02. 保険会社の経営分析

3メガ損保の決算発表

11月19日に3メガ損保の2020年4-9月決算発表がありました。
ざっと見て、特徴は次の3点でしょうか。

・海外事業で新型コロナ関連の支払いが当初の見込みより増えた
・自動車保険の損害率が4-6月より7-9月は上昇したが、引き続き前年を下回る水準だった
・前年度までの自然災害を受けて、火災保険の出再保険料が増加した

新型コロナ禍のなかでも自動車保険の正味収入保険料は大手4社ともに増収でした。
主に料率引き上げによる単価上昇が寄与しているようですが、東京海上とあいおい損保は契約台数も増えています。
他方、傷害保険では東京海上と損保ジャパンの減収が目立ちます。旅行保険の減収が大きかったようですが、保険金の支払いも減ったようです。

4-6月期と同様に、国内事業と海外事業で新型コロナ禍による影響がちがうことが目立つ決算でした。
もっとも、金融市場の混乱が続いていたら、国内事業もかなり景色が変わっていたとは思います。

 

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第一生命HDの決算報道

「第一生命ホールディングスが13日発表した2020年4~9月期の連結決算は、純利益が前年同期比9%減の833億円だった。株安や円高に備えた金融派生商品の取引で約1000億円の損失が出た。海外での新型コロナウイルス関連の保険金支払い拡大も響いた。」
(11月13日の日経)

短い記事のなかで決算を報じるとなると、増減益だけを伝えることになってしまうのでしょう。
しかし、減益は「金融派生商品の取引で約1000億円の損失が出た」、つまり、ヘッジ会計非適用のデリバティブ取引で損失を計上したということなので、現物資産の価値は上がっているはずですし、実質的には純利益が倍増したとも読めます。もしかしたらこの記事はそう伝えているのでしょうか?

ちなみに少し前の記事ですが、日経新聞は香港に拠点を置くAIAの決算について、次のように報じています。

「アジアの保険大手AIAが12日発表した2019年12月期決算は、新規保険契約の価値を示す新業務価値(VONB)が41億5400万米ドル(約4300億円)と前の期に比べ6%増にとどまった。香港の大規模デモの影響で中国本土から香港に来て保険を買う人が減り、18年12月期の22%増に比べ伸びが大幅に鈍った。(中略)税引き後の営業利益は9%増の57億ドルだった。」
(2020年3月12日)

第一生命HDでも同じように、「4-9月期に獲得した契約の価値を示す新契約価値は256億円と、前の期に比べ60%減った。営業自粛の影響で第一生命の新契約が大きく落ち込んだことが主因。純利益は9%減の833億円だった」といった記述にしたら、多少は意味のある情報になると思います。

なお、第一生命HDのグループEEV(エンベディッド・バリュー)は金融市場の回復を受け、3月末に比べて9400億円増えています。株価上昇と超長期金利の上昇が影響した模様です。

※紅葉八幡宮という神社に行きました。七五三なつかしいです。

 

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生保の第1四半期報告より

今週のInswatch Vol.1050(2020.09.14)に寄稿したものです。
一時的な緊急事態から新たな生活様式にシフトするなかで、各社の新契約獲得力はどうなっていくのでしょうか。
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対面チャネルは総じて厳しい結果に

既報のとおり、新型コロナ感染症による営業自粛で、第一四半期(4-6月期)の生保各社の業績は著しく落ち込みました。

営業職員を主力チャネルとする大手生保では、個人保険の新契約件数、新契約年換算保険料ともに前年同期に比べて5~7割減少しています(明治安田生命は約4割減)。
代理店による生損保クロスセルを主力とする損保系生保では、新契約が前年同期に比べて2、3割の減少にとどまっています。ただし、これは損保代理店がコロナ禍のなかで生保営業に邁進したというのではなく、経営者保険の税制見直しにより前年同期の数字が落ち込んでいたためとみられます。中小企業を顧客基盤とする大同生命の新契約年換算保険料が前年よりプラスとなったのも、おそらく同じ理由です。こうした特殊要因のない2018年と比べると、いずれの会社も落ち込みが大きくなっています。
銀行窓販が主体の会社(第一フロンティア生命、三井住友海上プライマリー生命)でも新契約は大きく落ち込みました、こうしてみると、4-6月期は営業職員、代理店、銀行と、どのチャネルでも対面販売はコロナ禍の影響を強く受けたことが確認できました。

他方で、ダイレクトチャネルを主力とする会社は新契約を伸ばしました。ライフネット生命、アクサダイレクト生命、SBI生命などで、「ステイホーム」が追い風となりました。
オリックス生命、はなさく生命、メディケア生命なども健闘しています。オリックス生命は新契約件数も新契約年換算保険料も前年同期比1、2割しか減っていませんし、経営者保険による影響もほとんどありません(ダイレクトチャネルが貢献した可能性はあります)。ちなみに、はなさく生命は日本生命グループ、メディケア生命は住友生命グループの会社です。

個人は解約に動かず

解約が増えているという報道もありましたが、4-6月期の数字を見るかぎり、全体としては、解約はむしろ落ち着いていました。銀行窓販が主体の2社では1-3月期に続き、解約返戻金が高水準となりましたが、あとはエヌエヌ生命とマニュライフ生命の解約がやや目立つ程度です。
銀行窓販で解約が多いのはやや気になります。すでに解約控除期間が終わっている契約であればいいのですが、銀行の勧めにしたがい預金から貯蓄性保険にしてしまい、いざ手元に資金が必要となってはじめて顧客が解約控除の存在を知った、などということはなかったでしょうか。

手元資金に関連して、各社の契約者貸付の残高も調べてみました。6月末の残高が3月末に比べて100憶円単位で増えたのは、日本生命、かんぽ生命、大同生命、ソニー生命、プルデンシャル生命、エヌエヌ生命、あんしん生命でした。経営者保険に注力してきた会社で増加が目立ちますが、契約者貸付に対する取り組み方針による違いもありそうです。

4-6月期は緊急事態宣言が出されるなかでの営業活動でしたが、新たな生活様式が定着してきた7-9月期(とはいえ第2波の影響もありそうですが)の契約動向に注目したいと思います。
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※福岡大学では後期の授業が始まり、着任して初めて対面授業を行いました。

 

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生保営業職員のターンオーバー

生命保険会社の営業職員組織というと、大量採用・大量脱落のターンオーバー問題が決まり文句のようになっています。
大手生保の数字を確認してみると、確かに2000年代前半は期初の在籍数の3、4割にあたる職員を採用しているにもかかわらず、在籍数が減る(つまり採用を上回る退職が発生している)状態でした。
ところが最近は、在籍数の2割弱にあたる職員を採用し、在籍数は増加に転じているので、退職率は15%程度です。約4割から約15%へというのはかなりの変化です
(日本生命はディスクロージャー誌が未公表なので、2018年度まで確認)。

2005年に発覚した保険金不払い問題を経て、各社は新契約に過度に偏重した営業活動を改め、顧客訪問活動など既契約を重視する営業活動に舵を切りました。新人についても、採用後の教育を重視し、固定給を増やすなど、早期退職を減らす取り組みを行い、ターンオーバーの改善に効果を上げたと考えられます。

あとはこれが持続可能かどうかです。新契約の大半を既契約者やその周辺から獲得しているので、既契約者の高齢化とともに事業基盤が先細りしますし、毎年5千人から1万人という採用数は、高いコンサルティング力を武器にするための採用ではないでしょう。ここからがチャネル改革の本番なのかもしれません。

※かつて近所を走っていた市内電車の痕跡を見つけました。

 

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ところ変われば

26日の日経に「生保解約 コロナで急増(有料会員限定)」という記事が出ていました。経営者保険などを中心に生命保険の解約が増えているとのこと。
確かにエヌエヌ生命では4-6月期の解約返戻金が前年同期より27%増えているのですが、業界全体では4-6月期は1-3月期よりも解約返戻金が少なく、一部を除けば「コロナで急増」という状況ではなさそうです。
中小企業の資金繰りということであれば、保険約款貸付に注目してもよかったかもしれません。大同生命とエヌエヌ生命は増加が顕著ですし、大手4社では日本生命の増加が目立ちます
(中小企業とは関係なさそうですが、かんぽ生命も増えていますね)。

財務部門とは

ところで、どの業界にも、その業界でしか通じない用語ってありますよね。
業界外で通じないだけならいいのですが、同じ用語を別の意味で使っていることもあり、混乱のもととなってしまいます。

保険業界で典型的な事例は「財務」「財務部門」でしょうか。
私は最初の就職先が損害保険会社の財務部門だったので、財務と言えば資産運用でした。
しかし、財務といえば資産運用なのはおそらく保険業界だけで、多くの場合、財務部門は主に資金調達を担当する部門です。私がそれを知ったのは就職してしばらくしてのことでした。
保険会社は先にお金(保険料)が入ってきて、後からお金(保険金)が出ていく事業なので、事業のために外部から資金を調達する必要がありません。だから他の産業と「財務」の意味が違うのでしょう。

支社と支店

生保と損保でも違いは結構ありますね。
これも私の経験で恐縮ですが、損害保険会社(大手)では「〇〇支店××支社」なので、支店長は支社長の上司です。ところが後に生命保険会社を担当するようになって、生保では支店の代わりに「〇〇支社」となっているのに気が付きました。同じ「支社長」でも生保と損保で社内の地位が全然違います。

不思議なことに、大手損保には「本店営業〇部」「本店損害サービス〇部」はありますが、全体としては「本店」ではなく「本社」です。このあたりは歴史的な経緯もあるのでしょうね。

保険料の支払い方法も、生保の「平準払い」のことを、損保はかつて「回払い」と呼んでいました(積立保険が開店休業中なので、今はどうなのかわかりません)。
他方で「占率(せんりつ)」「P免」などは生保の用語ですね。損保でも通じるのでしょうか?

※近くにスーパーが複数あるのは便利です。

 

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生損保の4-6月期決算から

8月7日までに公表された分だけですが、生損保の4-6月期決算で保険関係の数値を確認してみました。

損害率が低下【損保】

国内損保事業の正味収入保険料は、東京海上日動がほぼ横ばい、他の大手損保は小幅減となりました。ただ、減収は火災保険の再保険コスト上昇によるところが大きいようで、過去の料率引き上げ効果もあり、4-6月期に収入が大きく落ち込むということはありませんでした。

数字が大きく動いたのは支払いのほうです。外出自粛等の影響で発生保険金が減り、損害率が大きく改善しました。
各社の自動車保険のE/I損害率はご覧のとおりです(前年対比)。

 東京海上日動 56.5% ⇒ 46.2%
 三井住友海上 54.7% ⇒ 46.2%
 あいおいND 55.9% ⇒ 48.1%
 損保ジャパン 63.2% ⇒ 48.1%

欧米のようなロックダウンはなくとも、新型コロナ禍が人々の行動を変え、それが数値に現れたということかと思います。

営業自粛で業績落ち込む【生保】

更改契約がある損保に比べると、生保は営業自粛の影響を強く受けた数字となっています。
例えば営業職員チャネルを主力としている会社の「新契約年換算保険料」「新契約件数」(いずれも個人保険、前年同期比)はご覧のとおりです。

 日本生命 ▲59.1% ▲72.1%
 住友生命 ▲54.8% ▲54.4%
 MY生命 ▲35.8% ▲42.3%
 太陽生命 ▲36.8% ▲25.7%
 富国生命 ▲45.3% ▲47.4%

代理店を主力にしている会社として、損保系生保と大同生命の数字も見てみましょう(大同生命は営業職員チャネルの規模も大きいですが、とりあえず)。同じく個人保険の新契約年換算保険料と新契約件数の前年同期比です。

 あんしん生命 ▲21.5% ▲32.9%
 MSA生命  ▲29.2% ▲34.9%
 MSP生命  ▲57.7% ▲73.6%
 ひまわり生命 ▲23.3% ▲31.5%
 大同生命   +26.4% ▲14.3%

MSP生命(三井住友海上プライマリー生命)は銀行窓販専門会社なので傾向が違うのはわかるとして、それ以外の会社は大手よりも落ち込みが小さいように見えます。ただ、2019年4-6月期の数字は経営者保険の提供休止などの影響を受けているので、代理店チャネルのほうが落ち込みが小さいと言っていいものか、まだわかりません。

とりあえず速報ということで。

※石炭記念館に「白蓮夫人」の写真がありました。

 

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生保決算(1-3月データ)から

2019年度決算では、新型コロナ禍に伴う金融市場の乱高下の影響で、多額の有価証券評価損を計上した国内系生保がいくつかありました。評価損の内訳は「株式等」「外国証券」が大半を占めています。
例によって四半期ごとに分けて見てみると、評価損の計上に合わせるかのように、有価証券売却益が1-3月期になって急増している会社がみられます。

好意的に見れば、価格が下がる前に利益を確定したのかもしれません。しかし、この時期だけ突出して売却益が多く、かつ、比較的動きが小さかった国内債券もそこそこ含まれているとなると、通常の資産運用というよりは、3月決算を意識した利益計上を行ったのではないかと考えてしまいます。
資産運用で積極的にリスクをとるという経営判断は理解できるとしても、決算を作りに行くような行動は、どう理解したらいいのでしょうか。

新型コロナ対応といえば、3月以降、大手生保の契約者貸付が急増しているというニュースがありました(5/24のNHKなど)。
そこで、各社の契約者貸付(保険約款貸付)を確認してみると、大手生保(日本、第一、住友、明治安田)の貸付残高は3か月前と比べてむしろ減っていました。
本格的に増えたのは4月以降なのかもしれませんが、中小企業を顧客基盤とする大同生命では貸付残高が急増していますし、顧客に中小企業のオーナーが多そうなソニー生命やプルデンシャル生命でも、通常よりも増えていますので、顧客基盤のちがいが大きいようです。NHKは取材する相手を間違えたのでは…

1-3月になって解約返戻金が急に増えた会社もありました。第一フロンティア生命とMSプライマリー生命が顕著に増えていて、明治安田生命や住友生命でも増えているので、おそらく銀行で一時払いの貯蓄性保険に加入した人が、何らかの理由で保険を解約したのでしょう。

※アクロス山の登頂に成功しました(笑)

 

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大手損保グループ経営の現状

先週は大手損保グループ各社のIRミーティングがあり、いろいろと気付きがありました
(いずれも対面形式ではなかったので、福岡にいてもアクセスできました)。

まず、損保事業への新型コロナの影響は、国内と海外(欧米)でだいぶ異なっているようです。
東京海上やMS&ADでは、海外事業で数百億円規模の保険金支払いが発生する見込みです。主にイベント中止や事業中断などの保険ではないかと思います(取引信用保険も考えられますね)。
他方で国内では、2期連続で風水災による多額の保険金支払いが発生したものの、新型コロナ絡みの支払いは今のところ目立ちません。いわゆる新種保険の普及は国内ではまだまだということなのでしょう。

再保険市場のハード化もはっきりしました。長い間、保険料率の低下基調が続いていたものが、少し前から上昇基調に転じたようです。
このところ世界的に自然災害が多発し、国内でも1兆円を超える自然災害に伴う保険金支払いが2期連続で発生したうえ、新型コロナ関連の支払いや金融市場の不安定さも加わり、再保険市場はハードマーケットに転じた模様です。
確かに損保各社の出再保険料(火災保険)をみると、各社ともかなりのペースで増えていることがわかります。

もっとも、各社とも政策株式保有を減らしてきているとはいえ、引き続き株価下落がグループにとっての最大リスクか、それに近いということも確認できました(金利リスクも大きいですね)。

※ラタトゥユとカルパッチョを作りました。
 すいかは今季初です。

 

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生保決算の概要

例年とちがい、生保決算はまだ出そろっていませんが、国内系生保に関しては大まかな傾向は見えたのではないかと思います。

まず、資産価格変動の影響です。
一時は株価が大きく値下がりしたものの、結果的に日経平均株価は前年度末から10%程度の下げにとどまりました。それでも株式保有の多い会社では、株価下落で支払余力が圧迫を受けています。
他方で、米国をはじめ海外金利が大きく下がり、こちらは外国公社債の時価を押し上げています(ただし、為替はやや円高なので、影響が相殺されているところもあります)。
これらは損益計算書には部分的にしか出てきませんが、公表されているEV(エンベディッド・バリュー)を見ると、会社価値への影響としては最も大きい要因だったようです。

保険関係では、会社によっては経営者保険の販売停止などにより、新契約価値が影響を受けています。第三分野の新契約年換算保険料が軒並み前年割れとなっているのもちょっと気になります。ただし、新型コロナの影響は、この段階ではほとんど見られません。
なお、大手生保が相次いで投入した健康増進型保険も大ヒットとまではいかなかった模様です。

こうしたことは、保険料等収入と基礎利益だけ追いかけていては、全く見えてきません。
メディアは今回のかんぽ生命(=営業を自粛していた)や大同生命(=経営者保険の販売を停止していた)の基礎利益が増えたのを見て、この指標に何も疑問を感じなかったとしたら、さすがにおかしいと思います。

国内系生保の経営が総じて保険ではなく、資産運用に左右されやすいのは、リスクの取り方がそうなっているからです。
このことについて、第一生命ホールディングスは決算説明会資料(PDF)のなかで、日本の大手生保グループとして初めてグループ統合リスク量の内訳を開示し、金利・株式を中心とした市場関連リスクが全体の7割を占めることを明らかにしました。
同社は金利リスクと株式リスクの削減に取り組み、市場の変動に左右されにくいリスクプロファイルにしていくとのことです。

※自宅からビーチまで歩いて行けました!

 

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米国金利の低下

経済同友会の櫻田代表幹事(SOMPOホールディングス社長)の「10万円給付を電子マネーで」が格好の炎上ネタとなってしまいました。
今回の施策の緊急性と電子マネーの普及度合いを踏まえると、さすがに今の日本では無理でしょう。ただ、世間の反応を見ると、まだまだ電子マネーは「お金」とはみなされていないのですね。
「条件付きで30万円給付」は困っている方々への生活支援という目的が明確でしたが、「一律に10万円給付」となるとどうでしょう。もちろん生活に苦しい方々への助けにもなりますし、総額も増えるのですが、今のところ1回限りの10万円ですよね。本当に困っている方々への生活支援としては不十分ですし、むしろ「10万円渡すから政府に協力してくださいね」というお見舞金の性格が強まったように思います。

米国金利の低下

さて、このところ米国の長期金利がかなり低くなっています。10年国債利回りは0.6%程度、30年が1.2%程度と、見たこともないような低水準です。
(ちなみに日本の10年国債利回りはほぼ0%、30年は0.5%程度です)。

ここまで金利が下がると、米国の生保経営にも影響がありそうです。
格付会社ムーディーズは4月1日に、米国生保業界のアウトルックをネガティブに変更しました。低金利と新型コロナウイルスによる影響を懸念しているためです。
ムーディーズのサイトへ

厳しい経営環境

米国生保といってもビジネスモデルは多種多様ですが、伝統的な利率保証型の商品を中心に提供している会社では、公社債によるマッチング型ALMを行い、金利リスクをヘッジするのが一般的です。一般勘定での株式保有は少なく、市場リスクではなく、主に信用リスクで運用収益の確保を目指します。

しかし、景気低迷で公社債のデフォルトが相次ぐようになれば話は別ですし、そもそも超低金利下でマッチングや最低保証のヘッジが有効に機能しているかという心配もあります(GMWBなど大丈夫なのでしょうか)。
もちろん商品開発での制約も大きいですし、新型コロナで対面販売もままならないでしょう。

日本の生保を取り巻く経営環境も非常に厳しいですが、超低金利は今に始まった事象ではありませんし、危険差益を獲得しやすい保障性商品を主力にしているため、新たな時代に合ったビジネスモデルの見直しに力を注げるのではないでしょうか。

※近くの公園で春を感じてきました。

 

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