03. 保険市場の動向

終身年金の憂鬱

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ニッセイ基礎研究所の明田裕さんが
「終身保険の憂鬱」というレポートを発表しました。
A42枚の短編ですが、なかなかショッキングな内容を含んでいます。
ニッセイ基礎研HPへ

厚生年金の支給開始年齢が2000年から、60歳から65歳へ
徐々に繰り下げられていますよね。
しかし、他方で60歳や65歳時点の平均余命が着実に伸びており、
5年間の繰り下げ効果を上回りかねないというのです。

平均寿命の長さは世界に誇るべき話かと思いますが、
年金財政を確実に圧迫する話でもあります。
もし今のトレンドが続くと年金財政が持たないので、
保険料や国庫負担の引き上げ、年金支給額の引き下げ、
あるいは支給開始年齢のさらなる繰り下げなどが想定されます。

終身年金のリスク、つまり、集団全体の長寿化が進み、
支給額が増えてしまうリスクは、確かに民間で引き受けるのは難しく、
引き続き政府を中心に提供していく分野なのかもしれません。
ただ、民間が挑戦しなければならない分野という見方もできるでしょう。

なお、明田さんの主張は、公的年金の支給開始年齢を
75歳前後まで引き上げ、それまでの生活資金は私的年金
(=自助努力だが政府支援あり)でつなぐ、
すなわち、政府は長生きリスクに集中し、75歳までは民間に委ねよ、
というものでした。

※最近売り出し中の「豊橋カレーうどん」を食べてきました。
 一見ふつうのカレーうどんなのですが、食べ進めるとご飯が出てきます。
 カレーうどんの写真は...食欲に負けて撮り忘れてしまいました^^

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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自転車対人事故の高額賠償

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各紙の報道によると、2007年以降、自転車と歩行者の事故で
自転車側に高額賠償を命じる判決が相次いでいるそうです。
賠償額は数千万円に上ります。
特に歩道上の事故では過失相殺を認めない流れだとか。

自転車乗りとしては、個人賠償保険などで身を守ろうとは思うものの、
どこかすっきりしません。

まず、加害者の資力が担保されていません。

自動車による対人事故であれば自賠責保険が使えますが、
自転車の対人事故への公的な備えはありません。
高額賠償を命じられた加害者に支払い能力がなければ
結局のところ被害者は救済されません。

自転車が安全に走れる交通システムが確保されないなかで
加害責任を自転車の運転者に一方的に負わせることにも
疑問があります。

普段から自転車に乗っていればわかります。
自転車は車道を走れと言われても(実際に走っていますが)、
車道は相変わらず自動車のもので、自転車への配慮など
ほとんどありません。

しかも、自転車は日本の交通システムのなかで
中途半端な状態に置かれてきたためか、
運転者のルールが徹底されていません。
街を走っていると、逆走する自転車に何回遭遇することか。

自転車に加害責任を全面的に負わせるのであれば、
自転車が安全に走れる環境の整備もセットではないでしょうか。

※写真は白川郷の民宿の朝ごはん。
 ホテルと違い、同宿者みんなでいただきます。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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がんに関する意識調査

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先月になりますが、アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)が
「がんに関する意識調査」を発表しています。
アフラックのニュースリリース
アフラックではがんに関する各種イベント(セミナーや展示会など)
を開催しており、来場者にアンケート調査を行った結果だそうです。

アンケートによると、がん告知を望む人は全体の96%と
圧倒的でした(がん経験のない人が回答)。
回答者はおそらくがんに対する関心や意識が高い層のはず。
とはいえ、ここまで高いとは思いませんでした。

実際の告知率データは残念ながら見つかりませんでした。
国立がんセンターなど、がん医療の主要拠点病院では
ほぼ100%告知されるようですが、全体としてはよくわかりません。

ただ、私の父の場合もそうでしたし、芸能人の例を見ても、
がん告知は急速に普及しているようです。

がん治療費用に関する調査もあります
(保険会社が実施したアンケートですからね^^)。

がん経験のない人の7割以上が「200万円程度」「300万円程度」
「300万円以上」と回答したのに対し、
がん経験者の回答は、「50万円程度」が37%、
「100万円程度」が31%でした。
未経験者がイメージしているほどは、
実際には費用がかかっていないことが伺えます。

ただし、「300万円程度」「それ以上」という回答も
全体の12%を占めており、これをどう考えるかです。
保険でカバーしようとした場合、入院保険だけでは
あまり役に立たないような気がしますね。

※いつものことですが、コメントはあくまで個人的なものです。

※写真はJR城端線です。
 車窓から砺波平野の散居村が見えました。

 

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米国の変額年金販売

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2008年の金融危機を受けて販売休止が相次いだこともあり、
2009年度は変額年金の販売が減少し、銀行窓販の主力が
定額商品(定額年金、一時払い終身保険)に移りました。
これは日本の話です。

米国ではどうなっているのか気になったので調べてみると、
変額年金の販売はやはり2008年、2009年と減っています
(LIMRAのHPより)。

ただ、2008年に急増した定額年金の販売が、2009年には
小幅ながら減少しているところをみると、必ずしも変額年金から
定額年金にシフトしているわけではないことがうかがえます。
しかも、2010年の1-3月には変額年金の販売が前年を上回りました。

なぜ日本とは異なる動きになるのかというと、
一つは販売チャネルの違いがありそうです。

日本では銀行が一時払い商品のメインチャネルとなっており、
変額/定額ともに銀行が販売しています。

他方、米国では主に銀行が定額年金を販売し、
変額年金は証券チャネルが積極的に扱う、というとやや言いすぎですが、
証券チャネルの存在が大きいのは間違いなさそうです
(他に年金制度の違いも大きいようですが、ここでは触れません)。

もっとも、米国でも販売上位の顔ぶれは変わっています。
変額年金ではプルデンシャル、メットライフの2大生保が上位を占め、
INGやハートフォードは順位を下げています。
AIGは変額年金で7位、定額年金で2位と善戦しているようです。

※保険会社の本社は風格のあるビルが多いですね
 (どこだかわかりますか?)。

 

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チャネルシェアの変化

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久しぶりに保険ネタです。あくまで個人的なコメントで、
仕事とは一切関係ありませんのでお含み置き下さい。

2010.3.29の週刊金融財政事情に
「保険会社の時価総額世界ランキング」という論文が掲載されています。

論文のなかにセグメント別の新契約年換算保険料推移の図表がありました。
伝統的営業職員のシェアが、01年:7割 → 09年:4割と激減する一方、
銀行窓販や独立代理店(個人向け)のシェアが着実に伸びており、
日本の生保市場は市場内のマーケット・シフトが激しいとしています。

確かに伝統的営業職員のシェアは落ちているとは思いますが、
保険料なので、どうしても貯蓄性商品を扱う銀行窓販のシェアが
大きくなります。

利益、あるいは価値(EVなど)という観点で見れば、
08年度以降の銀行窓販はプラスかどうかも怪しいわけで、
保険料シェアの推移からマーケット・シフトが激しいとするのは
ちょっとミスリーディングだと思います。

他方、独立代理店(個人向け)のシェア拡大は、
もっと注目されていいのかもしれませんね。

 

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保険に入らなくなった?

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土曜日(12/26)の日経「日本gene U-29」のテーマの一つが
「保険に入らなくなった?」でした。

記事の中身はご覧いただくとして、使われた図表のなかに
「20代の生保加入率は大きく低下」というものがありました。
このデータは以前もここで取り上げたことのある
「生命保険に関する全国実態調査」の一部です。
HPには過去3回分の調査結果が掲載されています。

生命保険文化センターのHPへ

調査によると、1991年には約90%だった29歳以下世帯の加入率が、
2009年には71.6%まで下がったことが示されています。

ただ、直近の調査から「生協・全労済」も含まれるようになりました。
従来の「民保、簡保、JA」だけの加入率をざっと計算すると、
おそらく65%程度まで下がっているようです。

興味深いのは、今回加わった「生協・全労済」の加入率です。
全年齢では28.8%なのに対し、29歳以下は29.6%でした。

生協・全労済の主力である「一律掛金、一律保障」商品は
若年層には本来、相対的に不利なはずですが
(リスクの異なる20代も50代も同じ掛け金なので)、
それでも29歳以下世帯の支持を集めているのですね。

若年層の生保加入率低下の原因として
「オフィスのセキュリティー強化(=営業員が職場に入れない)」
がしばしば挙げられます。

しかし、このような生協・全労済の加入率をみると、
これは従来のビジネスモデルを前提にした言い訳のように
聞こえてしまいますね
(他に「若年層の所得水準低下」という深刻な要素もあると思いますが…)。

 

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通販自動車保険の成長

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三井住友海上HDのIR資料を見ていたら、
「通販損保ランキング」という資料がありました
(三井ダイレクト損害保険のところですが、まだ更新されていないかも)。

三井住友海上グループホールディングスのHPへ

通販というと外資系のイメージが強いかもしれませんが、
上位6社(ソニー、三井ダイレクト、アクサ、チューリッヒ、
アメリカンホーム、そんぽ24)のうち、3社は国内系です。

6社の自動車保険元受正味保険料は1686億円(2008年度)。
市場全体の保険料が3.5兆円程度(AIUを含む)ですから、
通販6社のシェアは4.8%となります。

ただ、3.5兆円のなかには企業のフリート契約なども含まれるので、
個人向けを全体の7割とすると、シェアは7%近くに上がります。
通販社がメインターゲットにしている顧客層、例えば、
都市部の週末ユーザーであれば、すでにかなりのシェアを
通販社が確保しているのではないでしょうか。

しかも、通販6社の収入保険料は今も成長を続けています。
ややペースが落ちてきたとはいえ、年8%前後伸びていますし、
この上半期もソニーが前期比11.7%増、三井ダイレクトが同11.8%増、
そんぽ24が同19%増となっています。

収支面でも、ソニーはすでに発生ベースで
コンバインドレシオが100%を下回っています。
三井ダイレクトも100%割れが見えてきました
(成長している会社では正味ベースだと数値がかなり低く出るので
発生ベースをみる必要があります)。

英国のような爆発的な伸びはありませんでしたが、
いよいよ無視できない存在になってきましたね。

※写真は港北ニュータウンの緑道です。
 自転車での紅葉めぐりもいいですよ。

 

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生命保険の全国実態調査

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最初にお知らせです。
今週水曜日(30日)の午後、セミナーインフォ主催のセミナーで
講師を務めます。演題は「ポスト金融危機の保険会社経営」です。
少人数で3時間のセミナーなのでそこそこの値段ですが、
まだ席があるようですので、ご関心のあるかたはお越し下さい。
セミナーインフォのHPへ

生命保険文化センターによる「生命保険に関する全国実態調査」
の直近版が17日に公表されています(速報版)。
この調査は3年ごとに行われており、今回の調査は
2009年4月から5月にかけて実施されました。

全生保の世帯加入率は90.3%でした。
ただし、今回から都道府県民共済、コープ共済、全労済が
新たに集計対象となったので、従来ベースでは86.0%でした。

民間の生命保険会社だけでは76.2%と、3年前の76.4%から
ほとんど変わっていないように見えます。
しかし今回から、かんぽ生命(5.7%)が含まれているので、
単純に見れば、実質的には6ポイント近くも下がったことになりますね。

過去の統計では、数値がこれほど下がったことはありませんが、
前回を異常値とすれば、1994年度(82.5%)をピークに、
毎年1ポイントくらい下がっているトレンドとなります。

加入率の低下は、調査のたびに回収サンプルの世帯年収が減り、
かつ、高齢化が進んでいることが大きいようですが、
世代別の加入率(速報版では公表されていません)など、
もう少し細かいデータがあれば、さらに何かわかるかもしれません。

もう一つ注目したのは、生活保障に対する考え方です。
世帯主に万一のことがあった場合に期待できる経済的準備手段を
複数回答で聞いたところ、トップは生命保険となっているものの、
回答率は57.5%と調査のたびに下がっています。
ちなみに1997年度の調査では72.4%ありました。

預貯金等は43%で概ね横ばい。不動産も2割程度で横ばいです。
何が増えたのかといえば、「期待しているものはない」という回答で、
1997年度の12.6%から2009年度は21.3%に上がりました。

生保破綻や金融危機などを経験した結果、このような冷めた回答が
増えているのかもしれません。

※写真は米国で見た銀行ATMのドライブスルーと
 セルフ式ガソリンスタンドです。

 

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芸能人の年金制度廃止

 

出張で大阪にいるからというわけではありませんが、
今回は芸能人の年金制度廃止について。

芸団協が運営してきた年金共済制度がこの6月に廃止になった
というニュースが各紙(朝日、毎日、読売)に載っていました。
「法改正や景気悪化で運営が難しくなったため」(朝日)とのことです。
ここで言う「法改正」とは、無認可共済への規制を入れた保険業法の改正と、
公益性の認定を厳しくした公益法人改革です。

共済事業を運営している公益法人は現在1000近くあるそうですが、
一般法人に移行すると、事業は自動的に無認可共済になります。
ただ、保険会社となるにはハードルが高いため、今回のように
共済制度を廃止するところが大半と見られています。

朝日の記事には、
「掛け金を随時減らせるなど柔軟性の高い商品設計を
 そのまま引き継ぐのは無理、と保険会社に言われた」
とありました。

確かにそのような商品設計は難しそうですが、
互助会的な共済事業にも規制の網をかぶせた以上、
それに代わるような手段を保険会社に提供してもらわなければ
困りますよね。保険会社の商品開発に期待したいものです。

この「芸団協」には95000人の芸能人が所属しているそうですが、
年金制度の加入者は2859人、受給者は2158人とのこと。
所属数と制度利用者のギャップが大きいのがちょっと気になりました。

「全体の56%が年収400万円を下回っている」というデータには
なんとなく妙な納得感がありました。

※写真は大阪・淀屋橋です。

 

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参考純率の引き上げ

損害保険料率算出機構が自動車保険の参考純率引き上げを発表しました。
自動車保険参考純率説明資料

算出機構の資料によると、今後の自動車保険の収支を試算したところ、
対人賠償保険・搭乗者傷害保険を中心に保険成績が悪化したため、
全体で5.7%の赤字になる見込みとなり、同率の引き上げを行ったとのこと。
このうち、最も一般的な自家用乗用車の引き上げは2.4%だそうです。

参考純率の引き上げとともに、年齢や運転者区分の細分化も行っています。
年齢区分では、保険証券に記名された被保険者の年齢別に、
新たに6区分が設定されました(26歳以上補償のみ)。
運転者についても、従来の「家族限定」が、「本人・配偶者限定」「家族限定」
に分かれました。こちらも年齢が関係しているようです。

この結果、若年層と高齢者の参考純率は大幅な引き上げとなりました。
例えば車両保険を付けず、全年齢補償の場合には13.6%の引き上げ
(運転者家族限定、等級20等級)、同じく車両保険を付けず、
記名被保険者が60歳以上では10.9%の引き上げです。

参考純率の引き上げはやむを得ないとしても、年齢区分の細分化については
判断が分かれるところでしょう。
「リスクの高い人は料率も高くすべき」というのは正論なのですが、
リスク細分が進みすぎると弊害もあるように思います。
今回の発表を受けて、各社は年齢区分の細分化をどこまで進めるでしょうか。

なお、かつてとは違い、保険会社は参考純率を使う義務はありません。
実際のところ、各社の損害率にはかなりの差がありますよね。
例えば、統合を計画しているMS海上とあいおい損保の保険料率は
どうなっていくのでしょうね。

※出張で台湾に来ています。

 

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