損保総研でスピーチします

 

前回更新の際、うっかりご案内を忘れてしまいました。

来週の水曜日(3/12)の夜、前回のブログで取り上げた
監督指針や保険検査マニュアル等の見直しをテーマに
損保総研で講演する予定です。
損保総研のHPへ

演題は、「最近の『保険会社向けの総合的な監督指針』及び
『保険検査マニュアル』等の改正(案)について」です
(そのものズバリですね^^)。

保険募集・販売ルールの話にも触れるつもりですが、
やはりORSAなど統合的リスク管理(ERM)に関するものが中心です。
ちょうどパブコメの結果が出て、ラッキーでした(笑)。

ご関心とお時間のあるかたは、どうぞお越し下さい。

それにしても、改めてパブコメを読んでみると、なんというか、
「金融庁に教えてあげよう」的な、親切な(?)コメントが多いですね。

「我が国の組織文化においては、残念ながら、取締役会メンバー自身が、
 取締役会の場では特に発言をせず、発言しやすい(自分より下のメンバー
 しかいないような)非公式な場において、取締役会の決定内容を否定したり、
 あるいは覆したりするような発言をし、取締役会の指示・決定が一部の
 取締役メンバーによって実体的に覆される等、取締役としての自覚に欠ける
 発言・行動がとられることも想定される」

なんてコメントも寄せられていて、勉強になります。

※写真は東急世田谷線です。外国のトラムみたいですね。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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保険行政と内部監査

 

先週、日本内部監査協会のCIAフォーラム研究会で
「保険行政と内部監査--リスク管理面を中心に」
というテーマでスピーチする機会がありました(2/27)。

 ↓こちらのサイトの下のほうに載っています
 GoodWayのサイトへ

講演では、保険市場や保険行政の変化に触れたうえで、
保険会社や行政がERMを重視していることとその背景、
内部監査部門に求められる役割などについて話しました。

ところで、昨年12/15のブログで取り上げた監督指針等の改正案
に対するパブリックコメントとその回答を金融庁が公表しました。
パブリックコメントの結果等について(金融庁HP)

「80の個人及び団体から延べ156件のコメント」とのことで、
全61ページの大半が統合的リスク管理態勢に関するものでした。
2011年の保険検査マニュアル見直しの時よりもずっと多いです。

詳しくはご覧いただければと思いますが、明らかになった点も。

まず、「統合リスク管理」と「統合的リスク管理」を使い分けていること。

 「統合リスク管理とは、統合的リスク管理手法のうち各種リスクを
  VaR等の統一的な尺度で計り、各種リスクを統合(合算)して、
  保険会社の自己資本等と対比することによって管理するもの」

なのだそうです。

 ERM ≒ 統合的リスク管理 > 統合リスク管理

という式になるのだと思います。

監督当局へのORSA 報告の義務化は、「検討中」ということも
確認されました。

今回のテーマである内部監査部門に関しても、
興味深い回答がいくつかありました。

 「リスクとソルベンシーの自己評価をリスク管理部門中心に実施している
  場合でも、有効性の全般的な評価をリスク管理担当役員が行うという
  ことでよろしいのでしょうか」(Ⅱ-3-5-2)

という質問に対し、

 「例えば、リスク管理担当役員が全般的な評価や確認を行い、
  内部監査部門が独立した立場から評価結果を検証すること等が
  考えられます」

との回答が。他にも、

 「『リスクとソルベンシーの自己評価』は、『統合的リスク管理』に包含
  されますが、監督指針『Ⅱ-3-5-2(5)』では、『統合的リスク管理』が
  内部監査の対象外といった誤解を回避するため、『統合的リスク管理
  及びリスクとソルベンシーの自己評価』と記載しております」
  (Ⅱ-3-5-2等)

という回答があり、保険行政(金融庁)は内部監査部門に対し、
統合的リスク管理の有効性検証や、経営陣への提言(必要に応じ)を
求めていることが明らかになりました。

なお、改正された監督指針案等は「本日(=2/28)より適用を開始」
だそうです。つまり、もう適用されているということですね。

※写真は「かいぼり(=日干し)」中の井の頭公園です。
 約30年ぶりとのことで、そろそろ再び水が入るのではないでしょうか。

 

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ア会の年次大会報告集

 

昨年11月のブログに、日本アクチュアリー会の年次大会で
2日続けてMCに挑戦したことを書きました。
「MCを務めました」へ

その報告集が先週ア会HPにアップされ、一般公開されています。
会員外への公表は従来にない取り組みです。
日本アクチュアリー会「年次大会報告集」HPへ

先述のとおり、私は「金融機関のガバナンス」(特別講演)と、
ERM委員会のパネルディスカッションで司会を務めました。

HPにアクセスしていただくと、当日のスライドだけではなく、
講演内容やパネリストどうしのやり取りを見ることができますし、
私が冷や汗をかきながら鼎談を進めているところもわかります^^
(やや大きめのPDFファイルなのでご注意下さい)。

もちろん、報告集には私がMCを務めたものだけではなく、
興味深いプレゼンテーションがいくつもありますのでご覧下さい。

※写真は新潟の弥彦神社と弥彦駅です。
 駅のほうもなかなか立派な造りでした。

 

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酒蔵見学に行きました

 

新潟での保険合宿(!)の際、「久保田」で有名な
朝日酒造の酒蔵見学をする機会がありました。

1830年創業の老舗ながら、徹底した品質管理と、
「久保田方式」と言われる限定販売戦略で、
淡麗辛口ブームの立役者となった蔵元です。

現地に着いて、まずその外観にびっくり(写真左)。
これまで見学した酒蔵のなかで最も近代的でした。
酒蔵というよりは工場といった趣です。

白衣と帽子、マスクを着用し、いざ蔵のなかへ。
精米から麹造り、酒母、もろみ、発酵、しぼりと、
製造工程に沿ってご案内いただきました。

最初の精米のところでは、削ったコメを見せてもらいました。
朝日酒造では、「酒づくりはコメ作りから」という考えのもとで、
原料の米の多くを地元の契約栽培農家から「無理を言って」
確保しているとのこと。
先日の「千曲川ワイナリー」と通じるところがありますね。

仕込みに使うタンクも、昔ながらの木桶ではありません。
ただ、考えてみれば、昔のやり方が何でもいいわけではなく、
高い品質を求めた結果、今のやり方にたどりついたようです。
最新の設備であれば、正確な温度管理も可能です。

とはいえ、杜氏の経験や勘は完全にマニュアル化できる
ものではないそうで、最新の設備と伝統技術の融合が
高品質の日本酒を生み出すのでしょう。

品質重視の考えは、2004年の中越地震でも発揮されています。
震災により、求められる酒質を得られないというトップの判断から、
仕込中の酒をすべて捨てるという決断をしたそうです。

いろいろと勉強になる酒蔵見学でした。

 

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生保の第3四半期決算

 

主要生保の第3四半期決算(2013年4-12月期決算)が
出そろいました。

新聞は相変わらず「基礎利益が増えた」という分析です。
9月末と12月末を比べると、日経平均株価が1800円も上がり、
ドル円相場も97円から105円と円安が進んだのですが、
どちらも基礎利益にはほとんど反映されません。

ただ、上場保険グループはEVを公表しているので、
こちらを見ると、EVが9月に比べて12%も増えた第一生命、
2.4%の増加にとどまったソニー生命、というように、
各社の違いを知ることができます。

第一生命ではEVのうち修正純資産の増加が目立ち、
内外株価の上昇や円安進行の恩恵を受けた模様
(言い換えれば、株式や為替リスクがそこそこ大きい)です。

足元の資産構成はほとんど変わっていなかったので
(あえて言えば、公社債が微減、株式が微増)、
ポートフォリオ・リバランス効果というわけではなさそうです。

これに対し、ソニー生命は株式や為替リスクが小さいので、
新契約の獲得がEV増加の主な要因となっています。
ソニー生命はリスク量の内訳を公表しているので、
金利リスク以外の資産運用リスクが小さいと確認できます。

四半期ごととは言いませんが、全ての主要生保で
EVを開示してほしいのですね。

※中2の娘が友チョコを大量に持ち帰ってきました。
 今はそういう時代なのですね。

 

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森本さんの近著

 

私の所属するキャピタスコンサルティング代表の森本祐司さんが
「ゼロからわかる金融リスク管理」を出しました(KINZAIバリュー叢書)。

本書は金融リスク管理の入門書ですが、ノウハウや計測手法を
教えてくれる親切で便利な本ではありません。

「リスクとは何か」というところから始まり、
 ・リスクを「管理」するとはどういうことか
 ・リスクを計測し活用するうえで必要となる7つの心構え
など、入門書とはいえ、骨太の内容となっています。

リスク管理を「安全性の確保」、すなわち、リスクを計測し、
体力を超えたリスクを取っていないか確認すること捉えてしまうと、
リスク管理はリスク管理部門の仕事という意識になってしまうのは
ある意味当然かもしれません。

本書では、「金融商品の仕入れ値と売り値をどうとらえるか」
という視点を示し、リスク管理が決してリスク管理部門に任せておけば
いいものではないことを示唆しています。

何のためのリスク管理なのかを踏まえれば、
「リスク管理はリスク管理部門の仕事」ではないし、
まして規制対応でもないはずです。

ということで、身内の出した本ではありますが、初心者のみならず、
金融にかかわるベテランにも有益な内容だと思いますので、
ご紹介させていただきました。

※写真は大倉山梅林です。

 

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営業職員の給与引き上げ

 

安倍首相の賃上げ要請を受けた動きなのか、
生保営業職員の給与引き上げという動きがあるようです。

「日本生命保険は今年4月から、約5万人の営業職員の給与を
 引き上げる方針だ。契約獲得数に応じて上乗せする『歩合給』
 部分を対象とし、販売の主軸である営業職員の士気を高める狙い」
 (1/31日経)

「住友生命は約3万1000人いる営業職員のうち、新人を対象に
 基本給を引き上げる。仕事を始めた当初は歩合給が少ない人も
 目立つ。基本給を手厚くして人材の呼び込みと定着をはかる」
 (1/19日経)

「明治安田生命は8月をめどに全営業職員3万人を対象に基本給と
 比例給を合算した給与を従来比で月平均1万円以上引き上げることを
 検討」(1/21産経)

「富国生命は営業職員1万人のうち、主任以上の中核職員約4000人の
 基本給を引き上げる。戦力となっている中核職員の待遇を良くして、
 やる気を引き出す効果も見込む。歩合給の部分も、翌月の給与に
 反映しやすい仕組みに見直す」
 (1/19日経)

あくまで報道ベースですが、各社の方針に違いが見えて興味深いです。
 ・全職員の歩合給部分が対象(日本生命)
 ・中核職員の基本給が主な対象(富国生命)
 ・新人の基本給が対象(住友生命)
 ・全職員の給与(基本給&歩合給)が対象(明治安田生命)

基本給の引き上げを打ち出そうとしている会社は、
新人層をはじめ、育成期間にある職員に注力する作戦なのでしょう。

明治安田生命は2008年に固定給を引き上げる改革を実施し、
大手他社も育成期間を延ばし(=固定給負担が増加)、
いずれも契約継続率の改善に成功しています。

ただ、確かに育成重視、既契約重視で短期解約は減ったものの、
月払い契約の推移をみると、新契約の獲得は相当細っているようです。
そこで歩合給の給与配分を増やし、生産性の高いベテラン層を
刺激するという作戦を検討している会社があるのかもしれません。

ちなみに、保険代理店や、ライフプランナーと呼ばれる
男性中心の営業職員チャネルは基本的にフルコミッションです。
他方、銀行員や保険ショップの社員は固定給中心と聞きます。

大手生保が中長期的に営業職員チャネルをどうしたいのか、
まだ将来像が描けていないのかもしれません。

※会社の近くに「中銀カプセルタワー」という変わった建物があります。
 黒川紀章設計の集合住宅で、カプセルは着脱可能なのだとか。

 

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1月のヨーロッパ(その3)

 

金融庁が2012年に公表した「ERMヒアリングの結果について」には
次のような記述があります。

 「リスク管理部門の担当役員は、前回ヒアリングと同様に『人事
 ローテーションの一環』『リスク管理以外の部門も兼務』『専門性を
 重視した人事ではない』といったコメントがあり、担当役員がリスク
 管理と親和性の低い部門を兼務していたり、ERMの構築・実行に
 おいて求められる専門性が必ずしも重視されず、スタッフに支えられ
 ていたりする姿が浮き彫りになった。」

 「『ここ数年、毎年のように担当役員が交代』『親会社や親密先から
 専門性とは無関係に就任』という事例もあり、会社としてどのような
 人材を担当役員にするかという考え方が必ずしも明らかではない社
 もあった。」

今回の出張でも感じましたが、欧州大手保険グループのCRO
(チーフ・リスク・オフィサー)は上記のような担当役員とは違い、
自分の言葉でリスクについて熱く語るかたが多いです。

あるCROは「いいERMとは形を整えることではない」という説明を、
紙にいろいろと書きながら、整然と話してくれました
(せっかくなので、その紙もいただいてきました^^)。

また、別のCROから興味深い取り組みを聞いた際に、
「なかなかいいアイディアですね」と応じたところ、
「試行錯誤の連続で、たまたまめぐり合えたんですよ」
など、手作り感あふれる答えが返ってきました。

組織や文化の違いもありそうですが、CROにアポを取ると、
出席するのはCROのみで、スタッフが同席することは
まずありません。これは金融庁時代の出張でもそうでした
(そもそも場所が執務室内のテーブルだったりします)。

事前にこちらの関心事項を示しているとはいえ、
そこそこ専門的な内容もあります。
それでも自分で全て語れてしまうんですね(結構楽しそうに)。

もともと専門性が高いうえに、常にいろいろと考えているのでしょう。

※写真はシャルトル大聖堂です。世界遺産に登録されています。

 

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1月のヨーロッパ(その2)

 

2年半ぶりのヨーロッパは、今回も保険ERMの調査でした。

主にグループCROや関連部門のヘッドにお会いし、
経営における活用状況やERM関連の情報開示など
いろいろと話を聞いてきました。

今後どこかでお話しする機会などあるかもしれませんが、
昨年実施した「キャピタスERMヒアリング」と比べると、
やはり進んでいるなあと感じることもしばしば。

ただ、ERMが形式的な取り組みに陥りがちというのは
欧州でも同じようで、枠組みの整備は重要だけど、
それ以上に重要なものがあるとのことでした。

確かに、2008年の金融危機を見ればわかるように、
評価が高かった会社のなかでも明暗が分かれています。
はじめから完璧なERMを構築したグループなどはなく、
いろいろと試行錯誤したうえで、今があるのですね。

※カキが美味しそうでした(食べる機会がなく残念でした)。

 

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1月のヨーロッパ

 

今週は出張でヨーロッパに来ています。
「凍てつくような寒さ」「雪景色」を覚悟していたのですが、
北米と違い、ヨーロッパは暖冬で私にはラッキーでした。

もっとも、ドイツではスキー場が雪不足で困っているそうですし、
スイスでは本来は春に咲く、桜に似た花が咲いていました。
なんだか異常気象が年中行事のようになっていますね。

さて、出張中は移動が多いので、どうしても交通機関に
目が行ってしまいます。

特に、ヨーロッパではトラム(路面電車)が便利です。

地下鉄もいいのですが、重い荷物を抱えて階段を上下するのは
一苦労です(日本もそうですが、下りのエスカレーターが少ない)。
目的地に近い出口を探すのも意外に大変です。

バスなら景色は見えますが、旅行者にはハードルが高いというか、
たいてい路線系統が複雑なので、把握するのに時間がかかります。
渋滞で時間がかかることもありますしね。

その点、トラムは路面電車ですから、乗り降りが楽ですし、
バスのように停留所を通過してしまうこともまずありません。
たいていトラム優先の交通規制となっているので、時間も読めます。

しかも、ヨーロッパに来るたびに、トラムは進化しているようです。
今回感じたのは「完全な」低床車が増えたことでしょうか。

古いタイプのトラムは、バスのようにステップをよっこいしょと
上がって車内に入る乗り物でした。
それだと利用者が大変なので、床を低くしたのが低床車です。

ただし、旧タイプは車内に段差のある「部分」低床車でした。
最近は車内に段差のないタイプのトラムが増えてきました。

スピードも速くなったように思います。

路面電車というと、どこかのんびりしたイメージがありますよね。
しかし、こちらのトラムは速いです。
さすがに中心部ではそれほどスピードを出さないものの、
特に専用軌道になると、かなりのスピードで走ります。

日本の場合、独立採算性という点がネックになりそうですが、
例えば、もし都営大江戸線がトラムだったら便利でしょうね。

※写真をようやくアップしました(19日)。
 最近はパリにもご覧のようなトラムが走っているんですよ。

 

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