02. 保険会社の経営分析

金利が上がったから金利リスクを削減?

インシュアランス生保版(2022年12月号第1集)に寄稿したコラムをご紹介します(見出しはブログのオリジナルです)。その後、経営方針の説明はありましたでしょうか?
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生保の資産運用計画

10月下旬に大手生命保険会社の資産運用計画(下半期)に関する報道があった。各社は半年ごとにマスメディア向けの運用方針説明会を行っていて、報道はこれを受けたものである。
このうち、説明会の内容(なぜか一般には情報公開されていない)を比較的そのまま報じていると思われるロイターとブルームバーグの記事をみると、大手生保はいずれも国内債券への投資を増やす計画となっていた。ここで言う国内債券は主として超長期債であり、多くの生保にとって超長期債の購入は安全資産への逃避ではなく、超長期の保険を提供してきたことに伴って抱えている金利リスクを減らす取り組みを意味している。

金利上昇は経営にポジティブなはずだが

記事に載った各社のコメントをそのまま紹介しよう。
「30年が1.5%程度に来ており過去数年と比べるとかなり投資しやすい環境(日本生命・10月24日のブルームバーグ)」「1%台後半であれば追加的な投入も検討できる」(住友生命・10月25日のロイター)」「今の時点ではそれなりに投資妙味がある、買って良い水準だと認識している(明治安田生命・10月25日のロイター)」。いずれも金利が上がったので超長期債への投資を増やすという内容だった。

各社が抱えている金利リスクとは、金利水準が下がると損失を被る(会社の価値が減ってしまう)リスクである。ということは、上半期の金利上昇により、大手生保の会社価値はむしろ高まっているはずだ。それにもかかわらず、各社は金利リスクの削減を加速すると言い、健全性のさらなる改善に舵を切ろうとしていることになる。

経営方針の説明が必要

第一生命のように経営として中長期的なリスク構成の見直しを打ち出し、金融関連のリスク削減を進めているのであれば、そのなかでのペースメイキングであると理解できる。しかし、そのような説明もなく「金利が上がったからリスク削減を進める」と言われても、何をしたいのか外部観察者からは全くわからない。
健全性が回復した現時点でもリスク削減が必要だというのであれば、そもそも回復する前にリスク削減を加速しなかった理由を説明してほしい(結果オーライということか?)。あるいは、もともと健全性に不安はなかったが、ここからリスク削減を加速することで、余剰となった資本を保険契約者等に還元する方針に転換したということか。余剰資本を海外M&Aなど新たな戦略的投資に回すという選択肢もありうるとはいえ、特に相互会社の場合、社員(契約者)がそうした経営方針を望んでいるとは考えにくい。

大手生保はガバナンス改革を進めているのであれば、形を整えるよりも、こうした局面で重要な経営方針を会社の内外にきちんと説明できることのほうが重要ではないだろうか。
このコラムは上半期決算の発表前に書いているので、掲載時には各社がすでに経営方針をきちんと説明していると期待したい。
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※トロッコ列車に乗りました。

 

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コロナと損保決算

最近発表された3メガ損保の決算資料やIR資料を眺めていると、損保グループでもコロナ関連の給付金支払いがかなりの金額で発生していることがわかります。

まず国内生保事業では、あんしん生命が約90億円、MSA生命が113億円、ひまわり生命が218億円の給付金支払いがありました。大半がみなし入院に伴う支払いだと考えられます。

これに加え、国内損保事業でも給付金支払いが発生しています。東京海上日動が220億円、三井住友海上が206億円、あいおいニッセイ同和が86億円、損保ジャパンが131億円です
(4社合計で643億円)。
種目別には「傷害保険」となっていますが、主に医療保険ではないかと。

(12/2加筆)
損保で医療保険を扱っている場合にはそうですが、傷害保険でも感染症特約などがあり、「主に医療保険」というのはあまり正確な表現ではなさそうです。 

さらに目を引くのは、台湾での損失計上です。東京海上グループは通期で960億円の関連損失、MS&ADグループは同200億円の支払いを見込むと発表しています。
台湾では2021年以降、損保業界によるコロナ保険の販売が広がっていたようです。ところが台湾政府は今年4月、それまでのゼロコロナ政策からウィズコロナ政策に転換し、感染者数が急増したため、台湾の損保業界全体が多額の支払いを迫られることになりました。東京海上グループが49%分を出資していた新安東京海上も増資が必要な状況となり、9月末に株式を追加取得して子会社にしました。

なお、自動車保険の損害率が顕著に上昇している(特にEIベース)のは、コロナの影響(交通量の回復)のほか、ひょう災など自然災害による支払いが多かったためです。とはいえ、自然災害を除くベースでみても、MS&ADの2社の損害率はコロナ前の水準を上回るところまで戻っており、今後の動向に注目です。

※写真は朝の岡山城です。

 

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上場生保の決算発表から

上場保険グループの4-9月期決算が発表されましたので、このうち生保(上場生保と損保の生保子会社)の注目指標をざっと眺めてみました。

4-9月期の生保事業は、①コロナ関連給付金支払いの影響、②内外金利上昇およびヘッジコスト上昇の影響、③円安の影響などなど、久しぶりに注目材料が目白押しです。加えて、それぞれの影響がどこにどのような形で出てくるのかにも注目です。
とはいえ、上場保険グループの決算資料をまだざっと眺めただけなので(すみません)、ここでは2点だけコメントしておきます。

1つは①に関して。第三分野にあまり注力してこなかった大同生命とソニー生命を除き、損益計算書の「給付金」が前年同期の1.5倍程度に増えています。9月下旬に支払い基準の見直しを行わなかったら、通期ではすごいことになっていたでしょう。

もう1つは②のうち、内外金利上昇の影響で「実質純資産(実質資産負債差額)」が大きく減っていることです。
現行のソルベンシー規制において、金融庁はソルベンシー・マージン比率とともに実質純資産の確保を求めています。ただし、実質純資産は単純に時価ベースの資産から負債(資本性の高いものを除く)を差し引いて計算するので、金利リスク削減のために超長期債を保有していると、この4-9月期のように超長期金利が上昇すると、数値が減ってしまいます(負債はいわば簿価ベースなので)。
金利上昇によって、経済価値ベースでは健全性が改善しているはず(フルヘッジであれば横ばい)なのに、現行基準ではむしろ悪化するように見えてしまうということで、私はかねてからこの指標を速やかに廃止すべきと主張してきたのですが…金融庁やメディアが妙な反応をしないことを期待します。

今週中には非上場の生保決算が概ね出そろうのではないでしょうか。

※写真は福岡城址です。秋ですね。

 

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生保の下半期運用方針

1週間ほど前に、主要生保がメディア向けに下半期の運用方針説明会を開いたようで、それによると、「ヘッジ外債の投資妙味が薄れている」(ロイター記事より)ことからヘッジ付外債の残高を減らす一方、超長期債(円建て)への投資を増やすとのことでした。

ただし、コメントをよく見ると、超長期債の購入にあたり「負債コスト」(おそらく平均予定利率)を強く意識している会社がいくつかあるようで、どこか違和感を感じました。「個人保険も団体年金も同じどんぶり勘定?」ということではないでしょうけど、「平均予定利率を上回るから金利リスクの削減ができる」という考えが、私にはしっくりこないのですね。
というのも、円金利の上昇によって経済価値ベースのソルベンシーは増加しているはず。リスクへの耐久力が高まってからリスク削減を加速するというのはどうしてなのでしょうか。決算発表の際にはぜひご説明いただきたいです。

他方で、上半期の注目ポイントの1つは為替ヘッジコストの急上昇による影響です。ヘッジ付外債は円債の代替ではなく、海外の長短金利差などをリターンの源泉とした投資です。金融市場の動向次第でうまくいくときもあれば、失敗するときもあります。この上半期はヘッジコストが急上昇(ざっくり1%⇒4%)したため、同じ年限の円債よりも利回りが相当悪化したものとみられます。
もちろん、外部環境の変化を受けて、機動的な対応ができた会社もあったかもしれません。とはいえ、日銀の金融システムレポートによると、大手9社のヘッジ付外債は10年前から倍増し、2021年度末には30兆円を超えています。上半期に損失覚悟で売却を進めたとしても、全体として厳しい結果となった可能性があります。運用方針説明会で記者さんはそうした質問をしなかったのでしょうか?

※この週末は日本保険学会の年次大会でした。

 

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生保の2022年度4-6月期業績(続き)

2022年6月末の大手生保(日本、第一、住友、明治安田)のソルベンシーマージン比率(SMR)を確認したところ、水準自体に全く問題はないものの、他社に比べて住友生命の低下幅が大きいことに気がつきました。

日本 1043%(△ 16%ポイント)
第一  886%(△ 21%ポイント)
住友  688%(△121%ポイント)
MY 1023%(△ 38%ポイント)

( )は2022年3月末との差

4-6月期決算でもSMRの分子・分母の内訳や有価証券の時価情報は公表されています(デリバティブ取引の開示は一部の会社のみ)。これによると、住友生命のSMR低下は、分子の「ソルベンシーマージン総額」の減少が他社よりも大きかったことと、分母の「リスクの合計額」が増えたこと(日本生命と第一生命は減少、明治安田生命は微増)によるものとわかります。

分子の減少は「その他有価証券評価差額金」の減少、つまり、その他有価証券区分の含み損益が減ったことが大きいです。4-6月期には海外金利が上昇した影響で、外国公社債の含み損益が減りました。これは4社に共通しています。加えて住友生命の場合、このところ増やしてきた「外国株式等」の含み損益の減少も目立ちます。ただし、今の開示ではこの詳細はわかりません。

分母のほうは、日本生命と第一生命が外国公社債の残高を減らしたのに対し、住友生命と明治安田生命は増やしています。とはいえ、明治安田生命の資産運用リスク相当額が微増にとどまり、住友生命が増加している理由は、残念ながら今の開示ではわかりません(外国証券の関係ではないかと思いますが…)。住友生命に限らず、各社はもう少し外国証券に関する情報開示を進めてほしいところです。まあ、デリバティブ関連であれば9月期に何かわかるかもしれませんね(株式のヘッジポジションの関係とかであれば)。

なお、準大手では富国生命のSMRが82%ポイント下がっていますが、分子のソルベンシーマージン総額が減った最大の要因は国内公社債の含み損益が減ったことでした。富国生命は保有する国内公社債の大半を「その他有価証券」区分としているため、金利上昇の影響を受けたとみられます。経済価値ベースでみれば、全く違った動きとなっているのでしょう。

※写真は東京・大手町の某ホテルからの景色です。

 

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生保の2022年度4-6月期業績

新聞報道はどうして生保の保険料収入へのこだわりが強いのでしょうか。4-6月期決算を報じた記事「第一生命、保険料収入で日本生命抜く(有料記事)」では、主要会社の保険料等収入のランキングを載せています。毎度のことながら、この数字で何かを語ることの無意味さを示しておきましょう。

・保険料等収入は単にその期に受け取った保険料ということで「売上高」ではない
 (平準払い商品では過去に獲得した契約の保険料が多い)
・貯蓄性の強い商品の影響を強く受ける(特に一時払い商品と団体年金)

この4-6月期は外貨建て保険の販売が増えたのは確かですが、同時に解約返戻金が急増しているのにも注目です。一時払いの外貨建て保険の主要チャネルは金融機関なので、円安・海外金利上昇を受けて「解約による利益確定」「新たな契約の加入」が同じところで行われた可能性があります。「販売が増えた」だけではなく、そこにも触れてほしかったです。

給付金支払いの動向も確認してみました。先日確認した損保系生保(あんしん、MSA、ひまわり)の主力チャネルは代理店です。営業職員チャネルを主力としている生保でも給付金の支払いがかなり増えていて、今のところチャネルによる差は明らかではありません(8/16追記:保有ANP対比でみると営業職員チャネルの「支払率」が高いように見えますね)。少なくとも、昨年度1年間の支払いを大きく上回る入院給付金の支払いが4-6月期だけで生じていることが確認できました。

※くろちゃんの本名は「あそ くろえもん」なのですね。特急あそぼーい!の車内にて。

 

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大手損保の2022年4-6月期の業績

5日に大手損保グループの2022年4-6月期決算発表がありました。

「自動車保険の支払いが増えたので減益」(日経)とあったので、数字を確認してみたところ、確かに発生保険金は増えていますが(損保ジャパンはEIベース損害率から推測)、6月に発生したひょう災の影響が大きかった模様です。通常であれば、自然災害による支払いが多いのは火災保険ですが、この4-6月期に関しては、自動車保険が自然災害による発生保険金の6割を占めました。
ただし、4-6月期は例年損害率が低い傾向にあることを踏まえると、自然災害を除くベースでもそこそこ支払いが多かったと言えるのかもしれません。

コロナ感染拡大の影響もみられます。
グループ各社の生保子会社(あんしん、MSA、ひまわり)では、給付金の支払いが急増しています。MSAとひまわりは給付金支払いがそれぞれ前年同期の1.5倍に増え、あんしんも26%増でした(同社は支払備金の増加が目立ちます)。損保の傷害保険の支払いも増えているようです。
海外事業でも、東京海上グループは台湾政府の政策変更(ゼロコロナからウィズコロナへ)に伴う感染者の急増で、7-9月期に500億円以上の損失を計上すると公表しました。日本でもそうですが、コロナ感染症は保険会社にとって、疾病そのものリスクよりも政策リスクが大きいようです。

※福岡よりも暑かった!(1週間前の写真です)

 

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諸手数料および集金費の推移

7月7日付け保険毎日新聞のインタビュー記事のなかで、「(正味収入保険料との対比で)代理店手数料が多くを占める諸手数料及び集金費の割合は年々上昇している」「保険料に占める代理店手数料等の割合が年々高まり続けるのは異様に見える」と述べました。

この理由が気になったので、保険会社数社に確認してみたところ、消費増税の影響が無視できないことがわかりました。保険会社が受け取る保険料は非課税なのに対し、代理店手数料には消費税がかかります。この10年間に2回の消費増税(2014年4月と2019年10月)があったので、その影響で保険会社が支払う代理店手数料が増え、事業費率を押し上げる要因となりました(ただし、同じタイミングで保険料率の引き上げもあったとは思います…)。
また、対比する保険料を正味ベースとしたたため、ハードマーケットの中で出再保険料が増えると、正味ベースでは保険料に占める代理店手数料等の割合が高まることになります。なかでも三井住友海上と損保ジャパンは元受と正味の乖離が大きくなっているようです。

それではということで、保険料を元受ベースにして、消費増税の影響を取り除いて数字を作成したところ、元の数字ほど右肩上がりではないにせよ、少なくともここ数年は各社ともやはり上昇傾向にあることがわかりました。代理店の大型化(直資代理店を含む)に伴う手数料の増加など、他にも理由がありそうです。引き続き注目していきたいと思います。

※マンゴーかき氷、絶品でした。

 

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生保の新契約動向

5月8日のブログでご案内したRINGの会オープンセミナーが2週間後に迫ってきました。リアル参加かオンライン視聴かで迷っているかたも多いのではないかと思います。リアル参加はおそらく上限があるでしょうから、そろそろ申し込んだほうがいいかもしれません。
<申し込みはこちらへ>

さて、今回は生命保険会社の新契約動向を、少し長いスパンで見てみましょう。いずれも新契約年換算保険料(ANP)です。
まずは大手生保4社の動向から。

上のグラフが個人保険の15年推移、下のグラフが個人保険に占める第三分野(医療保障・生前給付保障等)の割合です。
日本生命と他の3社でやや傾向が違うようです。他の3社の回復が遅れているように見えるのと、経営者向け保険や第三分野の取り組み方針の違いがありそうです。日本生命は他社よりも死亡保障を重視した戦略をとっているとみられます。

次は「ソニー」「プルデンシャル」「メットライフ」「アフラック」「アクサ」です。
なかなか興味深いグラフとなっています。なかでもアフラックの動向が気になります。

最後は損保系生保3社です。
足元は緩やかな回復といったところですが、15年間で見ると、あんしん生命と他の2社でグラフの形がかなり異なっています。

これらをもとに各社の販売戦略を確認すれば、もう少しいろいろなことが見えてくるのではないかと思います。

※あじさいの季節になりましたね。

 

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生保の規制対応が一巡

最初にセミナーのご案内です。
今年も損保総研の特別講座で講師を務めることになりました。
保険会社経営の今後を探る ~最近の環境変化を踏まえて~」という演題で、6月28日(火)の18:00開催となっています(申込締切は21日)。zoomによるライブ配信なので、お茶の水の損保総研に行かなくても参加可能です。ご関心のあるかたはぜひご参加ください。

さて、主要生保の2021年度決算が出そろい、5月27日の日経には決算のまとめ記事のほか、「超長期債 買い手消える日(有料会員限定)」という記事が出ていました(ポジションというコラムです)。

「資本規制への対応で買ってきた生命保険会社の対応が一巡した(後略)」

「(市場参加者のコメント)『買い増しは昨年度までに一巡した。需給面で生保の超長期債への買い圧力は今後弱まる』と話す」

このようなことが書いてあったので、文字通りポジショントークとは思いつつ、まずは「一巡した」と言えるほど買い増しが進んだのか、決算発表で残存期間別の公社債残高を公表している主要生保10社の数字を確認してみました。
この1年間で10年超の公社債を増やした会社は7社ありましたが、前年度よりも増加が目立ったのは第一と大同くらいでした。住友や朝日のように、10年超の公社債を数期連続して減らしている会社もありました。

次に、規制対応が必要なのかどうかです。
各社が任意で公表しているESR(第一、明治安田、T&D、富国、ソニー)や金融庁フィールドテストなどから判断すると、そもそも新規制になると資本不足状態という主要生保はおそらくなさそうです。ただ、金利リスクの占める割合が大きく、金利変動によりESRが大きく動いてしまうので、金利リスクを減らしたいと考えている会社が超長期債の購入などを行っています(金利が下がると分子の資本が減るうえ、分母のリスク量も増えてしまう会社が一般的なようです)。

このあたりの判断は会社によって異なっていますし、2016年のマイナス金利政策の導入以降、生保業界の超長期債購入ペースは明らかに鈍化しました(金利リスクを減らしたいと考えていても、超長期金利があまりに低い水準になって実行を躊躇した)。これが全体として買い増しに転じたのは2020年度からなので、わずか2年間で金利リスクを減らしたいと考えている会社が目標を達成したとは考えにくいです。

なお、金利リスクの手掛かりとなるEVの金利感応度は、円金利だけではなく海外金利も同時に変動するので、要注意です。円金利の上昇はEVにプラス(超長期の負債を抱えているため)、海外金利の上昇はマイナス(保有資産の価格が下がるため)なので、これだけ外国公社債の残高が増えると相殺される度合いが大きくなり、感応度分析の役割を果たさなくなりつつあります。
実際、2021年度決算では海外金利の上昇によって外国公社債の価格が下がり、円金利の上昇によるプラス効果を打ち消すという事態が生じました。
会社の経営状況を外部ステークホルダーに伝えるには、いくつかの会社が今回の決算発表で行ったように、円金利と海外金利に分けた感応度を開示すべきだと思います。

※写真はドーム球場近くのビーチです。

 

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