第三者委員会を絶対視してはいけない

保険代理店向けメールマガジンInswatch Vol.1316(2026.2.9)に寄稿した記事を当ブログでもご紹介いたします。下記にある「日本経済新聞でもコメントした」とはこちらの記事「プルデンシャル詐取、識者「ガバナンス検証を」「危機感みえず」(会員限定記事)」のことです。10日の記者会見にも注目しましょう。
————————————

原因の究明は十分なのか

営業社員による大規模な金銭不祥事が発覚したプルデンシャル生命保険の記者会見(1月23日開催)では、参加者から第三者委員会による調査実施の有無を確認する質問がありました(会社は第三者組織による被害者補償を進めるが、さらなる原因究明の調査はしない旨を回答)。
近年、不祥事が起きた会社では、社外の第三者からなる調査委員会を設置して事実関係を調べ、調査報告書を公表するという事例が多くみられます。こうした調査報告書には有益な情報も多く、私もしばしば活用しています。プルデンシャル生命の場合、日本経済新聞でもコメントしたように、会社が公表した資料や記者会見の内容(ネットで傍聴しました)だけでは、金銭不祥事を起こした100名超もの営業社員がなぜ不祥事に走ってしまったのか、原因の究明が十分とは思えませんでした。問題の根幹は不適切な人材にあるのでしょうか?

ただし、第三者委員会による調査を行えばいいのかといえば、必ずしもそうとは言えません。というのも、これまで私が確認した第三者委員会等の調査報告書を見ると、残念ながら当たり外れが大きいという現実があります。
以下、原因究明が不十分な事例を2つ挙げておきましょう。

東芝の調査報告書

2015年に発覚した東芝の不祥事に関して、当事者の一人で財務担当副社長を務めた久保誠氏が『東芝 転落の深層』という書籍を出しました。
少し長くなりますが、本書の「あとがき」から引用します。

「最大の問題点は東芝側が、横暴な社長たちの圧政のもとで、社内の会計処理が乱れたのはひとえに『経理財務部門のガバナンスの問題』として、すべての責任を経理財務部門に負わせようとしたことである」

「この結果、裁判の出発点となった2015年7月の第三者委員会報告書は、WEC関係の原子力部門やパソコン事業部門が行った歪んだ会計処理について、その実行責任者をほとんど免責し、その全てを経理財務部門の責任とする記述を行った」
※WEC=ウェスチングハウス社

当時私もこの報告書を読んで、会計処理の判断に関する掘り下げた分析がなく、「なぜトップは工事損失引当金計上を認めなかったのか」「なぜトップは利益かさ上げの解消に難色を示したのか」「なぜトップの圧力が組織的な不正という結果になるのか」といったところはモヤモヤしたままだ、と個人ブログに書きました。
しかし、それは当然のことでした。なぜならば、この報告書には「本委員会の調査及び調査の結果は、東芝からの委嘱を受けて、東芝のためだけに行われたものである」(19ページ)とあり、東芝からの委嘱事項も4つの会計処理に限られていました。ですから、本書で久保氏が「事実を掘り下げたり、原因を見極めようとの姿勢は全くなかった」と述べているとおり、問題の根幹を探るような報告書とはなりえなかったのでしょう。

SOMPOの調査報告書

本書にも出てきますが、「第三者委員会報告書格付け委員会」という組織があって、第三者委員会等による調査報告書を格付け評価し、公表しています(評価は上からA、B、C、Dの4段階およびF(不合格))。東芝の調査報告書に対する8名の評価は、AとBがなく、Cが4名、Dが1名、Fが3名という厳しいものでした。
格付け委員会がさらに厳しい評価を行ったのが、ビッグモーター事件を調査したSOMPOホールディングス社外調査委員会による報告書です(中間報告書を含む)。8名の評価はDが4名、Fが4名でした。
格付け委員会による議論のポイントを見ると、持株会社におけるグループガバナンスを調査の目的としたにもかかわらず、重要な事実関係がほとんど解明されていない点をすべての委員が問題視したとのことです。保険業界に詳しい委員からは、「第三者委員会メンバーの専門性に欠けており、それが損保業界特有の事情を踏まえない、深度の浅い原因分析につながった」という指摘もありました。

本件の場合、この調査報告書の公表をもって一件落着とはなりませんでした。しかし、第三者委員会やその調査報告書は原因究明や再発防止のためではなく、問題の幕引きのために使われてしまうこともありうると覚えておいたほうがいいでしょう。
————————————
※福岡城址でも梅が咲いていました。

※いつものように個人的なコメントということでお願いします。

ブログを読んで面白かった方、なるほどと思った方はクリックして下さい。