(2018年8月号第4週)に寄稿したコラムをご紹介します
(今回も見出しを付けてみました)。

大手生保が相次いで投入

今年に入り、大手生保が相次いで健康増進型の保険を市場に投入している。
第一生命が3月に発売した「ジャスト」では、契約時に健康診断結果を提出すると保険料が安くなる「健診割」を導入し、加入時の健康状態によってはさらに保険料が割引となる。住友生命がこの7月に発売した「バイタリティ」では、健康状態を把握し、改善活動を行うとポイントが貯まり、翌年の保険料が安くなったり、特典が得られたりする。がん検診や運動習慣など加入者自らがポイント獲得に動けるところが話題となっている。明治安田生命も加入者の健康増進を支援する新商品を来年4月に発売するという。

社会的な意義

健康診断の受診や運動習慣といった健康増進活動は、そもそも国民にどの程度普及しているのかご存じだろうか。
厚生労働省の直近データによると、健診や人間ドックの受診状況は67%(20歳以上)と、3人に1人は受診していない。また、1年以上の運動習慣者(1回30分以上を週2回以上実施)は3割前後にとどまっている。こうした現状を踏まえると、健康増進型保険には確かに社会的な意義もありそうだ。

生命保険の販売では加入者のニーズを掘り起こす必要があり、「あなたが亡くなったらご家族は大変ですよね」「入院すると何かとお金がかかりますよ」など、万一のリスクを強調する「脅し」セールスとなりやすい。ところが健康増進型の保険では、「保険加入をきっかけに、健康になって長生きしましょう」「ついでに保険料も下がるし、特典もあります」というポジティブな提案ができる。顧客に保障だけでなく、健康改善も提供できるということで、今まで以上に現場はやりがいを感じられるかもしれない。
もちろん加入者としては、健康増進活動も大事だが、自分に合った保障を買わなければ本末転倒である。

「旧世界」の賞味期限を延ばす

歴史の長い国内系生保は現在も、営業職員による対面販売を事業の中核としている。これに対し、シンプルでわかりやすい商品を低価格で、保険ショップや通販など多様なチャネルを通じて提供するという新たな世界も広がっている。
筆者はこれらを、営業職員モデルの「旧世界」、保険会社や大型代理店がしのぎを削る「新世界」と呼んでいるが、市場全体の新契約の4~6割を今でも「旧世界」が獲得しているのは、「新世界」で見られるような顧客に選ばれるための直接的な競争がなく、新契約の多くを膨大な既存顧客市場から上げているためだと理解している。それぞれの会社が閉じた世界で顧客との信頼関係強化に努め、一定の成果を収めてきた結果と言えよう。

大手生保による健康増進型保険も、保障内容や価格設定などから判断するかぎり、「新世界」から顧客を奪うというよりは、営業職員モデルの賞味期限を延ばそうという取り組みに見える。あるいは、賞味期限となる前に健康関連データを蓄積し、次の時代に備えるという意味もあるのかもしれない。

※くまモンの電車に乗りました。銀座線の車両ですね。
 中はこんな感じ↓

 こんな電車もいました。

 

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