6月8日の日経新聞によると、昨年度決算を受けた大手生保4社と富国生命の増配額は合計で521億円になるそうです。
ここで言う「増配額」とは個人保険・個人年金保険の契約者向け配当の増加分のことを指すのだと思いますが、毎度のことながら、これだけだとレベル感が全然わかりません。そこで、かなりラフではありますが、開示情報をもとに試算してみました。
非常に慎重な還元スタンス
この5社の配当準備金繰入額の合計は5905億円でした。団体保険の配当はディスクロージャー誌から過去の実績を見たうえで、ざくっと約3700億円と置き、団体年金の配当は各社が公表した配当率を参考に、これまたざくっと840~850億円とすると、個人保険・個人年金保険の配当は1300億円程度ということになります。
つまり、前年度の800億円弱から521億円増えて、1300億円程度になったということで、5社のソルベンシーマージン総額が2.1兆円増え、危険準備金繰入など内部留保だけでも1兆円近い水準を増やしたのに比べると、非常に慎重な配当姿勢だということがうかがえます。
もっとも、第一生命の契約者配当は日経によると「横ばい」とのことですが、同社は配当準備金繰入額の内訳を公表していて、個人向けは64億円増えています。他方、住友生命は「110億円の増配」と説明していますが、個人向けの配当準備金繰入額を推計すると、10億円程度しか増えていません。
おそらく何らかの入り繰りがあるのでしょうけど、各社は配当還元についてもっと情報を出さないと、余計な不信感を与えてしまうのではないでしょうか。
団体保険の配当はコスト扱い
なお、私はいろいろなところで基礎利益の限界みたいな話をしていますが、契約者配当との関係で言えば、団体保険の契約が大きい会社ほど基礎利益が大きくなる傾向があります。団体保険では危険差益の大半を配当することになっていて、いわば事後的な保険料の調整が行われているので、この部分はコストとして基礎利益から控除したいところです。
上記試算の数字を使えば、5社合計の基礎利益2.1兆円のうち、約3700億円がかさ上げされているということになりますね。
※写真は「手づくり和菓子教室」の私の作品です。運よくこちらに当たりました。