02. 保険会社の経営分析

生保の2022年度4-6月期業績(続き)

2022年6月末の大手生保(日本、第一、住友、明治安田)のソルベンシーマージン比率(SMR)を確認したところ、水準自体に全く問題はないものの、他社に比べて住友生命の低下幅が大きいことに気がつきました。

日本 1043%(△ 16%ポイント)
第一  886%(△ 21%ポイント)
住友  688%(△121%ポイント)
MY 1023%(△ 38%ポイント)

( )は2022年3月末との差

4-6月期決算でもSMRの分子・分母の内訳や有価証券の時価情報は公表されています(デリバティブ取引の開示は一部の会社のみ)。これによると、住友生命のSMR低下は、分子の「ソルベンシーマージン総額」の減少が他社よりも大きかったことと、分母の「リスクの合計額」が増えたこと(日本生命と第一生命は減少、明治安田生命は微増)によるものとわかります。

分子の減少は「その他有価証券評価差額金」の減少、つまり、その他有価証券区分の含み損益が減ったことが大きいです。4-6月期には海外金利が上昇した影響で、外国公社債の含み損益が減りました。これは4社に共通しています。加えて住友生命の場合、このところ増やしてきた「外国株式等」の含み損益の減少も目立ちます。ただし、今の開示ではこの詳細はわかりません。

分母のほうは、日本生命と第一生命が外国公社債の残高を減らしたのに対し、住友生命と明治安田生命は増やしています。とはいえ、明治安田生命の資産運用リスク相当額が微増にとどまり、住友生命が増加している理由は、残念ながら今の開示ではわかりません(外国証券の関係ではないかと思いますが…)。住友生命に限らず、各社はもう少し外国証券に関する情報開示を進めてほしいところです。まあ、デリバティブ関連であれば9月期に何かわかるかもしれませんね(株式のヘッジポジションの関係とかであれば)。

なお、準大手では富国生命のSMRが82%ポイント下がっていますが、分子のソルベンシーマージン総額が減った最大の要因は国内公社債の含み損益が減ったことでした。富国生命は保有する国内公社債の大半を「その他有価証券」区分としているため、金利上昇の影響を受けたとみられます。経済価値ベースでみれば、全く違った動きとなっているのでしょう。

※写真は東京・大手町の某ホテルからの景色です。

 

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生保の2022年度4-6月期業績

新聞報道はどうして生保の保険料収入へのこだわりが強いのでしょうか。4-6月期決算を報じた記事「第一生命、保険料収入で日本生命抜く(有料記事)」では、主要会社の保険料等収入のランキングを載せています。毎度のことながら、この数字で何かを語ることの無意味さを示しておきましょう。

・保険料等収入は単にその期に受け取った保険料ということで「売上高」ではない
 (平準払い商品では過去に獲得した契約の保険料が多い)
・貯蓄性の強い商品の影響を強く受ける(特に一時払い商品と団体年金)

この4-6月期は外貨建て保険の販売が増えたのは確かですが、同時に解約返戻金が急増しているのにも注目です。一時払いの外貨建て保険の主要チャネルは金融機関なので、円安・海外金利上昇を受けて「解約による利益確定」「新たな契約の加入」が同じところで行われた可能性があります。「販売が増えた」だけではなく、そこにも触れてほしかったです。

給付金支払いの動向も確認してみました。先日確認した損保系生保(あんしん、MSA、ひまわり)の主力チャネルは代理店です。営業職員チャネルを主力としている生保でも給付金の支払いがかなり増えていて、今のところチャネルによる差は明らかではありません(8/16追記:保有ANP対比でみると営業職員チャネルの「支払率」が高いように見えますね)。少なくとも、昨年度1年間の支払いを大きく上回る入院給付金の支払いが4-6月期だけで生じていることが確認できました。

※くろちゃんの本名は「あそ くろえもん」なのですね。特急あそぼーい!の車内にて。

 

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大手損保の2022年4-6月期の業績

5日に大手損保グループの2022年4-6月期決算発表がありました。

「自動車保険の支払いが増えたので減益」(日経)とあったので、数字を確認してみたところ、確かに発生保険金は増えていますが(損保ジャパンはEIベース損害率から推測)、6月に発生したひょう災の影響が大きかった模様です。通常であれば、自然災害による支払いが多いのは火災保険ですが、この4-6月期に関しては、自動車保険が自然災害による発生保険金の6割を占めました。
ただし、4-6月期は例年損害率が低い傾向にあることを踏まえると、自然災害を除くベースでもそこそこ支払いが多かったと言えるのかもしれません。

コロナ感染拡大の影響もみられます。
グループ各社の生保子会社(あんしん、MSA、ひまわり)では、給付金の支払いが急増しています。MSAとひまわりは給付金支払いがそれぞれ前年同期の1.5倍に増え、あんしんも26%増でした(同社は支払備金の増加が目立ちます)。損保の傷害保険の支払いも増えているようです。
海外事業でも、東京海上グループは台湾政府の政策変更(ゼロコロナからウィズコロナへ)に伴う感染者の急増で、7-9月期に500億円以上の損失を計上すると公表しました。日本でもそうですが、コロナ感染症は保険会社にとって、疾病そのものリスクよりも政策リスクが大きいようです。

※福岡よりも暑かった!(1週間前の写真です)

 

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諸手数料および集金費の推移

7月7日付け保険毎日新聞のインタビュー記事のなかで、「(正味収入保険料との対比で)代理店手数料が多くを占める諸手数料及び集金費の割合は年々上昇している」「保険料に占める代理店手数料等の割合が年々高まり続けるのは異様に見える」と述べました。

この理由が気になったので、保険会社数社に確認してみたところ、消費増税の影響が無視できないことがわかりました。保険会社が受け取る保険料は非課税なのに対し、代理店手数料には消費税がかかります。この10年間に2回の消費増税(2014年4月と2019年10月)があったので、その影響で保険会社が支払う代理店手数料が増え、事業費率を押し上げる要因となりました(ただし、同じタイミングで保険料率の引き上げもあったとは思います…)。
また、対比する保険料を正味ベースとしたたため、ハードマーケットの中で出再保険料が増えると、正味ベースでは保険料に占める代理店手数料等の割合が高まることになります。なかでも三井住友海上と損保ジャパンは元受と正味の乖離が大きくなっているようです。

それではということで、保険料を元受ベースにして、消費増税の影響を取り除いて数字を作成したところ、元の数字ほど右肩上がりではないにせよ、少なくともここ数年は各社ともやはり上昇傾向にあることがわかりました。代理店の大型化(直資代理店を含む)に伴う手数料の増加など、他にも理由がありそうです。引き続き注目していきたいと思います。

※マンゴーかき氷、絶品でした。

 

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生保の新契約動向

5月8日のブログでご案内したRINGの会オープンセミナーが2週間後に迫ってきました。リアル参加かオンライン視聴かで迷っているかたも多いのではないかと思います。リアル参加はおそらく上限があるでしょうから、そろそろ申し込んだほうがいいかもしれません。
<申し込みはこちらへ>

さて、今回は生命保険会社の新契約動向を、少し長いスパンで見てみましょう。いずれも新契約年換算保険料(ANP)です。
まずは大手生保4社の動向から。

上のグラフが個人保険の15年推移、下のグラフが個人保険に占める第三分野(医療保障・生前給付保障等)の割合です。
日本生命と他の3社でやや傾向が違うようです。他の3社の回復が遅れているように見えるのと、経営者向け保険や第三分野の取り組み方針の違いがありそうです。日本生命は他社よりも死亡保障を重視した戦略をとっているとみられます。

次は「ソニー」「プルデンシャル」「メットライフ」「アフラック」「アクサ」です。
なかなか興味深いグラフとなっています。なかでもアフラックの動向が気になります。

最後は損保系生保3社です。
足元は緩やかな回復といったところですが、15年間で見ると、あんしん生命と他の2社でグラフの形がかなり異なっています。

これらをもとに各社の販売戦略を確認すれば、もう少しいろいろなことが見えてくるのではないかと思います。

※あじさいの季節になりましたね。

 

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生保の規制対応が一巡

最初にセミナーのご案内です。
今年も損保総研の特別講座で講師を務めることになりました。
保険会社経営の今後を探る ~最近の環境変化を踏まえて~」という演題で、6月28日(火)の18:00開催となっています(申込締切は21日)。zoomによるライブ配信なので、お茶の水の損保総研に行かなくても参加可能です。ご関心のあるかたはぜひご参加ください。

さて、主要生保の2021年度決算が出そろい、5月27日の日経には決算のまとめ記事のほか、「超長期債 買い手消える日(有料会員限定)」という記事が出ていました(ポジションというコラムです)。

「資本規制への対応で買ってきた生命保険会社の対応が一巡した(後略)」

「(市場参加者のコメント)『買い増しは昨年度までに一巡した。需給面で生保の超長期債への買い圧力は今後弱まる』と話す」

このようなことが書いてあったので、文字通りポジショントークとは思いつつ、まずは「一巡した」と言えるほど買い増しが進んだのか、決算発表で残存期間別の公社債残高を公表している主要生保10社の数字を確認してみました。
この1年間で10年超の公社債を増やした会社は7社ありましたが、前年度よりも増加が目立ったのは第一と大同くらいでした。住友や朝日のように、10年超の公社債を数期連続して減らしている会社もありました。

次に、規制対応が必要なのかどうかです。
各社が任意で公表しているESR(第一、明治安田、T&D、富国、ソニー)や金融庁フィールドテストなどから判断すると、そもそも新規制になると資本不足状態という主要生保はおそらくなさそうです。ただ、金利リスクの占める割合が大きく、金利変動によりESRが大きく動いてしまうので、金利リスクを減らしたいと考えている会社が超長期債の購入などを行っています(金利が下がると分子の資本が減るうえ、分母のリスク量も増えてしまう会社が一般的なようです)。

このあたりの判断は会社によって異なっていますし、2016年のマイナス金利政策の導入以降、生保業界の超長期債購入ペースは明らかに鈍化しました(金利リスクを減らしたいと考えていても、超長期金利があまりに低い水準になって実行を躊躇した)。これが全体として買い増しに転じたのは2020年度からなので、わずか2年間で金利リスクを減らしたいと考えている会社が目標を達成したとは考えにくいです。

なお、金利リスクの手掛かりとなるEVの金利感応度は、円金利だけではなく海外金利も同時に変動するので、要注意です。円金利の上昇はEVにプラス(超長期の負債を抱えているため)、海外金利の上昇はマイナス(保有資産の価格が下がるため)なので、これだけ外国公社債の残高が増えると相殺される度合いが大きくなり、感応度分析の役割を果たさなくなりつつあります。
実際、2021年度決算では海外金利の上昇によって外国公社債の価格が下がり、円金利の上昇によるプラス効果を打ち消すという事態が生じました。
会社の経営状況を外部ステークホルダーに伝えるには、いくつかの会社が今回の決算発表で行ったように、円金利と海外金利に分けた感応度を開示すべきだと思います。

※写真はドーム球場近くのビーチです。

 

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2021年度の大手損保グループ決算

大手損保グループの2021年度決算が出そろいました。
全般的にまずまずだった模様ですが、なかでも海外保険事業は、2020年度のようなコロナ関連損失がなかったうえ、レートアップ効果などもあり好調だったと言えそうです(ただし、MSアムリンのC/Rは引き続き100%超でした)。

国内損保事業で注目したのは、自動車保険の損害率があまり戻らなかったことです。
各社のE/I損害率(損害調査費を含む)は、事故件数がざっくりみて平年の▲5~10%水準だったことから、引き続きコロナ前の水準に比べると低い損害率でした。

東京海上日動 60.8 ⇒ 54.3 ⇒ 56.8%
MSI    59.4 ⇒ 55.9 ⇒ 57.7%
ADI    58.2 ⇒ 53.0 ⇒ 56.1%
SOMPO  59.8 ⇒ 54.9 ⇒ 55.7%

なお、資産運用利益が伸びたという報道もありました(そのようなコメントをした会社があったのでしょう)。中核損保に関して言えば、実現ベースでは好調に見えたとしても、運用成果を示す「時価利回り」は2020年度に比べるとかなり低かったというべきでしょう。

東京海上日動 9.55 ⇒ 3.07%
MSI    11.00 ⇒ 4.38%
ADI    12.38 ⇒-0.38%
SOMPO  8.11 ⇒ 2.50%

とりあえず今回は速報版ということで、さらに分析を進めたうえで、いくつかの媒体で記事などをご覧いただける予定です。

※来福した両親に福岡を案内しました。

 

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上場生保グループのEV

上場生保グループの2021年度決算の発表がありました。
ちらっと眺めただけですが、中核子会社のEV(エンベディッド・バリュー)があまり増えていない(あるいは減った)のが意外と言えば意外でした。

金融市場の環境はざっと以下の通りでした。
(2021年3月末 ⇒ 2022年3月末)。

<国内金利>
10年国債利回り 0.10% ⇒ 0.22%
30年国債利回り 0.67% ⇒ 0.91%

<米国金利>
10年国債利回り 1.74% ⇒ 2.34%

<国内株式>
日経平均株価 29179円 ⇒ 27821円

<為替>
円ドルレート 110.70円 ⇒ 121.69円

そして各社の単体EVはこちらです。

第一生命  51274億円 ⇒ 49766億円(▲3%)
太陽生命  11146億円 ⇒ 11345億円(+2%)
大同生命  20588億円 ⇒ 21481億円(+4%)
かんぽ生命 40262億円 ⇒ 36189億円(▲10%)

かんぽ生命は自己株式の取得(3588億円)と、新契約価値がマイナスという特殊要因があるものの、他社は新契約価値の上乗せがあるうえ、国内金利が上昇し、円安が進んだにもかかわらず、EVは増えませんでした。個別には他の要因もありますが、海外金利の上昇がかなり効いた模様です。
国内金利が上昇するとEVはかなり増えるのですが、海外金利が上昇すると逆にEVが減ってしまうということが、T&Dとかんぽ生命のIR資料(EVの感応度分析)で示されていました。

もっとも、過去にEVの感応度分析で国内と海外に分けた開示があったのはT&Dだけ(グループベースのみ)だったので、ここまで海外金利の影響が大きいとはわかりませんでした。外貨建債券の保有残高が増えたので、内外を分けた金利の感応度分析の情報が不可欠なのだとわかりました
(加えて為替の感応度も必要ですね)。

※大学のバラが見ごろを迎えています

 

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金融市場の動揺

このブログのインフラ面を支えていただいているウィズハートの木代さんが、保険代理店業務のほうで「ウクライナ支援付き保険」の販売を始めました。まずは妊婦さん向け医療保険(アイアル少短、エクセルエイド少短)の代理店手数料の50%をウクライナに寄付するというもので、今後さらに他の保険にも広げていくのだそうです。こうした取り組みもあるのですね。

さて、今週のInswatch Vol.1128(2022.3.14)に寄稿した記事をご紹介します。
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期末の市場価格が決算を左右

ウクライナ危機で金融市場が動揺しています。株式リスクや信用リスクの大きい保険会社、あるいは金融市場に連動する保険契約を多く抱える保険会社では、3月末の市場価格によって2022年3月期決算の内容が大きく変わってきます。
ちなみに株式保有と決算の関係ですが、2019年7月に公表された会計基準では、それまであった「期末の貸借対照表価額に期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる」という規定がなくなりました。基準を適用した会社では、3月末の株価が会計上の純資産やソルベンシー・マージン比率に直接反映されます(減損の判断基準としては引き続き平均価額を使えるようです)。

どの程度の影響なのか

昨年6月に金融庁が公表した「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する検討状況について」には、新規制導入のためのフィールドテストの結果として、2020年3月末時点における生命保険会社および損害保険会社のESR(経済価値ベースのソルベンシー比率、単体ベースの全社単純合算)とともに、所要資本(リスク量)の構成比が掲載されていました。
所要資本に占める市場リスクと信用リスクの割合は次の通りです。市場リスクによる影響、すなわち、市場価格の変動が保険会社の経営に与える影響は非常に大きいことが改めて確認できます。

 市場リスク  生保:52% 損保:59%
  うち株式  生保:28% 損保:58%
  うち金利  生保:31% 損保: 3%
  うち為替  生保:25% 損保:21%
 信用リスク  生保: 9% 損保: 4%

約2年前の数値ではありますが、その後の資産構成の変化などを踏まえても、傾向として大きく変わっていないと考えられます。ただし、ここでの株式リスクには子会社・関連会社株も含まれているので、特に損保では過大評価となっている可能性がある点にご留意下さい。

上場会社と非上場会社の情報格差は大きい

保険会社のステークホルダーが知りたいのは全社の合算値ではなく、個々の会社の経営リスクでしょう。市場リスクのうち株式リスクであれば、昨年12月末時点の株式保有残高はわかるので、株価下落の影響をある程度つかむことができます。ところが、株式以外の市場リスクや信用リスクに関する情報は非常に少ないのです。金利も為替もクレジット投資も外部からわかることは限られています。
その点、上場会社(持株会社グループなど)は投資家・アナリスト向けに任意の情報開示を行っていて、誰でも各社のサイトからアクセス可能です。例えば第一生命の場合、昨年12月末時点におけるオープン外債(為替リスクのある外債)は一般勘定資産の4.4%を占め、保有する外債の約8割がヘッジ付きであり、外債のうちBBB格のものは外債全体の約10%、といった情報を得ることができます。

各社の経営姿勢が問われる

保険業界には「上場会社はディスクロージャーが進んでいて当然」という感覚があるかもしれません。しかし、保険会社が提供する商品・サービスは自らの経営内容が直接的に影響するという点を忘れてはなりません。もし保険会社の経営が傾けば、将来の 保障(補償)が危うくなりますし、有配当契約の場合には、業績が順調であれば契約者は配当還元を期待できます。1年契約が主流の損害保険であっても、経営内容は引受方針や契約更改時の保険料率に影響を与えます。
ですから、保険会社は法令や業界基準として決められた項目を淡々と開示すればいいのではなく、契約者に有益と考えられる情報を積極的に出していく経営姿勢が求められています。いくらディスクロージャー誌のページ数が多くても、肝心のときに知りたい情報を得られないのであれば、保険業界は情報開示に後ろ向きと言われても仕方がありません。
顧客本位の経営とは保険販売や保険金・給付金の支払いに関することだけではないと思うのですが、いかがでしょうか。
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※写真は特急ゆふいんの森。念願の展望車です。

 

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大手生保の資産構成の動向

昨年11月28日のブログと同じように、公表された大手生保の資産運用実績を、10月下旬に各社が特定メディアに説明した資産運用計画と比べてみました。概ね説明通りの実績となっているように思います。

【日本生命】
「2021年度下期の一般勘定資産の運用方針では、海外の社債などクレジット資産を中心に投資する計画だ。米国債や日本の超長期債への投資は足元の金利水準が魅力的ではないとして慎重な姿勢を崩していない」(10月26日ロイター)

クレジット資産かどうかはわかりませんが、9月末と12月末を比べると、外国公社債と外国株式等が増えています。
責任準備金対応債券区分の残高が増えているので、「魅力がない」とする日本の超長期債もおそらく購入が続いているのではないでしょうか。1-3月の動向に注目です。

【第一生命】
「円建て債券は責任準備金対応債券の積み増しにより残高を増やす一方、国内株式はリスクコントロールのため売却する。外貨建て債券については、金利や為替の水準次第だが、足元の水準程度での推移であれば残高の大きな増減は見込んでいない」(10月26日ロイター)

計画の通り、引き続き国内公社債を増やし、国内株式を減らしています。HDのIR資料によると、資産デュレーションは9月末の17.5年から12月末は17.6年と、やや伸ばしたといったところでしょうか。
外国公社債の残高はそこそこ減っているようです。IR資料に「外貨建債券運用の状況」という開示があり(今回が初めてでしょうか?)、外貨建債券の約80%が為替ヘッジ付きだそうです。
今さらですが、プロテクティブの確定利付き資産は、BBB格以下が46%を占めているのですね。

【住友生命】
「長引く低金利環境でのリターン確保を目指し、為替リスクをヘッジしないオープン外債を数千億円規模で積み増すほか、外部委託での海外クレジット投資にも力を入れる方針を示した。一方、国内債券は25年の経済価値ベースの資本規制導入を前に金利リスクを削減するため、超長期国債をメインに1000億円程度積み増す方針」(10月26日ロイター)

為替ヘッジ状況の手掛かりはありませんが、確かに外国公社債が9月末に比べて2000億円以上増えています。外国株式等も増えていて、「外部委託での海外クレジット投資」がここに含まれるのでしょうか。
国内公社債はそれほど増えていないように見えます。

【明治安田生命】
「25年の経済価値ベースの資本規制導入に向けて、円建て債券の積み増しや国内株式の売却によりリスク低減を図る一方、総合的な利回り確保のために外貨建てクレジット資産や外国投信などへの投資にも積極的に取り組む方針を公表した」(10月25日ロイター)

12月末時点では、国内株式の売却はあまり進んでいないように見えますが、責任準備金対応債券区分の残高は引き続き増えています。外国公社債や外国株式等が増えていて、クレジット資産や外国投信に積極的に取り組んだ結果なのかもしれません。

【かんぽ生命】
「円金利資産は総資産が縮小する見込みのため残高を減らす一方、国内株式やオルタナティブ資産を積み増す計画を示した。外貨建て債券については、為替ヘッジ付き・オープンともに残高は横ばいを見込むが、特にオープン外債には慎重な姿勢を見せた」(10月27日)

総資産が3か月で1兆円ほど減るなかで、確かに国内株式や外国株式等は増えていますし、IR資料からも内外株式とオルタナ投資の増加が確認できます。
資産が減っているのは旧区分だけではなく、新区分も減っているのですね。

※終着駅シリーズ。北九州の若松駅です。

 

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