01. 保険経営全般

自治体との包括連携協定

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少し前になりますが、10/8の産経ニュース(おそらく北海道・東北版)に私のコメントが載ったようです。
明治安田生命が秋田県など4県(他は愛媛県、宮崎県、高知県)と包括連携協定を締結したという記事のなかで、「(大手生保による協定締結には)地域貢献に加え、地域密着型の営業戦略を支援する意味もありそう」とコメントしています。
産経ニュースのサイトへ

確かに、地方自治体と民間企業が包括連携協定を結ぶ事例が増えているようです。
保険会社では、記事となった明治安田生命のほかにも、例えば地元・神奈川県は、2015年1月に第一生命と包括協定を結び、県民の健康増進や県民サービスの向上を目指すとしていますし、横浜市は今月19日に損保ジャパン日本興亜と地域活性化に関する包括連携協定を結びました。

協定書を見ると、神奈川県と第一生命の協定では、「健康増進に関すること」「スポーツ振興に関すること」「中小企業支援に関すること」など9項目について「連携し、協力する」、横浜市と損保ジャパン日本興亜では、「地域の安全・安心・災害対策に関すること」「高齢者・障害者支援に関すること」「文化・芸術の振興に関すること」など8項目について「協力して実施するもの」とあります。
包括協定ということもあり、取組範囲が広い半面、ビジネスの一環としての協力というよりは、CSR(企業の社会的責任)としての活動が主眼となっているようです。

ただ、例えば自治体が保険会社とともに市民の健康増進に取り組むのであれば、企業のCSR活動に期待するという包括協定よりも、きちんと予算をつけ、事業として保険会社と連携したほうが成果が出やすいのではないかと思ったりもしますが、言い過ぎでしょうか?

※写真のような秋晴れが恋しいですね。

 

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標準生命表の見直し

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生保標準生命表の改定が正式に決まり、
2018年4月以降に締結する保険契約から
標準責任準備金の計算基礎となる死亡率が
見直されることになりました。
金融庁のサイトへ

この死亡率は保険料率を決めるためのもの
ではなく、あくまで責任準備金の基礎率であり、
保険料率そのものは各社が独自に決めます。
この点は4月に下がった標準利率と同じでして、
生保各社が設定した4月からの予定利率は
標準利率とは異なるケースが多いようです。

ただし、責任準備金の基礎率から大きく離れ、
低い保険料率にしてしまうと、責任準備金の
積み増し負担が会計利益を圧迫してしまうので
無理な料率の設定ができないという仕組みです
(あくまで会計利益の話ですが)。

死亡保険用の標準生命表を確認すると、前回
(1996 ⇒ 2007)に比べ、今回(2007 ⇒ 2018)
のほうが死亡率の改善程度が大きいようで、
特に男性の改善が目立ちます。
標準生命表2018の作成概要
標準生命表2007の作成概要

この見直しを保険会社経営(あるいは株主)の
目線で考えてみると、保険料率の引き下げは
新契約が生み出す利益の減少に直結します。

新契約の利益確保には、「販売件数を増やす」
「販売コストを減らす」「付加保険料を引き上げる」
(付加保険料は金融庁の認可が不要です)
「解約失効を減らす」といった手を打つ、あるいは、
「生命表改定の影響を受けにくい商品戦略採用」
などが考えられます。

しかし、多少料率が下がるとしても、今の環境で
死亡保障の販売件数を大きく増やすのは難しい
でしょうし、付加保険料の引き上げというのも
あまり現実的ではありません。

また、料率が下がれば販売コスト(変動部分)も
下がるので、併せて販売コストをどこまで削減
できるかどうか。失解率もすでに低いですし。

商品戦略の見直しというのも、ビジネスモデルに
関わるうえ、それが顧客本位なのかという点も
十分検討が必要でしょう
(第三分野シフトは一段と強まりそうですが)。

このように考えると、競争が激しいとはいえ、
今回は同じく生命表が見直された第三分野の
料率を引き上げる(保障見直しを含む)会社が
出てくるのかもしれません。

それにしても、金融庁サイトのパブコメには
苦笑してしまいました。

 

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韓国生保の経営破綻

 

今月下旬にソウルでスピーチをする予定があり、
当日のレジュメを作成するなかで、韓国生保の
破綻事例を改めて確認しました。

日本で中堅生保の経営破綻が相次いだのと
ほぼ同じ時期(1997年~2000年代初頭)に、
韓国でも中小生保を中心に14社が実質破綻に
追い込まれています。
当時の韓国生保は全部で33社だったので、
なんと4割の会社が破綻したことになります。

もちろん、保険会社の破綻事例といっても、
国が違えばいろいろと異なる点はあります。

例えば、日本で破綻した生保会社の多くは
歴史の長い中堅規模の「漢字生保」でしたが、
韓国で破綻したのは、主に1980年代後半の
市場開放で新たに誕生した「新設会社」でした
(ただし、1999年に破綻した大韓生命は大手)。

破綻処理スキームも日韓で異なりました。
日本では銀行預金が全額保護される一方、
生保の破綻処理は基本的に契約者負担でした
(破綻会社の契約者と保護機構の資金)。

これに対し、韓国では深刻な金融危機のなか、
公的資金を活用した契約移転や売却などにより、
銀行預金者も生保契約者も全額保護されました。

とはいえ、かつて韓国の破綻生保の経営を
調べたところ、特色のない経営戦略であったり、
規模拡大を優先し、高コスト構造からの脱却を
怠っていたりと、破綻した「新設会社」が様々な
経営問題を抱えていたことがわかりました。

つまり、韓国のケースでも、経営陣の判断や
行動が破綻に強く影響したと考えられます。

近年の低金利環境(韓国でも低金利なのです)
のなかで、韓国の生保がどのような経営戦略を
とっているのかも興味深いテーマです。

昨年4月のムーディーズのレポートによると、
資産・負債のミスマッチが比較的小さいものの、
やはり金利低下の影響を受けているようですし、
販売面では商品構成に変化が見られるとのこと。

政治的の世界では、どうもしばらくは関係修復が
難しそうな情勢に見えますが、民間レベルでは、
双方にとって参考になる話がたくさんありそうですし、
引き続き交流を進めていきたいと思います。

※築地の波除神社にも参拝してきました。
 この輪(茅の輪と言います)を三度くぐると
 穢れ(けがれ)をはらったことになるそうです。

 

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保険会社の社会的役割

 

あけましておめでとうございます。
本年も引き続きよろしくお願いいたします。

2016年を振り返ると、保険会社にとって、
その経営のあり方が問われた年でした
(それは現在も続いています)。

昨年は熊本のように、大地震の発生確率が
必ずしも高いと考えられていなかった地域で
大きな地震が発生しました。
また、北海道に台風が上陸し、大きな被害を
与えるというのも、従来にはなかった話です。

日本の保険会社の社会的役割を踏まえれば、
少なくとも業界全体としては、自然災害リスクを
引き受けないという選択肢は考えにくいでしょう。
自然災害による被害を目の当たりにすれば、
むしろ補償ニーズも高まっていることと思います。

ただ、リスクの把握が難しくなっているとしたら、
従来の延長線上で引き受けるのが経営として
健全な姿ではないはずです。
会社が傾いてしまっては、そもそもリスクを
引き受けることなどできなくなってしまいます。

保険会社もその点は理解しているので、
リスクと自らの経営体力を慎重に見極めつつ、
社会的役割を果たそうとしているように見えます。

昨年は金利についても、日本銀行のまさかの
マイナス金利政策による影響で、利回り曲線が
極端に平坦化してしまいました。

その結果、ソルベンシーマージン比率が引き続き
高水準となる一方、これまで生保の経営実態を
より正しく反映するとされてきたEVやESRなどの
指標が大きく減少/低下する事態となりました。

見かけ上の「逆ざや」は消えていても、
過去に販売した高利率契約の責任準備金は
決して少なくありません。
金利低下により高利率契約の負担は一層重く
なってしまいました。

このような状況下で、長期の保障に対する
ニーズに経営としてどこまで応えるべきなのか。

先の自然災害リスクと同じように考えれば、
従来の延長線上での経営が健全な姿では
ないはずです。

しかし、今の低金利を一時的な異常事態として、
時計の針を止めるような話ばかり聞こえるのは
どうしてなのでしょうか。

保険会社の社会的役割はリスクテイクですし、
リスクテイクは収益の源泉でもあります。

ですから、過去に経験のない環境下において
やるべきことは、これまで活用しようとしてきた
経済価値ベースの経営管理を「変動が激しい」
「極端すぎる」として遠ざけることではなく、
この環境でリスクテイクがどこまで可能なのかを
見極めることこそが重要なのだと思います。

 

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フラターナル組合

 

写真は東大ですが、早大キャンパスで開かれた、
とある勉強会で、米国には「フラターナル組合」
という組織があると紹介されました。

フラターナル組合は生命保険の提供とともに、
親睦や慈善・福祉などのフラターナル活動を
主な目的とする組織だそうで、日本で言えば、
共済に近い存在です(異論もあります)。

ちなみに慈善的団体ということで、連邦税や
州税などの免税措置がある模様です。

米国の生命保険ファクトブック(2016年)によると、
2015年現在、81のフラターナル組合が存在。
保有契約高は3561億ドル(市場全体の1.7%)、
総資産は1540億ドル(同2.3%)なので、
生保市場における地位は限られています。
ACLIのサイトへ

ただし、最も大きいスライベント・フィナンシャルの
保有契約高は1887億ドル(1ドル115円で約22兆円)、
管理資産は1091億ドル(同12.5兆円)とのことで、
ここはかなりの規模と言えそうです。

同組合はキリスト教徒(元々はルター派)を対象に
保険商品や投資アドバイザリーなどを提供しており、
メンバーは約230万人に達しています。

「賢い経済観念を持ち、寛大な気持ちを持ってもらう」
(wise with money and live generously)がミッションで、
サイトを見ると、教会・地域への支援活動をはじめ、
様々な活動を行っていることがうかがえます。
Thrivent Financialのサイトへ

米国といえば、保険会社との競争条件が平等でない
として、日本の共済制度の改善を求めていますが、
自国内にこのような組合組織が存在するのですね。

 

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金融庁のレポート

 

15日に金融庁が公表した2つのレポートについて
ごく簡単にコメントします。

1.平成27事務年度 金融レポート

金融庁が1年前に公表した「金融行政方針」の
進捗状況や実績等の評価をまとめたものです。
金融レポート(金融庁サイト)

報道では地域金融機関のビジネスモデルのあり方
(6割以上の地銀が赤字となる試算結果を掲載)が
目立ちましたが、家計における金融資産の動きを
分析した「貯蓄から資産形成へ」も充実した記載です。

保険会社の主なモニタリング結果は、
「M&Aにおけるガバナンスの発揮状況等」「ERM評価」
「保険金等支払管理態勢」だけで、やや寂しいかと
(このうち「ERM評価」は後述のレポートを別途公表)。

生保の資産運用高度化に関する記述(p.74~)も
非常にあっさりしています。

ただし、「貯蓄から資産形成へ」のところに、
銀行等による貯蓄性保険商品の提供・販売について
検証結果が載っていて、

「このパッケージ商品を構成する外国債券と投資信託、
 (掛け捨ての)死亡保険を別々に購入・契約することでも、
 このパッケージ商品と同等の経済効果を得ることができる。
 (中略)今回の検証においては、金融機関代理店の中で、
 このような代替策を提案しているところは見られなかった」

「(販売手数料の上乗せキャンペーンや販売員向けの
 インセンティブ供与について)付与競争の様相を呈しており、
 最終的に、顧客が支払う保険料を上昇させる要因の一つ
 となっている」

といった問題提起がなされています(p.65~)。

全部で100ページ以上ありますが、金融行政の方向性を
知るうえで参考になりますので、連休中にでもぜひ。

2.ERM評価の結果概要について

「保険会社におけるリスクとソルベンシーの自己評価に
 関する報告書(ORSAレポート)及び統合的リスク管理
 (ERM)態勢ヒアリングに基づくERM評価の結果概要
 について」

というのがレポートの正式名称です。
保険会社のERM評価(金融庁サイト)

事実関係を整理すると...

・2015年度から保険会社がORSAレポートを作成し、
 金融庁に提出することになった。

・金融庁はORSAレポートをもとにERMヒアリングを
 行い、保険会社56社のERM評価を実施した。
 
・ERM評価は5段階(プラス/マイナスは不明)あり、
 多くの保険会社がレベル2か3だった(5が最高)。

格付アナリスト経験者からすると、何はともあれ、
評価目線の概要公表は素晴らしいと思います。

保険会社が高評価を取得するのが目的ではなく、
評価を通じて保険会社のERMが実質的によくなる
方向に促すためのツールなので、この「目線」は
おそらく継続的に見直していくのでしょう。

一つ気になったのは、4つの評価項目のうち
「リスクコントロールと資本の十分性」の内容です。

この項目では態勢だけでなく、健全性の充足状況
そのものも評価対象であるように読めます。
ここでいう「健全性の充足状況」が何を示すのか、
保険会社自身の判断でいいのか、あるいは、
金融庁として何らかの目線があるのでしょうか。

今月締切のORSAレポートは日銀によるマイナス金利
政策後の新たな金融環境を反映したものでしょうから、
次のERM評価では、このあたりがより明らかになると
いいですね。

※写真はいずれも新庄で見つけたものです。
 「戦友共済生命保険」は実在した会社でして、
 設立してわずか14年後の1932年に第一徴兵保険
 (1999年に破綻した東邦生命の前身)に吸収され、
 消滅しています。 

 

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遺伝子検査と保険

 

元同僚だった弁護士の吉田和央さんとお会いした際、
「生命保険論集に寄稿したのですよ」と教えていただいたので、
論集を探して読んでみました。

「遺伝子検査と保険の緊張関係に係る一考察」という論文で、
「米国及びドイツの法制を踏まえて」という副題付き。

「生命保険論集」は生命保険文化センターの論文集です。
今だと2015年6月以降の論文はまだネット閲覧できない
(吉田さんの論文は2015年12月号)なので、年間購読するか、
損保総研図書館などで閲覧が可能です。
生命保険文化センターのサイトへ

さて、本稿は遺伝子検査と保険の関係について、
遺伝子検査の現状や米国・ドイツの法制を参考に
議論を再整理したものです。

単に私の認識不足という話なのですが、
すでに日本でも遺伝子検査が普及しつつあるのですね。

検査の質をどう考えるかという問題はさておき、
確かにアマゾンでも検査キットがいくつも見つかりますし、
驚くほど高価なわけでもありません。

しかし、この「究極の個人情報」と保険の関係について、
本稿によると、2000年代前半に活発な議論が行われたものの、
具体的な法制化や指針等の作成には至らなかったようです。

様々な論点があることがわかります。

例えば、保険会社による危険選択の際、遺伝子情報を
活用できるかどうか。

現在の保険加入時に保険会社が活用している医療情報と
遺伝子検査による遺伝子情報を区別して考えられるか、
ということになります。

保険業法には、保険契約の内容や保険料に関して、
特定の者に対し「不当な差別的取扱い」を禁止しています
(保険業法第5条)。

とはいえ、現行実務では、病歴などの医療情報に基づき
危険選択を行っていて、保険数理上の合理性があれば
「不当な差別的取扱い」には当たらないとされています。

遺伝子情報による危険選択の場合はどうでしょうか。
保険業法の規定では、保険数理上の合理性があると
評価されれば認められることになりますが・・・

もっとも、遺伝子と疾病の関係は、単一遺伝子の変異で
発病を予測できるものと、多因子疾患(複数の遺伝子や
環境要因が関与)があるのだそうです。

後者の場合、特定の遺伝子が疾病リスクを高めるとはいえ、
合理的な危険選択と評価されるにはハードルが高いと
感じました。

保険会社が顧客に遺伝子検査を求めることができるか
という論点もあります。

現行法(保険業法・保険法)に禁止規定はないとのこと。
でも、自分の遺伝子情報を知りたくないという権利は
どうなるのか。

もちろん、逆選択のおそれもありえます。

遺伝子検査が普及すると、例えばアルツハイマー病になる
リスクを高める遺伝子の保因者ばかりが介護保険に入り、
そのことを知らなかった保険会社の健全性が悪化する、
といった事態です。

吉田さんは、遺伝子検査が保険業に与える影響分析が
不可欠であるものの、分析には時間がかかるため、

「本論点の検討は継続的に行う必要があるとしても、
 拙速な議論は避けるべきであると考えられる」

と結んでいます。

ということで(?)、今回はこれ以上私見をはさむのは
遠慮しておきましょう。

※朝ドラに「大隈夫妻」が登場しているようですね。

 

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相互会社の保険会社買収

日本生命による三井生命の株式取得をはじめ、
大手生保による内外保険会社の買収発表が
相次ぎました。

ところで、大手4社のうち、第一生命を除く3社は
相互会社です。

保険業法には、相互会社の非社員契約による
保険料が全体の2割を超えてはならないという
規定があります。

多くの非社員契約を認めると、相互会社の本質、
つまり、社員=契約者からなる組織という話から
外れてしまうからと言われています。

他方、相互会社が子会社として保険会社を持つ
のは可能であり、保険会社の買収に関しては、
相互会社と株式会社で法的な差はなさそうです
(それでいいのかという議論はあるかもしれません)。

とはいえ、株式会社による買収とは違い、
相互会社は社員(契約者)の持ち物なのですから、
保険会社の買収が社員にどんなメリットがあるのか、
経営者は十分に説明する必要があると思います。

これは単に買収の目的を説明すればいいという
話ではありませんし、「経営体力が回復したから」
「市場シェア拡大のため」では説明になりません。

例えば、内外保険会社の買収などで規模を拡大
しなければ、縮小市場のなかでは将来にわたり
保障を全うできないという経営判断なのであれば、
そのような説明が必要です。

あるいは、「保障を将来にわたり全う」は当然として、
契約者への還元を増やしていくには、事業規模の
拡大が不可欠と判断した、というのも理解できます。

米国の大手保険相互会社の公表資料を見ると、
相互会社のメリットとして「中長期的な経営姿勢」のほか
「契約者還元の魅力」をこれまでの実績とともに示し、
株式会社との差別化を図っているようです。

これに対し、日本では相互会社であることの利点や
相互会社の社員(契約者)になることのメリット等を
積極的にはアピールしていないように見えます。

いずれにしても、内外保険会社の買収をきっかけに、
日本の相互会社経営のあり方が改めて問われるのでは
ないかと思います。

最後にご案内を。
9月29日(火)の夕方に損保総研で講演する予定です。
演題は「保険ERM・ソルベンシー規制の方向性」。
詳しくは損保総研のサイトをご覧ください。

※娘はテスト勉強中。先日、忘れた(なくした?)プリントを
 友だちに写メしてもらい、そのまま画面を使っていました。
 便利になりましたね(苦笑)

 

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生保再編?

 

日本生命が三井生命を買収するというニュースは
各紙で大きく取り上げられました。

私への問い合わせも、海外M&Aのときとは
比べものにならないほど多かったです。
今のところ朝日新聞とBloombergにコメントが
掲載されています。

問い合わせで目立ったのは、

「成長性の低い国内事業を買収できるのは
 (株主がいない)相互会社だからではないか」

というもの。これに対しては、

・日本生命のグループ戦略の全体像を見たうえで
 判断したほうがいいのではないか

・もし、EVや修正純資産が7000億円超の会社を
 安く買えるのであれば、社員にメリットがあるはず
 (ここで言う「社員」は相互会社の社員=契約者)

といったコメントをしたのですが、いかがでしょうか。

「国内生保の再編が進むのでは」という質問(期待?)
も多かったですね。これも私にはピンときません。

そもそも大手銀行や損保で再編が進んだからといって、
生保で再編が進むとは限らないと思うのですね。

たまに「会社の数が多すぎる」という声を耳にしますが、
日本の生保市場の規模を考えても、競争状況を見ても、
多すぎるという印象はありません。

なにより、収益を上げるビジネスモデルを維持している
という点が大きいと思います。

預貸の利ざやで稼ぐ商業銀行のビジネスモデルや、
料率自由化で保険収支が一時悪化した損保に比べると、
保有契約のみならず、新契約でも生保はきちんと収益を
確保できている状況です。

加えて、再編シナジーを出しにくいことも挙げられます
(例えば、契約期間が長いので、システム統合が難しい)。

いずれにせよ、関係者からの正式な発表を待ったうえで、
いろいろと考えてみたいと思います。

※写真左はカメハメハ大王、右は戦艦ミズーリです。

 

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海外M&Aラッシュ

 

「生命保険経営」に、これまで日本の大手生保が
海外展開になぜ消極的だったのかという論文を出したら、
明治安田生命、住友生命と大型買収の発表が相次ぎました。

ここ数年の主な海外M&Aは次の通りです。

・東京海上による米デルファイ買収(2011年12月発表)
・損保ジャパンによる英キャノピアス買収(2013年12月発表)
・第一生命による米プロテクティブ買収(2014年6月発表)
・東京海上による米HCC買収(2015年6月発表)
・明治安田生命による米スタンコープ買収(同7月発表)
・住友生命による米シメトラ買収(同8月発表)

これらを見ると、近年の日本の保険会社による
海外M&Aにはいくつか共通した特徴があるようです。

まず、米国をはじめ、先進国市場への進出という点が
挙げられます。東南アジアなどの新興国市場とは異なり、
ただちに収益貢献が期待できるということなのでしょう。
もちろん、買収金額も大きくなっています。

次に、経営内容がいいと見られる会社を、プレミアムを
支払って買収していることがあります。
なかにはプレミアムが50%という件も見られます。

買収先の経営陣に、買収後も経営のかじ取りを委ねる
というのも共通した特徴です。すなわち、

「俺たちが経営したほうが価値が上がるぞ!」

というのではなく、

「(ストックオプション等により)買収で儲かっただろうから、
 これまで以上に働いて、価値を高めて下さいね」

というやり方のようです。

 

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