02. 保険会社の経営分析

損保の2012年4-9月期決算

 

大手損保の4-9月期決算が公表されました(19日)。

いつもながら、期間損益を重視する見方では、
損保の経営内容をつかむことはできないと感じます。

MS&ADとNKSJが赤字となった最大の原因は、
株価下落に伴い多額の有価証券評価損を計上したためです。

ただし、損保各社の減損基準は一般よりも厳しい(=3割基準)うえ、
経営統合により保有株式の取得価額が上がっているため、
評価損が発生しやすくなっていることを忘れてはなりません。

ここ数年、「本業不振」が決まり文句のようになっています。
しかし、火災保険のように自然災害の有無によって
収支が大きく振れる種目の場合、短期の損益を見て
黒字だ赤字だと言っても意味がないでしょう。

ちなみに、このところ自然災害が相次いでいるとはいえ、
過去10年間で大手損保の火災保険のコンバインドレシオが
100%を上回ったのは、2005/3と2012/3の2回だけです。
リスクベースで見たリターンはどうなっているのでしょうね。

自動車保険では、料率改善効果が表れているようです。
大手5社のうち、東京海上日動を除く4社でE/I損害率が
改善しています。さすがに流れが変わってきたのでしょうか。

とはいえ、収益性の改善が道半ばなのは間違いありません。
2、3兆円もの資本を使っておきながら、修正利益やコア利益が
500~800億円レベルというわけにはいかないはずですよね。

※11/10にJARIPの年次大会が東大駒場キャンパスでありました。
 キーワードは「見知らぬ明日」。リスク管理は奥が深いです。
 JARIPのHPへ

 

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生保の基礎利益

 

11月は保険会社の中間決算が発表される月です。
3月に比べると株価も長期金利も下がっているので、
各社のEVはそこそこ減っているのではないかと想像されます。

ところで、生保の利益指標の一つに「基礎利益」があります。
経常利益から有価証券売却損益や評価損など臨時的な損益を
控除したもので、今やすっかり定着した感がありますね。

ニッセイ基礎研・荻原邦男さんの最近のレポートによると、

「導入の背景には、『生保の多くが逆ざや状態に陥っているなかで、
 利差損ではあるものの、トータルで見ると利益はプラスであることを
 明示する』という目的があった」

とありました。ニッセイ基礎研HPへ

基礎利益は歴史の長い生保が「3利源ではプラス」
ということを示すために開発されたという面もあることは
知っておいたほうがいいかもしれません。
確かに当時(基礎利益の導入は2000年度決算から)は
「逆ざやが累積していて大変」といった珍説もありましたからね。

荻原さんはレポートのなかで、基礎利益の留意点として
次の3つを挙げています。

①変額年金の保証にかかる責任準備金の繰入・取崩が
 基礎利益を撹乱する要素となっている

②インカムゲインとキャピタルゲインの区分が曖昧で、
 各社で経費処理方法に差異がある

③基礎利益イコール公表されている3利源ではない

これらに加え、次のような点もありそうです。

④有配当契約が多い会社のほうが基礎利益が大きくなりやすい。
 特に大半が配当として流出してしまう団体保険の死差益は
 基礎利益を実質的にかさ上げしてしまっている。
 (これは主に大手生保ですね)

⑤いわゆるヘッジ外債を保有していると、ヘッジコストは
 キャピタル損益となり、円債を保有するより基礎利益が大きくなる。

⑥保有契約に対し新契約が大きい会社の場合には、
 新契約獲得コストがかさみ、基礎利益が小さくなりやすい。
 (これは大手だけ見ているとわからない話かもしれません)

⑦追加的な責任準備金の繰入が基礎利益のマイナス要因
 となっている会社がある。

特に⑥は基礎利益の本質的な弱点です。
大手を中心に見る場合には基礎利益は有用かもしれませんが、
業界全体を見る場合には、かなり留意が必要だと思います。

※右の写真は「卒業旅行」で見た釧路湿原の夕日です。

 

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業態別の金利リスク量

 

半年ごとに出される日本銀行「金融システムレポート」が
今月19日に公表されています。
日銀のHPへ

金融機関の現状を知るうえで大変役に立つので、
過去にもこのブログで何回か取り上げています。
すでに「秒読み」となり何かと慌ただしくて、
レポートのフォローが遅くなってしまいました...

このレポートには保険会社に関する記述もありました。
まず目を引いたのが「負債デュレーションの試算値」です。
グラフを見ると、この5年間どんどん長期化したものが、
今後は反対に短期化していく試算となっていました。

ただ、よくよく見ると、長期化といっても15.2年から15.4年。
短期化も10年間で同程度なので、グラフの見かけはともかく、
むしろ「あまり変動しない」と見るべきでしょうか。

とはいえ、このような意欲的な分析は好感できるのですが、
最後ののBOX(コラム)「生命保険会社の金利リスク量」は、
本文に比べるとちょっと残念なコラムでした。

コラムでは「業態別の金利リスク量」を計算し、

「銀行の国債保有残高は生保よりも大きいが、デュレーションが
 短いため、銀行の金利リスク量は生保よりも小さい」

としています。

「ここでの金利リスク量は、国債保有に限定したリスク量
 である点には注意が必要」

と書いてあるものの、そもそもこの計算の目的がよくわかりません。

筆者は業態別の保有状況ではなく、あえて金利リスク量を示し、
生保が国債の金利リスクの最大の引き受け手である
ということを明らかにしています。
それなら生保経営はどうなっているのか、という話に
普通はなりますよね。金融システムレポートなのですから。

しかし、生保経営に与える影響ということであれば、
少なくとも会計上の保有区分を反映しなければ不十分です。
国債保有だけ取り上げて「生保の金利リスクは大きい」
という分析はないでしょう。

あるいは、保有区分とは関係なく、時価評価して見れば
生保の金利上昇リスクは大きいと言いたいのであれば、
資産に加え、負債を含めた経済価値ベースで見なければ、
生保経営への影響はわかりません。

この点について、コラムでは経済価値ベース的な分析結果を
示しているのですが、

「金利リスクをバランスシート全体で把握するためには、
 資産サイド・負債サイド双方を時価ベースで捉えるべき
 との見方もある」

という書きぶりなので、結局のところ生保経営にとって
金利上昇リスクは大きいのか、大きくないのか、
読者は混乱しそうです。

そもそも生保はなぜ超長期債を保有しているかといえば、
負債で抱えている金利リスクを軽減するためです。
金利リスクを増やす行為ではないのです。
だからこそ「責任準備金対応債券」なんていう区分があったり、
経済価値ベースで評価しようという流れがあったりするのですね。

筆者の意図がどうであれ、このコラムの読者が、
「生保の金利(上昇)リスクは銀行よりも大変」
といった誤った印象を持たないことを祈ります。

※女子校の文化祭に初めて行きました^^

 

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歴史的低金利

 

ドイツ・米国の長期金利が過去最低水準を更新しています。

 独10年債利回り=1.17%、30年債利回り=1.67%
 米10年債利回り=1.45% 30年債利回り=2.52%

ドイツの30年債利回りはなんと日本(1.78%)を下回っているのですね
(いずれもBloombergより。6/1時点)。

日本では歴史的低金利がもう10年以上続いていますが、
ドイツや米国では少し前まで長期金利が3%以上ありました。
保険アナリストとしては欧米保険会社の経営への影響が
気になるところです。

かつての日本の生保とは違い、一般に欧米の保険会社では
ALMを意識した資産運用を行っていると聞きます。

とはいえ、AXAやAllianzのEV(エンベディッド・バリュー)をみると、
金利感応度はそれなりに大きいようです。

例えばAXAでは、金利水準が1%下がると、生保のEEVが
34億ユーロ減少します。これは生保EEV381億ユーロの約9%です
(2011年末時点)。

Allianzでは影響がもっと大きく、金利1%の低下によって
MCEVは73億ユーロ減となり、MCEVは35%も減ってしまいます
(同)。

両グループはリスク管理態勢に定評があり、高格付を維持しています。
他の保険会社はどうなのでしょうか。

米国の変額年金も気になりますね。

米国では最低引出保証(GMWB)のついた変額年金が人気のようで、
終身保証も多いとか。
保証期間が長くなれば、金利による影響も大きくなるでしょう。

公表されている「Milliman Hedge Cost Index」によると、
終身保証のGMWBのヘッジコストは、すでに昨年後半以降、
リーマンショック後の2008年末の水準に匹敵しています。
金利要因による上昇が大きい模様ですが、詳細はよくわかりません。
MillimanのHPへ

材料不足でまだ何とも言えませんが、資産価格の下落だけではなく、
歴史的低金利による影響も無視できないかもしれません。

※昨日(2日)は横浜の開港祭でした。

 

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主要生保の2011年度決算

 

「12生保が増益」(日経) 「生保大手、全社増益」(朝日)
「生保決算 8社すべてで増益確保」(NHK)

25日(金)に出そろった生保の2011年度決算について、
メディアは基礎利益が増えたことに注目したようです。

基礎利益が増えた説明として、
「3月末にかけて株価が上昇し、運用成績が好転したためだ」(日経)
というのはややミスリードのように感じます。

大手4社の基礎利益は約1800億円増えていますが、
変額年金等の最低保証に係る影響は約400億円だけです。
それに基礎利益には株式の売買損益や評価損は入りません。

「全社とも増益となった理由の一つは、東日本大震災の
保険金支払いが震災直後の見込みより少なかったため、
多めに用意しておいたお金が戻ってきたことだ」(朝日)

2010年度には東日本大震災に係る支払備金の計上があり、
2011年度にはその影響がなくなったうえ、上記の理由から
全社増益になったという説明をするべきなのでしょうね。

Bloombergには、日本生命は「実質減益の厳しい内容だった」
というコメントが載っていました。BloombergのHPへ
保有契約高の減少が続き、第三分野の年換算保険料が
あまり増えていない現状を考えると、他社も胸を張って増益
という感じではなさそうです。

ただ、同じBloombergの記事によると、明治安田生命は
「それを除いても増益」だったそうです。
同社の場合、銀行窓販を中心に保険料収入が急増し、
資産平残が2兆円以上増えたことが影響しているのかもしれません。

ところで、以前このブログで大手生保の債券運用に関して、
「同社が『その他有価証券』の公社債をどんどん増やしている」
と書きました。生保の4-12月期決算から

今回も気になったので、さっそく12月末と比べてみると、
「その他有価証券」が急減し、「満期保有目的債券」が急増していました。
四半期決算もなかなか役に立ちますね。

※写真は旧東海道です(左が台町、右が軽井沢)

 

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大手損保の2011年度決算

 

「損保の本業 最悪の赤字」「タイ洪水など打撃」(日経)
「損保 赤字膨らむ」(朝日) 「タイ洪水で5000億円支払い」(NHK)

大手損保の2011年度決算は、2011年4-12月期決算よりも
株価が上昇した分だけよくなったという印象です。
ただ、自然災害に伴う保険金支払額が大きかったためか、
例年よりメディアの扱いも大きかったようです
(もっとも、読売の記事は見当たりませんでしたが...→ 見つけました)

タイ洪水の話は以前書いていますね。2/18のブログへ
自然災害に伴う発生保険金としては過去最大級だと思いますし、
過去に日本の損保が経験したことのないタイプのものでした。

2011年度はタイに加え、国内でも台風など自然災害が多発し、
発生保険金額は、東日本大震災のあった2010年度の2倍以上
(家計地震保険を除く)となりました。
単体合算ベースで約6000億円といったところでしょうか。

損益上は異常危険準備金の取り崩しで緩和され、主に未払保険金
(≒支払備金に繰り入れた部分)だけが損益を圧迫するのですが、
財務上のインパクトとしてはやはり約6000億円と見るべきでしょう。

かなり大きな金額のようにも見えますが、
大手損保の純資産はやや減ったとはいえ4兆円近くあります。
異常危険準備金も約2兆円です。

別の視点から見てみましょう。
大手損保が保有する株式の時価は約5.5兆円です(単体合算)。
株価が1割下落しただけで5000億円以上も目減りしてしまいます。

2012/3末のTOPIXは854、5/18は725なので、▲15%です。
損保の保有株がTOPIXとどの程度連動しているかにもよりますが、
財務上のインパクトは2011年度の自然災害に匹敵しそうですね。

逆に言えば、過去最大級の自然災害に伴う発生保険金といっても、
その程度のインパクトということです。

なお、グローバルな損保市場では、多額の支払いが発生すると、
日本のように「損保は自然災害で大変だ」と騒ぐだけではなく、
「市場がハード化(=料率上昇)し、収益力が改善するのでは」
という見方も浮上するようです。
料率引き上げが日本市場よりも実現しやすいのでしょうね。

※写真は善福寺公園と東京女子大です

 

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保険会社の売上高

4月5日の共同通信から。
「大手損害保険5社が5日発表した2012年3月期の営業成績速報
 によると、売上高に当たる収入保険料が全社で増収となった。」

2月14日の朝日新聞から。
「銀行での窓口販売が伸びた明治安田生命は4~12月期で、
 売上高にあたる保険料等収入で日本生命を抜いて首位に立った。」

メディアでは保険会社の収入保険料/保険料等収入を
事業会社の売上高にあたる、としているようですね。

売上高とは一般に、商品やサービスを提供した対価として
顧客から受け取った代金のことです。
保険会社の場合、保障(補償)を提供する対価として
保険料を受け取っているのだから、これでいいのかもしれません。

ただ、例えばトヨタ自動車の売上高をみると、自動車だけではなく、
金融事業の収益も入っています。

保険会社にとって資産運用は保険事業と並ぶ本業なのだから、
売上高は保険料だけではない、という考え方もできそうです。
確かに保険会社の損益計算書には「売上高」がなく、
代わりに「経常収益」となっています。銀行も同様です。

ところが同じ「経常収益」でも、銀行の経常収益の内訳は、
貸出金利息や有価証券利息配当金などの「資産運用収益」と
「役務取引等収益」「その他業務収益」「その他経常収益」で、
保険会社の「収入保険料/保険料等収入」にあたる項目がありません。

保険会社が保険料を受け入れて、資産運用を行っているように、
銀行は預金を受け入れて、資産運用を行っているにもかかわらず、
銀行の「預金収入」は損益計算書を通らないのですね。

保険と預金では本質的に違いがあるのでしょうか。
将来キャッシュフローを提供するという点では両者は同じです。
定期預金であれば、一定期間後にキャッシュを支払いますし、
終身保険であれば、死亡をトリガーにキャッシュを支払います。

実際、米国の会計基準では、年金保険の収入保険料は
損益計算書に計上されません。

いろいろと考えてきましたが、どうやら「売上高」というものは
非常にあいまいであることがわかってきました。

それでも売上高が注目されるのは、世間のニーズとして
「取引規模の大小をざくっと知りたい」というものがあり、
そのニーズにある程度かなっているからなのでしょう。
銀行だったら「預金残高」でも「貸出金残高」でもいいですし、
保険会社なら「年換算保険料」でも「総資産」でもよさそうです。

いずれにしても、経営陣が最重要と考える指標ではないことを、
よく理解してもらいたいですね。

 

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生保の4-12月期決算から

 

少し時間が経ってしまいましたが、今回はこのテーマで。

以前にも書いたとおり、日本の四半期決算は累積表示なので、
四半期ごとに分解すると、見えてくるものがあったりします。
まずは、保険料など業績面をチェックすることをお勧めします。

ここでは別のデータを見ることにしましょう。
長期金利の水準がじわじわと下がるなかでも、
大手生保は国内債券の残高を増やしているのですが、
細かく見ると、大手生保の動きは一律ではありません。

各社とも「責任準備金対応債券」を増やしているなかで、
・日本生命は主に4-6月と10-12月に増加
・第一生命は7-9月を中心に継続的に増加
・住友生命は4-6月と7-9月(特に後者)で増加
といった感じです。

これだけではその背景まではわかりませんが、
各社のALMについての考え方を知るうえで
なかなか興味深いデータです。

明治安田生命は「責任準備金対応債券」がなく、
「満期保有目的の債券」の残高を徐々に減らす一方、
「その他有価証券」の公社債をどんどん増やしています。

好調な保険料収入は銀行窓販によるもののようですから
それと関係があるのかもしれません。

もうひとつ、今年度に入ってからは、株安や円高など、
金融市場は総じて不安定でした。
また、保険料が急増した、第三分野が低調だった、など
収入面でもそこそこの変動がありました。

それにもかかわらず、各社の四半期純利益(純剰余)は
かなり安定した推移となっているのですね
(比較のために第一生命は契約者配当準備金繰入を考慮)。

毎度のことですが、生保の当期純利益は何を示しているのか。
少なくともその期間の損益動向をうまく表現したものでは
なさそうです。

※写真は地元の大倉山公園です。
 今年は梅の開花が遅れているようですね。
 

 

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生保の資産運用

 

生保の4-12月期決算発表がもうすぐピークを迎えます。

手掛かりとして生命保険協会が公表している
月次統計(11月)を見ると、総資産が増えないなかで、
生保が国債投資を増やしているのが目立ちます。

投資家別売買高を確認しても、生保・損保が一貫して
国債を買い越しているのがわかります。
その多くは超長期債です。

では、生保はどの資産から国債にシフトしているのでしょうか。
昨年3月末は現預金が膨らんでおり(震災の影響?)、
まずはここからのシフトが考えられます。

貸付金や外国証券の残高も減っています。
貸付金は資金需要の弱さ、外国証券は円高のほか、
海外金利の低下でヘッジ外債が減っているのかもしれません。
外国証券の減少は昨年度とは異なる動きですね。

なお、国内株式も減っているのですが、株価の推移を考えると
売却よりも時価下落の影響が大きいかもしれません。

決算発表前でもこんな分析ができますよ、というお話でした。

※写真は横浜・中華街です。週末はいつ行っても混んでますね。

 

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生保の中間決算から

 

前回の損保に続き、生保の中間決算についてのコメントです。

欧州のPIIGS向け投融資の動向に注目が集まり、
決算そのものの報道が少なかったように思います。

データを見ると、基礎利益の不思議な動きが気になりました。

「5社減益、三井は赤字」(25日の日経)とありますが、
変額年金の最低保証リスク対応を除けば、多くは増益です。

決算資料とBloombergの記事などからざっと計算してみると、
大手4社合計で約570億円の増益となっています。
このうち逆ざや額の縮小が約370億円とのことなので、
残りの約200億円は保険関係の差益が増えたことになります。

保有契約の減少が続いているのに差益が増えるとは、
これまでとトレンドが変わったのでしょうか?

ヒントはこの記事です↓
毎日新聞のHPへ
読売新聞のHPへ

つまり、東日本大震災の支払見込額が5月時点から減ったため、
「戻り益」が発生したのですね。具体的には、

 日本 426億円 → 335億円
 第一 305億円 → 163億円
 住友 273億円 → 170億円
 MY  295億円 → 174億円

ということで、この差額(4社計で457億円)が
基礎利益の押し上げ要因になったというわけです
(ただし、全額が押し上げ要因となるのかどうかは不明)。

問題は通常の公表資料だけではこれらのデータがとれない
ということです。

東日本大震災の支払見込額や公表逆ざや額は
「決算記者会見資料」に載っています。
しかし、この資料をHPで公表しているのは、どういうわけか、
第一生命やT&Dホールディングスなど上場会社だけで、
第一を除く大手3社などはHPを探しても見当たりません。
第一生命の決算記者会見資料

今回はたまたま読売新聞が「25日わかった」という報道
(正確には「25日に気がついた」だと思うのですが^^)
をしたので、データを入手できました。

しかし、決算記事では各社の支払見込額の報道はなく、
毎日や産経の記事を見て特殊要因の存在を知っても、
あるいは、T&Dの決算をみて「戻り益」に気づいても、
読売の記事が出るまでは確認のしようがありませんでした。

他社も記者会見資料をHPに掲載できないものでしょうか。

ちなみに大手損保は以前から決算記者会見資料を
HPで公表しています
(もっとも、すべて上場持株会社の子会社ですね)。

 

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