生命保険経営学会の論集「生命保険経営」に
「わが国生保会社の海外展開と展望」という論文が
掲載されました。
生命保険経営学会のサイトへ
会員以外は中身を見ることができないので、
ごく簡単にご紹介しましょう。
タイトルからは、生保の海外展開が進んでいるので、
その背景を考察したもの、と思われるかもしれません。
しかし、本稿ではむしろ、これまで日本の大手生保が
なぜ海外展開に消極的だったのかを論じています
(ここで言う「海外展開」は海外保険事業です)。
日本に進出している外資系保険グループをはじめ、
海外では積極的に国際展開を進める保険グループが
目立つのに対し、日本の大手生保は、第一生命が
海外展開を加速するまで、総じて消極的な姿勢であり、
海外事業の収入や利益は極めて限定的とみられます。
そこで、日本の大手生保が近年まで海外戦略を
積極的に採用してこなかった要因を整理してみました。
1.海外展開の必要性を認識していなかった
・あえて経営リスクをとってまで海外展開を加速する
必要はないと判断
・客観的に見れば必要性が高いにもかかわらず、
何らかの理由でそうは考えなかった
2.海外展開の必要性を認識していたが、できなかった
・自己都合による
・相手の都合による
それぞれの要因を検討するなかで改めて感じたのは、
国内市場には依然として魅力があるということです。
「生保市場の縮小」という決まり文句とは裏腹に、
日本の生保市場はそれほど縮小していませんし、
新規契約の収益性も依然として良好と言えそうです
(これがいつまで続くかということではありますが…)。
ただし、重要なのは海外展開を加速するかどうか、
ではないと思います。
「ライバルが出るからウチも出る」というのではなく、
自らのリスクテイク戦略として妥当なのかどうか。
その経営判断をステークホルダーにきちんと説明
できるかどうか。
本稿ではそのようなことも書いてみたのですが、
保険会社の海外展開と経営判断のあり方という
テーマについては、引き続き考察したいと思います。
※写真は東横線の大倉山駅です。