05. 金融・経済全般

追加金融緩和への期待

 

「円高・株安の流れが再び強まり、日銀が資産買い入れ基金の増額
 といった追加金融緩和に近く踏み切るとの見方が強まってきた」
 (4/10の日経)

「デフレ脱却に向けて、日銀はもはや緩和継続を辞めるわけにはいかない
 とのムードが金融市場で強まっている。日銀が追加緩和を見送った
 10日には、円高・株安で反応した」(4/11のロイター)

「米プライマリーディーラー(政府証券公認ディーラー)調査では、
 前週末発表の3月の米雇用統計で雇用者数の伸びが予想を大幅に
 下回ったことを受け、連邦準備理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)
 の実施に踏み切るとの予想が大勢となっていることが、明らかになった」
 (4/9のロイター)

金融市場を見ていると、市場の緩和期待が強まっているというよりは、
中央銀行が追加策を出しても、すぐに次の政策を期待される、
という状況に陥っているようです。
日銀とFRB、ECBで追加策の競争を迫られているようにも見えます。

確かに、2009年からのQE1でFRBが住宅ローン担保証券などを
大量に購入していなければ、米国の住宅価格は下げ止まらなかった
かもしれません。
欧州でも債務危機の深刻化を受け、ECBが昨年末と今年2月に
3年もの資金供給オペを実施した結果、市場の不安が後退しました
(足元ではまた不安の兆しが見えつつあるようですが...)。

しかし、素人目に見ても、こうした政策を長く続けて大丈夫なのか、
中央銀行がバランスシートをどんどん拡大し、その行き着く先には
何があるのかと心配になります。

 

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コダックの経営破綻

 

米イーストマン・コダックが破産法11条の適用を申請しました
(19日)。

17日の日経コラム「一目均衡」は興味深い内容でしたね。
西條都夫編集委員による「コダックはなぜ躓いたのか」です。

写真用フィルムの王者だった米イーストマン・コダックが
経営危機に陥ったのは、デジタルカメラの普及によって
銀塩フィルムの市場が消失したのが直接の要因ですが、
それだけではないというものです。

西條氏はコダックの失敗として次の2つを挙げています。

・まだまだ写真フィルムが全盛だった1990年代に
 「選択と集中」の原則に沿ってフィルム以外の事業を
 次々と外に切り出し、将来の成長の種まで社外に
 流出させてしまったこと

・同じ時期に、最大のライバルの富士フイルムを
 政治力でねじ伏せようとしたこと

コダックは経営破綻に追い込まれてしまいましたが、
同じくフィルムを基盤とした富士フイルムは生き残りました。

両社を比較した英エコノミスト誌の翻訳記事も見つけました。
「『津波が来るのを目の当たりにして、何も打つ手がない』
状態に近い」と、コダックにやや同情的なことも書いてありますが、

「現状に満足する独占企業になっていた」
「完璧な製品を作るメンタリティーに捕らわれていた」
「自社のマーケティングとブランドに大きな自信を持っていた」

などの記述もあります。
JB PRESSのHPへ

日本の保険業界にとっても参考になりそうですね。

※写真は高知の桂浜です。

 

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日銀券が過去最高を更新

 

あけましておめでとうございます。
年末からのユーロ安の流れが続いているようですね。
引き続き不安定な金融市場を予感させます。

さて、日銀が30日に公表した12月実績速報によると、
年末の日銀券残高が83兆9970億円となり、
過去最高を更新したそうです。

超低金利の影響でいわゆる「たんす預金」が増えているほか、
東日本大震災を契機に、手元に現金を用意しておく
家庭や企業が多かったのではないかと見られています。

預貸率の低下もそうですが、日銀が資金を供給しても
経済活動に回らず、お金が滞ってしまっているのでしょう。

この日銀券の残高は、単に現金の動向を示すだけではなく、
日銀が保有する国債残高の上限ともなっています。

最近の国債保有残高は63兆円前後で推移しています。
日銀券の残高が増え続けていることもあって、
国債残高が増えているにもかかわらず、
今のところ上限まで約20兆円の余裕があります。

ただ、日銀による国債買い増しへのプレッシャーは
引き続き強そうですし、他方で、何らかの要因により
「たんす預金」が急減することも考えられます。

ちなみに、2001年の銀行券残高は60兆円程度、
国債保有残高は約45兆円でした。

上限までの余裕がなくなったとき、日銀はどうするのでしょうか。
難しい判断を迫られそうです。

中央銀行の国債購入と言えば、ECB(欧州中央銀行)が
国債引き受けの増額を市場から迫られていますね。

「財政規律を歪めるべきではない」という声(主にドイツ)と
「市場の安定化を優先すべき」という意見が対立していますが、
国債の大量償還を迎えるこの数カ月が最初の山場となりそうです。

※写真は鎌倉・鶴岡八幡宮です。
 正月にはこんな写真は撮れないでしょうね^^

 

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借金漬けの野田家

 

いろいろあった2011年もあとわずか。
東日本大震災の発生と原発事故、欧州ソブリン危機、
そして日本の財政問題。

いずれも深刻なものばかりで、かつ、解決はこれから。
特に財政問題は、市場のターゲットとなったイタリアが
2013年の収支均衡に向けて具体的に動き出したのに対し、
日本はほんとにこれからですものね。

24日の朝日新聞(時事通信)です。
—————————-
高齢の両親の医療費はかさむ一方。給料だけではやり繰りできず、
借金漬けのサラリーマン家庭、野田家はいまや破産寸前--(中略)

夫の年収は423万円だが、支出は903万円。消費者金融から
年収よりも多い442万円を借り(国債発行)、37万円のへそくり
(税外収入)で食いつなぐ瀬戸際の生活だ。

支出が前年度比20万円減るのは保険料(年金国庫負担の一部)を
長男に払わせるため。東日本大震災の義援金には次男の貯金
(復興特別会計)を使う。

危機の主因は伸び悩む年収と、年々増え続ける両親の医療費
(社会保障費)にある。しかし、社長も両親も「無駄遣いするからだ」
「へそくりがあるだろう」と取り付く島もない。
—————————-

それでは皆さま、来年も引き続きよろしくお願いします。

※鎌倉の瑞泉寺です。年末なのに紅葉がきれいでした。

 

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視聴率40%

 

「家政婦のミタ」最終回の平均視聴率が40.0%(関東地区)と、
ドラマでは史上5位(大河ドラマなどを除く)だったそうですね。
三田さんが微笑むシーンを私もちらっと見ました。

この「視聴率」が気になったので、少し調べてみました。
ビデオリサーチのHPへ

現在、視聴率を調査・公表しているのはビデオリサーチだけなのですね。
ニールセンは10年前に撤退していました。

まず、一般に「視聴率」と言われるのは「世帯視聴率」のことで、
「テレビ所有世帯のうち、どのくらいの世帯がテレビをつけていたか」
を示す割合なのだそうです。

例えば、調査対象600世帯のうち、240世帯が「家政婦のミタ」を
見ていれば、世帯視聴率は40%となりますが、
当然ながら「10人に4人が見ていた」ことにはなりません。

世帯に複数のテレビがあることも考慮すると、
「テレビ所有世帯のうち4割で、世帯の誰かが『家政婦のミタ』を見ていた」
ということになりますね。

調査対象は関東地区の場合、ランダムに選んだ600世帯に
お願いしているとのこと。これは意外に少ないように感じました。
毎月25世帯を入れ替え、2年間ですべての対象世帯が
入れ替わるようにしているそうです。

ただ、協力世帯は実際にどう決まるのでしょうね。
ランダムに対象世帯を選ぶようですが、そもそも母集団のデータは
何を使っているのでしょうか。
連絡先がわかる世帯は年々減っているでしょうし。

結果的にテレビをよく見る人が協力世帯になっているように
思えてしまうのですが...

まあ、統計上の誤差もそこそこ大きいようですし、
あくまで参考情報として取り扱う数字なのでしょうね。

※写真は横浜・赤レンガ倉庫のクリスマス市場です。

 

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欧州債務危機の現状

 

日本の不良債権問題は1990年以降のバブル崩壊で顕在化し、
解決には2000年代半ばまでかかりました。
特に1997年以降は信用収縮の傾向が顕著となりましたが、
大手銀行への二回の資本注入や企業向け支援策などもあり、
ようやく危機を脱することができました。

他方、米国発の金融危機は、米住宅バブルの崩壊に端を発し、
証券化商品等を通じて大手投資銀行を経営危機に追い込み、
世界的な危機に発展しました。
米国政府(TARP)による大手銀行等への資本注入もありましたが、
FRBによる住宅ローン担保証券の購入も大きかったように思います。

日米ともに大手銀行等への資本注入だけではだめで、
例えば不良資産の買い取りや企業向け支援など、
金融機関のバランスシートの両側に対する対策が必要でした。

今回の欧州債務危機を日米不良資産問題になぞらえると、
先週のEU首脳会議や銀行の資本不足額公表等を見るかぎり、
「資本注入」も「不良資産買い取り」もこれからということなので、
解決にはまだまだ時間がかかると見るべきなのでしょうね。

※左は慶大日吉キャンパス、右は横浜・日本大通りです。

 

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中央銀行の協調策

 

日米欧の中央銀行(日銀、米FRB、ECB、英、スイス、カナダ)が
協調して欧州危機への対応策を打ち出しました(11/30)。
国際金融市場へのドル資金供給を充実させることで、
市場の緊張を和らげようというものです。

2008年のリーマン・ショックの経験を生かした対応として
前向きにとらえることもできますが、事態の深刻さも伺えます。

日本にいると、あくまで欧州問題のように見えますが、
このままではリーマン・ショックに匹敵するような事態になりかねず、
もはや誰にとっても対岸の火事ではないということなのでしょう。

確かにリーマン・ショックでは、震源地の米国だけではなく、
世界経済が大幅に失速しました。

日本銀行の白川方明総裁は会見で次のように話しています。

「この欧州のソブリン問題は、流動性の対策だけで解決する
 問題ではありません。流動性の供給策は、あくまでも時間を
 買うという政策であり、時間を買っている間に、経済・財政の
 構造改革に取り組むということがないと、問題は解決しません」

今回の中央銀行の協調策が、次の対応につながることを
期待したいものです。

※写真はマレーシアの古都マラッカです。

 

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オリンパスの社長解任

 

保険関連ではありませんが、気になるニュースから。

光学機器メーカーのオリンパスが、4月に就任したばかりの
マイケル・ウッドフォード社長を解任すると発表しました(14日)。

ウッドフォード氏は英国出身ですが、外部招へいではなく、
オリンパスでの勤務歴が30年にわたる「生え抜き人事」でした。
前社長だった菊川剛会長による抜擢人事です。

しかし、
「他の経営陣の間にて、経営の方向性・手法に関して大きな乖離が生じ、
 経営の意思決定に支障をきたす状況」(発表資料より引用)
となり、出席取締役の全員一致で解任を決議したとか。
後任の社長は菊川会長が兼任するそうです。

発表資料には次のような記載もありました。

「当社の目指すグローバル経営とは、人と技術とものづくりの誇りを
 大切にする日本型経営の良さを生かしつつ、世界共通の経営ルール、
 情報管理、オペレーションを実施し、より機動的で効率的な事業基盤の
 構築を目指すものです。」

外国人ならではのリーダーシップの発揮を期待したのに、
リーダーシップを発揮しようとしたら解任されたのだろうか、
という個人的な感想はさておき、少し調べてみると、
オリンパスの持つ「ハイテク」「グローバル」というイメージとは裏腹に、
いろいろと問題含みの会社なのですね。

例えば、上司による取引先社員の引き抜き行為を
「信頼失墜を招く」として社内のコンプラ窓口に通報した社員が、
報復人事や嫌がらせにあってしまい、裁判を起こしています
(一審はオリンパスが勝訴、控訴審で社員が勝訴)。

また、財務諸表を見ると、2008/3期までの拡大戦略に
無理があったのか、2009/3期には売上高の急減や
支払利息の負担増に加え、多額ののれん償却などがあり、
1148億円の赤字決算となりました。純資産は半減しています。

それでも菊川社長をはじめ、経営体制はそのままだったようです
(関係があるかどうかはわかりませんが、会計監査人は変更)。

その「のれん代」ですが、2008/3期末に比べれば減ったとはいえ、
2011/3期末でも1754億円もあるのですね。
この中身が気になるところです。

参考までにオリンパスの連結総資産はほぼ1兆円、
純資産は1668億円、有利子負債が約6500億円、
営業キャッシュフローが329億円です。
表面的に見ただけでも、財務面が盤石ではなさそうです。

※写真はザクロの屋台とランブータンです。
 あいにくどちらも試す機会がありませんでした。残念!

 

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欧州危機の本質

 

主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、
欧州の債務問題解決に向けた具体策は出ませんでした。

ロイターによると、9日の10年国債利回りは、
ドイツが1.74%と過去最低を更新する一方、
ギリシャは20.337%となりました。
ドイツ国債とのスプレッドは1800bpを超えています。
CDS市場ではもっとすごいことになっている模様です。

この欧州危機について、産経新聞の松浦肇さんが
興味深いコラムを書いています。
「欧州危機の本質はM&Aの失敗に例えることができる」
というもので、なるほどなあと思いました。

EU拡大は、独仏などEUの中心国による、PIGS諸国など
周辺国の買収という見方を示しています。
この結果、「PIGS部門」の調達コストをドイツにサヤ寄せ
できました。

しかし、「PIGS部門」は公共投資等で無駄に債務を拡張し、
結局のところ不良債権になってしまったものの、
EUは不良債権処理を先延ばししてきたという解説です。
SankeiBizのHPへ

このコラムを見て、慶応大学の深尾光洋教授の論文を
思い出しました。
奇しくもタイトルは「欧州財政危機の本質」です。

ドイツよりも周辺国の物価上昇率が年2%くらい高い
状態が続いたため、ドイツと周辺諸国の物価格差は
通貨統合時と比べて20%くらい乖離が生じてしまいました。

とはいえ、通貨統合後は通貨切り下げによる調整ができず、
周辺国は財政引き締めによる物価引き下げを迫られている、
しかし、そんなことは実現できるのか、という内容です。
日経センターのHPへ

短期的にはPIIGSの資金繰りをサポートできるか、
ということかもしれませんが、つまるところ、
ドイツが物価を上げ、周辺諸国がデフレにならないと、
問題は解決しないということになりますね。

※写真は前回に続き、スイスのベルンです。

 

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スイス中銀が為替介入発表

 

スイスの中央銀行(スイス国立銀行、左の写真)は6日、
「過大評価」されているスイスフランを安くするため、
対ユーロで1.2フランの下限を設け、これ以上の相場上昇を
抑えるために無制限に介入すると発表しました。

フィリップ・ヒルデブランド総裁は声明文のなかで、
「通貨の過大評価は景気後退とデフレを招く」
「高いコストを覚悟しなければならないが、何もしないと
経済に長期にわたり悪影響を及ぼす」
とコメントしています。

「無制限に介入する」とはものすごい決意表明です。

スイスフランの売り介入なので、中央銀行がお金を刷れば
確かに無制限に介入できます。

「高いコストを覚悟」とあるので、おそらく不胎化しない
(=資金を吸収しない)のでしょう。
将来のインフレ懸念よりも、足元の経済への影響を
見過ごせなくなったということなのかもしれません。

それにしても、連日のように大きなニュースがあるので、
欧米の動向から目が離せません。

 

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