04. 保険商品、チャネル

入院期間の短期化と医療保険

直近の「生命保険経営」(第77巻第6号)に
「入院期間の短期化と医療保険」という論文が掲載されています。
第一生命経済研究所の丹下博史さんによるものです。
知っているようで知らなかった話がたくさん出ていて、大変勉強になります。

医療技術の進歩や医療政策上の後押しにより、
平均在院日数の減少が進んできたのはよく知られた話です。

ただ、「患者調査」「病院報告」といった代表的な統計には
転院や再入院が考慮されていないため、実際の平均在院日数は
統計上の数値よりも10~15%長いと考えられるそうです。
なるほど。

米国の6.5日、英国の7.0日、ドイツの10.2日、フランスの13.4日
(いずれも2005年のOECDデータ)に比べれば、
日本の平均在院日数は35.7日、一般病床だけでも19.8日と長く、
まだまだ減少の可能性があるとのこと。

丹下さんは、「そもそも短期入院であれば貯蓄でも対応可能」
「長期的視点で考えると、入院期間に応じて入院給付金を支払う
医療保険はその意味がますます問われることになる」
と述べていますが、私もその通りだと思います。

それからもう一つ。
医療保険に関するデータベースを作れないものでしょうか。
かつては生保協会で集めていた時期もあったようなのですが…
厚生労働省にも医療データがたくさんありそうです。

生命保険経営学会のHPへ
・残念ながら論文は掲載後2年たたないと閲覧できません。
・「生命保険経営」は生命保険経営学会の機関誌なので、
 年会費(3000円)を払えば購読できます。

※写真は横浜・みなとみらい地区のマンション群です。
 ようやく人が住む町になってきた感じですね。

 

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世界の保険市場レポート

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前回(10/13)ご紹介した「World Insurance Report 2009」では、
販売チャネルの多様化が保険成熟市場での成功要因としたうえで、
実際に多様化戦略をとる際の課題や教訓について探っています。

もっとも、私には同レポートの2008年版のほうがより興味深く感じました。

「World Insurance Report 2008」

2008年版では、CapgeminiとEFMAが約11000名の保険顧客
(欧米8カ国と中国、インドで日本は含みません)
へのアンケート調査に基づき、保険市場の動向や顧客の行動特性、
販売ネットワークの利用状況などを分析しています。

成熟国では顧客1人当たり5.2件(生保1.5件、損保3.7件)の
保険に加入しているそうです。
すでに浸透率が十分高く、潜在需要は概して頭打ちです。

ただ、国によっては取引先を変えようとする顧客が増える兆しがあり、
なかでも英国の自動車保険は、平均継続期間が3.4年
(成熟国の平均では8.4年)なのだそうです。

販売ネットワークの利用状況についての調査もあります。
なかでもインターネット販売ネットワークの拡大は
主導的な保険会社も無視できない潮流になっているとのこと。
アンケートによると、損害保険だけではなく、生命保険でも
多くの顧客が将来(=今後3年以内の保険購入)のオンライン購入を
予想しています。

これに対し、向こう3年間で販売シェアを維持できそうなのは
総合代理店/ブローカー/IFAだけで、あとはシェアを失うという結果でした。

もちろん、国によって顧客のニーズや商品の用途、法規制、競争状況が
異なるので、販売ネットワークの利用状況もこれらに影響されるのですが、
一つの見方として参考になりそうです。

※写真はトレッサ横浜です。
 ユニクロは相変わらずのにぎわいでした。

 

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都市部の生保営業

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「大手生保、都市部で営業部門増強」(7/20日経)
「生保レディー 土曜も訪問 日生、選択出勤で営業強化」(7/15産経)
「明治安田生命が『保険難民』開拓 サイトと営業職員連動」(7/14 FujiSankei)

かつて生保レディーといえば、昼休みなどに職場に入り、
その会社の社員と親しくなって保険を売るのが当たり前の姿でした。
私が昔勤めていた職場にも、大手生保の営業職員が出入りし、
同僚たちと仲良く雑談していました(私には不思議でしたが)。

そんな光景も今は昔。今でも大企業で出入りが認められている職場は
どのくらい残っているのでしょうか。
バブル崩壊後の生保の販売不振は可処分所得の低迷や
少子化、晩婚化といった需要サイドの問題だけではなく、
職域営業が壊滅的な状態に陥ったことも大きいと見ています。

上記の記事のように、固定給職員による説明会を通じた販売や
土曜出勤の許可、比較サイトと営業職員の連携など、
大手生保は訪問営業が難しくなっている都市部での営業を
何とか立て直そうと試みているようです。

ただ、大勢の見込み客を抱えることのできた職域セールスと違い、
「説明会」や「土曜出勤」で見込み客を確保できるのでしょうか
(「比較サイトとの連携」は興味深いです)。

※写真はこの週末のイベントです(親バカですみません)。

 

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終身医療保険

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ある会社が販売する終身医療保険のうち、売り上げの3割以上が
かつて同じグループが販売した医療保険(終身医療保険を含む)
からの乗り換えという話を耳にしました。解約&新規です。

終身医療保険は依然として第三分野商品の中心的な存在です。
アフラックの「EVER」やオリックスの「CURE」をはじめ、
無配当かつ解約返戻金のないものが大半を占めているようです。

解約返戻金がない商品の場合、基礎率に「解約率」が含まれています。
つまり、一定の解約を前提におき、保険料を安くしているのです。
前提を上回る解約が発生すると保険会社が儲かることになります。
しかも解約返戻金も配当もないので、差益が還元されることはありません。

既契約者向けに新たな特約を提供するというのであればいいのですが、
解約&新規と聞いてちょっと心配になりました。

 

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個人賠償責任保険

日曜日(11/2)の日経に「個人賠償責任保険」の記事を見て、
かつての上司が「損保で最も役立つ保険」と言っていたのを思い出しました
(損保で勤務していた時代の話です)。

この保険は、法律上の賠償責任を負ってしまった場合の備えです。
例えば自分や自分の子どもが誰かに損害を与えてしまったときなどに
保険金が支払われます。

ただ、個人賠責に単独で入るケースは少なく、たいていは、
火災保険や自動車保険の「おまけ」みたいに付いています。
もちろん、その分の保険料を払うので「おまけ」ではないのですが、
年間1000円程度の負担です。

そのような保険なので、自分が入っていると認識している人は
少ないのかもしれません。したがって保険金の請求も少なく、
この程度の保険料ですんでいるのかもしれません。
あくまで推測ですが。

ただ、米国のような訴訟社会とまではいかなくても、
損害賠償を求められることが増えるような流れがありますので、
子どもがいる人などは入っておいたほうがよさそうですね。

私にしてはめずらしく商品の話でした。

 

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変額年金の運用停止

すでに一部のメディアでは報道されていますが、
変額年金最大手のH社が2007年2月から販売した商品の一部で、
運用資産が目標の下限に抵触し、特別勘定での運用を停止するという
事態が発生しているようです。

契約者は一括受け取り(=受取額は一時払い保険料の8割)、または、
期間15年の年金(=受取総額は一時払い保険料と同額)を選ぶことになります。

この商品はもともと3つのメリットとして
「(バランスファンドによる)安定的な資産の成長」
「(目標金額に到達した場合)運用成果の確定」とともに、

「基本保険金額相当額の最低保証」が挙げられていました。
そして、

・積立目標金額に到達しなかった場合 → 10年確定年金へ移行
・積立金額が基本保険金額の80%以下となった場合
 → 自動的に運用を中止し基本保険金額相当額の年金受取総額を
    最低保証した確定年金へ移行

と明示されていました。

ただ、銀行や証券会社は顧客にきちんと説明していたのでしょうか。
おそらく顧客には高齢者が多いでしょうから、トラブルが多発しないか心配です。

ちなみに、たまたまこのタイミングなのかもしれませんが、
H社の看板的な存在だったS氏が退任したというニュースが流れています。

 

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