06. リスク管理関連

変額年金市場の盛衰

 

日本保険学会「保険学雑誌」の最新号(第618号)に
日本の変額年金について興味深い論文が掲載されています。
武蔵大学の大塚忠義さんによるものです。

もしかしたら「元マニュライフ生命執行役員の大塚さん」
という紹介のほうがいいかもしれませんね。
マニュライフ生命は変額年金の有力プレーヤーでしたので。

日本の変額年金市場は、大塚さんの言葉をお借りすると
2010年には「ほぼ消滅した」のに対し、
本家の米国では依然として高水準の販売が続いています。
どうしてこれほど違うのでしょうか。

大塚さんは論文のなかで、日本の変額年金市場について、

・販売者に専用商品を提供するビジネスモデル
・元本保証付変額年金の開発

という2つの要因によって拡大し、そして縮小したと述べています。

米国では、銀行は販売者の範囲を超えないのに対し、
日本でハートフォード生命が立ち上げたビジネスモデルは
「販売者が製造者の一員として商品開発に参画する」
というもので、販売者の権限が大きいモデルでした。

しかも、日本の変額年金は、最低年金総額保証などにより
リスクのない商品として市場に普及していきます。

米国では最低保証が特約方式となっているそうで、
変額年金はオプション料を支払えばリスクを回避できる
ハイリスク・ハイリターン商品という位置づけです。

これに対し、日本の変額年金は、オプションを組み込むことで
リスクを排除した商品となりました。

外部環境が悪化し、最低保証の提供が難しくなっても、
米国のような特約方式であれば、最低保証の費用を
高くすることで販売を続けることが可能です。

しかし、保証コストを商品に組み込んでいる日本の場合
(しかも、保証とコストの関係が明確に示されていません)、
販売の主導権を販売者が握っていることもあり、
保険会社はリスク軽減や販売コントロールが難しく、
商品の提供を停止し、市場から退出するしかないという見解です。

大塚さんは、保険会社が市場からの退出を迫られたのは、
経営判断の誤りというより、リスクに対する認識が不十分だったため、
正しい判断ができず対処が遅れたことが原因と考えているようです。

論文を拝見した限りでは、
「正しい判断ができず対処が遅れた」というよりは、
「ビジネスモデルに内在するリスクの認識が不十分だった」
ということのように感じました。

私は生保破綻の研究のなかで、破綻リスクを高めた内的要因として
①ビジネスモデル、②経営者、③経営組織に関するものを挙げました。
変額年金の事例では、各社の経営内部を調べたわけではないので
②と③はわかりませんが、少なくとも①に関する要因はありそうですね。

なお、保険学雑誌は学会メンバー以外でも購買できますが、
HPにアップされるのは2年後とのことです。ご参考まで。
日本保険学会HPへ

※写真は前回に続き、奈良井宿です。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

事業会社のリスク管理

 

最近、事業会社のリスク管理に関するケーススタディの本を
いくつか読みました。

・上田和勇「事例で学ぶリスクマネジメント入門」
・植村修一「リスク、不確実性、そして想定外」

いずれも興味深く読んだのですが、保険会社と比べると、
事業会社のリスクマネジメントは、どうしても損失の最小化や
復元力の向上といった話が中心になりやすいのですね。

似たような2つの事例で考えてみましょう。

例えば、あるお金持ちが盗難に備えて保険に入った場合、
保険会社はお金持ちに代わり、盗難リスクを引き受けるので、
保険会社のリスクは盗難が想定以上に発生するかどうかです。

これに対し、お金持ちが盗難に備えてガードマンを雇った場合、
ガードマンを派遣した会社は盗難リスクを引き受けたのではなく、
お金持ちの盗難リスクを減らすためのサービス提供を行っています。

したがって、この会社の経営リスクは盗難リスクではなく、
派遣料金が採算割れとなっていないかどうか、すなわち、
ビジネスリスクを抱えているということになります。

こうして比べてみると、事業会社では「ビジネスリスク」という
管理が難しいリスクがリターンの源泉となっているため、
事業会社のリスク管理は管理がしやすい損失の最小化や
復元力の向上が中心テーマとなりやすいように思います。

もっと言えば、経営陣にリスク管理への関心を持たせることが
保険会社よりも大変なのでしょうね。

他方、保険会社の場合には、上記の例でも明らかなように、
リスクを引き受けることでリターンを得るビジネスです。
リスク管理は経営そのものだと理解しやすいはずですよね。

ちなみに、このような公表がありましたので、ご参考まで↓
金融庁HPへ

※右の写真は銀座線の浅草駅です。
 戦前の開業当時の建物なのだそうです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

ロイズのネッシー保険

 

ロイズについて調べ物をしていたら、米山高生先生の
著書「物語で読み解く リスクと保険入門」のなかに、
ネス湖の怪獣ネッシーを捕獲した際の懸賞金の補償を
ロイズが引き受けたという話が載っていました
(ちなみにそれを調べていたわけではありません^^)。

米山先生はこの件について、
・保険集団による危険の分散ができないのに
 ロイズはなぜリスクを引き受けることができたのか?
・このようなリスクの引き受けを保険契約と呼べるか?
という疑問を持ったそうです。

「1つめの疑問はロイズの資本力と再保険ネットワークで
 解決できるとして、ネッシー保険のような保険集団を
 構成しない保険を保険契約と考えるのは妥当なのか」

米山先生は2つめの疑問への暫定意見として、
「保険会社が保険契約の様式でリスク移転の契約を行えば、
 そのリスクをどのように手当てしたとしても保険契約である
 と考えるのが自然」
と述べられていますが、皆さんはいかがでしょうか。

リスクマネジメントという観点からすると、
私の関心はやはり1つめの疑問にあります。

ロイズは「スペシャリティ」と呼ばれる企業向けの
特殊な保険を引き受けることが強みの一つとなっています。
ある程度はモデル等で管理できる部分もあるとはいえ、
基本的にはハイリスク・ハイリターン型のビジネスです。

この本によると、ロイズはギャンブル性の高い契約をしていた
一部のアンダーライターと決別するなど、市場としての規律を
保つための継続的な努力が行われてきたとのこと。

それでも個人が無限責任を負う長年の仕組みは
さすがに困難となり(1990年代初めの「ロイズ危機」)、
現在はほとんどの出資者が有限責任となっています。

ロイズ市場の運営も各シンジケート任せというわけではなく、
コーポレーション・オブ・ロイズがシンジケートを管理し、
リスクを分析しているようです(公表資料を参照)。

ただ、このビジネスの特性を考えると、最後は各シンジケートの
アンダーライターによるところが大きいのだとは思います。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

損失発生をどう考えるか

 

前回のブログで、大手損保の自然災害に伴う発生保険金について、
次のように書きました。

 「かなり大きな金額のようにも見えますが、大手損保の純資産は
  やや減ったとはいえ4兆円近くあります。異常危険準備金も約2兆円です」

 「過去最大級の自然災害に伴う発生保険金といっても、その程度
  (=株価が10~15%下がった程度)のインパクトということです」

各社も投資家等に対し、具体的な説明をしています。

 「“資本バッファ”は直近で5500億円レベルを上回っており、絶対額としては
  低いレベルというべきものではありませんが、減少したことも事実ですので、
  保有リスクの削減を従来以上に加速することを検討しております」
  (MS&AD、2/13)

 「2011年9月末のサープラスは約6900億円だったが、その後の要因を
  勘案するとサープラス5000億円程度まで縮小している」(NKSJ、1/27)

多額の支払いで余裕がやや減ったとはいえ、財務基盤は揺らいでいない、
といったところなのでしょう。

ただ、JPモルガンの損失発生をめぐる一連の報道を見ていると、
損失発生による影響を余剰資本の範囲内に収めただけでは、
リスク管理として十分ではないことがうかがえます。

10日にJPモルガンが発表した損失は約20億ドルです。
JPモルガンのTier1コア資本は1220億ドルもありますし、
損失が多少膨れても、期間損益で十分吸収できるレベルでしょう。

しかし、今回の件がJPモルガンの今後のビジネスに与えた影響は
計りしれません。

報道されているだけでも、次のような「衝撃」がありました。

・リスク管理に定評のあった大手銀行による損失発生だった
・金融規制強化の流れのなかでデリバティブ損失が発生してしまった
・特定市場におけるポジションが大きくなりすぎており、
 それを経営陣が十分把握していなかったとみられる
・VaRモデルによるリスク評価の難しさが表面化した
 (モデルの見直しによる影響が報道されています)  など

今回の損失はいまのJPモルガンにとって、
発生させてはいけない損失だったと思われてなりません。
言い換えれば、経営陣がとるべきリスクを間違えたのではないか、と。

リスクの洗い出しとリスク選好(アペタイト)はERMを構築するうえで
極めて重要な要素ですが、そう簡単ではないことがわかりますね。
あのJPモルガンの経営陣でさえ間違えるのですから。

リスク管理の世界は奥が深いです。

※写真は鶴見の総持寺です。初めて境内に入りました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

「データはウソをつく」

 

前回に続き書評もどきということで、谷岡一郎さんの
「データはウソをつく」(ちくまプリマー新書)から。
副題に「科学的な社会調査の方法」とあり、
「事実」を認定するプロセスについて書かれています。

本書では私たちがやってしまいがちな間違いについて、
いくつかの事例を取り上げていて、これが面白いです。

昔、連合軍の戦闘機がドイツ軍にバタバタと撃ち落されるので、
ある連合軍の将軍が、命からがら帰ってきた機体を調べ、
尾翼のダメージがひどいことを発見しました。
そして本国に「尾翼を強化するように」と打電したそうです。

どこがおかしいかわかりますか。

本国からの返事はこうでした。

「尾翼をやられた戦闘機は一応帰ってきた。
 他の場所を撃たれた機が帰ってこなかったとすれば、
 強化するのは別のところではないか」

ということで、将軍は残ったものだけを見て考えた因果モデルを
頭から信じてしまったのですね。

もう一つの事例を紹介しましょう。

「ビール生産 大阪ドーム119杯分」

報道ではこのような表現をよく見かけますよね。
私もかつてメディアのバイトをしていたときに、
「わかりやすい記述」として指導を受けた記憶があります。

著者の谷岡さんはこのような表現について、
「わざとわかりにくくしている」「さっぱり意味をなさない」といいます。

「記事を書く側は、『どうだ、すごいだろ』という感覚で
 書いているのでしょうが、読む側としては、大人一人につき
 『バケツ○杯分』だとか、『大ビン○本分』と書いてくれるほうが、
 少なくとも実感できますからはるかにありがたい」

同感ですね。人間はあまりに大きな数字や小さすぎる数字は
消化できないのです。

リスクを扱っていると、データをもとに説明する機会が多いので、
著者の言う「数字を過信しない」「それだけに頼らない」「常に疑う」
という意識を持っている必要がありそうです。

ただし、だからといって数字を使わないほうがいいという主張では
決してありません。著者も「数字は有力な補強材」としています。
念のため。

※小学校の卒業式に出席しました。
 いまどきの小6女子はこんな感じです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

守備力の評価方法

 

「僕は君たちに武器を配りたい」(講談社)を読みました。
著者は「京大NO.1若手人気教官」の瀧本哲史さんです。

「これから社会に旅立つ、あるいは旅立ったばかりの若者が、
 非常で残酷な日本社会を生き抜くための、『ゲリラ戦』のすすめ」

とありますが、社会に旅立ってからすでに20年以上たつ私にも
興味深い内容でした。

「コモディティ化」の潮流が、世界のあらゆる産業で
同時に進行するなかで、企業や個人にとって重要なのは
「コモディティにならないようにすること」です。

そのために、本書では「投資家的生き方」を勧めています。
詳しくは本書をご覧下さい。

ところで、本書では例え話として、メジャーリーグでの選手の
年棒査定方法を取り上げています(守備について)。

かつての野球選手は、エラーが少ない人ほど守備がうまい、
と見なされていました。

ただ、エラーの数で判断すると、簡単なフライを捕球しても、
エラーの危険を冒して難しい打球に飛びつきアウトにしても、
評価は同じです。難しい球を捕りにいってエラーをするより、
はじめからヒットにしてしまったほうが、評価は悪くなりません。

つまり、この評価方法では簡単にヒットを許してしまうことになり、
点を取られてしまう、すなわち、試合に勝てなくなってしまいます。

そこで現代のメジャーリーグでは、どれだけ自分の守備範囲で
アウトにすることに貢献したか、という観点から守備力を
評価するようになったそうです。
すべてのアウトカウント数27個のうち、その選手がいくつに
関わったかを見ていきます。
これだと積極性が高い選手ほど、評価が高まるわけです。

部分的にはいいと考えても、全体から見ると本末転倒、
ということは、リスク管理の世界でも起こりうる話ですよね。

※ようやく大倉山の梅も見ごろを迎えました

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

運用資産消失事件

 

AIJ投資顧問の運用資産消失事件には驚きました。
年金資産は信託銀行が分別管理しているので安心、
というのは私の単なる思い込みだったようです。
おそらく運用会社の監督強化が求められるのでしょう。

ただ、今回の問題の本質は果たしてそこなのでしょうか。

生保とは違い、企業年金の収益源は運用リターンだけ。
予定利率を下回る運用では積立不足が発生してしまいます。
積立不足を解消するには母体企業に穴埋めしてもらうか、
制度を変える(=掛け金を上げる/支給額を減らす)、
あるいは解散するしかありません。

もし予定利率が国債利回りと連動しているのであれば、
リスクを取った運用をしなくても制度は回るでしょう。
しかし、予定利率を2.5%未満としている企業年金は
わずか1割強しかないそうです。
みずほ総合研究所の資料
企業年金のうち、中小企業が多い厚生年金基金には、
未だ予定利率が5.5%のところが500以上もあるとのこと。

これはすなわち、リスクを取らない運用をしていたら、
確実に積立不足に陥るというわけですね。

リスクを取った運用がうまくいかずに積立不足になるばかりでなく、
リスクを取らなくても積立不足に陥ってしまう。
今回の事件の根底には、このような現状があるように思います。

※写真は横浜ベイシェラトンです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

損保の自然災害リスク

3メガ損保の2011年4-12月期決算発表があり、
自然災害の影響により3グループとも赤字となりました。

タイ洪水に伴う支払見込額は正味で約4500億円です。
東日本大震災の支払見込額(家計向け地震保険を除く)が
約2000億円ですので、これを大幅に上回ります。

ロイズが保険業界全体の支払見込額を150~200億ドル
と試算しています(2/14)。3メガ損保の支払見込額が、
報道の通り9000億円(元受ベース)だとすると、
全体の5~7割を日本勢が占めることになりますね。

3メガ損保は統合リスク管理の現状を公表しており、
リスクに対する資本の余裕度を示しています。
例えばMS&ADは5500億円超、NKSJは5000億円程度
(いずれもタイ洪水の影響を反映)とのことですから、
グループ全体の経営が揺らぐことはなさそうです。

ただ、リスク管理という観点から考えてみると、
今回の多額損失の発生は、従来の自然災害による損失とは
かなり異なっているように見えます。

過去に多額の保険金支払いが発生した自然災害は、
主に台風などによる国内の風水災です。
それなりに信頼性のあるリスク計測モデルがあり、
保険会社にとってある程度「知っている」リスクでした。

もちろん、過去に経験したことのない巨大台風により
支払いが予想外に膨らんだケースもありましたが、
どの規模の災害が発生すれば、どの程度の損失となるか、
その前提として、自社のエクスポージャーはどの程度なのか、
保険会社はこれらを十分把握していると思います(期待を込めて)。

しかし、今回のタイ洪水でここまで保険損失が拡大するとは、
誰もわからなかったのではないでしょうか。

①大雨が降る → ②洪水が発生 → ③保険の対象に被害が発生

50年ぶりの記録的な大雨に加え、
・熱帯雨林の減少による森林の保水能力が低下していた
・ダムの放水が遅れ、複数のダムで同時放水となった
・デルタ地帯なので、洪水が起きるとなかなか排水されない
などが被害を大きくしたと言われています。

あるいは、ムーディーズのニュースリリース(2/6)によると、
再保険業界はタイの洪水災害に関するリスクモデルを
持っていないとのことですから、保険業界がタイ洪水のリスクを
過小評価していた可能性もあります。

これら①や②の話に加え、③についても気になります。
例えば、保険会社はどのような引き受けかたをしていたのか、
グループとしてエクスポージャーの全体像を把握していたのか、
といった点です。

いずれにしても、「予想外の自然災害なので仕方がなかった」
で終わらせてはいけないのでしょうね。
あくまで個人的なコメントですが...

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

システムリスク

 

保険会社の抱えるリスクには、リターンを得るために
能動的に取るリスクと、できるだけ避けたいリスクとがあります。
システムリスクは後者の代表的な例です。

2日に東京証券取引所でシステム障害が発生しました。
海外取引所との競争にさらされている東証にとって、
システム障害はかなりのダメージです。

9日の朝日新聞によると、東証の担当者が2日の午前1時半ごろ、
システム(サーバー)の故障に気づき、富士通に連絡したところ、
富士通から「予備のサーバーに自動的に切り替わる」と言われました。

しかし、その5時間後、東証は予備サーバーに切り替わって
いないことに気づきます(証券会社からの苦情でわかったようです)。
その後、手動で予備サーバーに切り替えたものの、
動作確認などを行う必要があり、取引開始に間に合わず、
241銘柄が売買停止となってしまいました。

「どうして予備システムに自動的に切り替わらなかったのか」

というのが直接の問題ですが、この記事が本当だとすると、

「どうして予備システムに切り替わっていないことに
 5時間も気がつかなかったのか」

という話になりますね。

なお、金融庁が1月20日に公表した、
「金融機関におけるシステムリスクの総点検の結果について」
を見ても、点検項目のうち、「システムリスクに対する認識等」
「障害発生時等のリスク管理態勢のあり方」などは、
更なる改善が必要な状況とのこと。保険会社はどうでしょうか。
金融庁のHPへ

※写真は横浜の風景です。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

ギリシャ危機と逆イールド

 

ギリシャ政府の国民投票実施表明には驚きました。
国民の痛みを伴う財政再建案を進めるには、
もはやこのようなプロセスしかないと判断したのでしょうか。

財政危機が顕在化すると国債価格が下落し、金利が上がります。
日銀が10月18日に発表した金融システムレポートを見ると、
欧州周縁国における国債利回りの対ドイツ国債スプレッドは
2010年以降大きく広がっているのがわかります(P6の図表)。

もっとも、私の目を引いたのは、隣に掲載されていた
「国債の長短スプレッド」という図表のほうでした。
欧州周縁国の2年国債と10年国債のスプレッドを見たものです。

これによると、ギリシャやアイルランド、ポルトガルなど、
財政健全化を巡って市場が強い懸念を示している国では、
短期金利が長期金利を上回る傾向が続いています。

Bloombergニュースからデータを拾ってみると、
ギリシャ2年債利回りは96.70%、10年債は25.47%、
30年債は17.21%で、確かに逆イールド状態です(2日)。

通常ですと、累積デフォルト確率は時間がたつほど大きくなる、
つまり、「年末までの約束だったら返ってきそうだけど、
10年後だったら返ってこない可能性が高まるよなあ」と考え、
信用スプレッドは長期のほうが大きくなるのが一般的です。

しかし、事態がここまで進むと話は別なのですね。
市場は年限に関わらずギリシャ国債の約7割カットを
すでに織り込んでいる(2日時点)ため、このような利回りに
なっているということなのでしょうか。

ここまで考えると、保有債券を長期債から短期債にシフトしても
金利リスクは小さくなるかもしれませんが、ソブリンリスクへの
対策にはなっていないのかもしれません。
いかがでしょうか?

※神戸で2年ごとに開かれる美術展なので「神戸ビエンナーレ」
 横浜でも3年ぶりに「横浜トリエンナーレ」が開かれているようです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。