保険学会の全国大会で報告

10月23日から24日にかけて、日本保険学会の全国大会がオンラインで開催されました。
オンライン開催なので、懇親会等での非公式な意見交換ができないのは残念なのですが、大会に参加しやすいというメリットはありますね。私も福岡にいながらにして報告を行うことができました。

情報開示とメディア

私は3月の九州部会に続き、全国大会でも保険会社の経営情報の伝達について報告しました。
過去20年間の決算報道を調査したところ、平時における報道内容が固定化していることを「発見」したので、その理由を探るため、主要保険会社の広報部門(およびメディア関係者)へのインタビューを行いました。その結果、報道固定化には「メディア自身によるニュースバリューの判断」「報道機関固有の事情」が影響していることが見えてきました。
報告の詳細は今後どこかでご覧いただけるかと思います。

地震リスク

今回の大会では土曜日のシンポジウム、日曜日の共通論題がいずれも地震リスクに関するものでした(金融庁の栗田監督局長による特別講演でも自然災害リスク関連の話がありました)。
シンポジウム「レジリエンスから見た地震リスクと地震保険」は個人の地震リスクと家計向け地震保険についての発表とディスカッション、共通論題「地震リスクに対する企業保険制度の課題」は企業の地震リスクとその対応状況についての発表とディスカッションという内容で、特に後者は知る人ぞ知るという内容だったかもしれません。

共通論題を聞いたうえでの私見ですが、企業の地震リスク対応が進んでいない根底には、日本企業に資本コストを意識した経営が浸透していないことや、そもそも大企業と言えども実質的に事業部門の集合体で、コーポレート部門の機能が弱いという問題があるのだと理解しました(共通論題ではそこまで突っ込んだ議論にはなりませんでしたが)。

なお、シンポジウムではお二人の先生が、地震保険の危険準備金取り崩しをもって「破綻の危機」「財政に懸念」とおっしゃっていて、この点はよくわかりませんでした。
民間準備金が取り崩されてから、官民負担スキーム修正(民間負担分を下げる)までのタイムラグの問題があるとはいえ、地震保険は超長期の収支均衡を意識したプライシングがなされ、政府が再保険というかたちでバックアップするしくみです。もし民間準備金が枯渇し、新たな準備金の蓄積まで政府負担が大半を占めるスキームになったとしても、それをもって「破綻」とみなすのは私には抵抗があります。この保険の存続可能性を問題視するのであれば、論点はリスクに応じたプライシングがなされているか、ではないでしょうか。

※ハロウィンまであと1週間ですね。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

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