EUのストレステスト

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欧州連合(EU)は来年、域内主要銀行を対象とした
ストレステストを再度実施するそうです。

EUではすでに主要銀行のストレステストを実施しており、
7月に結果を公表しています。

しかし、対象となった91行のうち、不合格は7行のみと
予想外に少なかったため、市場の信認を得られませんでした。
いったん落ち着いたギリシャやアイルランド、ポルトガルの
金融機関CDSスプレッドは、8月から再び拡大しました。

さらに、EUによるアイルランド支援です。
アイルランド危機の主因は銀行問題にもかかわらず、
先のストレステストでは大手2行とも「合格」でした。

2008年の金融危機では、過去データに基づいた
VaRなど統計的手法によるリスク管理の限界が示され、
代わってストレステストが注目されるようになりました。

ストレステストであれば、ヒストリカルシナリオだけではなく、
将来起こりうる様々な仮想シナリオを自由に設定し、
金融機関の健全性を確認することができるからです。

しかし、今回の欧州の件を見ても、ストレステストが
万能なツールではないことは明らかでしょう。

何よりどのようなストレスシナリオを設定するかが難問です。
シナリオが甘いと今回のような事態を招いてしまいます。
だからといって、全ての銀行が不合格となるシナリオでは、
かえって金融市場を大混乱させてしまうかもしれません。

おそらく再度のストレステストだけでは限界があるでしょう。
様々な政策を組み合わせて、何とか危機の広がりを
防いでほしいです。
仮にPIGSのSまで広がると、もう対岸の火事とは
言えなくなってくるように思います。

※今日は町内会・子供会の餅つきに参加しました。
  もはやベテランなので、筋肉痛とは無縁です♪

 

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世界五大危機

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再保険業界で「世界五大危険」といえば、

 ・米国のハリケーン
 ・米国カリフォルニアの地震
 ・欧州の冬の嵐
 ・日本の地震
 ・日本の台風

この5つだそうです。なんと日本が2つも入っています。

過去10年間の日本の損保の出再保険収支は、
受取再保険金が多かった2004年を除いて、
常に大幅赤字となっています。

五大危険のうち二つもあるのだから仕方がないのか、
それとも再保険会社を儲けさせすぎなのか、
果たしてどちらなのでしょうか?

なお、ここでいう「危険」は保険損害額です。
犠牲者数ではありません。

スイス再保険の資料(シグマ)によると、
過去40年間に発生した災害の犠牲者数ワースト3は

1.バングラデシュの風水災害(1970年)
2.中国の地震(1976年)
3.インド洋の地震&大津波(2004年)

でした。

他方、高額保険損害額の上位5件はすべて米国です
(ハリケーン・カトリーナ、アンドリュー、WTCなど)。
上位20件になると、日本の台風が2つ、欧州が5つ入ります。

先進国と新興国・途上国の違いがはっきり表れていますね。

※左はラゾーナ川崎、右はキュービックプラザ新横浜のツリーです。

 

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生損保決算から(その3)

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損保系生保が業容を拡大しています。
変額年金が主体の2社はやや苦戦しているようですが、
いわゆる「ひらがな」生保は、大手生保が契約を減らすなか、
保有契約高、年換算保険料ともに拡大が続いています。

損保系生保のビジネスモデルといえば、
損保代理店が生保も販売する「生損保クロスセル」
というイメージをお持ちだと思います。

ところが、各グループのIR資料を見ると、意外にも(?)
チャネルの多様化が進んでいることがわかります。

例えば、あんしん生命のチャネル別保険料のうち、
「損保代理店」は全体の55%にすぎません(2010/9期)。
他には「ライフプロ」(生保代理店)が30%、
「ライフパートナー」(営業職員)が10%を占めています。

NKSJグループの生保(ひまわり生命、日本興亜生命)でも、
「損保代理店(研修生を含む)」は39%、「生保プロ」が26%、
金融機関11%などとなっています(2009年度)。

注目すべきは、グループ損保の代理店とは別の、
一般代理店の存在が大きいことです。

MS&ADグループの生保(きらめき生命、あいおい生命)の
チャネル別データは公表されていませんが、
「当社の強みである来店型保険代理店のノウハウを活用」
(あいおい生命)という記載がIR資料にありました。

保険ショップに代表される一般代理店チャネルは
成長市場とはいえ、乗合かつ大規模な代理店なので、
保険会社間の競争が非常に激しい市場でもあります。

チャネル別収益などをしっかり管理して、
規律ある競争ができるかどうかがポイントなのでしょう。

それにしても、大手生保の動きだけを見ていては、
市場の動向をつかむのが難しくなったと感じます。

※写真はトレッサ横浜です。

 

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生損保決算から(その2)

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今回は生保の話を。
国内大手生保9社のソルベンシー・マージン比率(SMR)は
朝日生命が小幅低下となったほか、8社で上昇しています。

株価が約11000円から9000円台まで15%も下がったのに、
SMRはむしろ改善しているなんて、不思議に思いませんか?
そう思ったかたは、アナリストに向いているかも^^

SMRは分子のソルベンシー・マージン総額(支払余力)と
分母のリスク合計額で計算します。
2010年9月末は、分子が9社単純合計で▲800億円、
分母が同▲1700億円と、分母の減少が大きかったため、
各社のSMRが概ね上昇しました。

分母の減少は、「株価下落で資産運用リスクが減った」で
ほぼ説明できます。
いくつかの会社では株式の売却も行っているようです。

他方、分子では、株価下落の影響が▲1.5兆円もありました。
これをカバーしたのが内部留保の積み上げ(5000億円強)と、
公社債含み益の拡大(約6600億円)、
外国証券含み益の拡大(約3100億円)でした。

それでは、この上半期に国内主要生保の健全性は、
SMRが示すように高まったのでしょうか。

注目すべきは、公社債含み益の拡大が
支払余力を下支えしている点です(その他有価証券区分のみ)。

この上半期には長期金利がかなり下がりました。
9月末の10年国債利回りは0.93%です(期首は1.39%)。
例外を除き、主要生保が持つ公社債の残存期間は長いため、
金利低下が公社債価格の上昇につながったというわけです。

しかし、これはあくまで現行会計ベースの話。
会社価値という観点からすると、超長期の負債を抱える生保には、
長期金利の低下は大きなダメージとなります。

これは、第一生命やT&DのEEV(特に保有契約価値)を見れば、
金利低下の影響がいかに大きいかわかります。

報道では「増収・増益」「逆ざやが改善」などとありましたが、
株安と金利低下、ついでに円高のトリプルパンチですから、
当の生保はそんな状況ではないと思っていることでしょう。

 

 

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生損保決算から

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主要生損保の4-9月期決算が出そろいました。

格付会社のアナリストをしていた昨年までは、
決算発表の集中日となると、データ収集&分析をしつつ、
緊急対応(格付け見直し)やメディア対応に追われていました。

今は仕事が変わり、落ち着いて分析できると思いきや、
なかなかそうもいきません。
このところ時間管理がますます重要になってきました。

それはそうと、少しはアナリストらしい話をしましょう。

大手損保の4-9月期決算で私が注目していたのは
自動車保険の損害率の動向でした。

発表されたデータは次の通りです(損調費を含むE/Iベース)。

           2009/4-9   2010/4-9
 東京海上日動   67.1% →  69.5%(+2.4ポイント)
 三井住友海上   69.3% →  74.5%(+5.2ポイント)
 あいおい損保    64.8% →  66.7%(+1.9ポイント)
 ニッセイ同和    74.0% →  84.9%(+10.9ポイント)
 損保ジャパン    68.4% →  70.8%(+2.4ポイント)
 日本興亜損保   63.8% →  71.1%(+7.3ポイント)

E/Iベースは既経過保険料と発生保険金で計算します。
正味損害率(正味収入保険料と正味支払保険金等で計算)と違い、
収入と支払の期間が対応しているというメリットがあります。

7-9月に交通量が増えた影響も大きいようですし、
会社によっては特殊要因があるかもしれません。
とはいえ、ここまで高くなると、多少料率を引き上げたくらいでは
焼け石に水という感じもします。

さりとて料率を急激に引き上げるのは現実には難しいでしょうし、
引受面や支払面で大手が思い切った対策をとるわけにもいかず、
残るはコスト面での対応となるのでしょうか?

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金融システムと保険会社②

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先日(11/13)のブログでは、頭の体操として、
日本の保険会社の経営危機が金融システムに
どのような影響を与えうるか整理してみました。

しかし、経営危機時に限らなくても、保険会社が
金融システムに影響を与えうるケースはいくつか考えられます。

例えば、多くの保険会社が同じようなモデルに基づいて
資産運用リスクの管理を行っていた場合には、
何かのきっかけで保険会社が一斉にアクションを起こし、
金融市場に影響を与えることがありえます。

2003年の債券市場では、金利水準の上昇を受け、
計測していたリスク量が、設定していたリスク上限を
超えてしまった金融機関が一斉に債券を売却し、
結果として金利水準がさらに急騰するという、
いわゆる「VaRショック」が発生しています。

個々の金融機関にとっては合理的な行動でも、
マクロ的に見ると、金融システムを動揺させてしまう。
合成の誤謬(ごびゅう)と言うのでしょうか。難しい問題です。

他には、会計や規制などの変化に伴う影響もありえます。

例えば、わずかな周知期間で自己資本規制を厳しくすると、
多くの金融機関がリスクの高い資産を投げ売りしたり、
反対に特定の資産に買いが殺到したりすることになりがちです。

個々の金融機関への健全性規制を強めることで、
金融システムを強化しようとした結果、一時的とはいえ、
かえって金融システムを不安定にしてしまうわけです。

やはり合成の誤謬といった感じがしますが、
こちらは、変化に伴うショックをなくすことはできないにせよ、
できるだけ抑える工夫は可能かもしれません。

なお、最近の「きんざい」(11/15号)で、明治大学の松山直樹さんが
保険会社の健全性規制導入が金融市場に与える影響について
書かれています。ご参考まで。

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※写真は秋の横浜(日本大通りと横浜海岸教会)です。

 

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女性アクチュアリー

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17(水)、18(木)は日本アクチュアリー会の年次大会でした。
18日は自分の関係するERM委員会主催のプレゼンのほか、
解約返戻金のパネルディスカッションなどにも参加して、
頭が疲れてへとへとになりました^^

数々の発表やパネルのなかで異色だったのは、
「アクチュアリー・キャリアの考察」というパネルでしょう。
(「女性アクチュアリーの視点から」という副題付き)。

あいにくERM委員会主催の発表と重なってしまい
参加はできなかったのですが、発表資料を見たところ、
「女性アクチュアリーに関する現状」に衝撃的なデータがありました
(アクサ生命の谷川香さんによるもの)。

日本アクチュアリー会の会員数(正会員、準会員、研究会員)は
2010年9月末時点で4466人。このうち女性はわずか228人です
(構成比は5.1%)。
正会員はもっと少なく、1255人のうち21人しかいません(同1.7%)。

他の資格の状況を見ると、医師は17.7%、SEは11.5%、
裁判官・検察官・弁護士は10.6%、会計士・税理士は11.1%、
教員は48.4%とのこと。
いずれも5年前のデータなので、今はもっと高いかもしれません。

確かに男ばかりだなあとは思っていましたが、
ここまで女性が少ないとは。

女性の話に限らず、日本の保険会社や信託銀行の経営者は
「多様性」の重要さについて、もっと真面目に考えたほうがいいと思います。

※写真は豊川稲荷のキツネさんたちです。

 

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老後の不安

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もうすぐ70歳になる私の母(元気です)が突然、
「医療保険に入ろうかしら」と言い出したのでびっくりしました。

私 「健康保険に入っているのに?」

母 「病気をすると何かとお金がかかるでしょ。将来不安よねぇ。
   年金生活だから苦しいと思うわ」

私 「高齢者の自己負担は少ないし、貯金もあるでしょ。
   病気になっても収入が途絶えることはないんだし」

母 「でも、貯金は使いたくないわ。いろいろ宣伝してるじゃない」

私 「民間の保険は単に病気になっただけではお金はもらえないよ。
   それに毎月保険料を払うと、それこそ家計の負担になるけど。
   保険料を払うつもりで貯金するのがいいんじゃない?」

こんな会話をしたところ、日曜日(14日)の日経15面に
「退職後の医療保険、加入すべき?」というコラムが載っていて、
FPの藤川太さんが答えていました。

結論は私とほぼ同じとはいえ、さすがプロのアドバイスです。

・老後の医療費は公的な「高額療養費」の活用と貯蓄で
 十分賄えるので、民間医療保険への加入は不要。

・保険料相当額は定期預金など別口座で管理。
 医療だけでなく、様々な事態に備えるお金として生かせる。

・それでも不安が残るなら、リスクの対象をがんに絞ったらどうか。

藤川さんは、こうも書いています。

「漠然とした不安に駆られ、十分な金融資産を持っている人ほど、
 保険に加入する傾向が強くあります」

合理的に考えれば、現在の医療保険ではどうかなと思うのですが、
一般に「老後は経済的に不安」「貯金は取り崩したくない」
という強い意識があるなかで、保険への期待は大きいようです。

願わくは不安に乗じたビジネス(今がそうだという意味ではありません)
ではなく、双方が経済的にも利点があるような保険がいいですね。
今後のイノベーションに期待しましょう。

 

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金融システムと保険会社

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ソウルで開かれたG20首脳会議でバーゼルⅢが承認されたのを受けて、
金融安定理事会(FSB)はシステム上重要な金融機関(SIFIs)に対する
追加的な規制の提言と作業スケジュールを公表しました。

提言は、SIFIsのなかでもグローバルにシステム上重要である金融機関
(G-SIFIs)にバーゼルⅢよりも高い損失吸収力を求めるというものです。
今後はG-SIFIsの基準と具体的な規制内容が議論されることになります。

G-SIFIsに保険会社が含まれることになるかどうかはわかりません。
ただ、FSBにはIAIS(保険監督者国際機構)も参加していますし、
保険会社は無縁と考えるべきではないでしょう。

頭の体操として、日本の保険会社の経営危機が金融システムに
どのような影響を与えうるか考えてみました。

まず、保険会社は社会のセーフティネットの役割を果たしているので、
大規模な破綻は、直接的な金融システムへの影響はともかく、
個人や企業の活動を委縮させることで、悪影響を与えます。

次に、巨大機関投資家としての役割があります。
短期資金への依存度が高い銀行に比べれば、
一般に保険会社の流動性リスクは小さいでしょう。
ただ、信用不安時や金利上昇時などには、流動性を確保するため、
国債や株式など金融市場への影響が出るかもしれません。

さらに、日本特有の話として、保険会社と銀行による
資本等の相互持ち合いがあります。

大手再保険会社への集中なども、システミックリスクとして
意識しなければいけないのかもしれません。

あくまで頭の体操ということですが...

※いつもの通り、個人的なコメントということでお願いします。

※週末の横浜は厳戒体制です。
 中心部には近づかず、浜通りをサイクリングしました。

 

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住宅ローン金利が1%割れ

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低金利に加え、金融機関の顧客獲得競争が激しくなり、
ついに金利が1%を下回る住宅ローンも現れています(変動型)。

収益性の低迷に悩む日本の金融機関にとって、
住宅ローンは安定的な収益源のはずでした。
しかし、ここまでくると、本当に儲かっているのかどうか。
表面的な利ざやが確保されればいいのではなく、
経費のほか、資本コストも含めた評価はどうなのでしょう。

どうも日本の金融機関では行くところまで行かないと
価格競争が収束しないようです。

保険セクターにも似たようなところがあるように思います。
金融危機以前の変額年金市場はまさにその典型でしょう。
販売チャネルの要求に応えて次々に新たな保証を提供し、
代理店手数料の競争も続きました。

今のダイレクト自動車保険市場も同様のようです。
先日の日本保険学会(年次大会)の発表によると、
ダイレクト損保の自動車保険単価は年々下がり、
ここ数年、ボリュームが増えても収支が改善しない状態に
陥っているとのことでした。

保険商品が価格競争に陥りやすいのはわかります。
ただ、欧米では、引受サイクルに見られるように、
どこかで規律が働いているようにも感じます。

儲からなくても売り続ける状態が続くのは、
日本の保険セクターが健全な経営を行っていない、
つまり、リスクに応じたリターンを得ようという仕組みに
経営がなっていないことの表れではないでしょうか。

※いつものように、個人的なコメントということでお願いします。

※日産スタジアムの周りでは時々フリーマーケットが開かれています。
 「こんなもの誰が買うんだろう」と思うような品ばかりの店もあったりして、
 マーケットは楽しいですね。

 

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