債券市場はどうなる?

 

日銀の量的・質的金融緩和により、債券市場が混乱模様です。
5日の市場では、10年国債利回りが0.315%まで下がった後、
午後になると一転して0.62%まで急騰しました。

相場のことは相場に聞けと言われるとおり、
今後の展開はだれにもわかりません。

ただ、日銀は「イールドカーブ全体の低下を促す」としており、
具体的な金融緩和策を打ち出しているわけです。

 消費者物価上昇率「2%」を「2年程度」で実現するため、
 長期国債・ETFの保有額を「2年間で2倍」に拡大し、
 長期国債買い入れの平均残存期間を「2倍以上」にする...
 日銀の公表文(PDF)

「日銀の金融緩和が財政赤字の穴埋めだと見なされれば、
 金利上昇のリスクが顕在化する」(5日の日経)

という声は根強いものの、物価2%というハードルが高いなかで、
日銀がそう簡単に長期金利の大幅な上昇を許容するはずはなく、
場合によっては米FRBのようなツイストオペ(短期売り・長期買い)
なども駆使してイールドカーブを抑えにかかるだろうと思います。

もし、金利上昇に賭けて(?)資産・負債をミスマッチ
(負債よりも資産のポジションを短く)していた場合、
これはしばらく厳しいかもしれませんね。
反対に、資産の長期化を進めてきた会社にとっては、
リスクヘッジが功を奏したということになります。

くれぐれも債券の含み益だけで生保を評価しないようにしましょう
(特にメディアの皆さん!)。

それにしても、超長期債の買入額には驚きました。
生損保が主な買い手となってきた超長期国債市場において、
日銀は毎月0.8兆円、年間だと9.6兆円もの国債を購入するとか。

長期国債の平均残存期間を2倍以上にするには
超長期国債の買入額を増やすのは自然といえば自然なのですが、
そんなに買えるものなのでしょうか。

今年度の10年超の国債発行予定額は22.8兆円です。
これに対し、従来は年1.2兆円買っていた主体が、
いきなり年9.6兆円を買い入れるというのです。

もちろん、発行市場だけではなく、流通市場も見るべきですが、
ALM目的で保有する生損保が大量に売却するとは考えにくく、
流通市場を考慮しても、「池のなかの鯨」状態でしょう。

市場流動性の低下が価格(利回り)にどう影響を与えるか、
いろいろと心配になります。

※写真は大人気の沖縄美ら海水族館です。

 

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きんざいの誌上座談会

 

今週の週刊金融財政事情はノンバンク特集ですが、
よく見ると(笑)、保険監督規制とERM経営に関する
誌上座談会が掲載されています。

ボストン コンサルティングの佐々木靖さん、
フィッチ・レーティングスの森永輝樹さん、
そして私の3人によるものです。

リードには、「この座談会は、2012年11月14日に開催された
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン証券主催の保険フォーラム
におけるディスカッションを再構成したもの」とあります。

とはいえ、11月のパネルディスカッションを加工したというよりは、
後日3人で座談会(ディスカッションの「二次会」?)を行い、
主にこちらを掲載したというのが真相です。

週刊金融財政事情の主な読者は金融関係者(特に銀行)
だと思いますので、銀行を意識したコメントをしたつもりです。
でも、もっと銀行の話をしてもよかったかもしれません。

保険業界ではERM経営を進めようとする会社が増えています。
でも、銀行業界ではERMという言葉をほとんど聞きません。
どうしてなのでしょうか。

座談会では私だけでなく、お二人(たまたま同じ銀行出身ですね)が、
「ERMは保険会社の経営そのもの」
「経営陣が理解し、経営に直結させているかが評価ポイント」
とおっしゃっているのも興味深いですね。

ということで、機会があればご覧下さい。

※写真は那覇の公設市場と壷屋の風景です。

 

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沖縄の旅2013

 

春休みに家族で沖縄に行ってきました。

うちの子どもたちも大きくなったので、
今回はビーチリゾートの沖縄だけではなく、
那覇の市場や首里城、南部戦跡など
リアルな沖縄に触れることにしました。

現在の首里城は1992年に再建されたものです。
首里城の地下に陸軍総司令部が置かれていたため、
元の建物は沖縄戦で破壊されてしまいました。

南部戦跡のひめゆり平和祈念資料館では、
アニメ「ひめゆり」の上映がありました。
学徒の半数以上が沖縄戦で亡くなったそうです。

戦後も沖縄は苦難の道を歩みます。
本土から切り離され、米軍施政下に置かれました。
1972年に復帰してからも米軍基地が集中し、
滞在中も軍用機が頻繁に見られました。

沖縄にとって、戦争の記憶は過去のものではなく、
現在に続くものなのですね。
「主権回復の日」政府式典への抗議もわかります。

 

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督促OL修行日記

 

運良くとれた寝台特急「カシオペア」で北海道へ。
飛行機なら1時間半のところを、17時間もかけて
のんびり北に向かう、ぜいたくな旅でした。

ところで、車内で読んだ「督促OL修行日記」という本が
なかなか面白かったので、ご紹介。

本書は信販会社のコールセンターで督促の仕事、
つまり、債権回収をしている女性の体験記でして、
「お金を返して下さい」という電話をかけまくる日々だそうです。

「感情労働」という言葉をはじめて知りました

肉体労働は体を使って仕事をしてお金を得ます。
頭脳労働は頭を使って生み出したアイデアなどを
賃金に変えます。

これに対し、感情労働は自分の感情を抑制することで
お金を得る仕事で、いわば心を売ってお金を得ます。
顧客から一方的に罵詈雑言を浴びせられることもしばしば。
コールセンターや客室乗務員などがこれにあたります。

こうした仕事では心に疲労がたまりやすいので、
心を病む確率が他の労働よりも高いのだとか。

以前の職場にも「金融サービス利用者相談室」があり、
一般の人から相談を受け付けています。
聞くところによると、やはり大変な職場だったようです。

でも、考えてみれば、コミュニケーション力が重要なのは
感情労働系の仕事に限った話ではありません。
本書に書かれている「督促OLのコミュ・テク」は、
多くの人に役立つのではないでしょうか。

ご参考までに、筆者のブログもあるそうです。
督促(トクソク)OLの回収4コマブログ

 

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パネリストを務めます

少し先の話ですが、6/15(土)に横浜で開催される
「RINGの会オープンセミナー」に登場することになりました。
オープンセミナーのHPへ

このオープンセミナーはいわば保険業界の文化祭です。
パネルディスカッションが午前に1つ、午後に2つ。
ホールの外では各種展示ブースがずらりと並びます。

私のブログをご愛読されている皆さんのなかには
保険会社でも企画や財務、経理、リスク管理など
本社の仕事しか経験していないかたも多いと思います。
(私もその一人ですね)。

専門性を考えると無理なローテーション人事には疑問ですが、
他方で本社と現場の距離が大きいと感じることもしばしば。

土曜日の横浜ではありますが、本社系の皆さんにとって
このセミナーは保険流通の世界に触れるいい機会ですので、
ご関心のあるかたはぜひお越し下さい。

ちなみに私が登場するのは午前の部でして、
「募集規制で保険流通はどう変わる」
「これからの保険代理店に求められるものとは」
といったテーマについてディスカッションをします。

パネリストは私のほか、昨年まで金融庁で同僚だった
増島雅和弁護士(当時は保険課の法務担当課長補佐)、
日本損害保険代理業協会の岡部繁樹会長、
保険代理店協議会の堀井計理事長という強力メンバー。

私はともかく、この顔ぶれには期待できそうですね。

 

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格付会社への規制

 

証券化商品のリサーチで有名な江川由紀雄さんが、
「過度な格付会社への締め付けは投資家利益にならない」
という主旨の論文を週刊エコノミストに発表しています
(2013.3.12)。

ご存じのとおり(?)、私のブログの「保険アナリスト」とは
私が格付会社のアナリストだったことに由来しています。
通算すると約16年間、格付アナリストを務めました。

しかし、格付会社を取り巻く環境は、私がいたころとは
だいぶ様子が異なるようです。

米サブプライムローン問題を契機に格付会社への
規制が強まり、日本でも今や格付会社は規制業種です。
金融庁の監督を受け、立ち入り検査もあります。
担当アナリスト(または格付委員会のメンバー)の
ローテーション規制も導入されました。

昨年末には金融庁がS&P(日本法人)に対し、
業務改善命令を出しています。

さらに衝撃的だったのが、米司法省によるS&P提訴です。
「不当な格付により金融機関が損害を被った」として、
この2月に50億ドルもの損害賠償を請求しました。
結果がどうなるかわかりませんが、すごい金額ですね。

格付会社の抱える構造的な問題は、主な収入源が
評価を依頼した発行体からの手数料に依存していることです
(投資情報からの収入だけでは厳しいのです)。

そこで格付会社では、経営が格付決定に関わらない、
投資家等に対して格付基準や評価を説明する、など、
利益相反の問題とならないような仕組みを構築しています。
規制の役割はその仕組みの実効性を確保することです。

ところが、まるで官庁のように担当を頻繁に変えるとか、
結果的に間違ってしまった評価に対して懲罰的に臨むとか、
これでは格付部門に対する発行体や他部門からの圧力が
弱まったとしても、格付の質は相当犠牲になりそうです。

マニュアル通り、あるいはスコアリングモデルで
格付を決めるのであれば、もはやアナリストは不要です。
ただ、そんな格付が投資家にとって有益とは思えないのですが。

※写真は最終日朝の東横線・渋谷駅です。

 

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異変の投信・保険窓販

 

週刊金融財政事情(2013.3.11)を眺めていたら、
「投信販売が急回復し、保険には手が回らず」
という記事。

「いま現場では、保険販売に割く手間ひまがあれば、
 すべて投信の販売とアフターフォローに回したい」

「当行では、特定の担当者以外はこれまで投信を
 扱っていなかったが、販売の担い手を増やすことを
 検討している」

株式市場の回復を受け、個人営業の現場は
こんなことになっているらしいです。

少し前のニッキンにも、似たような記事がありました。

「投信を推進する個人営業の最前線にも活気が戻ってきた。
 本部からも手数料収入増のチャンスとして”檄”が飛ぶ」

平準払いの保険販売に腰を据えて取り組もうという銀行も
徐々に出てきているようですが、まだまだ少数派の模様。
多くの銀行は売りやすい商品を提供しているだけなのかも
しれませんね。

そういえば、銀行による追加型株式投信の解約率が
2010年以降、徐々に上昇しているという資料もありました。
金融審WG資料(PDF)

短期的な収益拡大志向では長続きしないと思うのですが...

※梅祭りで賑わう大倉山駅に「のるるん」が来ました♪

 

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ようこそ先輩2013

 

母校の横浜翠嵐高校で3年ぶりにスピーチしました。
キャリア教育の一環として、様々な分野で活躍中の
卒業生が在校生に仕事について語るという企画です。

今回スピーチした卒業生は15名でした。
弁護士、大学教授、医師といった専門職や、
日本航空、日産自動車、朝日新聞など
高校生にもイメージしやすい名前が並ぶなかで、
私の仕事を説明するのはなかなか大変です。

「保険会社向けの経営コンサルティング」と言っても
高校生には(&大人にも)わかりませんよね。

そこで、こんな説明をしました。

「昨日WBCの試合がありましたよね。
 日本代表チームの東尾コーチ、わかりますか?
 東尾さんは野球のコーチだけど、
 私は保険会社のコーチをやっているんです」

「それから昨日の解説者は工藤さんでしたよね。
 私は解説の仕事もしているんですよ。
 野球ではなく、保険会社についてですけどね」

こんなふうに話をしたら、彼らとの距離が少しだけ
縮まったように感じました(=反応があったので)。

それにしても、自分の仕事について話すということは、
これまでの職業経験を振り返るということなのですね。

どうして今の仕事をしているのか、過去の経験は今、
どのように生きているのか、などなど。

いつものスピーチとは違う、新鮮な体験ができました。

 

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週刊ダイヤの保険特集

3/4発売の週刊ダイヤモンドは保険特集でした。
タイトルは「もう騙されない保険選び」。

私は今回、「注目が集まるERM経営」を寄稿しました。

保険ショップの分析や保険商品ランキングなど、
保険選びに関する記事が大半を占めるなかで、
やや異色の記事に思われたかもしれません
(確かに健全度ランキングの次のほうがよかったかも...^^)。

しかし、保険選びには商品やサービスだけではなく、
保険会社の経営内容も重要な要素です。

本誌の読者であるビジネスパーソン、あるいは、
保険特集を読むであろう保険流通の現場の皆さんに
近年の保険経営のトレンドを知ってもらいたいと思い、
この原稿を書きました。

読者として興味深かったというか、
「主要生保16社の契約者の実態調査」には
つい目が向いてしまいました。

この2月に、死亡保障商品の契約者800人を対象に
インターネットによるアンケート調査を行ったそうです。

例えば「現在加入の保険会社に決めるまでの比較会社数」
をみると、ネット系やネットに強い生保の比較会社数が多く、
営業職員チャネルの生保の比較会社数が少ないという、
イメージ通りの結果が出ていました。

ただし、2社を超えたのはネクスティア生命だけ
(同じくネット系のライフネット生命は1.83社で2位)。
ネット系を除けば、ショップでの販売ウエートが多いと
比較会社数がやや多いかなといった程度ですね。

保険を比べて買うという文化が根付いたとは
まだまだ言えないように感じました。

記事では、比べる会社数が少ない生保について
「下位に沈んだ」と表現しています。
「保険商品選びの鉄則は、複数の会社、そして商品を
比較検討することに尽きる」というのがコンセプトなので、
このような書きぶりも理解できます。

とはいえ、どうなのでしょう。
専属チャネルで保険を提供する会社のビジネスモデルは、
無知で比較もしない顧客に対し、営業トークとブランド力で
割高な保険を提供するというものなのでしょうか。

今の大手生保の現状をどう見るかはさておき、
遺族保障という最も売りにくい「商品」に関しては、
顧客を十分満足させられる専属チャネルモデルが
あるのではないかと思ったりもします。

もっとも、別のアンケートで、加入後の保険会社に対する
イメージについて、「悪くなった」という回答が多かったのは、
やはり比較会社数が少ないほうの会社でした。
不払い問題などが影響しているのかもしれませんが...

 

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4月からの保険料率

 

4月に標準利率が引き下げられるのに伴い、
生保各社は保険料率を引き上げると考えられていました。

しかし、各社が公表した4月以降の保険料率を見ると、
主力商品を反対に値下げする動きもあったりして、
なかなか興味深いです。

<主な生保の関連ニュースリリース(PDFファイル)>
 日本生命(1/21)
 アフラック(1/28)
 住友生命(2/12)
 メットライフアリコ(2/15)
 ソニー生命(2/19)
 明治安田生命(2/22)
 第一生命(2/25)
 富国生命(2/26)
 かんぽ生命(3/1)※
  ※保険料率については記載なし(=改定しないということ?)

今回は、最大手が早々に主力商品の改定見送りを打ち出し、
各社はこれを踏まえつつ、自社の戦略を示す流れとなりました。

この結果、主力商品の料率改定を当面行わない会社
(日本、メットライフアリコ、ソニーなど)と、
予定利率は下げるものの、他の基礎率を見直すことで
主力商品の保険料率をほぼ横ばい(明治安田)、
あるいは引き下げる会社(住友、第一など)に分かれました。

もっとも12年前に比べると、大手生保の主力商品の
「定期化」は一段と進んでいます。

アカウント型保険では、アカウント部分を極めて小さくできます。
日本生命は主力商品を単品の組み合わせとしています。
第一生命の主力商品は定期付終身保険ですが、
4月からは、終身部分30万円からの設計が可能です。

新契約の平均保険金が1000万円を下回る会社もあるなかで、
終身部分がそこそこ大きい契約は少なくなっているでしょう。
実のところ主力商品に関しては、標準利率が下がる影響は
それほど大きくないのかもしれません。
あるいは、今回の件で定期化がさらに進むのでしょうか。

他方、銀行窓販で主力となっている一時払終身保険は
各社とも予定利率を引き下げる予定です。
貯蓄性が強く、利率変更の影響を強く受けるためです。

メットライフアリコは外貨建商品の利率も引き下げるとのこと。
引き下げ幅が大きいので、影響も大きくなっています。

なお、気になるのは保険料率改定のプロセスです。
プライシングとERMの関係はどうなっているでしょうか?

※写真は地元の大倉山公園です。梅がきれいでした。

 

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