4日に公表された今年のERMヒアリングの結果について。
今回は当事者ではないので不明な点も多々ありますが、
「各保険会社における態勢整備に向けた取り組みの参考に
供すること等を目的として、ヒアリングの結果を公表する」
とあるので、少しだけコメントしてみましょう。
金融庁のHPへ
前回のERMヒアリング結果では、主に以下の項目について
「態勢の高度化を図っていく必要がある」とのことでした。
・リスク管理部門の担当役員の専門性
・内部監査部門の役割
・リスクプロファイルの把握と活用
・リスク選好の考え方や枠組み
・海外保険事業の管理体制の構築
・内部モデル見直しにおける妥当性等の検証態勢
今回のヒアリング結果を見ると、前回課題とした「リスク選好」
「内部モデルの妥当性」などに加え、「ERMの活用状況」に
全体の3ページ弱を割いていて、目を引きました。
実際にERMが活用される場面として、次の3つを取り上げています。
「リスク調整後収益指標の活用」
「商品開発および商品別収益管理」
「中期経営計画」
これには次のような考えが前提となっているようです。
・収益性評価にあたって、リスク調整後の指標を利用することは有益。
・社内で収益や業績指標として使用するためには、リスクに対する
考え方が社内で共有され、ERMが社内で浸透している必要がある。
・商品開発においても、リスクとリターンの関係を考慮することが重要
・将来にわたる事業の継続性評価や経営におけるERMの活用を
実現するためには、ERMを経営戦略および(中期)経営計画の
策定に取り込むことが有益
確かにその通りだとは思いつつ、日本の現状を踏まえると、
かなり目線が高いように感じました
(対象が大手だけではないことを踏まえると、特にそう感じます)。
保険会社に対する金融庁の目線の高さは、6日公表の
「金融モニタリング基本方針」でもうかがえます。
こちらは大手生損保等が対象の記述ですが、検証項目のなかに、
「リスクアペタイトフレームワークの経営計画における活用状況」
とあります。すでにフレームワークの構築が前提なのですね。
ところが、銀行(SIFIs及びその他の主要行等)では、
「リスクアペタイトフレームワークの構築状況等」
とあり、保険会社のほうがはるかに踏み込んだ表現です。
IAISがICPとして「ソルベンシー目的のERM」を採択したのが2011年。
金融庁が保険検査マニュアルを全面改定し、検査官がERMを
本格的に確認するようになったのも、ここ数年のことです
(ERMヒアリングも2011年からですね)。
それに、ERMは経営そのものなので、行政当局といえども
外部からそう簡単に把握できるものではありません。
私はアナリストとして何度もそんな経験をしてきました。
目線の高さを否定するつもりはありませんし、背伸びも大切です。
ただ、リスク管理の高度化を促すはずなのに、行政当局だけが
先に行ってしまい、振り返ったら誰もいなかったというのでは
ちょっと困りますよね。
何だかやや辛口なコメントとなってしまいましたが、
今回の結果概要が日本の保険会社におけるERMの現状をうかがう
貴重な材料なのは間違いありません。私もいろいろと勉強になりました。
※桂川があふれるなんて、びっくりです。
被害を受けた皆さまにお見舞い申し上げます。