本日(9日)の日経15面「一目均衡」について。
同じような記事のたびにコメントするのもどうかと思いつつ、
役所の人事異動のタイミングでこのような記事が出ると、
やはり見過ごすことができません。
編集委員の土屋直也さんによるこの記事の趣旨は
主に次の通りです。日経HPへ(有料版)
・生保が国債市場から動かず、株式シフトが進まないのは、
ソルベンシーマージン規制が強化され続けてきたから。
・生保規制では「健全性」を追求しすぎるあまり、長期投資や
リスク投資の抑制という副作用を引き起こしている。
ソルベンシーマージン規制は強化され続けてなんかいません。
2007年に規制強化を打ち出して以降、まだ1回だけです。
それにリスク係数20%(分散効果を考慮すれば15%程度)は
決して厳しくありません。
参考までに、過去10年間のうち、日経平均株価が2割以上
変動した年は5回もありました。
ですから、日本の生保規制は「『健全性』を追求しすぎる」
「程々のバランスが大事」といった段階ではなく、
あれだけの犠牲者(=中堅生保の連続破綻)が出たにも
かかわらず、ようやく規制を多少強化したところなのです。
このあたりの認識をきちんと持っていただきたいものですね。
少し調べればわかる話なのですが...
一方、そもそも生保では、規制が求める健全性基準よりも
はるかに厳しい水準でリスク管理をしています。
そのうえで、株式を保有し、外債に投資しているのですね。
記事には、ソルベンシーマージン比率の強化を受けて
一部生保が2012年度に株式投資を減らしたとありますが、
12年度決算をよく見ると、株式を増やしている会社もありますし、
外債投資を増やした会社も散見されました。
このような事実を無視して、
「規制が強化されたから生保が株式投資を増やせない」だなんて、
生保の経営者が聞いたら怒ると思います。
日銀の異次元緩和を受けても機関投資家がポートフォリオを
見直さないのはなぜか。
機関投資家にもいろいろありますが、少なくとも生保は
投資家である前に、保障の担い手としての責務を果たす必要が
あるからだと思います。皆さんの便利な貯金箱ではありません。
このことを生保破綻の歴史も教えています。
※写真は伊豆・韮山の反射炉。
幕末の代官・江川英龍が手がけたものです。