05. 金融・経済全般

格付会社への規制

 

証券化商品のリサーチで有名な江川由紀雄さんが、
「過度な格付会社への締め付けは投資家利益にならない」
という主旨の論文を週刊エコノミストに発表しています
(2013.3.12)。

ご存じのとおり(?)、私のブログの「保険アナリスト」とは
私が格付会社のアナリストだったことに由来しています。
通算すると約16年間、格付アナリストを務めました。

しかし、格付会社を取り巻く環境は、私がいたころとは
だいぶ様子が異なるようです。

米サブプライムローン問題を契機に格付会社への
規制が強まり、日本でも今や格付会社は規制業種です。
金融庁の監督を受け、立ち入り検査もあります。
担当アナリスト(または格付委員会のメンバー)の
ローテーション規制も導入されました。

昨年末には金融庁がS&P(日本法人)に対し、
業務改善命令を出しています。

さらに衝撃的だったのが、米司法省によるS&P提訴です。
「不当な格付により金融機関が損害を被った」として、
この2月に50億ドルもの損害賠償を請求しました。
結果がどうなるかわかりませんが、すごい金額ですね。

格付会社の抱える構造的な問題は、主な収入源が
評価を依頼した発行体からの手数料に依存していることです
(投資情報からの収入だけでは厳しいのです)。

そこで格付会社では、経営が格付決定に関わらない、
投資家等に対して格付基準や評価を説明する、など、
利益相反の問題とならないような仕組みを構築しています。
規制の役割はその仕組みの実効性を確保することです。

ところが、まるで官庁のように担当を頻繁に変えるとか、
結果的に間違ってしまった評価に対して懲罰的に臨むとか、
これでは格付部門に対する発行体や他部門からの圧力が
弱まったとしても、格付の質は相当犠牲になりそうです。

マニュアル通り、あるいはスコアリングモデルで
格付を決めるのであれば、もはやアナリストは不要です。
ただ、そんな格付が投資家にとって有益とは思えないのですが。

※写真は最終日朝の東横線・渋谷駅です。

 

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国債発行額が税収を下回る

 

2013年度政府予算案について、麻生副総理兼財務相は
「4年ぶりに税収が公債金を上回る状態を回復」
と、国債発行額の抑制についてアピールしているようです。

税収43.1兆円に対し、新たな国債発行額は42.8兆円とか。

でも、これは2013年度に予定していた事業の一部を
2012年度補正予算に前倒ししたことが大きそうです。

2013年度予算案に限ってみても、新たな国債発行額を
42.8兆円と言うのは無理があるように思います。

2013年度の国債発行計画を確認してみましょう。
財務省HPへ

この42.8兆円には、基礎年金の国庫負担分の財源をまかなうための
年金特例公債2.6兆円が含まれていません。
将来の消費税率引き上げを財源とする「つなぎ国債」なので、
新たな国債発行額から除外したようです。
これを加えただけで、税収を上回ってしまいますね。

さらに「復興債」があります(1.9兆円)。
一般会計ではありませんが、震災復興予算は0.6兆円増えており、
とりあえず復興債を増発して対応し、日本郵政株式の売却などを
あてるとか。

これで「財政規律にも配慮した」と言えるのでしょうか。

それにしても、政府のアピールをそのまま受けて、
「財政配慮、国債を抑制」「税収が4年ぶり逆転」
(29日の日経夕刊)
と大きな見出しをつけていますが、どうしちゃったんでしょう。

 

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リタイアメント準備度調査

 

先日、オランダに本社があるエイゴングループ
(日本ではソニー生命との合弁会社が営業)が、
「リタイアメント準備度調査」をまとめていて、
興味深い結果が出ていました。
調査レポート(PDFファイル)へ

この調査は日本、米国と欧州8カ国の1万人を対象に、
退職後の生活に対する意識と、退職後の生活資金の
準備状況に関する実態を調べたものです。

調査レポートのなかに、現役世代が退職に向けて
どの程度の準備が進んでいるのかを指数化した
「エイゴン・リタイアメント準備度指数」というものがあり、
日本が10カ国中最下位となっていました
(トップはドイツ、2位は米国です)。

準備度調査は次の6つの質問に対する回答から
算出されているようです。

<退職に向けた取り組み>
・退職後に十分な収入を確保するために自助努力は
 必要だと思うか?
・退職後に向けた資金計画を立てる必要性は認識
 しているか?
・退職後の生活や年金に関する金融知識はどの程度か?

<実態調査>
・退職に向けた計画はどの程度進んでいるか?
・資金準備のための貯蓄は進んでいるか?
・希望する生活を送るのに必要な収入の確保に向けた
 取り組みはどの程度進んでいるか

日本は、「自助努力の必要性を強く感じる」という回答が
87%に達し(ちなみ全体では71%、米国84%、ドイツ76%)、
「資金計画の必要性を強く認識している」という回答が
75%ありました(全体では62%、米国77%、ドイツ81%)。

別のアンケートでは、公的年金の給付が削減されるだろうと
考えている人が多いことも示されています。

ところが、「退職後の資金準備が進んでいる」という回答は
わずか11%(全体では25%、米国32%、ドイツ43%)、
「準備ができていない」という回答が64%もありました
(全体では46%、米国40%、ドイツ27%)。

公的年金は減ると思っているけど、依存度は大きい。
自助努力が必要と考えているけど、実践はできていない。
この結果をどう考えたらいいのでしょうか?

※週末の横浜中華街は賑やかですね。
 焼き小籠包の店に行列ができていました。

 

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国債市場関係者の見方

 

安倍政権の緊急経済対策が決まり、国債が増発されます。
市場は順調に消化できるのでしょうか。

これに関して、10日に財務省が「国債市場特別参加者会合」と
「国債投資家懇談会」を開催し、議事要旨を公表しています。
市場関係者の見方を知るうえで参考となりそうです。
国債市場特別参加者会合の議事要旨へ
国債投資家懇談会の議事要旨へ

ちなみに「国債市場特別参加者」とは、

「国債市場(発行市場及び流通市場)において重要な役割を果たし、
 国債管理政策の策定及び遂行に協力する者であって、
 国債市場に関する特別な責任及び資格を有する者」

として財務大臣が指定したプライマリーディーラーで、
メガバンクや大手・外資系証券など24社です(1/4現在)。

国債投資家懇談会のほうは投資家と学者・研究者がメンバー。
投資家メンバーは金融機関や大手投資家など15社で、
現在の保険会社メンバーはかんぽ生命、東京海上、日本生命
となっています。

超長期債について両会合の議事要旨を比べてみました。
プライマリーディーラーは総じて超長期債の発行増額には慎重、
投資家懇談会では「特定の投資家層の需要」をどう見るか、
といったところでしょうか。

下に抜粋しましたが、HPをご覧いただくと、なかなか興味深いです。

<国債市場特別参加者会合>
 ・超長期債の需給環境は良くないが、発行年限の長期化のために
  増額する場合、消去法的に30年債になる。

 ・現在の金融緩和環境を踏まえれば、5年債、10年債を中心に増額し、
  次に2年債、超長期債を増額すべきと考える。(中略)
  30年債は月1,000億円程度の増額は可能とみている。

 ・20年債、30年債については、これまでの入札結果が芳しくないことや
  世界的な金利環境を鑑みると増発負荷の許容度はやや低いと思われる。

 ・超長期債の増発はあくまでも5年債、10年債、2年債を増発した上で、
  それでも不足する場合に検討を行うべきである。

 ・平均償還年限の長期化を引き続き継続していくという全体の構図に
  若干違和感を覚えている。銀行主体の消化にならざるを得ないという
  構図であることや、満期が到来する年限を考慮すると、中長期債中心の
  増額になるのではないかと考えている。

<国債投資家懇談会>
 ・30年債がALMの中心であり、30年債で足りない部分を一部20年債で
  代替している状況である。国債の増発については、30年債について、
  一回当たりの発行額を1,000億円減額したとしても毎月発行を希望する。

 ・潜在的な長期化需要が、超長期ゾーンの価格形成に過度に影響を
  与えないためにも、市場の厚みを増すという観点から超長期債供給の
  拡大を継続的に行っていただきたい。具体的には、生命保険会社等の
  投資が拡大していることもあるため、30年債の増額を優先していただきたい。

 ・超長期債は、イールドカーブがスティープ化しており、増発は控えるべき。

 ・20年債については(中略)超長期の負債を保有する生保や年金に加え、
  銀行等も参入してきており、多少増額しても消化に不安はない。
  30年債については、引き続き超長期の負債を保有する生保を中心に
  潜在的なニーズがあると考えている。

 ・国内サイドの需給がよいのは分かるが、海外が平時になり金利上昇した
  場合には、影響を受けざるを得ないため、超長期ゾーンの増額は慎重に
  なる方がよいのではないか。

 ・超長期債は流動性が低いため、増発は慎重にすべきで、発行頻度は
  現状維持として頂きたい。

 ・超長期債については、特定の投資家層の需要はあるため、需給を
  壊さない範囲で増額は可能と考える。

 

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2012年のノーベル平和賞

 

過去にも理解に苦しむ授賞はありましたが、
2012年の平和賞がEU(欧州連合)だなんて、
ノーベル賞委員会は何を考えているのでしょうね。

「EUとその前身機関は60年以上にわたり、欧州における
 平和と和解、民主主義、人権の進展に貢献してきた」

それはその通りでしょう。
しかし、それなら冷戦終結後とかドイツ統一後、
あるいは加盟国が増えた後など、相応しいタイミングは
何回かあったはずですよね。なぜ今年なのか。

ここ数年、連日のようにギリシャだスペインだと振り回され、
今月ようやくESM(欧州安定メカニズム)が発足したものの、
スペインは支援要請をせず、膠着状態となっているなかで
平和賞などチャンチャラおかしいという感じがします^^

もう少し冷静に考えてみても違和感が消えないのは、
ユーロ圏が揺らいでいるのは各国が対立しているからではなく、
ユーロ圏経済の抱える構造的な問題によるものであって、
これが解決に向かっているとは思えないなかでの授賞だからです。

せめて、先日ECB(欧州中央銀行)が発表したOMT
(債券買い取りプログラム)や、銀行同盟などが動き出し、
ユーロ崩壊ではなく、さらなる統合に向かっていることを
確認してからでも遅くはなかったのではないでしょうか。

まあ、委員の皆さんは政治のことはわかっても、
経済はよくわからないということなのかもしれませんね。

※写真は某高校の文化祭。軽音にダンス部です。

 

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ブランド・アンバサダー

 

NHKラジオ「実践ビジネス英語」をご存じでしょうか。
講師の杉田敏先生がPR会社の社長ということもあり、
扱うテーマは興味深いものばかりです。

9月最初のテーマは「ブランド・アンバサダーの活動」でした。
「アンバサダー」は英語で「大使」という意味です。
ブランド・アンバサダーは企業の代表者(大使)として、
企業ブランドの認知度を高め、ファンを育てる役割を果たします。

例えば、ミズノのブランド・アンバサダーには
多くのプロ野球選手が就任しています。
スポーツ選手がブランド・アンバサダーというのは
日本でも結構多いようです。

「ビジネス英語」では大学生がブランド・アンバサダーとなり、
新入生のサポートをしたり、歓迎会を主催したりする事例を
紹介していました。

企業は、広いネットワークを持ち、周囲から人気のある学生を
アンバサダーとして採用します。
採用されたアンバサダーは友人への売り込みなどはせず、
口コミなど自然な形でブランドの浸透を図るのだそうです。

採用された学生には、1学期に給与や特典、製品などの形で
数百ドルから数千ドル支払われるという話も出ていました。

「ビジネス英語」によると、米国では一万人近い大学生が
ブランド・アンバサダーを務めるのだとか。

ただ、単に大学のイベントでスポンサーが付くというのではなく、
ある種の誘導が行われるわけですよね。
マーケティング戦略と言われればそれまでですが、
ちょっと抵抗を感じます。日本でも行われているのでしょうか。

※写真は米カリフォルニア大学バークレー校です。

 

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社外取締役の義務化見送り

 

法制審議会の部会で会社法改正の要綱案が示され、
コーポレート・ガバナンスの向上策として検討されていた
社外取締役の選任の義務付けが見送られました
(18日)。

昨年12月の中間試案では、設置を義務付けるものでした
(A案は会社法の監査役会設置会社、B案は金商法の
 有価証券報告書の提出会社に義務付け)。

しかし、一転して今回の要綱案となった背景には、

「経営の適正な監督を行うことができるか否かは、
 社外取締役であるといった形式的な属性ではなく、
 個々人の資質や倫理観といった実質により決まる。

 また、監督を行うにあたっては、専門的な経営判断の妥当性をも
 見極める必要があるが、社外取締役であれば常にそうした能力を
 備えているとは限らない。(中略)

 そのため、社外取締役は、各社が適正なガバナンスを確保する上で
 有効な仕組みについて創意工夫を凝らす中で、それを有用であると
 判断した場合に、自主的に選任すべきものである」
 (経団連HPより引用)

といった経済界からの反対がありました。

他方、日本証券アナリスト協会のアンケート調査
(1月の勉強会で実施)によると、
回答者の69.7%が選任義務付けに賛成しており、

「特に企業統治の在り方については、内外から強く求められている
 コーポレート・ガバナンスの向上を図るため、中間試案で示された
 方向性に添って早急に議論を深めていただきたい」

というコメントを公表しています(1/31)。

日本証券アナリスト協会のメンバーは大半が日本人ですが、
それでもこのような結果が出ています。
株式市場で6、7割の売買代金を占める外国人投資家の目には、
今回の動きはどのように映っているのでしょうか。

法制審議会では社外取締役に関する実証研究も踏まえて
中間試案に義務化を盛り込んでいるようなのですが...
社外取締役に関する実証研究(PDF)

※右の写真は大多喜にあった現役の旅館です。
 一度泊まってみたいですね。

 

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超長期債市場の変化

 

超長期の負債を抱える生保のALMに関し、時々耳にするのが、
「日本では超長期債市場が十分ではない」というものです。

確かにそうかもしれませんが、10年前に比べると、
市場がかなり変化しているのをご存じでしょうか。

10年前(2002年度)の国債発行額(当初)は、
10年債が21.6兆円なのに対し、20年債は4.2兆円、
30年債は0.6兆円でした。
40年債の発行は2007年度からです。

2012年度の国債発行計画(当初)を見ると、
10年債が27.6兆円なのに対し、20年債は14.4兆円、
30年債は5.6兆円、40年債は1.6兆円となっています。

発行額が増えていることもありますが、
超長期債の発行はこの10年間で相当増えています。

40年債は年4回の発行で、かつ、1回あたり4000億円なので、
市場としてはまだまだ発展途上のように思いますが、
30年債は年8回発行、1回あたり7000億円ということで、
20年債には及ばないものの、徐々に育ってきているようです
(加えて「流動性供給入札」というものもあります)。

※ヨーロッパに行くと自転車の活躍が目につきますね。

 

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不良債権問題

「政府は11日、国内銀行の不良債権処理を加速する
 総合対策を決めた。不動産への融資債権について
 国内銀行に新たに約3兆円の引当金を積むよう求めるほか、
 不良債権化した不動産資産をバランスシートから切り離して
 管理する構想を盛り込んだ。大手銀への資本注入も正式に決定。
 市場から不安視される銀行部門の健全化を進める方針だ」

「国内銀の不良債権は約18兆円とされるが、市場では
 『実際はもっと多いのではないか』との疑念も強い」

「市場の見方は厳しい。総合対策発表後、株価指数は
 一時前日比3%下落。(中略)市場には『計画が実現できるのか』
 との懐疑的な見方から、先行きを不安視する声はなお多い。」

この記事、かつての不良債権問題に苦しむ日本のようですが、
実は本日(12日)の日経からの引用です。
「政府」「国内銀」「株価指数」の前に「スペイン」が入ります
(金額もユーロです)。

日本の話だと思ってもう一度読むと、不良債権処理の強化に
公的資金の活用、バッドバンク構想、大手銀行の公的管理など、
1990年代後半の状況、すなわち、いくら処理を進めても、
不良債権が減るどころか、むしろ膨れ上がっていた時期のことを
思い出します。

日本の公示地価は1987年から91年に約2倍に上昇し、
その後15年くらい下げ続け、もとの水準に戻りました。
地価が下がると建設・不動産業の経営悪化が進むうえ、
担保としている不動産の価値も減ってしまいます。

スペインでは、住宅価格の上昇は2倍どころではありません。
ピーク時(2007年)からの下げも、まだ2割強なのですね。
しかも、2011年3月時点の建設・不動産向け貸出は、
商業銀行で37%、貯蓄銀行で53%に達するとのことです。
内閣府のHPへ

日本では当時、海外の金融市場からの資金調達には
「ジャパン・プレミアム」が発生したものの、国債利回りは下がり、
銀行が国債保有を増やしても問題にはなりませんでした。

しかし、スペインの10年国債利回りは6%に上がるなど、
市場から不安視されています。

ECBが供給する資金等で国債を買えば大きな利ザヤがとれる
(実際にスペインの銀行はそのようにしているようです)とはいえ、
ギリシャのPSI(民間による自発的な債務削減)を考えると、
スペイン国債は銀行経営者として安心して買える対象なのか
非常に悩ましいでしょうね。

日本で不良債権が目に見えて減ったのは2004年度以降です。
不良債権処理スキームだけではなく、借り手サイドへの対応
(企業再生スキームなど)に加え、経済状況の好転がありました。

スペインは今後どのような経緯をたどるのでしょうか。

※写真は自宅マンションのツツジです。
 一昨日にひょうが降り、いまはボロボロになってしまいました。

 

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金融システムレポート

 

日本銀行が金融緩和策の強化に踏み切りました(27日)。
長期国債の買入れ額を10兆円程度増やすとともに、
買入れ対象の残存期間を3年まで延長しています。

日銀は2011年末時点ですでに日本国債の1割を保有しており、
今後さらに市場での存在感が高まるのかもしれません。

ところで、1週間以上経ってしまいましたが、その日本銀行が
「金融システムレポート」を公表しています(19日)。
このレポートは年2回作成されていて、
日本の金融の現状を知るうえで大変役に立ちます。
日銀金融システムレポートのHPへ

レポートを読んで、地域銀行が直面する経営環境の厳しさを
改めて感じました。

信用コスト率や不良債権比率が低い水準にとどまっているため、
地域銀行の経営は一見安定しているように見えます。

しかし、金融緩和の継続などから運用利ザヤが縮んでいるうえ、
主力取引先である中小企業の資金需要が低下しています。
大都市圏と比べ、地方圏の中小企業売上高は大きく落ち込み、
貸出残高も大都市圏と地方圏では動きが全く異なります。

地域銀行が残高を増やしてきた住宅ローンも明るくありません。
利ザヤが低下しているうえ、需要の頭打ちも近そうです。

つまり、地域銀行のビジネスの源泉となる市場が縮んでしまい、
それが徐々に顕在化する段階に入っているのですね。

他方、地域銀行の収益を補っているのが証券投資です。
レポートによると、金利リスク量(銀行勘定の100bpv)は
年々拡大しており、対TierⅠ比率は3割を超えています。

10年前は地域銀行の抱えるリスクの半分が信用リスクで、
残りが金利リスクと株式リスクで半々というイメージでした。
近年は全体の6、7割が市場リスク(金利と株式)となっています。

多くの地域銀行のALMがコア預金を踏まえた先進的なものに
進化しているとは考えにくいので、このリスクのとり方を
どう考えればいいのでしょうか。

地域銀行の経営を取り巻く現状が厳しいとはいえ、
金融危機のような目に見える厳しさに直面しているのではないため、
経営はなかなか思い切った手を打ちにくいのかもしれません。

いわば真綿で首を絞められつつある、あるいは「ゆでガエル」状態
(実際にやってみると、カエルは外に飛び出すそうです^^)
なのでしょうか。

このような顕在化しつつある「ビジネスリスク」に対応するには、
金融リスクの管理以上に経営陣の強いリーダーシップが
求められるのですが...

※写真は前回に続き勝沼です。桜が満開でした。

 

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