事務年度の節目ということもあり、金融庁が先月から今月にかけて次々にペーパーを公表しています。
金融庁の自己改革
4日に公表された「金融庁の改革について」を興味深く読みました。改革すべき中心課題は「ガバナンス」と「組織文化」ということで、ガバナンス面と人事政策の見直しを行うそうです。
確かに人事は大きいでしょうね。例えば、金融庁はよく「職員の約1/4が民間出身」と言いますが、このうち課室長クラス以上の職員が何人いるかなんて考えると、改革の余地は大きいと思います。
ちょっと気になるのは、金融庁が「専門性」をどうとらえているかです。
当面の人事基本方針の「3.リーダーの育成」には、「将来のリーダー候補には、必ずしも専門分野にとどまることなく困難な業務を経験させ、国内外の金融・経済・社会全般に関する幅広い視野やマネジメント力といった、より上位のリーダーとしての能力を計画的に身に付させるための人事配置(出向を含む)を実施する」とあります。
ただし、これだと今の幹部育成のやり方と大差ないように思えます。金融機関に置き換えると、部長クラス以上には専門性を問わないということですよね。
保険行政の情報が少ない
今回の本題はここからでして、先月末に公表された「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」「金融システムの安定を目標とする検査・監督の考え方と進め方(健全性政策基本方針)」も遅ればせながら読みました。
保険アナリスト目線からすると、例示がほとんど銀行を念頭に書かれている(後者はそもそも「主に預金取扱金融機関を対象」とあります)こともあり、金融庁が保険行政の現状をどう考えていて、どのようにしていきたいのか、さっぱり見えてきません。
全国で数多くの対話会を行ったとのことですが、保険関連は対象外のようです。特定の業態に固有のテーマについては考え方・進め方・プリンシプルを示すとあるとはいえ、現時点では手掛かりはありません。
この「検査・監督の考え方・進め方」にかぎらず、要は一連の改革のなかで、保険行政に関しては「対象外ですか?」と聞きたくなるほど情報開示が少ないのです。
もしかしたら内部ではいろいろと議論を進めているのかもしれません。しかし、ガバナンスを効かせるうえでも、保険行政についての考え方や方向性をもっと公表すべきではないでしょうか。
個人的な経験からしても、銀行に対する検査・監督手法を保険会社向けに読みかえればいいかというと、それではかなり無理が生じます。同じ金融機関とはいえ、社会的に果たす役割や、収益構造もリスク特性も全く違うので、当然といえば当然です。
銀行に関しては、いつまでも不良債権問題ではないだろうというのはわかります。資本規制の見直しも進みました。
これに対し、保険会社の破綻では契約者負担を強いた(同時期の預金は保護されました)にもかかわらず、保険会社のソルベンシー規制は中途半端なままです。
天に唾するようですが、そこを忘れてはならないと思います。
※いつものように個人的なコメントということでお願いします。
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