創業家による経営支配

 

日経「私の履歴書」と王将フード「調査報告書」が
あまりに対照的だったので、今回はこの話を。

3/31まで「私の履歴書」に登場していたのは
アイリスオーヤマの大山健太郎社長です。
記事のなかで次のように語っています。

「私にとって大事なのは、事業内容よりも『創業の理念』
 がきちんと引き継がれることだ。そのためには血の
 つながった人間による『株式非公開の同族経営』が
 一番いいように思われる」 (3/29付)

「本来会社は従業員のためにある。利益はなるべく
 従業員と分け合いたいと考えた。」 (3/30付)

「経営学や経済論壇は米国型の資本主義を見習えと
 説く。しかし『社外取締役』など表面的な部分だけ
 米国式をまねても結局は機能せず、長続きもしない
 のではないか」 (3/31付)

なかなか刺激的なコメントばかりですが、
成功した創業者の考えがよく表れています。

他方、王将フードサービスの第三者委員会による
調査報告書(3/29に公表)をご覧になったでしょうか。

報告書によると、創業者の長男・次男が代表権を持つ
まさにその時期に、創業者の知人(A氏)やその関係会社と、
経済合理性の明らかでない貸付や不動産取引等が行われ、
会社から合計200億円超の資金が流出したそうです
(このうち約170億円が未回収とのこと)。

その原因は、当時の同社は大株主かつ創業者の子息である
両代表者への遠慮や、意見を言っても無駄という企業風土から、
次男による独断専行を取締役会が牽制する体制がとられて
いなかったことにありました。

その後も会社は他のステークホルダーとの信頼関係よりも
創業家への配慮を優先し、合理性の明らかでない役員人事、
法的責任追及の回避といった対応を繰り返しました。

報告書では、王将フードのガバナンス上の失敗は、
「独断専行ないし密室経営」「創業家との関係」
「A氏との関係」という3つのリスク要因が組み合わさり
引き起こされたもので、それは決して過去のものではない
と指摘しています。

創業の理念が引き継がれなかったと言えばそれまでですが、
同族経営の悪い面が表面化した事例とも言えそうです。

※右の桜は「オオシマザクラ」です。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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