02. 保険会社の経営分析

大手生保の決算報道

生保の決算も概ね出そろいましたね。
まだまだ数字を確認できていないのですが、決算報道があまりにさびしかったので、少しだけコメントします。

以前にも書いたとおり、大手メディアはここ数年、生保決算として「保険料収入」「基礎利益」を伝えてきました。今回も見事に踏襲されていて、次のような見出しが並んでいます(本文は有料が多いです)。

大手生保4社の決算 対面営業の自粛などで減収【NHK】
生保大手、7社が減収 コロナで営業自粛響く 3月期決算【朝日(有料版)】
生保大手4社 減収 3月期 対面営業自粛で【読売(有料版)】
大手生保、8社が減収=上期の営業活動自粛響く【時事】
生保、デジタル移行遅れ 対面営業の限界 鮮明【日経(有料版)】

いずれも「コロナで営業活動が制限された」「(基礎利益を報じたメディアは)保有契約があるので基礎利益は大きく減らないが、減益」と、総じてパッとしない内容だったと伝えています(日経は保険料収入ではなく新契約年換算保険料で業績を語り、資産運用面の好調さにも触れています)。

しかし、EVなど企業価値の手掛かりとなる指標を公表している会社の数値を見ると、ものすごく増えています。

 第一生命HDのEEV +13,492億円
 住友生命のEEV   + 9,050億円
 明治安田生命    +13,200億円
 (グループサープラスを開示)
 かんぽ生命のEEV + 7,019億円

そうした手掛かりのない日本生命にしても、連結決算の包括利益は2019年度の▲6,305億円から、2020年度は2.8兆円と、まさにV字回復です。
昨年度は株価が大きく上がり、超長期金利も上昇(豪ドルも対円で大きく上昇)、死亡率や発生率は改善と、大手生保の主なリスクテイクがほぼすべてプラスに働きました。

ソフトバンクグループの決算は「好決算」と伝えるのに、同じように企業価値を高めた大手生保の決算をパッとしないトーンで報じるのはおかしいと、多くのかたに気づいてほしいです。

ソフトバンクG 最終利益4兆9879億円 東証上場の日本企業で最高【NHK】

※赤いアジサイもきれいですね。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

3メガ損保グループの決算

生損保の2021年3月期決算が出そろいつつあります。
オンライン授業の対応などに追われ、ちらっとしか見ることができていないとはいえ、せっかくなので3メガ損保グループについて少しだけコメントしましょう。

コロナ関連の保険金支払いは海外事業が中心で、各社とも上振れはなかった模様です。三井住友海上が52億円、あいおいニッセイ同和が167億円となっていますが、海外受再などが中心のようです。
国内事業でのコロナ関連支払いは3グループともに少なく、むしろ自動車事故の減少で収支にはプラスに効いています。

「大手損保、3社中2社が増益」という型どおりの報道もあり(時事通信など)、確かに連結純利益はそうなっています
IR資料を見ると、東京海上はコロナの影響(海外)や異常危険準備金繰入などにより減益。MS&ADはコロナの影響(海外)等を国内生保の増益がカバーし、ほぼ横ばい。SOMPOもコロナの影響(海外)はあったものの、自動車事故の減少などにより16%の増益。そのような説明ができそうです。

しかし、今回見るべきはこちらの数字ではないでしょうか(記載がないかぎり2020年3月末との対比)。

<包括利益>
 東京海上    27億円 ⇒ 4,650億円
 MS&AD △1,572億円 ⇒ 7,539億円
 SOMPO  △778億円 ⇒ 5,124億円

<連結純資産(経済価値ベース)>
 東京海上 3.1兆円 ⇒ 3.6兆円 ※2020年9月末との対比
 MS&AD  4.4兆円 ⇒ 5.4兆円
 SOMPO  2.7兆円 ⇒ 3.4兆円

いずれも相当な改善でして、なかでもMS&ADは純資産が1兆円も増えました。株価上昇、金利上昇といった市場変動によるところが大きいとみられます。3メガ損保グループともに、いかに市場変動の影響を大きく受けるかがわかります。

※アジサイがもう咲き始めましたね。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

第一生命グループの新中計

3月31日に第一生命ホールディングスが新たな中期経営計画を公表しました。
メディアで報道されたのは主に「元営業職員の金銭詐取事件(=第一生命が全額補償すると同じ日に公表)」のほうでしたし、株式市場では自己株式取得(=上限2000億円の取得を決定)が好感された模様ですが、新中計の中身も注目に値するものだと思います。
第一生命HDのサイトへ

これまでの中計は、つまるところ「グループ修正利益(=会計ベース)をいかに高めるか」を最も重視していたように見えました。もちろん、生保事業の新契約価値を高める取り組みも行ってきているのですが、こちらはグループ修正利益をただちに増やす効果はないので、外国証券の利息配当金を増やすなど、修正利益への即効性の高い資産運用に依存することとなり、結果として金融市場の変動に左右されやすいリスクプロファイルがずっと変わりませんでした。

これに対し、新中計は「ありたい自分」を見据えたうえで策定され、重要経営指標(KPI)は利益の絶対額ではなく、資本効率やリスク削減目標など、企業価値や資本コストを強く意識した、これまでにないものとなりました。グループ修正利益の絶対額は想定レンジを置いただけです
(事業規模の指標としては「お客さま数」を掲げています)。
資本充足率(ESR)のターゲット水準に加え、資本政策の考え方も示しました。

競合する大手他社が総じて保険料や基礎利益を目標とするなかで、今回の第一生命グループの新中計は経営の変化を感じさせるものでした。あとは、株主やメディアなど外部ステークホルダーの理解を得るために、説明を重ねていく必要があるのでしょうね。

<参考>
日本生命グループの中計(2021-2023)のKPI
・お客様数(国内)
・保有年換算保険料(国内)
・基礎利益(グループ)
・自己資本(グループ)

住友生命グループの中計(2020-2022)のKPI
・保有契約件数(国内)
・保有契約年換算保険料(国内)
・うち生前給付保障+医療保障等(国内)
・基礎利益(国内)
・基礎利益(海外)

※福岡の桜はほぼ散ってしまいましたが、せっかくなので先週の写真を。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

生保の超長期国債購入

総務省と農水省の幹部職員が相次いで国家公務員倫理規程違反で処分されるというのは、短期間ながら中央官庁での勤務経験者としては、残念かつ不思議でなりません。
両省は先週、処分とともに再発防止策を打ち出しました。ただ、「認識が甘かったので、研修で徹底させる」「届け出に関する新たなルールを作る」というのが本当に防止策になるのでしょうか。倫理研修は今でも定期的にやっているでしょうし、届出ルールも存在していますので、これ以上、研修や届出ルールを整備しても、屋上屋にしかなりません。
現場の職員が委縮して外部との接触を避けるほどのルールがあり、知識としてはみんな知っているのに、なぜ幹部職員が率先してルールを守らなかったのかという根本的な原因を探らなければ、再発防止策にはならないと思います。

生保の超長期国債購入

先週の金融市場では、生命保険会社による超長期国債の購入が話題になっていたようです。例えばロイターは、1月に生損保が超長期債を8年ぶりの高水準となる約1兆円買い越したと伝えました(ニュースはこちら)。

記事だけだとわかりませんが、生保はここにきて急に超長期債の購入を増やしたのではなく、2019年10月あたりから購入が目立っています。これは日本証券業協会の統計だけでなく、主要生保の決算データからも確認できます。

主要生保の決算データを見ると、マイナス金利政策が導入された2016年1月以降、超長期債の購入をしばらく中断していました(残高を増やさなかった)が、2017年度半ばあたりから姿勢がやや変わり、2019年10-12月期からは残高の積み増しが続いているのがわかります。
ただし、過去のブログでもお伝えしたように、会社によって動きが異なるのが最近の特徴かもしれません。

過去のデータを見ると、日本証券業協会の統計は、なぜか保険会社の決算データの動きと合わないこともあるようです。例えば、マイナス金利政策導入後、日本証券業協会の統計は決算データと違い、それなりに買い越しが続いていました。
加えて、月次の統計は振れやすいので、まずは金利水準がさらに上がった2月の数値(3月22日公表)に注目しましょう。

※写真は北九州市の木屋瀬(こやのせ)です。宿場町として賑わいました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

ソニーがIFRSを任意適用へ

ソニーが連結決算で適用する会計基準を、従来の米国会計基準(US-GAAP)から国際財務報告基準(IFRS)に替えるという発表がありました。2021年度の決算(第1四半期)からIFRSによる開示が始まります(2021年度って、この4月からですよね!)。
ソニーのニュースリリースはこちら(PDF)です。

ソニーがIFRSを任意適用するということは、昨年ソニーの完全子会社となったソニーフィナンシャルホールディングス傘下のソニー生命も、連結決算のためにIFRSによる決算対応を行うことになります。グループがIFRSを適用している生命保険会社にはアクサ生命や楽天生命などいくつかありますが、ここに資産規模が10兆円を超えるソニー生命が加わります。3メガ損保など上場保険グループは今後どう対応するのでしょうか。

IFRS17号(保険契約)の発効は2023年なので、早期適用が可能とはいえ、この4月からは暫定基準のIFRS4号を使うことになるのでしょうか。そうだとすると、US-GAAPと日本基準の違いである繰延新契約費(新契約コストを繰延資産として計上)がIFRSでも受け継がれ、これまでとあまり変化はないのかもしれません。
ただ、遅くとも2年後のIFRS17号適用となると、保険負債の評価が大きく変わり、毎期の損益もだいぶ違うものとなりそうです。もっとも、契約上のサービスマージン(CSM)の残高と取り崩し方法、あるいは割引率の設定方法しだいという気もします。

過去の決算データを確認すると、ソニーのセグメント別利益のなかで、金融はこれまで安定的に利益を計上してきました。2016年3月期のように超長期金利が低下し、MCEVが大きく減っても、他のセグメントでしばしば見られるような損益の大きな落ち込みはありませんでした。
これは、ソニー生命が金利以外の資産運用リスクをできるだけ抑えてきたことと、US-GAAPも日本基準と同様に責任準備金がロックイン方式なので、金利変動による負債面の影響をほとんど反映していなかったことが大きいと考えられます。

※福岡・愛宕神社からの景色です。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

3メガ損保グループのIR説明会から

今週のInswatch Vol.1063(2020.12.14)に寄稿したものです。
——————————
今回は生命保険会社ではなく、3メガ損保グループが先月下旬に開催した投資家・アナリスト向け説明会を取り上げます。
各社とも5月と11月の決算発表後にIR説明会を行っています。以下ではそのごく一部を紹介しますが、投資家やアナリストではなくても、各社のサイトに行けば、説明会の様子を動画で観たり、説明資料や質疑応答を確認したりできます。

時間をかけて各業務を説明:東京海上

東京海上グループはいつもと違い、3時間半におよぶミーティングを実施しました。最初にグループ戦略の全体像をホールディングスの小宮社長が説明し、続いて国内事業戦略、海外事業戦略、資産運用戦略について、それぞれの責任者が説明するというものでした。
国内事業戦略では、東京海上日動の広瀬社長、あんしん生命の中里社長ともに強調していたのが、デジタルを高度に活用し、ビジネスモデルを進化(深化)させるというもの。生保ではデジタル募集の取り組みを加速し、損保ではさらなる事業効率の向上を図るとしています。

CSV×DXで成長を:MS&AD

MS&ADグループの説明会ではホールディングスの原社長が、同社が中期経営計画で掲げている、CSC(Creating Shared Value、社会との共通価値の創造)をデジタル・トランスフォーメーション(DX)による既存ビジネスの変革で進めていくことを改めて強調していました。とりわけ商品・サービス面では、請求を受けて支払うだけの保険から、DX等により事故の発生を未然に防ぎ、発生してしまった場合の影響も小さくする保険へと、保険の役割を変えるという説明がありました。
国内損害保険事業では、これまで進めてきたビジネススタイル改革による事業費削減を、オンラインシステムの刷新やリモートワークによって確実なものにするとのことでした。

リアルデータの活用:SOMPO

SOMPOホールディングスの櫻田社長からは、安心・安全・健康のテーマパークの構築は不変としたうえで、基本3戦略の1つに「新たな顧客価値の創造~テーマパークの具現化~」を掲げ、リアルデータの獲得とデータ解析により新たなソリューションを生み出す「リアルデータプラットフォーム構想」に取り組むという話がありました。その具体例として、グループの介護事業が持つリアルデータを組み合わせ、解析することで、新たな介護ビジネスモデルの実現を目指しているそうです。
国内損保事業に関しては、次期中期経営計画でも料率適正化と事業費削減を柱とする収益構造改革を一段と進めます。

問われる営業支援体制

新型コロナ禍が日本企業のデジタル化を加速させるというのは、3メガ損保グループにも当てはまるようですが、気になったのは、国内事業でデジタル化が進んだ結果、販売チャネルはどうなるのかという点です。
保険会社は新しい技術を駆使した営業支援をどんどん開発していくので、デジタル社会に適用しようと考えている代理店にはいい時代になりそうです。他方で、これまで代理店の営業支援を行っていた保険会社の社員はどうなっていくのでしょうか。
今回のパンデミックによって、顧客との接点を何らかのかたちで確保できるのであれば、保険会社による接触型営業支援がなくても現場には大きな問題がないことが明らかになりました。二重構造問題は長年の課題であり、保険会社が語る「付加価値の高い業務への挑戦」「デジタル人財の育成」がそう簡単に成果をあげられるとは考えられません。浮いた人材をどうするかは保険会社にとって大きな課題となっています。
——————————

※写真は晴れていますが、福岡でも雪が舞いました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

生保の資産運用動向

国内系生保の4-9月期決算が出そろったので、資産運用の動向をざっと確認してみました。
経済価値ベースのソルベンシー規制導入が見えてきたなかで、何か変化が見られるでしょうか。

金利リスク

ソルベンシーマージン比率が経済価値ベースになると、これまでほとんど反映されていなかった金利リスク(資産および負債)が反映されるようになります。
10年超の国内公社債や責任準備金対応債券の残高などを確認したところ、次のように分類できました。

 増加が続く:日本、太陽、大同、ソニー

 増加に転じた:第一、明治安田

 減少が続く:住友、朝日、富国

 概ね横ばい:大樹

リスクの現状も支払余力の状況も会社によって違うということを踏まえたうえで、金利リスクへの対応状況にはバラつきがあるとわかります。

金利以外の市場リスク

一方、この半年の国内株式(取得原価)の動きを確認したところ、次のとおりでした。

 増加傾向:住友、朝日、太陽、富国

 減少傾向:日本、第一、明治安田、大樹、大同

 その他:ソニー(ほぼ保有せず)

外国公社債についても同じように取得原価を確認してみました。

 増加傾向:第一、住友、富国、ソニー(外貨建て負債見合いとみられる)

 減少傾向:日本、明治安田、朝日、大同

 ほぼ横ばい:大樹、太陽

こうしてみると、全般的にリスク抑制を強めている会社もあれば、リスクをとる方向で動いている会社、金利リスクを抑制し、他の市場リスクを増やしている会社など、現時点ではリスクテイクの姿勢に個別性が強まっているようです。
なお、信用リスクなど、他の資産運用リスクについても確認したいのですが、上場会社のような追加的な開示がないと、分析が難しそうです。

※写真は筑前の小京都・秋月です。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

3メガ損保の決算発表

11月19日に3メガ損保の2020年4-9月決算発表がありました。
ざっと見て、特徴は次の3点でしょうか。

・海外事業で新型コロナ関連の支払いが当初の見込みより増えた
・自動車保険の損害率が4-6月より7-9月は上昇したが、引き続き前年を下回る水準だった
・前年度までの自然災害を受けて、火災保険の出再保険料が増加した

新型コロナ禍のなかでも自動車保険の正味収入保険料は大手4社ともに増収でした。
主に料率引き上げによる単価上昇が寄与しているようですが、東京海上とあいおい損保は契約台数も増えています。
他方、傷害保険では東京海上と損保ジャパンの減収が目立ちます。旅行保険の減収が大きかったようですが、保険金の支払いも減ったようです。

4-6月期と同様に、国内事業と海外事業で新型コロナ禍による影響がちがうことが目立つ決算でした。
もっとも、金融市場の混乱が続いていたら、国内事業もかなり景色が変わっていたとは思います。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

第一生命HDの決算報道

「第一生命ホールディングスが13日発表した2020年4~9月期の連結決算は、純利益が前年同期比9%減の833億円だった。株安や円高に備えた金融派生商品の取引で約1000億円の損失が出た。海外での新型コロナウイルス関連の保険金支払い拡大も響いた。」
(11月13日の日経)

短い記事のなかで決算を報じるとなると、増減益だけを伝えることになってしまうのでしょう。
しかし、減益は「金融派生商品の取引で約1000億円の損失が出た」、つまり、ヘッジ会計非適用のデリバティブ取引で損失を計上したということなので、現物資産の価値は上がっているはずですし、実質的には純利益が倍増したとも読めます。もしかしたらこの記事はそう伝えているのでしょうか?

ちなみに少し前の記事ですが、日経新聞は香港に拠点を置くAIAの決算について、次のように報じています。

「アジアの保険大手AIAが12日発表した2019年12月期決算は、新規保険契約の価値を示す新業務価値(VONB)が41億5400万米ドル(約4300億円)と前の期に比べ6%増にとどまった。香港の大規模デモの影響で中国本土から香港に来て保険を買う人が減り、18年12月期の22%増に比べ伸びが大幅に鈍った。(中略)税引き後の営業利益は9%増の57億ドルだった。」
(2020年3月12日)

第一生命HDでも同じように、「4-9月期に獲得した契約の価値を示す新契約価値は256億円と、前の期に比べ60%減った。営業自粛の影響で第一生命の新契約が大きく落ち込んだことが主因。純利益は9%減の833億円だった」といった記述にしたら、多少は意味のある情報になると思います。

なお、第一生命HDのグループEEV(エンベディッド・バリュー)は金融市場の回復を受け、3月末に比べて9400億円増えています。株価上昇と超長期金利の上昇が影響した模様です。

※紅葉八幡宮という神社に行きました。七五三なつかしいです。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。

生保の第1四半期報告より

今週のInswatch Vol.1050(2020.09.14)に寄稿したものです。
一時的な緊急事態から新たな生活様式にシフトするなかで、各社の新契約獲得力はどうなっていくのでしょうか。
——————————

対面チャネルは総じて厳しい結果に

既報のとおり、新型コロナ感染症による営業自粛で、第一四半期(4-6月期)の生保各社の業績は著しく落ち込みました。

営業職員を主力チャネルとする大手生保では、個人保険の新契約件数、新契約年換算保険料ともに前年同期に比べて5~7割減少しています(明治安田生命は約4割減)。
代理店による生損保クロスセルを主力とする損保系生保では、新契約が前年同期に比べて2、3割の減少にとどまっています。ただし、これは損保代理店がコロナ禍のなかで生保営業に邁進したというのではなく、経営者保険の税制見直しにより前年同期の数字が落ち込んでいたためとみられます。中小企業を顧客基盤とする大同生命の新契約年換算保険料が前年よりプラスとなったのも、おそらく同じ理由です。こうした特殊要因のない2018年と比べると、いずれの会社も落ち込みが大きくなっています。
銀行窓販が主体の会社(第一フロンティア生命、三井住友海上プライマリー生命)でも新契約は大きく落ち込みました、こうしてみると、4-6月期は営業職員、代理店、銀行と、どのチャネルでも対面販売はコロナ禍の影響を強く受けたことが確認できました。

他方で、ダイレクトチャネルを主力とする会社は新契約を伸ばしました。ライフネット生命、アクサダイレクト生命、SBI生命などで、「ステイホーム」が追い風となりました。
オリックス生命、はなさく生命、メディケア生命なども健闘しています。オリックス生命は新契約件数も新契約年換算保険料も前年同期比1、2割しか減っていませんし、経営者保険による影響もほとんどありません(ダイレクトチャネルが貢献した可能性はあります)。ちなみに、はなさく生命は日本生命グループ、メディケア生命は住友生命グループの会社です。

個人は解約に動かず

解約が増えているという報道もありましたが、4-6月期の数字を見るかぎり、全体としては、解約はむしろ落ち着いていました。銀行窓販が主体の2社では1-3月期に続き、解約返戻金が高水準となりましたが、あとはエヌエヌ生命とマニュライフ生命の解約がやや目立つ程度です。
銀行窓販で解約が多いのはやや気になります。すでに解約控除期間が終わっている契約であればいいのですが、銀行の勧めにしたがい預金から貯蓄性保険にしてしまい、いざ手元に資金が必要となってはじめて顧客が解約控除の存在を知った、などということはなかったでしょうか。

手元資金に関連して、各社の契約者貸付の残高も調べてみました。6月末の残高が3月末に比べて100憶円単位で増えたのは、日本生命、かんぽ生命、大同生命、ソニー生命、プルデンシャル生命、エヌエヌ生命、あんしん生命でした。経営者保険に注力してきた会社で増加が目立ちますが、契約者貸付に対する取り組み方針による違いもありそうです。

4-6月期は緊急事態宣言が出されるなかでの営業活動でしたが、新たな生活様式が定着してきた7-9月期(とはいえ第2波の影響もありそうですが)の契約動向に注目したいと思います。
——————————

※福岡大学では後期の授業が始まり、着任して初めて対面授業を行いました。

 

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。