03. 保険市場の動向

生保銀行窓販の展開と課題

 

生命保険経営学会の機関誌「生命保険経営」に
「生保銀行窓販の展開と課題」という論文が掲載されています
(第79巻第5号 平成23年9月)。
筆者は第一生命経済研究所の村上隆晃さんです。

銀行を通じた生保販売は今や約30兆円(累計販売額)に達し、
銀行の個人部門収益を下支えする存在になっています。
これだけ大きくなった銀行窓販市場の全体像を知るうえで
本論文は貴重な存在です。

まず目を引くのが、商品ごとの販売動向のグラフです。
このグラフを作るのは、大変だったのではないかと思います。
銀行窓販の公表データは意外に少ないのです。

グラフを見れば、一時払商品では変額年金・外貨建定額年金から
終身・養老保険や円建定額年金にシフトしていること、
平準払い商品では医療、終身、こども保険が中心であることが
一目でわかります。

もっとも、平準払いといっても、実際には全期前納が多く、
銀行窓販の主力は依然として一時払の貯蓄商品のようです。

「業態別・一時払商品の販売動向」も興味深いです。
都銀と信託が全体の半分以上というイメージでしたが、
足元では地銀だけで全体の5割を占めています。

さらに、商品と経済変数の関係についての分析もあります。

例えば変額年金では、

・日経平均株価が1円上昇すると、販売額が1.3億円増加する
・2009年度下期以降は株価以外の供給要因がマイナス影響

という考察が行われています。

あいにく「生命保険経営」の本文は、発表して2年たたないと
閲覧できないようです。

ただ、今回だけでなく、興味深い論文が時々載っていますので、
個人会員になるのも一案かもしれませんね(私は個人会員です)。

※写真は「のだめカンタービレ」のロケ地です。
 わかる人にしかわからないネタですみません。

 

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保険流通業の販売データ

 

先週から今週にかけて、内部の研修で講師を務める一方、
外部講師の話を聞く機会が何度かありました。
人の話を聞くと、知識を吸収できるというだけではなく、
自分の考えを整理することができたりもしますね。

ある講師のかたの話を聞いていて、ふと気がつきました。
保険会社の販売データはあっても、保険流通業の販売データは
意外にないのですね。特に生保がそうです。

「A生保で○○億円、B生保で△△億円・・・」
という保険会社ごとの販売情報はある程度公表されていても、
「A代理店で●●億円、B代理店で▲▲億円・・・」
という販売会社ごとの情報はどうも少ないように思います。

営業職員が生保販売の大半を占める時代であれば、
おそらくこれで特に問題はなかったのでしょう。

しかし、これだけ保険ショップや金融機関の存在感が高まると、
大手生保(営業職員チャネル)の販売動向を見ているだけでは、
保険流通の全体像をつかむことはできません。

特に保険ショップや比較サイトのようなニューチャネルは、
以前も書きましたが、「除く大手生保」の世界なのですね。

業界紙あたりで保険流通の販売統計(大手販社は会社ごと)を
出してくれると便利なのですが。

 

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ライフステージは忘れろ

週刊金曜日という雑誌を読んでいたら、
メディカル保険サービス取締役の後田亨さんによる
「損しないための生命保険講座」という記事がありました。

後田さんは乗合代理店として保険のコンサルティングを
行っているかただそうです。
後田さんの公式サイトがありました

記事のなかに、次のようなくだりがあります。

「そもそも、保険という金融商品が、そんなにいくつもの
 目的にかなうものではないことに気づいたのです」

「保険での対応がふさわしいリスクを考える際、
 次の三点を意識したらいいはずです。
 ①めったに起きないこと
 ②起こったら大変な経済的打撃を受けること
 ③いつ起こるかわからないこと 」

実は私が職場や大学で保険について話す機会があると
(特に需要サイドから見た保険の話をする場合です)、
図を描いたりして、しばしば同じような話をしてきました。

ただ、保険を販売する立場のかたによる記事だったので、
非常に新鮮に感じました。
「『ライフステージ』は忘れてもいいのではないか?」
とまで述べているのですから。

もちろん、「めったに起きない」「経済的打撃」について
どこまでをそう捉えるかはケースによって違うでしょうし、
それをどんな手段でどうカバーすべきかも様々でしょう。
また、安心を提供するというメンタル面も無視できません。

しかし、商品主導、売り手主導になりがちななかで、
このような考え方を普及させることは、結局のところ、
買い手だけではなく、売り手にとっても有益なのだと思います。

※酷暑のため、この日(15日)の最大使用電力は
 この夏最大の4640万KWに達したそうです。
 まだ7月半ばなのですが...

 

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加入率と付帯率

 

地震保険に関する記事や資料を見ていると、
「加入率は23%」「付帯率は5割近く」というように
2種類のデータがあることに気がつきます。

「付帯率」とは、ある年度に契約された火災保険
(住宅物件)のうち、地震保険が付帯されている割合です。

2009年度のデータをみると、全国平均は46.5%と
新規に火災保険に加入した人の半分は
地震保険にも入っていることがわかります。

宮城県の付帯率は66.9%と高く、岩手県は42.2%、
福島県は39.0%です。

付帯率が6割を超えているのは宮城県のほか、
岐阜県、愛知県、徳島県、高知県、宮崎県、鹿児島県です。

他方、一般に「加入率」と言うときは、地震保険の契約件数を
住民基本台帳に基づく世帯数で割った数、つまり、
全世帯のうち地震保険に加入している世帯の割合のことです。

阪神大震災のあった1994年度の加入率(全国平均)は9.0%。
これが2009年度には23.0%まで高まりました。
宮城県は32.5%、岩手県は12.3%、福島県は14.1%です。

加入率の高い県は宮城のほか、愛知(34.5%)、東京(30.0%)、
神奈川(28.3%)となっています。

付帯率に比べて加入率が低いのは、
地震保険は火災保険とセットで加入することになっている
(火災保険の加入率は2002年時点で53%)ほか、
火災保険の加入段階では地震保険を付帯しても、
保険料負担などから更新しない人も多いからでしょうか。

もっとも、現行の地震保険制度には、

①民間の責任限度額が危険準備金残高を上回っている
 (2009年度末で2300億円)

②大震災発生で準備金が枯渇すると、次の大震災への備えがない
 (ただし、政府による資金あっせんや融通が可能)

といった制度上の問題点があります。

毎年の保険料等からの準備金が積み上がるまでは、
責任限度額に対して備えが十分でない状態が続いてしまうのです。

 

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破綻生保の既契約

 

米プルデンシャルは2/1(火)、AIGエジソン生命と
AIGスター生命の株式取得を完了したと発表しました。

金融危機後のAIGグループ生保の再編がおおむね終了し、
プルデンシャルは日本の生保市場で最大規模の
外資系グループとなりました。

このグループのもう一つの特色は、破綻した生保の既契約が
重要な顧客基盤となっていることです。

 日産生命(あおば生命) → プルデンシャル生命が買収

 東邦生命 → GEエジソン生命(現AIGエジソン生命)に包括移転

 (第百生命 → マニュライフ生命に包括移転)

 大正生命 → 大和生命(現PGF生命※)に包括移転

 千代田生命 → 破綻後、AIGスター生命へ

 協栄生命 → 破綻後、ジブラルタ生命へ

 (東京生命 → 破綻後、T&Dフィナンシャル生命へ)

 大和生命 → 破綻後、PGF生命※へ

  ※プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命

つまり、破綻した生保8社のうち6社が、回りまわって
プルデンシャルの傘下となっているのですね。

破綻生保の契約者は、将来の安心を買ったつもりが、
加入した生保の経営危機でかえって不安な思いをしたうえ、
最終的に何らかの不利益を被るという、心情的には
「ありえない」経験をしています。

当時を経験している役職員のかたも多いでしょうから、
経営管理やリスク管理などの面で生かされるといいですね。

※いつものとおり個人的なコメントということでお願いします。

※写真は御茶ノ水駅。聖橋の上から撮りました。

 

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生保加入率の男女逆転

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先週末だったでしょうか。「生保、女性加入率が男性上回る」
というニュースが流れました。
「不況の影響に加え、未婚化が進み、生命保険の必要性を
感じない人が増えている」とのこと。

本当にそうかなあと思って、元の資料を調べたところ、
事実は次の通りでした。

生命保険文化センターが9日に発表した
「平成22年度 生活保障に関する調査」によると、
生命保険・個人年金保険の加入率が、
男性が79.9%(H19年は81.9%)だったのに対し、
女性は81.4%(同81.2%)と確かに逆転しています。

ただ、内訳をみると、民保の男性加入率はむしろ高まっており、
簡保とJAの下げが、男性加入率の低下に寄与しています
(生協・全労済の加入率は上昇)。

また、女性加入率の上昇は、ほとんど民保によるものです。
H19年の55.6%から、今回は60.3%と約5ポイントの上昇です
簡保とJAの加入率は低下、生協・全労済は横ばいでした。

このようにみると、今回調査の特徴は「男女逆転」ではなく、

・民保で女性加入率が急上昇している
 → 各社の思惑通り、女性の医療保険加入が進んだのでしょう。

・簡保、JAの加入率低下
 → 主に貯蓄性商品の満期到来によるものと思われます。

・生協・全労済の男性加入率の上昇
 → 家計のメイン保障としての存在になりつつあるのでしょう。

ということで、記事とは一味違う分析結果になりました。

※写真は羽田の赤鳥居です。多摩川河口近くにあります。
 もちろん自転車で行きました。

 

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世界五大危機

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再保険業界で「世界五大危険」といえば、

 ・米国のハリケーン
 ・米国カリフォルニアの地震
 ・欧州の冬の嵐
 ・日本の地震
 ・日本の台風

この5つだそうです。なんと日本が2つも入っています。

過去10年間の日本の損保の出再保険収支は、
受取再保険金が多かった2004年を除いて、
常に大幅赤字となっています。

五大危険のうち二つもあるのだから仕方がないのか、
それとも再保険会社を儲けさせすぎなのか、
果たしてどちらなのでしょうか?

なお、ここでいう「危険」は保険損害額です。
犠牲者数ではありません。

スイス再保険の資料(シグマ)によると、
過去40年間に発生した災害の犠牲者数ワースト3は

1.バングラデシュの風水災害(1970年)
2.中国の地震(1976年)
3.インド洋の地震&大津波(2004年)

でした。

他方、高額保険損害額の上位5件はすべて米国です
(ハリケーン・カトリーナ、アンドリュー、WTCなど)。
上位20件になると、日本の台風が2つ、欧州が5つ入ります。

先進国と新興国・途上国の違いがはっきり表れていますね。

※左はラゾーナ川崎、右はキュービックプラザ新横浜のツリーです。

 

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日本の損保市場

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報道によると、大手損保の10月の保険料収入は
エコカー補助金の終了などを受け、5社中2社で減収となったそうです。
損保の収入は自動車保険の動向に左右されます。

ところで、たまたま損保協会のHPで種目別統計表を確認する
機会があり、改めていろいろな発見がありました。
業界のかたには当たり前の話ばかりかもしれません...

まず目を引いたのは、傷害保険です。
傷害保険といえば「積立保険」というイメージがありました。
ところが、今や積立以外の保険料のほうが多いのですね。

2009年度の元受正味保険料(収入積立保険料を含む)は、
積立が3907億円、積立以外が6348億円です。
確かに今の金利水準では、貯蓄性を重視した積立保険
の提供は難しいのでしょうね。

主要種目を大きい順に並べると、自動車(3.4兆円)、
火災(1.4兆円)、傷害(1.0兆円、除く積立では6500億円)、
自賠責(8000億円)となります。
これに続く種目は何だかわかりますか?

答えは賠償責任で4747億円もあります。
他の種目が伸び悩むなかで、賠責だけは右肩上がり。
10年前の1.5倍、15年前の2倍近い規模まで成長しました。

日本企業のリスクマネジメント意識の低さは
しばしば指摘されるところです。
それでも時代は徐々に変わりつつあるのかもしれません
(もちろん、このデータだけで判断するわけにはいきませんが)。

※写真は前回に続き、金沢区の海岸です。

 

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終身年金の憂鬱

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ニッセイ基礎研究所の明田裕さんが
「終身保険の憂鬱」というレポートを発表しました。
A42枚の短編ですが、なかなかショッキングな内容を含んでいます。
ニッセイ基礎研HPへ

厚生年金の支給開始年齢が2000年から、60歳から65歳へ
徐々に繰り下げられていますよね。
しかし、他方で60歳や65歳時点の平均余命が着実に伸びており、
5年間の繰り下げ効果を上回りかねないというのです。

平均寿命の長さは世界に誇るべき話かと思いますが、
年金財政を確実に圧迫する話でもあります。
もし今のトレンドが続くと年金財政が持たないので、
保険料や国庫負担の引き上げ、年金支給額の引き下げ、
あるいは支給開始年齢のさらなる繰り下げなどが想定されます。

終身年金のリスク、つまり、集団全体の長寿化が進み、
支給額が増えてしまうリスクは、確かに民間で引き受けるのは難しく、
引き続き政府を中心に提供していく分野なのかもしれません。
ただ、民間が挑戦しなければならない分野という見方もできるでしょう。

なお、明田さんの主張は、公的年金の支給開始年齢を
75歳前後まで引き上げ、それまでの生活資金は私的年金
(=自助努力だが政府支援あり)でつなぐ、
すなわち、政府は長生きリスクに集中し、75歳までは民間に委ねよ、
というものでした。

※最近売り出し中の「豊橋カレーうどん」を食べてきました。
 一見ふつうのカレーうどんなのですが、食べ進めるとご飯が出てきます。
 カレーうどんの写真は...食欲に負けて撮り忘れてしまいました^^

 

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自転車対人事故の高額賠償

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各紙の報道によると、2007年以降、自転車と歩行者の事故で
自転車側に高額賠償を命じる判決が相次いでいるそうです。
賠償額は数千万円に上ります。
特に歩道上の事故では過失相殺を認めない流れだとか。

自転車乗りとしては、個人賠償保険などで身を守ろうとは思うものの、
どこかすっきりしません。

まず、加害者の資力が担保されていません。

自動車による対人事故であれば自賠責保険が使えますが、
自転車の対人事故への公的な備えはありません。
高額賠償を命じられた加害者に支払い能力がなければ
結局のところ被害者は救済されません。

自転車が安全に走れる交通システムが確保されないなかで
加害責任を自転車の運転者に一方的に負わせることにも
疑問があります。

普段から自転車に乗っていればわかります。
自転車は車道を走れと言われても(実際に走っていますが)、
車道は相変わらず自動車のもので、自転車への配慮など
ほとんどありません。

しかも、自転車は日本の交通システムのなかで
中途半端な状態に置かれてきたためか、
運転者のルールが徹底されていません。
街を走っていると、逆走する自転車に何回遭遇することか。

自転車に加害責任を全面的に負わせるのであれば、
自転車が安全に走れる環境の整備もセットではないでしょうか。

※写真は白川郷の民宿の朝ごはん。
 ホテルと違い、同宿者みんなでいただきます。

 

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