05. 金融・経済全般

CGコードの改訂

4月6日にコーポレートガバナンス(CG)コードの改訂案が公表されました。
公表資料はこちら

改訂のポイントとして挙がっているのは、次の項目です。

・取締役会の機能発揮(プライム市場における独立社外取締役の選任など)
・企業の中核人材における多様性の確保
・サステナビリティを巡る課題への取組み
・上記以外の主な課題

東京証券取引所が準備を進めているプライム市場に関するものが目立ちますが、私が注目したのは、取締役会等の責務として初めて「ERM」が加わったことです。
これまでも基本原則4の「経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと」のもとで、補充原則4-3④に取締役会が監督に重点を置くべきものとして「先を見越したリスク管理体制の整備」がありました。これが今回の改訂案では「先を見越した全社的なリスク管理体制の整備」となり、取締役会が監督すべきものとなりました。ERMという用語こそ登場しないものの、過去の資料や議事録(例えば3月9日)からすると、ERMを意識した記述と考えられます。
資料・議事録はこちら

日本のCGコードは、経営者による過度なリスクテイクを抑えるというよりは、取るべきリスクをきちんとテイクするように促す、いわば攻めのガバナンスです。そのなかでERMが取り上げられたというのは自然な流れだと思います。

※写真は柳川の川下りです。

 

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プライム市場と流通株式

本題の前にいくつかご案内です。

損保総研のセミナー

1月26日(火)の夜に損保総研の特別講座で講師を務めます。
演題は「新たな健全性規制下における保険経営のあり方 ~アカデミズムの視点も含めて~」で、今回はweb配信のみとなっています。19:00から1時間お話しして、その後質疑応答とのこと。ご関心のあるかたは(有料ですが)ぜひご参加ください。1月19日締め切りだそうです。

保険毎日新聞のインタビュー記事

業界紙・保険毎日新聞に2020年4-9月期決算についてのインタビュー記事が載りました。14日が主要生保、15日が3メガ損保グループです。
それぞれ見出しだけご紹介すると、主要生保では「金融市場の回復が追い風に」「価格変動リスクを抑える動きも」「コロナ禍で各社の強み問われる状況に」、3メガ損保では、「海外事業を国内事業がカバー」「コロナ禍の活動制限がプラスに作用」「余剰人員の活用が今後の課題に」となっています。

さてさて、本題はこちらです。
昨年末に東京証券取引所から、取引所の市場区分を見直し、現在の市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ(スタンダード・グロース)の5区分を改め、「スタンダード市場」「プライム市場」「グロース市場」の3区分に再編するという案の発表がありました。
詳しくはこちら(市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項))をご覧ください。

市場区分の見直しとともに、東証は市場における流動性(=売買実績)を確保するために「流通株式」の定義を見直し、銀行や保険会社、事業法人等が持つ株式を、保有割合に関わらず流通株式から除くことにしました(現在は上場株式数の10%以上を所有する場合に除くルール)。
プライム市場の上場基準となる流通株式比率は35%以上(スタンダードとグロースは同25%以上)なので、銀行や保険会社、事業法人が安定株主となっている銘柄はプライム市場に上場しにくく、この基準によって政策株式の売却を加速させる狙いがあるのかもしれません。

ただし、所有目的が「純投資」であれば、銀行や保険会社が保有していても流通株式として取り扱うそうです。
3メガ損保グループが保有する株式は大半が政策保有株式なので流通株式から除く一方、大手生保の保有する株式は多くが「純投資」とされているため、流通株式として扱われます。結果として、生保の株式保有が増えるなんてことにならないかどうか、注目していく必要がありますね。

※この週末の福岡は好天で何よりでした。

 

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「半沢頭取」報道に思う

三菱UFJ銀行の頭取に半沢淳一常務が昇格するという人事(24日発表)を先取りする報道が22日にありました(日経、朝日、NHKなど多数)。

「計13人いる副頭取と専務を抜き、同行で初めて常務から頭取になる」(日経)
「テレビドラマ『半沢直樹』の原作者で、1988年に当時の三菱銀行に入行した池井戸潤さんとは同期だったということです」(NHK)

つまるところこの2点だったのですが、何だかなあという感じでしたね。

まず、持株会社の「指名・ガバナンス委員会」ではまだ決定していなかったのに、名前が出てしまったこと。関係者(必ずしもMUFG関係者とは限りません)がリークしたのでしょうけど、もし私が指名・ガバナンス委員会の委員だったらこうした報道は嫌ですよね。委員会とは別のところで人事が決まっているように思われてしまいますので。
トップ人事を発表前に出すのが重要なのは報道業界内部の価値観であって、情報の受け手にとって価値があるとは思えませんし、むしろ迷惑なことが多いと思います。

それから「若返り」「13人抜き」ですが、確かに金融界で55歳は若いです。ただ、「若返り」「13人抜き」という報道は、そもそも新卒生え抜きが経営幹部となることを前提にしたものです。外部人材だったら「〇人抜き」なんて記事にはなりませんよね。
「半沢さん」に話題性があるのはわかります。しかし、グローバル化を進める金融グループの幹部人事を、いつまで「社長が次の社長を決める」「日本人・中高年男性・新卒生え抜き」を前提に語るのでしょうか。

ちょうど数日前に「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」から「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保」という提言が出ていますし、このような資料(取締役会の機能発揮と多様性確保(PDF))も参考になりますので、22日の人事報道に疑問を持たなかったかたはじっくりお読みいただければと思います。

※全くの個人的興味で恐縮ですが、ようやく訪問できました。

 

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今回の金融システムレポート

日本銀行が4月と10月に発表している金融システムレポートの最新版が出ています。
今回はコロナウイルスの感染拡大による影響が金融面でどのように表れているのかがわかります。図表をざっと眺めるだけでも参考になりそうです。

1か所だけ紹介すると、例えば2008年のリーマンショック時と比べた分析では、次のような評価が書かれています。

・感染症の拡大に伴う売上の減少により、中小企業の流動性と自己資本には、リーマンショック時よりも強いストレスが加わっているとみられる。

・もっとも、こうしたもとでも、中小企業全体では流動性や自己資本を手厚く確保する先が趨勢的に増えていたため、企業金融支援策が⼀切行われなかったと仮定した場合でも、手元資金が枯渇したり、債務超過に陥ったりしたであろう先の割合は、赤字先割合ほど大幅に上昇しない。

・最も強いストレスを受けている飲食・宿泊・対個人サービスを含め、この間の支援策は、流動性面のストレスに起因するデフォルト率の上昇圧力をほぼ相殺する効果を有している。

35ページの図表「地域別にみた企業の自己資本比率と現預金比率」は主要企業のものですが、この20年間の日本企業の自己資本比率や現預金比率が顕著に右肩上がりとなっているのがわかります。

確かに今回のようなストレス時には、こうした手元流動性や自己資本を手厚くする行動が吉と出ました。ただ、企業はストレスに耐えるために存在しているのではなく、リスクをとってリターンをあげるための存在ですので、これは手放しでほめられる話ではないのでしょうね。

※実家の武家屋敷が文化財に指定されている高校時代の友人に会ってきました。熊本です。

 

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新型コロナ禍は次のステージへ

今週のInswatch Vol.1054(2020.10.12)に寄稿したものです。
7-9月期の対面販売の数字はまずまずだったようですが、楽観視できないかもしれません。
——————————

4-6月期の結果は異常値だが...

先月のInswatchでお伝えしたように、対面販売を主体とする生命保険会社では4-6月期に新規契約の獲得が極端に落ち込みました。7月の新規契約件数も前年同期に比べて45%の減少となりました(個人保険、生保42社合計)。
もっとも、4-6月期は緊急事態宣言が出され、営業活動を自粛していた期間だったため、落ち込みは当然の結果と受け止めることもできます。自動車保険の損害率が極端に改善したのも、経済・社会活動の自粛が強く影響していますので、これらは「異常値」と言えそうです。
社会から保険需要が消えてしまったわけではなく、むしろ不安心理の高まりが保険需要を掘り起こしている面もあるので、以前と同じような営業活動さえ再開できれば、業績は自ずと回復するはず。一時的ショックであれば、このように考えるのが自然です。

一時的ショックにとどまらない兆しも

期待に水を差すようで申しわけありませんが、新型コロナウイルスの感染拡大から半年ちょっと経ち、残念ながら一時的なショックでは済まない兆しが少しずつ見えてきました。
夏ごろまでは、活動自粛の直撃を受けた飲食業や旅行業など一部の業種を除き、新型コロナ禍でビジネスが蒸発するという状況ではなかったように思います。ところが、経済・社会活動の制限が一時的なものではなく、コロナ前の状態には当面戻れそうにないことがわかってきました。いったん感染が収まっても、しばらくすると再び感染が増え、活動を抑えざるをえなくなります。有効なワクチンが広く普及するまではその繰り返しです。
このため、影響は一部の業種だけではなく、全般的な個人所得の低迷や設備投資の減退などにつながる可能性が高まっています。そうなると、当然ながら保険需要も影響を受けるでしょう。

1日に発表された9月の日銀短観(全国企業短期経済観測調査)では、最も注目される「業況判断」が改善したため、景況感の悪化に歯止めがかかったという見方も出ているようです。しかし、同じ短観の「設備投資額(2020年度)」を見ると、製造業、非製造業ともに計画が下方修正され、全規模・全産業ではマイナスとなりました。設備投資の落ち込みは経済全体に波及しますので、要注意です。

金融市場の動向も安心できない

多くの生命保険会社は保険引受リスクよりも、金融市場の変動が経営に最も影響を与えるリスク要因となっています。
3月に新型コロナの感染拡大で金融市場が動揺したものの、その後は比較的安定しています(ただし、金利水準は世界的に極めて低い水準のままで、回復していません)。しかし、新型コロナ禍の影響が実体経済にどのような形で波及するかは不透明であり、金融市場が再び大きく動くこともありえます。保険会社はあらためて自社のリスクの取りかたを考え、必要な見直しを行う局面だと思います。

※出張で京都に来ています。

 

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パンデミックリスクの補償

今回の新型コロナウイルス感染症では、保険業界が社会的な役割を必ずしも発揮できていないと感じる関係者が多いかもしれません。
死亡保険金や入院給付金は新型コロナ感染症を支払い対象としていますが、生命保険協会によると、8月末現在で死亡保険金は897件(約81億円)、入院給付金は11,100件(約15億円)だそうです。件数があまり多くないのはいい話なのですが、保険が役に立ったと感じる人もあまり多くないということになります。
さらに、事業中断の補償など、損害保険の支払いはより限られているようで、事業停止に伴う損失の補償は専ら政府が担っています。ただ、どの補償スキームも事前の準備が少なかったためか、給付金や支援金が必ずしもスムーズに提供されているとは言い難いようです。

海外に目を転じると、日本よりも厳しい経済・社会活動の制限が実施された欧米各国で、今回のパンデミックの教訓を生かし、パンデミックリスクに備えた官民連携のスキームを検討する動きがあるようです。
損害保険事業総合研究所の機関誌『損保総研レポート』の2020年7月号は、欧州および米国でパンデミックリスクに備えた官民連携スキームを模索する動きを2つのレポートで報告しています。

牛窪主席研究員による「米国における新型コロナウイルスと事業中断保険を巡る動向」では、政府再保険を活用したパンデミックリスク保険制度を創設する法案が連邦議会で検討されていることや、米国損害保険協会(APCIA)などの業界3団体が、将来のパンデミックの際に事業者を支援する連邦プログラム(支払い責任はすべて政府が負担)の創設案を公表していることを紹介しています。
濱田主席研究員による「新型コロナウイルスの損害保険業界への影響」では、ドイツ保険協会が、補償を受ける可能性のある事業者が拠出し、政府も資金を提供するパンデミックリスクに備えた基金の創設を検討していることや、イギリスやフランスで、政府による再保険を活用したスキームを検討する動きがあることを紹介しています。

同様の動きは日本でもあるのでしょうか。
パンデミックのリスク特性を踏まえると、民間だけで補償を引き受けるのは簡単ではなさそうですが、普及活動や支払業務などオペレーションの面で貢献できると思います。例えば地震保険を参考に、中小企業向けの補償を念頭に置いた制度を検討する価値はあるかもしれません。

※先週末に訪問した「かっぱ駅」です。

 

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社外取締役による座談会

2013年に政府による成長戦略の一環としてコーポレートガバナンス改革が始まってから、社外取締役を選任する上場会社が急速に増え、2名以上の独立社外取締役を選任する上場会社の比率は95%に達しています(市場第一部)。
日本証券取引所のサイトへ

この変化は率直に言ってすごいと思いつつ、当然ながら形だけ整っていても意味はないので、実質的な役割を果たせるかどうかが焦点となります。
経済産業省が7月末に「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」を公表したのも、まさにそのような問題意識からです。

ところで、第一生命ホールディングス「アニュアルレポート2020」に「社外取締役による座談会」が載っていて、読んでみると形式的なコメントばかりではなく、興味深いものでした。

例えば、次のようなコメントがありました。

「社外取締役と社内取締役の間のコミュニケーションが、質、量ともに高まっていることと、そのコミュニケーションも形式的なものではなくて、ガチンコの議論が展開できている、もしくはそうなったということが挙げられます」【朱取締役】

「社外取締役による自律的な取組みが本格的に始まり、それが定着してきたということです(中略)昨年の2月か3月頃から自発的に社外取締役全員で集まって議論するようになり、当初は食事をして懇談するところから始まったのですが、回を重ねるごとに、テーマを決めて、誰かが資料を用意しそれをもとに議論するといったことも始めました」【井上取締役】

「第一生命ホールディングスの取締役の方々は第一生命グループ全体の取締役であり、グループ全体のマネジメントに権限と責任を有しています。取締役が自己の専担範囲の業務執行はしっかりと行うが、他の取締役の担当業務にはあまり関心がない、そのような状況に将来陥っては困ります」【増田取締役】

会社からインプットをしてもらうというレベルから、社外取締役による自律的な取り組みとなってはじめて、取締役どうしのまともな議論ができるようになってきたということなのでしょう。いい流れだと思います。

※40年前に筑肥線・小笹駅があったところです。看板の前あたりだと思うのですが…
 取材したところ、駅前の通りは今よりも低くて、大雨が降ると水没して大変だったそうです。

 

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2020年度上期ヒット商品番付

日経MJ(日経流通新聞)では半年ごとに「ヒット商品番付」を発表しています。
「消費動向や世相を踏まえ、売れ行き、開発の着眼点、産業構造や生活者心理に与えた影響などを総合的に判断して作成した」とのことで、日経流通新聞が創刊された1971年から発表されている人気の企画です。

先週発表された2020年上期のヒット商品番付は次のとおりでした(上位のみ)。

<東>
横綱:オンライン生活ツール
大関:応援消費
関脇:無観客ライブ
小結:手渡しなし宅配

<西>
横綱:任天堂「あつまれどうぶつの森」
大関:おうちごはん
関脇:テークアウト
小結:湖池屋「プライドポテト」

一見してコロナ関連が並んでいますね。
個人的には「zoom飲み会」を挙げたいです。福岡にいても東京にいる皆さんと飲み会ができるというのは画期的でした。

ところで、昨年12月に発表された2019年の番付上位は次のとおりでした。

<東>
横綱:ラグビーW杯
大関:令和
関脇:天気の子
小結:ウーバーイーツ

<西>
横綱:キャッシュレス
大関:タピオカ
関脇:サントリー「こだわり酒場のレモンサワー」
小結:任天堂「ニンテンドースイッチライト」

遠い昔のように感じると思いきや、「ウーバーイーツ」「キャッシュレス」「ニンテンドースイッチ」ですか。
コロナ禍で生活様式が変わる前からこれらはヒットしていたのですね。

 

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諮問委員会のメンバー

大学の授業がようやく始まり、遠隔授業(オンライン授業や課題学習など)を試行錯誤しながら行っています。
オンライン授業は発信者(=私)のネット環境によるところが大きく、初回の授業では早々に課題学習に切り替えざるをえなくなり、あとからレジュメに音声をつけたものを作成し、学生の皆さんに提供しました(実は音声付きファイルをアップするのも大変でした)。緊急事態宣言がひと月ほど延長されるようなので、こうした格闘がしばらく続きそうです。

※福岡大学商学部2年生の皆さんは、5日、6日とゼミ相談をやりますので、お気軽に連絡(メール)してくださいね。

その緊急事態宣言ですが、けさの日経新聞にあるとおり、宣言の内容を変更するには「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の分析結果を踏まえて政府が方針案を策定し、これを「基本的対処方針等諮問委員会(新型インフルエンザ等対策有識者会議の下部組織)」に諮ったうえで、国会報告を経て、最終決定するという流れになっています。

かつての同僚である増島弁護士のつぶやきを見て、諮問委員会のメンバー(PDF)を改めて確認すると、16人のうち12人は専門家会議のメンバー(PDF)で、16人のうち14人が感染症の専門家(あとの2人は弁護士)となっていました。専門家会議も諮問委員会も(おそらく厚生労働省が選んだ)感染症の専門家と少数の法律の専門家で構成されていて、しかも、現状分析と政府方針の妥当性判断をほぼ同じメンバーが行っているのですね。

海外諸国と同じく、日本でも徐々に出口を探っていく局面となるでしょうし、今後はかつてないほどの悪い経済指標が次々に出てくるなかで、経済をどうやって立て直すかを考える必要性が高まります。その際に、政府方針の妥当性判断を行う諮問委員会に経済の専門家が1人もいないというのは確かにちょっと心配です。

今後、再度の感染拡大を心配する感染症の専門家と、経済活動の自粛緩和を求める世論とがぶつかりあうこともありうるでしょう。ただ、いまの立て付けだと、政府は感染症の専門家の意見にしたがうか、あるいは、世論に押し切られ、何となく「政治判断」してしまうか、いずれかになるのでしょうか。

※男の手料理。ジャーマンポテトを作りました♪

 

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超低金利が浮き彫りにする金融機関経営の課題

インシュアランス生保版(2020年3月号第3集)にコラムを執筆しました。
タイトルが長くなってしまい、編集者にご迷惑をかけたかもしれません。
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金融関係者が集まる会合で話をする機会があり、超低金利の継続が銀行と生命保険会社の経営に及ぼす影響について解説した。
日本銀行のマイナス金利政策による副作用として銀行の収益悪化が挙げられている。多くの生命保険会社にとっても、金利水準の低下は経営を圧迫する要因だ。しかし、低金利が銀行にも生命保険会社にも悪影響を及ぼすとは、考えてみれば不思議ではないか。

低金利と銀行経営

かつて銀行はむしろ金利低下の恩恵を受けていた。銀行は預金などの短期調達と、貸出金などの長期運用の利ザヤが主要な収益源の1つであり、イールドカーブ(利回り曲線)が右肩上がりであれば、比較的容易に収益を稼ぐことができた。しかも、金利低下に合わせて預金金利を下げれば、貸出金が折り返しとなるまで利ザヤは拡大する。バランスシートで説明するならば、金利低下で資産価値が高まるのに対し、負債(預金)の価値はあまり変わらないため、純資産(資産-負債)は増加する。ところがマイナス金利政策で、短期金利から10年金利までほぼ0%となり、イールドカーブが右肩上がりでなくなってしまった。これでは長短金利差に起因する利ザヤを稼ぐことはできない。

伝統的な銀行ビジネスの利ザヤの源泉は長短金利差と、貸出先の信用リスクである。マイナス金利政策で利ザヤが稼げなくなったのは、イールドカーブの平坦化以前の問題として、信用リスクに応じた貸出が質、量ともにできていなかったためだ。個人だけでなく、企業も資金余剰主体となって久しく、特に地方部では人口減少の影響も資金需要に影響を及ぼしている。ただ、あえて厳しい言いかたをすれば、これらは20年以上前からわかっていた話であり、銀行経営者は金利低下の恩恵を受けていた時期にビジネスモデルの修正を行うべきだったのだろう。

低金利と生保経営

生命保険会社はどうか。銀行になぞらえれば、多くの生保は保険販売による超長期調達(しかも固定金利)と、有価証券を中心とした長期運用という資金構造であり、金利水準が下がると固定金利の保険負債が重荷となる。2000年前後に中堅生保の経営が相次いで破綻したのは、1990年代前半からの金利低下に耐えられなかったことが一因だ。その後も金利水準は下がり続け、ついにマイナス金利となっても今の生保が一定の健全性を確保できているのは、株式などの資産運用リスクを減らし、保障性商品の販売に力を入れることで、資産運用以外でリターンを上げるビジネスモデルを構築・維持してきたためだ。

もっとも、マイナス金利政策以降の生保経営には首をかしげることも多い。経営リスクを保険引き受けではなく、外国証券など資産運用によるリスクテイクに配分する行動が目立ち、その一方でコストのかさむハイブリッド調達(劣後債発行など)を積極的に行っている。こうした姿を見ると、生保のビジネスモデルの持続性にも危うさを感じる。地域金融機関の苦境は対岸の火事ではない。
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※写真は桜島です。福岡から鹿児島まで新幹線で1時間ちょっとなのですね。

 

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