
日本経済新聞には『私見卓見』という投稿欄があります。12月25日のに掲載された「企業は保険リテラシーを高めよ(会員限定)」という松本浩司さん(会社顧問・保険仲立人)による投稿記事をご覧になったでしょうか。
そのなかに次のような提案がありました。
・損害保険会社と企業の関係を「プロ対アマ」から「プロ対プロ」に転換するには、企業の保険リテラシーを高めることが不可欠。
・そのための一歩として、上場企業に「保険購入によるリスクヘッジ状況」の開示を求めてはどうか。
・どのリスクを保険でどこまでカバーしているかを示すことで、保険を経営リスク管理の一部としてとらえる契機となる。
もちろん、問題は企業のリスクマネジメント意識が総じて低いことであって、保険に加入しているかどうかではないという意見もあるとは思います。はじめに保険ありきではなく、まずはリスクを認識し、そのうえで保険を含めた対応策を検討するのがリスクマネジメントの本来あるべき姿です。
とはいえ、それを承知のうえで私も松本さんの意見に賛成でして、既にそのような主張をしてきました(例えば『金融資本市場展望』の投稿記事(有料媒体)など)。
大企業は保険会社にだまされ続けてきた被害者なのでしょうか。一連の損保問題のうち、企業向け保険に関する問題の根底には、企業のリスクマネジメント意識が低く、表面的なコスト(保険料)にのみ関心があり、あとは親密かつ協力的な保険会社におまかせという姿勢があって、それこそが、いびつな取引慣行が今日まで続いた一因だと考えられます。
しかし、残念ながら損保問題を受けた改革のラインナップには、大企業に対して直接働きかけるものはほとんど盛り込まれませんでした(あえて言えば、企業内代理店の特定契約比率規制の適用拡大と、保険会社からの出向者引き揚げくらいでしょうか)。
いくら保険会社に本来あるべき保険取引を求めても、相手にその気がなければ正常化は難しく、むしろ取引自体が細ってしまうかもしれません。金融庁にはぜひ企業向け保険市場の踏み込んだモニタリングを行っていただくとともに、有価証券報告書「事業等のリスク」に、重要リスクのうち保険でカバーしているものを定量的に示すよう、働きかけていただきたいです。
なお、本件に関しては、損害保険会社の開示も不足しています。損保の決算説明資料などを見ても、火災保険全体としての収支が改善しつつあることはわかるのですが、企業向け保険がどうなっているのかを知る手掛かりがほとんど示されていません。
どうしたものでしょうか。
※再建工事中の首里城(沖縄)を見学しました。
