出張前ということで、今週公表された金融庁と厚労省の資料から手短にコメントします。
金融行政の実績と方針
金融庁は28日に「利用者を中心とした新時代の金融サービス~金融行政のこれまでの実践と今後の方針~(令和元事務年度)」を公表しました。
本文をみると、金融行政の重点施策として最初に「金融デジタライゼーション戦略の推進」を挙げているほか、地域金融について20ページもの記述があります。
保険関係では、「顧客本位の業務運営の定着」「持続可能なビジネスモデルの構築」「ガバナンスの機能発揮」とありますが、保険販売に関わるかたはこちらよりも、27ページからの「販売会社による顧客本位の業務運営」に注目したほうがいいかもしれません。
今回のキーワードの一つは「心理的安全性」ですね。
本文87ページのコラムによると、心理的安全性とは、「一人ひとりが不安を感じることなく、安心して発言・行動できる場の状況や雰囲気」だそうです。もともとは職場等でのチーム構成員とリーダーとの対話場面を想定しているようですが、「金融機関と金融庁の対話に当たっては『心理的安全性』が重要である」と、立ち位置の違いはあるもののフラットな対話を心掛けているとしています。
厚労省若手チームの提言
厚労省は27日に「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」を公表していますが、こちらのレポート(厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言)も興味深く読みました。
2017年に経済産業省の次官・若手プロジェクトが社会構造の変化と中長期的な政策の考え方を示したことがありました。
資料はこちら(PDF)
今回の厚労省若手チームの提言はそうした政策提言ではなく、働き方改革の旗振り役による、自らの改革の必要性を問うものです。別の言いかたをすれば「ブラック企業における現場の悲鳴」でしょうか。
とはいえ、この提言も正式に公表されたものですから、実情はもっとひどいと思って読んだほうがいいのかもしれません。
「国会答弁資料については、国会開会中はほぼ毎日、深夜に全ての部局が作成をした後、各部局の書記室や大臣官房総務課において、質疑者順・質問順・質問ごとに並べ、場合によっては全部で1,000ページ超に及ぶ資料組みを行い、かつ、資料ごとに問番号等を記載したインデックスを付けるという作業を行っている」(本文28ページ)
「厚生労働省においては、平成30年に1,569回の審議会、検討会等を開催しており、この数は、他省庁と比べても圧倒的に多い。この審議会等の会場設営、受付、資料配布などは、各部局の担当者や、担当ラインではない現業業務のある職員の協力により行われている」(29ページ)
「現在、厚生労働省には、ひと月に平均で10万件を超える電話が寄せられてきている。このうちの相当数は、国民の皆様からのご意見、ご要望等であるが、現在の厚生労働省の『国民の皆様の声受付窓口』の体制では、ひと月に千数百件程度しか対応できておらず、残りは全て、本省内で該当政策の企画立案等を担当する職員がその応答等を行っている」(31ページ)
金融庁に在籍していたときに、いろいろと驚いている私に周囲の皆さんが、「他の省庁に比べて金融庁はずっとマシ」と話していたのを思い出しました。
いずれにしても、このままではいけないでしょう。
※娘がついに20歳になりました。
父と孫娘の誕生パーティーです。