物価2%の達成時期を削除

ご承知のとおり、日本銀行は4月27日の金融政策決定会合で、これまで「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)に記述していた2%の物価目標の達成時期の見通し(1月の展望レポートでは「2019年度頃になる可能性が高い」としていた)を削除しました。

異次元緩和政策を始めた2013年4月に「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現」と発表してから早くも5年がたち、もはや実質的には長期戦になっていました(この間、達成時期が何度も延期されてきました)。
とはいえ、この記述を削除したということは、日銀自身が「できるだけ早期に実現」の未達成を認めたということになるのでしょう。

金利上昇に賭ける

物価2%を達成していれば、さすがに10年国債利回りが0%程度とか、30年国債利回りが1%未満とかいう状態ではなくなっているはず。ですから、特に2016年以降、金利水準の低下で会社価値が圧迫されたなかでも、超長期債購入による金利リスクの削減を中断していた生命保険会社があったとしたら、今の超低金利を「政策的」「短期的」なものと判断したのだと考えられます。

言い換えれば、そのような会社はここ数年、金利上昇に賭けたリスクテイクを行っていたというわけで、期待通りに金利が上がれば、実質的な会社価値の拡大が見込めるという経営判断をしたのでしょう(そう理解しなければ説明がつきませんよね)。

ところが、日銀が物価2%の達成時期の見通しを示さなくなり、名実ともに短期決戦の旗を降ろしてしまいました。
マイナス金利政策の導入から数えても2年以上たつなかで、「政策的」はともかく、少なくとも「短期的」なものという判断は残念ながら結果的に誤りだったことになります。

リスクテイクの結果をどう総括

金利上昇に賭けた保険会社は、金利が上がらなかった(右肩上がりの金利曲線だったので、実質的には低下した)ことに対する総括が必要ではないでしょうか。

このところ日本企業に対し積極的なリスクテイクが求められています。しかし、リスクテイクした結果をきちんと評価し、失敗の原因を明らかにしたうえで、次の経営判断につなげなければ、ERMもガバナンス改革も絵に描いた餅でしかありません。「株高、円安なのでOK」というのでは総括になりません。

最近報道された生保の2018年度の資産運用計画からは、私には金利リスクテイクの総括をうかがうことはできませんでした(消去法で国債回帰という報道はありましたが…)。
今後何らかの手掛かりが外部に出てくるでしょうか。

※GW後半は台北出張なのです。写真は日本人で賑わう氷屋さん。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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