大手保険グループの東京海上とSOMPOがたまたま同じ日(10月3日)に投資案件について公表しました。
その内容はそれぞれの経営戦略を象徴しているかのようでした。
米国保険事業を強化
東京海上ホールディングスが公表したのは米国保険事業の買収です。
HNW(High Net Worth、富裕層)向けに特化したスペシャルティ保険グループPrivilege Underwriters(ピュアグループ)を31億米ドルで買収するというもので、米国での大型買収は2008年のフィラデルフィア(買収金額は約5000億円)、2011年のデルファイ(約2000億円)、2015年のHCC(約9000億円)に続くものとなります。
このピュアグループのビジネスモデルが興味深いのはフィー主体というところです。
ピュアグループはあくまで保険契約者が所有するレシプロカル(≒共済)の業務運営を行うのであって、引受リスクをコントロールすることで利益を得る通常の保険事業とは異なるのですね。
なお、本件は「当社が目指す『持続的な利益成長と分散の効いた事業ポートフォリオ』の実現の一環」とのことです。ただし、地域分散という観点からすると、米国事業への集中度合いは際立っています。
というのも、東京海上が5月に公表した事業別利益(2019年度予想)3730億円のうち、国内損保1420億円に対し、海外保険は1770億円で、このうち北米が1590億円です。北米が海外事業の9割近くを占めていて、かつ、国内損保を上回っている状況なのです。今回の買収によって、北米の利益ウエートが一層高まることになりますね。
シェアリングエコノミー市場への展開
SOMPOホールディングスが公表したのは駐車場シェアリング事業への新規参入です。
駐車場シェアリング事業の最大手であるakippa(アキッパ)社の株式を取得し、関連会社化しました(持ち分は33.4%)。
シェアリングサービスは日本でも徐々に普及しつつありますが、駐車場シェアリングは比較的新しい分野で、アキッパ社が事業を始めたのは2014年とのこと。
現在の会員数は約150万人、駐車場の拠点数は全国で約3万ですが、SOMPOグループの保険代理店が駐車場を開拓することで、2022年には駐車場拠点を20万に拡大し、会員数1000万人を目指すそうです。
SOMPOグループは2019年に入り、個人間カーシェアリング事業とマイカーリース事業に参入(いずれもDeNAと合弁)するなど、MaaSと呼ばれる移動のサービス化に取り組んでいます。
本件自体の投資規模は10億円単位だと思いますが、将来を見据えた布石として興味深いものと言えるでしょう。
※この週末は地元のお祭りです。
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