15. 執筆・講演等のご案内

城山三郎 「男子の本懐」

 

週刊金融財政事情(2016.3.21号)に書評が載りました。
今回は城山三郎「男子の本懐」です。
金融財政事情のサイトへ

第一次世界大戦後の慢性的な不況から脱する
打開策として、歴代内閣が先送りしてきた「金解禁」
に取り組んだ、浜口雄幸・井上準之助の物語です。

当時の金本位制を理解するのは大変ですが、
経済小説として純粋に読むと、丁寧な書きぶりから、
かつて日本には私よりも公を優先し、信念をもって
生きた人物がいたことが心に響きます。

ただし、信念を貫いて実現した経済政策(金解禁)が
結果として大失敗に終わった影響は大きかったようです。
国民に政党政治と財閥に対する不信感が広まり、
世論の支持を背景に軍部の台頭が著しくなりました。

取り巻く状況や政策の中身は当時と全く異なりますが、
現在の日本銀行による「量的・質的金融緩和」
「マイナス金利政策の導入」という異例の経済政策が
果たしてどのような出口をもたらすのか。
本書を読んでそのようなことも頭をよぎりました。

今週はもう一つ、週刊東洋経済にもコメントが出ています
(2016.3.26号)。
マイナス金利と銀行経営の特集に生保の記事もあり、
そのなかで掲載されました。

「マイナス金利政策で経営体力が圧迫される中で、
 株式や外貨建て資産などへの積極的なリスクテイクは
 選択肢として考えづらい」

というものです。

※江の島で生シラス丼をいただきました♪
 3月11日解禁だそうです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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マイナス金利と生保経営

 

東洋経済オンラインに生保関連の記事を寄稿しました。
テーマは「マイナス金利政策と生保経営」です。
東洋経済オンラインのサイトへ

報道では貯蓄性商品の値上げや販売停止ばかりが
取り上げられるので、つい執筆を引き受けてしまいました。

記事をご覧になればわかりますが、タイトルの
「マイナス金利でリスクテイクが困難に」とは、
次のような意味です。

マイナス金利政策に伴う金利水準の低下によって
生保が超長期の保障を提供する負担はより重くなりました
(提供できなくなったとは言っていませんので念のため)。

そのようななかで、生保が資産運用によるリスクテイクを
積極化させるとは私には思えないのですね。

報道によると、生命保険協会の筒井会長(日本生命社長)は、

「日本国債を中心とする運用はもはや困難」

「外債へのシフトがメーンにならざるを得ず、外債以外もさらに
 ポートフォリオの分散にこれまで以上にチャレンジしていかな
 ければならない」

と2月19日の記者会見でコメントしたそうですが、同時に、

「保険商品も資産運用も両面でもっと創意工夫をこらせということ」

とも述べており、日本生命が大胆なポートフォリオ・リバランスに
踏み切るという話ではないと受け止めました。

それに、どんどんリスクテイクできるような体力があるのだったら、
従来はどうしてそれを契約者等に還元せず、貯めこんでいたのか
(あるいは、ターゲットとする健全性の水準を見直したのか)、
という疑問につながってしまいます。

いずれにせよ、期末に向けた生保各社の動きに注目しましょう。

※築地市場です。カモメがエサ(?)に群がるような光景も
 あと少しで見納めです。

 

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週刊東洋経済に寄稿

 

今週の週刊東洋経済(2016.1.16)に
「高騰する地震保険料 広がる都道府県の格差」
という記事が載りました。

保険特集などではなく、巻頭にある核心レポート
の一つとして掲載されています。

記事では地震保険の料率が来年なぜ上がるのか、
地域によって料率に違いが出るのはどうしてか、
などを解説しました。

東京や神奈川、千葉、埼玉、茨城、静岡など
もともと危険度が高いとされている地域では
来年の改定で保険料率が大きく上がりますし、
その後も料率引き上げが続きます。

その一方で、今回の見直しにより危険度が
低い区分に変わった地域(愛知、大阪など)もあり、
そこでは料率が概ね下がるようです。

それにしても、世帯加入率の推移を見ると、
阪神大震災のころに比べればかなり普及したとはいえ、
依然として約6割もの世帯が無保険状態なのですね。
いろいろと考えてしまいます。

※写真は島根県を走る一畑電車です。
 2013年まで東横線の日比谷線直通で使っていたもので、
 私はこの電車に何度もお世話になりました。

 

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ERM関連書籍が出ました

中央経済社から「経済価値ベースのERM」が出ました。
今週から書店に並んでいるようです。

これで、損保総研による「保険ERM経営の理論と実践」、
保険毎日新聞社の「保険ERM戦略」に続き、私が関わった
保険ERM関連の書籍としては3冊目となりました。

アマゾンの内容紹介を見ると、

「保険会社の保険金支払い能力は、資産や負債を変動リスクも
 含めて市場価値で評価するよう世界的に見直されている。
 本書はその背景や理由、今後のERMの進展について論じた」

としか書かれていないので、もう少し情報をご提供しましょう。

本書は武蔵大学ERM研究会での成果を取りまとめたものです。
研究会では毎回メンバーまたはゲストスピーカーが発表を行い、
それを受けたディスカッションを実施しました。

目次と執筆者は次の通りです。

 序章は武蔵大学の茶野努さんが執筆

 第1章 経済価値に基づくソルベンシー・マージン規制の必要性
      (執筆は早稲田大学の大塚忠義さん)

 第2章 ソルベンシー規制の国際動向
      (執筆は住友生命の増井正幸さん)

 第3章 ファイナンス理論の保険負債評価への応用
      (執筆は横浜国立大学の鈴木雅貴さん)

 第4章 破綻距離(DD)を用いた1990年代生保破綻の分析
      (執筆は茶野さん、大塚さん)

 第5章 リスク計測・管理手法の変遷と課題
      (執筆は住友生命の浅見潤一さん、千葉商科大学の西山昇さん)

 第6章 生命保険会社のERM-銀行との比較を通じて-
      (執筆は住友生命の浅見さん)

 第7章 損害保険会社のERM-自然災害リスク管理を中心に-
      (執筆はガイカーペンターの浜崎浩一さん)

 第8章 保険会社によるERM関連情報の開示
      (執筆は私です)

 第9章 リスク情報開示の現状と課題ーERMの観点からー
      (執筆は一橋大学の安田行宏さん)

 第10章 金融危機時における金融機関のCDS
       -流動性逼迫の影響とシステミック・リスク-
       (執筆は武蔵大学の大野早苗さん)

 第11章 損害保険会社はシステミックな存在になり得るか?
       -損害再保険ネットワークの分析-
       (執筆は神奈川大学の菅野正泰さん)

私は保険会社のERM関連情報とその開示をめぐる状況を
整理したうえで、開示により期待できる効果を考察しました。

ガバナンスコードにも非財務情報の開示が盛り込まれるなかで、
上場保険会社が任意に行っているERM情報の開示状況は
もっと注目されてもいいかもしれません。

また、第9章では安田先生が銀行の公表する「事業等のリスク」
(こちらは強制開示)を使った実証分析を行っていますので、
比べてご覧になると面白そうです。

※こんな感じで切り取ると、大倉山もなかなか素敵です。
 12月下旬とは思えない景色ですが…

 

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保険ERMフォーラム

 

保険ERMフォーラムのご案内です。

11月16日(月)に一橋大学ファイナンス研究センター
主催のフォーラムが開催されます(参加費無料)。
場所は一橋講堂・大ホールです。

フォーラムは何と4部構成でして、先日ご紹介した
書籍「保険ERM戦略」の執筆陣が次々に登場します
(私も最後のパネルディスカッションに登壇予定です)。

詳しくはこちらをご覧ください。

先週末あたりから申し込みが始まっていまして、
すでに多くのかたがエントリーされているようです。
ご関心のあるかたはお早めに申し込まれたほうが
いいかもしれません。

※写真は満鉄本社です。

 

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生保の海外展開

 

生命保険経営学会の論集「生命保険経営」に
「わが国生保会社の海外展開と展望」という論文が
掲載されました。
生命保険経営学会のサイトへ

会員以外は中身を見ることができないので、
ごく簡単にご紹介しましょう。

タイトルからは、生保の海外展開が進んでいるので、
その背景を考察したもの、と思われるかもしれません。

しかし、本稿ではむしろ、これまで日本の大手生保が
なぜ海外展開に消極的だったのかを論じています
(ここで言う「海外展開」は海外保険事業です)。

日本に進出している外資系保険グループをはじめ、
海外では積極的に国際展開を進める保険グループが
目立つのに対し、日本の大手生保は、第一生命が
海外展開を加速するまで、総じて消極的な姿勢であり、
海外事業の収入や利益は極めて限定的とみられます。

そこで、日本の大手生保が近年まで海外戦略を
積極的に採用してこなかった要因を整理してみました。

1.海外展開の必要性を認識していなかった
 ・あえて経営リスクをとってまで海外展開を加速する
  必要はないと判断
 ・客観的に見れば必要性が高いにもかかわらず、
  何らかの理由でそうは考えなかった

2.海外展開の必要性を認識していたが、できなかった
 ・自己都合による
 ・相手の都合による

それぞれの要因を検討するなかで改めて感じたのは、
国内市場には依然として魅力があるということです。

「生保市場の縮小」という決まり文句とは裏腹に、
日本の生保市場はそれほど縮小していませんし、
新規契約の収益性も依然として良好と言えそうです
(これがいつまで続くかということではありますが…)。

ただし、重要なのは海外展開を加速するかどうか、
ではないと思います。

「ライバルが出るからウチも出る」というのではなく、
自らのリスクテイク戦略として妥当なのかどうか。
その経営判断をステークホルダーにきちんと説明
できるかどうか。

本稿ではそのようなことも書いてみたのですが、
保険会社の海外展開と経営判断のあり方という
テーマについては、引き続き考察したいと思います。

※写真は東横線の大倉山駅です。

 

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コーディネーターに挑戦

 

今年で17回目のRINGの会オープンセミナー
ブログで既報の通り、今回は午前中のパネルで
コーディネーターを務めました。

パネリストの栗山さん、中崎さん、増島さんは、
いずれもこのテーマ(保険募集規制改革)で
何度もスピーチしている強者ばかり。

その強者の持ち味をパネルディスカッションで
どうやって引き出すか。これは難題でした。

いろいろ考えた末、各人のポジションを決めたうえ、
何でも順番に聞くのではなく、メリハリをつけて、
地域のプロ代理店に向けてメッセージを伝える、
という方針で臨みました。いかがでしたでしょうか。

会場で聞いていると90分は結構長いと感じます。
でも、ステージの上ではまさに時間との戦いです。

しかも、テーマを3つ示したにもかかわらず、
最初の「制度改正」の話に重点を置くことにしたので、
最後はどうやってまとめようかと冷や汗をかきました
(関係者の皆さん、時間オーバーでごめんなさい)。

厳しい話もしてもらいましたが、会場の皆さんにとって、
有益な情報となれば幸いです。

ところで、週末に金融モニタリングレポートが
公表されています。⇒ 金融庁のサイトへ

保険関係では生命保険乗合代理店10社に対する
モニタリング結果が出ていますね(52ページ以降)。

これによると、行政当局は「不適切な乗換募集」
「顧客情報の管理(外部委託先を含む)」
「募集手数料(キャンペーン販売を含む)」
などに注目したことが示されています。ご参考まで。

 

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保険会社と代理店

 

先日ご案内した「RINGの会オープンセミナー」の申込者が
今年も1000名を超えたそうです。

申し込みの締め切りは23日(火)なので、
参加を考えているかたはお忘れなきよう。

⇒ 24(水)まで大丈夫だそうです!

↓お申込みはこちらから↓
RINGの会 オープンセミナー

RINGメンバーの準備も着々と進んでいるようです。
連日のようにRINGメールが飛び交っています。

肝心のセミナーの中身ですが、第一部では先日、
登場メンバー(中崎さん、栗山さん、増島さん、私)で
打ち合わせ会を行いました。

パネルディスカッションの打合せはなかなか難しくて、
全体の流れを確認するのですが、多くの場合、
打ち合わせで話が盛り上がってしまうのですね

しかし、ここで盛り上がりすぎると、パネル当日よりも
打ち合わせのほうが面白かったということになりがち。
経験者ならおわかりになると思います。

そうかといって、文字通りの顔合わせだけでは、
何のために事前に集まったのかわかりません。

コーディネーターの役割は当日だけではなく、
もう始まっているんだなあと実感しました。

当日は多少アドリブを交えつつ、各パネリストから
できるだけうまく話を引き出したいものです。
会場の皆さんの期待を裏切らぬよう、頑張ります。

パブコメの結果もざっと読んでみました。

保険会社に加え、初めて募集人に対しても
規制をかけることになったので、両者の関係を
どう整理したらいいかは注目ポイントです。

しかし、例えば、募集文書の承認に関する質問が
(おそらく代理店から)たくさん出ているなかで、
回答は「一義的には私人間の契約上の問題」
というコメントだけだったりします。

保険会社の役割と代理店の役割をどう整理するか、
新しい募集ルールが実質的に確立するまでには
しばらく時間がかかるのかもしれません。

このあたりもパネルで議論してみたいと思います。

※父の日に娘からスイーツをもらいました^^v

 

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「保険ERM戦略」

 

先日の「保険ERM経営の理論と実践」に続き、
保険ERMに関する書籍がまもなく刊行されます
(私も執筆者の一人です)。

今月下旬の発売ですが、手元に見本が届いたので
一足先にご紹介しますね
アマゾンで予約ができるようです)。

本書は、「様々な立場からERMに携わる気鋭の論客
による執筆」(終章)とあるように、保険会社のERMに
関わっている実務家が執筆陣となっています。

編者は保険学者の米山高生先生と、酒井重人さん
(現在は資産運用会社の在日代表)です。

読者としてのコメントですが、特に生命保険会社の
ERMに関する記述が充実しているように感じました。

例えば、第4章の「生保の主要リスクとERM」は
第一生命のリスクマネジャーである畑中秀夫さんが
大手生保のERM経営の実例を紹介しています。

また、「バンカシュランスの商品開発とERM」では、
明治安田生命に在籍する島村浩太郎さんが、
変額年金を中心にバンカシュランス商品の
ERM的なリスク管理について述べています。

メンバーがそれぞれの担当箇所を執筆するという
スタイルなので、統一感がないところもありますが、
随所に保険ERMに関する知見がちりばめられていて、
参考になりそうです。


 

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政策保有株式

 

日経平均株価が2万円を回復したタイミングを
ねらったわけではないのですが、次のinswatch
最近のガバナンス改革で政策保有株式の在り方が
問われているという文章を寄稿しました。

先月策定されたコーポレートガバナンス・コードに
政策保有株式に関する原則が盛り込まれたことを
取り上げたもので、「禁止」「縮小」ではありませんが、
保有の合理性を具体的に説明する必要があると
紹介しました。

コーポレートガバナンス・コード(金融庁のサイト)

もっとも、主要投資部門別の株式保有比率を見ると、
直近(2013年度末)では保険会社は5.1%にすぎません。
1980年代から90年代前半までは15%程度だったものが、
2012年度末には10%を下回り、今に至っています。

都銀・地銀等(直近では3.6%)とともに、かつてに比べると、
株式市場における生損保の存在感が小さくなっていると
わかりますね。

銀行や生損保の保有比率が下がった一方、
事業法人等の保有比率はこの10年間、20%強で
ほとんど変化していないのは意外でした。
ただし、この中には取得した自己株式もあるので、
実質的な比率はもう少し低そうです。

※東京駅の4階に素敵なラウンジがありました
 (宿泊客専用です)。

 

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