inswatch Vol.1002(2019.10.14)に寄稿した記事をご紹介します。
月次寄稿となってから生保関係の話を書いていて、今回は標準責任準備金を取り上げています。
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生命保険は加入してからの契約期間が長いため、将来の保険金や給付金の支払いに備えた「責任準備金」の確保が保険会社経営のキモとなります。そこで今回は「標準責任準備金」という規制について取り上げてみましょう。
標準責任準備金制度
生保には損保の参考純率のようなものはなく、会社が保険料率を自由に決めることができます(商品認可は必要です)。とはいえ、まったく縛りがないのかと言うとそうではなく、政府は生保の責任準備金を規制することで、保険会社の健全性を確保しようとしています。
定期保険や終身保険、養老保険などの、いわゆる生命保険は「標準責任準備金」規制の対象で、行政当局が定めた「標準生命表」「標準利率」に基づいた責任準備金を積み立てなければなりません(付加保険料や第三分野の入院・手術等の発生率は規制の対象外です)。
例えば、通常の生命保険(平準払い)の標準利率は現在0.25%です。保険会社はそれよりも高い予定利率を使い、保険料を低く設定することは可能ですが、責任準備金は標準利率で計算したものを積む必要があります。
つまり、予定利率を標準利率よりも高く設定してしまうと、顧客から受け取った保険料だけでは責任準備金を積むことができず、不足分を会社が補わなければなりません。それでは経営が持たないということで、標準責任準備金が生保の価格競争の歯止めとなっています。
一時払い終身の標準利率は0%に
標準生命表のほうは、2018年4月の改定に合わせ、多くの保険会社が保険料を変えたり、商品そのものを見直したりしたので、記憶に新しいかもしれません。トレンドとしては長寿化が続いているため、生命表の改定があると、定期保険のような死亡保障の保険料は下がり、個人年金のような生存保障の保険料は上がります。
これに対し、標準利率は一貫して引き下げが続いてきました。標準利率は責任準備金を計算するうえでの割引率なので、利率が下がると、より多くの責任準備金を積まなければならず、保険料は上がります。
標準利率は長期国債の利回りをベースに決めています。ただし、通常の平準払いの生命保険と一時払いの貯蓄性商品では設定方法が異なります。
通常の生命保険では、10年国債利回りの3年平均と10年平均の低いほうをもとに利率を設定するのに対し、一時払いの貯蓄性商品では、利回りの3か月平均と1年平均の低いほうをもとに設定します(一時払い終身保険では10年国債利回りのほか、20年国債利回りも活用)。
すなわち、一時払いの貯蓄性商品は標準利率が金利変動に連動しやすい仕組みとなっているのですが、一部で報道されているように、最近の低金利を受けて、来年1月から一時払い終身保険の標準利率がついに0%に下がることになりました。生保にとって厳しい経営環境が続きます。
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※写真はポーランドの古都クラクフです。旧市街全体が世界遺産とのこと。