05. 金融・経済全般

顧客本位の業務運営原則

 

19日の読売新聞「保険料手数料開示 説明不足?
金融庁が批判」という記事のなかで、私のコメントが
掲載された模様です。

「手数料開示は、銀行が保険以外の金融商品も含めて
 平等な提案をするいいきっかけになるのでは」

このようなコメントでした。

ところで、22日公表の金融審議会WG報告書では、
金融商品の販売手数料や商品説明、利益相反の
管理等に関する議論を行った結果、ルールベース
での対応を重ねるのではなく、プリンシプルベース
のアプローチを用いることが有効と述べています。

そのうえで、当局が策定する原則(プリンシプル)に
盛り込むべき事項を示しました。

そのなかには、

Ⅳ.金融事業者は、名目を問わず、顧客が負担する
 手数料その他の費用の詳細を、当該手数料等が
 どのようなサービスの対価に関するものかを含め、
 顧客が理解できるよう情報提供すべきである。

Ⅴ.金融事業者は、顧客との情報の非対称性が
 あることを踏まえ、上記Ⅳに示された事項のほか、
 金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な
 情報を顧客が理解できるよう分かりやすく提供
 すべきである。

とあり、Ⅳは顧客が負担する手数料等の情報提供を、
Ⅴでは「重要な情報」として、第三者から受け取る
手数料など、顧客との利益相反の可能性がある
情報を提供すべきとしています。

さらに注記を見ると、

「複数の金融商品・サービスをパッケージとして販売・
 推奨等する場合には、個別に購入することが可能で
 あるか否かを顧客に示すとともに、パッケージ化する
 場合としない場合を顧客が比較することが可能となる
 よう、それぞれの重要な情報について提供すべき」

「顧客に対して情報を提供する際には(中略)顧客に
 おいて同種の金融商品・サービスの内容と比較する
 ことが容易となるよう配慮すべき」

という記載もありました。金融庁のサイトへ

ルールではなく原則ですし、報告書の「金融商品」
「インベストメント・チェーン」に保険商品・チャネルが
どれだけ該当するかには議論の余地があるでしょう。
ただ、顧客本位の業務運営が求められるという点は
保険も例外ではありません。

先の保険業法改正ではルールベースの対応が
求められましたが、プリンシプルベースの対応とは、
「決まりだからやる」「他社もやっているからウチも」
というのではなく、何が顧客のためになるのかを
事業者自らが考え、実行することです。

「これまでだって顧客のためにやってきた」という
声も聞こえてきそうですが、この一連の動きは、
保険流通を取り巻く環境変化としても
押さえておいたほうがよさそうですね。

 

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訪日外国人2000万人突破

 

2016年に日本を訪れた外国人旅行者の数が
10月時点で2000万人を突破したそうです。

NHKニュースでは「国土交通省が発表」と
報じていたので元データを探したところ、
日本政府観光局(JNTO)のサイトにありました。

年間1000万人の達成が2013年ですから、
ここ数年の増加は目を見張るものがあります。
確かに先週末の京都も、外国人観光客と
思われる人たちで賑わっていました。

国・地域別の内訳をみると、圧倒的に東アジア
(中国、韓国、台湾、香港)が多く、全体の3/4を
占めています。
特に中国だけで全体の1/4を上回っていて、
訪日数の増加の牽引役となっています。

JNTOによると、中国人旅行者の訪問先上位は
タイと韓国に次いで、日本となっているようです
(台湾やシンガポール、米国、ベトナム等も上位)。

訪日中国人は男性よりも女性が多く(55%)、
20代と30代が全体の6割を占めています。

2015年に初めて日本に来た人は63%なので、
リピーターもそこそこ増えている模様です。
団体旅行が観光客の56%というデータもあり、
おそらく初めての人は団体旅行、リピーターは
個人旅行という傾向なのでしょう。

日本での訪問先も分散しつつあるようです。

中国のSNSを分析したトレンドExpress社の
調査によると、日本旅行で行きたい場所として
東京、京都、大阪のほか、奈良や鹿児島、福岡、
兵庫、北海道という回答もある程度見られます。

中国人観光客というと、団体で買い物旅行という
イメージが強いですが、リピーターが増えるにつれ、
だいぶ変わってきているのかもしれません。

※日本保険学会の年次大会(10/30)に
 ちょっとだけ参加しました。

 

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金融システムレポートほか

 

自分の備忘録も兼ねて、気になった話題を
いくつかご紹介します。

1.日銀「金融システムレポート」(24日公表)

日銀が半年ごとに公表しているレポートです。
1月末からのマイナス金融政策の影響を
銀行が強く受けていることを示しています。
日本銀行のサイトへ

レポートでは、銀行が低金利によって収益の
減少に歯止めがかからないリスクとともに、
リターンを求めて過度なリスクテイクに向かう
リスクについても分析しています。

マイナス金利政策は欧州でも見られます。
しかし、レポートによると、欧州系銀行は、

 ・預金金利に下げ余地があった
 ・口座維持手数料等の採用
 ・預金調達の割合が邦銀より小さい
 ・収益性の高い住宅ローンへのシフト

などにより、利ざやを維持できているとのこと。
歴史的低金利が長く続く日本とは経営環境が
異なるようです。

2.2015年国勢調査の確定値公表(26日)

国勢調査としては初めて人口が減り、
65歳以上の人口割合は26.7%となりました
(5年前は23.0%)。
この割合は世界で最も高い水準だそうです
(イタリアは22.4%、ドイツは21.2%)。
総務省統計局のサイトへ

合わせて下記の人口ピラミッドをみると、
今後の動きがわかります。

あと25年くらいたつと、団塊ジュニア世代が
65歳以上となり、人口割合はすごいことに
なっていそうです。

逆に言えば、シニアマーケットはしばらくの間
かなりのボリュームゾーンなので、この層を
どうやって取り込むかが、どの業界にとっても
重要なのでしょうね。
国立社会保障・人口問題研究所のサイトへ

3.保険の手数料開示

10月から大手銀行などが特定保険商品の
販売手数料を開示するようになり、関連する
記事がいくつか出ています。

R&I「ファンド情報」(2016.10.24)では、
開示のタイミングで手数料の受け取り方を
「 I から L 」に変える動きがあると報じています。

従来は販売時の一括受け取りだったものを、
販売時の手数料を抑える半面、5~10年ほどの
継続手数料を受け取るように変更することで、
「見せかけの手数料引き下げ」が横行している
というものです。

銀行は継続手数料も開示していますし、
継続手数料を設定することで、銀行が販売時の
手数料獲得だけに邁進せず、アフターフォローを
より重視するようになるかもしれません。

ですから、これを「見せかけの引き下げ」として
批判するのは、やや違和感があります。

もっとも、29日の日経に、メガバンクの事例として
外貨建て一時払い変額終身保険の手数料率が
掲載されていたのですが、これが合計9.25%
(初年度手数料4.00%、継続手数料0.75%)、
という数字でした(75歳までの場合)。

継続手数料は7年目までということなので、
解約や死亡による契約消滅を踏まえたうえで
設定しているのだとは思いますが...

この先、まだまだ動きがあるかもしれませんね。

※銀座の日産ギャラリーが新しくなっていました
 (NISSAN CROSSING)

 

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不正なクロスセリング

 

本題に入る前に、コメント掲載のご紹介を。

14日の朝日新聞「保険『窓販』高い手数料」
(10月からの手数料開示を扱った記事です)で、
コメントが載りました。

「手数料が顧客の知らないところで上がって
 いくことは防げるだろう」

というものです。

日本の銀行窓販は複数の保険会社の商品を
銀行が取り扱うのが一般的なので、どうしても
手数料引き上げ圧力がかかりがちです
(もちろん手数料だけではありませんが)。

今回の手数料開示によって、水準を下げるのは
難しいとしても、引き上げ競争となるのを抑える
効果は期待できるのではないかと考えています
(甘いでしょうか?)

さて、米国大手銀行ウェルズ・ファーゴのCEOが
不正なクロスセリングの問題で辞任しました
(12日発表)。⇒ Wells Fargoのサイトへ

問題が表に出たのは9月8日です。
顧客に無断で預金口座やクレジットカードを
大量に作成していたということで、監督当局に
1.85億ドルの制裁金を支払うという内容でした。

ウェルズ・ファーゴの調査によると、2011年以降、
不正に開設した預金口座は150万件、
クレジットカードの発行は56.5万枚に上るとか。

金利水準が低いなか、預貸の利ざやで稼ぐのが
難しいのは米国も同じで、非金利収入のウエートが
高まる傾向にあります。
ウェルズ・ファーゴでは2015年の非金利収入比率は
47%に達しています。

なかでも同社は同一顧客への重ね売りに注目し、
20年ほど前からクロスセリングを推進してきました。
同社の顧客当りのクロスセル率は競合他社を
上回っている模様です。

ここまで不正な口座開設等が広がった背景は
まだよくわかりませんが、米当局(CFPB)によると、
「開設に伴うボーナス」「販売目標の存在」などが
挙がっています。

クロスセリングは日本の金融・保険業界でも
一般的な戦略です。

損保が設立した生保子会社のビジネスモデルは
損保代理店による生保クロスセリングでしたし、
日本の銀行でもクレジットカードや住宅ローン、
グループ会社の運用商品などを提供しています。

しかし、クロスセル戦略は顧客ニーズというより、
売り手のニーズが強く出た戦略だと思います。
多種目販売により顧客との関係を強めることが
できますし、何より顧客当りの単価が高まります。

もちろん、顧客にとって有利な場合もありますが
(例えば割引がある、まとめると便利、など)、
すべてがそうとは限らないでしょう。

もし顧客満足度を高めるようなクロスセリングが
できなければ、顧客との関係を強めるどころか
事業基盤を破壊してしまいます。
米銀の事例は対岸の火事ではありません。

※「鉄博ナイトミュージアム」に行ってきました!

 

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イールドカーブの低下

 

日本銀行は16日の金融政策決定会合で
追加的な金融緩和措置の実施を見送りました。

ただし、今後とも「物価安定の目標」の実現のために
必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の 3 つの次元で、
躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じるとのことです。

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」により、
金利水準は大きく下がりました(特に超長期ゾーン)。

<財務省:国債金利情報から>
          2015.3.31   2016.3.31   2016.6.16
 10年金利    0.398% ⇒ -0.049% ⇒ -0.208%
                   (-0.447)    (-0.159)
 20年金利    1.133% ⇒  0.441% ⇒  0.103%
                   (-0.692)    (-0.338)
 30年金利    1.357% ⇒  0.547% ⇒  0.148%
                   (-0.810)    (-0.399)
 40年金利    1.464% ⇒  0.632% ⇒  0.194%
                   (-0.832)    (-0.438)

この結果、生保各社が公表するEVは、3月末から
さらに下がってしまいます(大手で▲数千億円?)し、
商品戦略も、もしかしたら抜本的な見直しが必要に
なるのかもしれません。

長期にわたり利率を保証するという点で大変なのは
年金も同じです。

確定給付企業年金の予定利率は2%以上のところが
多いようですから、予定利率を引き下げるところが
増えていくのではないでしょうか。

危うい金融商品なども出回っていそうですよね。

黒田総裁は同日の記者会見で、

「マイナス金利政策の効果は、実体経済面にも徐々に
 波及してきており、今後、より明確になっていくのでは
 ないかと思っています」

と述べ、イールドカーブの引き下げが実質金利を下げ、
実体経済を刺激する効果があるとしています。

これに対し、全国銀行協会の國部会長は16日の会見で、

「足元では、設備投資など企業の前向きな動きは
 まだ出てきていない」

「企業が設備投資をするときには、もちろん金利も一つ
 のファクターであるが、国内で設備投資をする場合は、
 日本経済の期待成長率がある程度見込めないと
 設備投資をしないということだと思う」

とコメント。そもそもマイナス金利政策の波及経路は

「円安あるいは株高という経路によって消費であるとか
 投資を刺激し、実体経済の拡大を狙うものと思っている」

という見方なので、今の円高・株安基調のなかでは
実体経済へのポジティブな影響は期待できないという
ことなのでしょう。

また、金融庁の人事情報を探していたら、麻生大臣が
14日の会見で次のようなコメントをしているのを発見。

「(ヘリコプターマネーに関する質問に対し、)今現在でも
 問題なのは、お金があるないという話ではなく、実体経済に
 おける需要の絶対量が不足しているところが問題なのですから、
 そういった意味で金利を安くしたからといって特に需要がなければ、
 そのお金は生きてこないというのは、これまでで既に証明は
 終わっていると思いますけれども」

失言の多いかたではありますが、これは強烈です。

そうはいっても、2%の物価目標から程遠い現状を見れば、
日銀による「金利も」「量も」という緩和政策は今後も続くのでしょう
(=やめる理由がありません)。

長期の保障を提供する主体にとって非常に厳しい政策だと
いうことを、日銀はどこまで認識しているのでしょうか。

※築地の青果市場です。スイカがたくさんありました。

 

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創業家による経営支配

 

日経「私の履歴書」と王将フード「調査報告書」が
あまりに対照的だったので、今回はこの話を。

3/31まで「私の履歴書」に登場していたのは
アイリスオーヤマの大山健太郎社長です。
記事のなかで次のように語っています。

「私にとって大事なのは、事業内容よりも『創業の理念』
 がきちんと引き継がれることだ。そのためには血の
 つながった人間による『株式非公開の同族経営』が
 一番いいように思われる」 (3/29付)

「本来会社は従業員のためにある。利益はなるべく
 従業員と分け合いたいと考えた。」 (3/30付)

「経営学や経済論壇は米国型の資本主義を見習えと
 説く。しかし『社外取締役』など表面的な部分だけ
 米国式をまねても結局は機能せず、長続きもしない
 のではないか」 (3/31付)

なかなか刺激的なコメントばかりですが、
成功した創業者の考えがよく表れています。

他方、王将フードサービスの第三者委員会による
調査報告書(3/29に公表)をご覧になったでしょうか。

報告書によると、創業者の長男・次男が代表権を持つ
まさにその時期に、創業者の知人(A氏)やその関係会社と、
経済合理性の明らかでない貸付や不動産取引等が行われ、
会社から合計200億円超の資金が流出したそうです
(このうち約170億円が未回収とのこと)。

その原因は、当時の同社は大株主かつ創業者の子息である
両代表者への遠慮や、意見を言っても無駄という企業風土から、
次男による独断専行を取締役会が牽制する体制がとられて
いなかったことにありました。

その後も会社は他のステークホルダーとの信頼関係よりも
創業家への配慮を優先し、合理性の明らかでない役員人事、
法的責任追及の回避といった対応を繰り返しました。

報告書では、王将フードのガバナンス上の失敗は、
「独断専行ないし密室経営」「創業家との関係」
「A氏との関係」という3つのリスク要因が組み合わさり
引き起こされたもので、それは決して過去のものではない
と指摘しています。

創業の理念が引き継がれなかったと言えばそれまでですが、
同族経営の悪い面が表面化した事例とも言えそうです。

※右の桜は「オオシマザクラ」です。

 

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景気ウォッチャー調査

 

「景気ウォッチャー調査」というものがありまして、
いわば生活実感としての景況感をつかむために
内閣府が毎月実施しているアンケート調査です。

実際の調査から公表までの期間が短いのも特徴で、
例えば2月の場合、2/25~月末に調査した結果が
3/8に公表されています。

2月の調査結果は、景気の基調判断が下がり、

「景気は、円高、株安といった金融資本市場の不安定な
 動きの中、消費動向等への懸念により、このところ弱さ
 がみられる」

「先行きについては、春物商戦やローン金利低下への
 期待等がある一方で、引き続き、先行き不安や金融
 資本市場の動向が企業、家計のマインド等に与える
 影響に留意する必要がある」

というまとめでした。内閣府のサイトへ

アンケート調査なので、各地の景気ウォッチャーによる
様々なコメントが載っています。

そこで、調査結果(全体版)から、マイナス金利政策に
関連するコメントを拾ってみました。

<家計動向関連>
○突然のマイナス金利と、消費税率 10%への引上げ前の
 駆け込み需要が重なり、若い世代の顧客の動きが非常に
 良い 【東北、住宅販売会社】

●日銀のマイナス金利導入以降、百貨店友の会への入会
 希望者が明らかに増加している。預貯金の金利低下を懸念
 しての行動であり、消費者の生活防衛意識が高いことへの
 表れである【東北、百貨店】

●マイナス金利政策の副作用を含めた効果も不透明である
 など、外的環境が悪く、マインドの改善が望めない
 【近畿、百貨店】

●マイナス金利の影響で、住宅ローン金利の低下は更に進んで
 いるが、経済環境の先行きに対する不安感が高まっている。
 そのため、モデルルームへの来場者数が減少し、購入決定に
 移行する割合も低下している 【近畿、その他住宅[情報誌]】

*客からの問い合わせで新築物件の早期建築を要望するケース
 が増加している。その理由としては、マイナス金利政策による
 金融機関の金利優遇や消費税率引上げを見越した早期契約を
 要望している客が増加しているためである
 【中国、住宅販売会社】

<企業動向関連>
●今回の日銀のマイナス金利は、地方銀行にとって最悪である。
 この政策が資金需要の増加につながるとは全く思えない。
 これは景気に悪い影響を与えると思う 【南関東、金融業】

○日銀のマイナス金利の反響は大きく、住宅メーカーの景気は
 好調である。企業への貸付も緩和されて良いムードになりそう
 である 【南関東、税理士】

●特にマイナス金利の影響として、企業の立場からするといくら
 金利が低くても設備投資などの実需がなければ借入はしないし、
 個人の立場からも住宅ローン金利が低くなっても、個人所得の
 増加傾向が期待できない限り、将来の返済見込みが立たず、
 借入はしないと考える
 【北陸、一般機械器具製造業】

●マイナス金利や海外の不安定な原油価格相場、株価乱高下
 など、経営環境の不安要素の影響で設備投資が積極的には
 行われておらず、受注高も前年割れが続いている
 【中国、通信業】

*日銀のマイナス金利導入以降、顧客より新規融資案件や既存
 貸出金についての金利引下げ要請が増加している
 【四国、金融業】

●株価、為替、マイナス金利による銀行経営へのインパクト等、
 環境変化の乱高下が激しいニュースが相次ぎ今後どう動くのか
 全体的に様子見している感じがする。消費行動も当面慎重な
 動きになるのではないか 【沖縄、食料品製造業】

<その他>
●マイナス金利など先行きの不透明感が客の意識のなかに広まっ
 ており、購入マインドが少し弱まっている 【東北、家電量販店】

●マイナス金利政策による景気の先行き不安から、消費の冷え込
 みにつながる可能性がある 【近畿、家電量販店】

●将来に不安を持っている経営者が非常に増えている。世界経済
 の悪化、日銀のマイナス金利の導入、来年の消費税増税等で、
 経営者が設備投資に消極的になっており、景気は悪化しつつある
 【四国、公認会計士】

引用が長くなってしまい恐縮ですが、いかがでしょうか。

NHKニュースでは、「日銀のマイナス金利政策については
見方が分かれました」とあるのですが、ポジティブなコメントは
住宅関連だけで、どうもネガティブなコメントが目立つようです。

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※越後湯沢の先にある貝掛(かいかけ)温泉に行きました。
 目に効く温泉なのだそうです。

 

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社長人事

 

先週に続き、持株会社(純粋持株会社)関連の話です。

東京海上グループはグループ経営体制(人事)を見直し、
持株会社の社長が中核子会社(東京海上日動)の社長を
兼務する人事を改めることにしました。

日本の持株会社グループを見ると、

・純粋持株会社の傘下に大きな中核子会社があるケース

・経営統合に伴い設立した純粋持株会社の傘下に
 複数の中核子会社があるケース

の2つに分けられます。

もっとも東京海上グループやSOMPOグループのように、
設立当初は後者だったものが、その後子会社が合併し、
前者となったケースも目立ちますね。

前者の場合、実質的に「グループ ≒ 中核子会社」
ということが多いためか、持株会社と中核子会社の
社長が同じであることが多かったように思います。

ただ、持株会社の社長はグループ事業ポートフォリオを
いかにマネジメントするかが主な役割であるのに対し、
事業子会社の社長の役割は当該事業のマネジメントです。

東京海上の場合、海外子会社が東京海上日動の傘下に
あるとはいえ、さすがに「グループ ≒ 東京海上日動」
ではなくなっているのでしょうから、今回の経営体制の
見直しは私には理解できる話です。

参考までに、他の保険・金融グループを見てみましょう。
まずは保険持株会社グループから。

MS&ADは、持株会社の社長が中核子会社の一つである
MSIの社長を兼務しています。
ちなみにADIの社長は持株会社の会長を兼務しています。

SOMPOグループは、持株会社の社長が中核子会社の会長、
中核子会社の社長が持株会社の会長という体制です。
しかし、4月から中核子会社の社長が代わり、兼務人事でも、
SJとNKの統合に伴う「たすき掛け人事」でもなくなります。

T&Dは持株会社、中核子会社で社長の兼務はありません。

ソニーフィナンシャルでは、少し前まで持株会社の社長が
中核子会社(ソニー生命)の社長を兼務していましたが、
2015年4月からは兼務を解消しています。

大手銀行グループはどうでしょうか。

MUFGは、持株会社の社長が中核銀行のトップを
兼務しています。
報道によると、近いうちに兼務が解消される模様です。

SMFGとみずほFGは現在、いずれも持株会社の社長と
中核銀行トップの兼務はありません。
SMFGは2011年4月から、みずほFGは2014年4月から
現体制となっています。

三井住友トラストは持株会社の社長が中核銀行の会長、
中核銀行の社長が持株会社の会長という「たすき掛け」。

りそなGは持株会社と中核銀行のトップが兼務です。

全体としては、トップ人事の兼務やたすき掛け人事が
解消に向かっているように見えますね。

※暖冬のためか、大倉山公園の梅がもう咲いていました。

 

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金融グループの経営管理

 

昨年末(12/22)公表の金融審議会報告書
「金融グループを巡る制度のあり方について」
を遅ればせながら読んでみました。

何となくFinTech絡みの話だと思っていましたが
(新聞報道ではそのような取り上げ方だったので)、
金融グループの経営管理のあり方を議論したうえで、
各論としてFinTech関連の規制緩和を求めていました。
金融庁のサイトへ

報告書では、金融グループの持株会社が果たすべき
経営管理機能の内容について明確な規定がないため、
法令上明確にしておくことが適当としています。

そして、グループの経営管理として、あるべき姿は
営業基盤・規模・リスク特性・経営戦略等に応じて
区々であるとしたうえで、例えば、

・グループの経営方針の策定
・グループの収益・リスクテイク方針、並びに資本政策等の策定
・グループの経営管理体制の構築・運用
・グループのコンプライアンス体制の構築・運用と利益相反管理
・グループの再建計画の策定・運用(特にG-SIFIs)

などを行うのが適当としています。

「リスクテイク方針」が挙げられているということは、
グループとしてのリスクアペタイトを明確に設定し、
それに沿って収益・リスクテイク方針や資本政策等を
策定することが想定されているのでしょう
(そうでないとリスクテイク方針を立てられないので)。

報告書はメガバンクグループや地域銀行グループなど
銀行を中心とした金融グループを念頭に置いていますが、
保険グループについても基本的な考え方は同じでしょうから、
この報告書の影響は大きいのかもしれません。

※吹屋の町並みです。赤い町並みが印象的でした。

 

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東芝の第三者委報告書

 

金曜日(24日)は「日経」「明治安田生命」と続けて
海外M&Aのニュースが飛び込み、驚きました。

今回はこの話ではなく、東芝の不正会計について。

21日に公表された第三者委員会による調査報告書を
私も一読してみました。
東芝のサイトへ

新聞報道をはじめ、すでにいろいろと書かれているので
中身の紹介は省略して、個人的な感想を2点ほど。

報告書を読むと、利益かさ上げの手法として、
工事損失引当金の計上に関する恣意的な判断や、
期末の押し込み販売による数値かさ上げなどが、
何回も出てきます。

これらは、社内では適切ではないと認識しつつも、
「粉飾」「違法」とまでは認識されていなかった模様です。

3日間で120億円の利益改善を求めたという話も、
「社長月例」「着地見込会議」などでの議論も、
根底には、「決算は作るもの・コントロールできるもの」
という意識があることがうかがえます。

もちろん、うかがえるというだけで、証拠はありません。
ただ、この点を含め、できればもう少し掘り下げて
いただきたかったなあという印象を持ちました。

「なぜトップは工事損失引当金計上を認めなかったのか」
「なぜトップは利益かさ上げの解消に難色を示したのか」
「なぜトップの圧力が組織的な不正という結果になるのか」

といったところはモヤモヤしたままなのですね
(時間的に厳しかったのだとは理解します...)。

300ページもある報告書を一読したかぎりでは、
「責任の自覚が必要」「経営トップ等の意識改革」
という提言が果たして本質的な再発防止策なのか、
私にはわかりませんでした。

もう一つ、会計監査人は会社にダマされっぱなしだったのか、
あるいは共犯だったのか、本調査の目的ではないとはいえ、
やはり気になるところです。

例えば、別紙3(報告書の最終ページにあります)として
PC事業月別売上高・営業利益推移のグラフがあり、
リーマンショック後の推移はかなり異様な動きに見えます。

もちろん、会社は監査人に何らかのストーリーを示し、
納得させようとしたはずです。
ですから、監査人は被害者なのか、そうではないのか、
今後の調査で解明されることを期待しています。

※写真は成田山新勝寺と門前町です。

 

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